■Necros
■Procession of Heretics/Necros

フランスのデスメタルバンドの2012年リリースの5曲入EP。同名のハードコアバンドもいるけど、そちらとは全く無関係。今作はたまたま俺達の3LAさんの方で見つけて入手させて頂いた音源なので、元はTorment Painというバンドであった事以外の細かい予備知識は全く皆無なバンドなんだけど、デスメタルでありながら劣悪な憎悪と音が渦巻く快盤となっている。
一聴して感じたのは、このバンドの音はデスメタルではあるけど、とにかくブラックメタルかなってレベルのロウな音質と荒々しさ。かといって極端に音質が悪い訳ではないし、持ち前の荒々しさを最大限に生かした音作りになっていると思う。導入の第1曲「Black Mass」では不穏なアルペジオの反復が不気味な空気を生み出し、そして入り込む地獄のディストーションギター、この先にある地獄を予感させ、そして第2曲「Procession of Heretics」に入った瞬間に完全なる地獄。とにかくリミッターを完全に振り切った獰猛なドラムが暴走し、デスメタル成分をしっかりと感じさせながらも、同時にブラックメタル感も出しまくりなトレモロリフの応酬。そして地獄の奥底からの野獣の様なド太いボーカルがとにかく攻める。このバンドの音はデスメタルとブラックメタルの正面衝突的なカタルシスを感じさせてくれるし、とにかく第1曲以外は全く遠慮が無い。ただひたすら獰猛な音を地獄の奥底からこれでもかと繰り出しまくってくる。しかし曲の尺とか割とコンパクトだったりもするし、これらの音に耐性があるなら非常に清清しく気持ちがいい音になっているだろう。第3曲「God You've Failed」も序盤のミドルテンポのパートが良い感じで雰囲気を生み出しつつも、暴走するパートはとにかく聴いてて気持ちが良い。テンポを落としたパートではドゥーミーな成分を取り入れて怨念が渦巻く感覚を体現し、暴走パートでは殺すというスタイルはまた小気味が良い。作品全体を通して言えるのは暴走パートでもダウンテンポのパートでもとにかくギターリフの殺傷力がとんでもないという事だ。高速のトレモロリフで攻めまくるギターはとにかく極悪であるんだけど、ダウンテンポのパートで聴かせる地獄感を良い感じに出してるフレーズなんかも見逃せないし、ひたすら切れ味を求めて血の匂いを感じさせる音はブルータルさも十分に感じるから格好良い。最終曲「Dawn of Purgatory」は完全にデスドゥームな序盤で聴き手を粉砕しておきながら、そこからお得意の暴走ブラスト&極悪トレモロの応酬で更に殺す。どの楽曲にも言えるけど、熾烈さとダーティさは常に振り切りながらも、暴走パートとダウンテンポのパートの取り入れ方が非常に上手いと思うし、それが余計に堪らない。
3ピースでひたすらに極悪でダーティな音を追求しまくったデスメタルだと思うけど、ブラックメタルの寒々しさを良い感じに取り入れ、更にドゥーミーな成分も入れてきている割とクロスオーバーな音だと個人的には思ったりもしたけど、とにかくやり過ぎな位の地獄感溢れる音はこの手の音が好きな人なら凄く好きになると思うし、何よりもトレモロの寒々しさとデスメタルの地獄感を同時に放出しながら、殺傷力抜群なギターがナイスな一枚になっている。完全粉砕型のサウンドが生み出すカタルシスが濃密な作品だ。