■Dead To A Dying World
■Dead To A Dying World/Dead To A Dying World

アメリカの7人組極悪ネオクラストバンドの2011年リリースの1st。Phillip Cope(Kylesa)がプロデュースし、VestigesやDownfall Of Gaiaともツアーをしているらしく、その手のバンドが好きな人には完全にドンピシャなバンド。まずこの音源は毎度御馴染み俺達の3LAで購入させて頂いたのだけど…

この写真を見ての通り、重量版の抹茶色のクリアヴァイナルのLP2枚に、とんでもなく豪華な仕様。レコードとは思えない位に外箱は厚いし、これ配達屋さんから受け取った時に「重っ!」って思わず声を出してしまった。1stアルバムでありながらバンドの拘りがアートワークの方でも発揮されており、もう凄いとしか言えなかった。幾らなんでもここまで凝った仕様にするバンドは中々いないと思う。
そんな芸術意識が滅茶苦茶に高いアートワークもそうだけど、肝心の作品の方もそれがかなり現れている。先ず全3曲の作品なのだが、約7分の第2曲以外の残り2曲は余裕の10分越え、というか第1曲は15分近く、第3曲は23分近くもあるという超大作志向だ。1stでありながら、アートワークだけじゃなくてその音も色々と壮大すぎる。更にチェロやアップライトベースを大胆に導入しているし、ボーカルは複数いるしと、もう完全にオーケストラでもやりてえんじゃねえかっていう編成。色々と凄い。
しかし本当にサウンドがネオクラストのバンドの中でも屈指の熾烈さを誇るのだ。Fall Of EfrafaやDownfall Of Gaiaの様にネオクラストからポストメタルへと移行し、芸術性を追及するバンドは決して少なくないし、彼等もネオクラストからそんな大作志向になったバンドの一つなんじゃねえかと勝手に予想していたりするけど、それらの大作志向のネオクラストバンドを全て漆黒の炎で葬り去る位の熾烈さがこのバンドの凄みだ。
第1曲「Concrete and Steel」はチェロの調べから始まり、Grailsが闇に染まったみたいなギターの静謐な調べと、チェロの調べが壮大に絡み、厳かな美しさを強く感じさせ、それだけでもかなりの眉唾物なんだけど、曲が5分程進行し、繰り返されるチェロとギターの幽玄の調べが一転!ブラックメタル色の強い音階をかなり色濃く出しながらも、熾烈なクラストとポストメタルが正面衝突したギターリフの応酬、ドラムのビートはポストメタルというより、ハードコア色を色濃く出しながらも、スラッジなリフと共鳴し、同時にチェロの旋律がより壮大さを繰り出す、クラストなドスの効いたボーカルだけじゃなくて、ブラックメタルながなり声ボーカルも登場し、一旦引くパートでも残酷な余韻が強く、そこから最近のAmebixにすら匹敵するであろうプログレッシブで密教的な世界へと繰り出す。しかし一貫しているのは、序盤のパート以外は引くパートですら熾烈に歪んだサウンドが響くし、美しいチェロと歪みながらも芸術的なギターが絡みながらも、あくまでもクラストな感覚を残して奈落へと急降下していくのだ。終盤なんて激重サウンドが本当に怒涛のテンションで叩き付けられ、完全に全てを焼き尽くす。この1曲だけでも、このバンドが、1stでありながら、ネオクラストを越えた壮絶なる音塊を生み出す化け物だという事が分かるだろう。
第2曲「Stagnation」は一転して、より不穏になったギターとチェロの旋律が不安を煽る形で鳴り響くが、直ぐにブラックメタル×クラストな寒々しく熾烈なリフの応酬へと雪崩れ込み、地獄の奥の奥から響き渡る複数のボーカルの応酬、時にプログレッシブなキメを繰り出し、変則的に展開しながら、混沌の中で更に混沌が生まれる様な強靭過ぎる音の乱発はもう完全に絶頂必死!!中盤からはスラッジさを前面に押し出し芸術性もアピールしながらも、その熾烈さの奥の美しさに酔う事すら許さない煉獄へと再び雪崩れ込んで行くし、今作でも屈指の混沌がそこにある。
そして決定打は20分以上にも及ぶ最終曲「We Enter the Circle at Night... and Are Consumed by Fire 」だ。美しいギターの調べから一転、これまで以上に圧巻のダークサイドクラストサウンドへ!!ギターのリフはドス黒いのにメロディアスで、痛々しさを増幅させ、ブラストビートと共に奈落の先の更に地下深くへと聴き手を完全に道連れにする、トレモロとブラストとジェットコースター、それが圧倒的強靭さと音圧で迫ってくるのだからも、本当に凄い。随所随所にポストメタル的美しさを感じさせるフレーズを盛り込みながらも、既存のポストメタルを全否定する様な暗黒クラスト地獄。しかも単に強いだけ出なくて、闇の世界の美しさとしてそれを描くし、暴走するパートと共にスラッジさを全開にしたポストメタルな要素もあるし、そんなパートでもナヨくは全くならないし、熾烈だ。合間合間に箸休め的な静謐なパートを入れながらも、それは全然冗長にしないで、あくまでも熾烈さを前面に押し出し、突如として急降下していた光速のギターフレーズが金切り声と共にスラッジになったり、中盤でのアップライトベースの重みから、再び美しいギターとチェロの調べの美しさで微かな救いを感じさせ、それを嘲笑う様に完全にブラックメタルなトレモロとブラストの応酬のパートへ。そのパートがまた今作でも一番のカタルシスを感じさせえる瞬間であり、そして最後は圧巻の結末とも言えるポストメタルな壮大さが爆発し、アップライトベースとチェロの残響で締めくくられる。作品自体は合計44分とそこまで長い訳じゃないんだけど、それでも全3曲に渡って繰り出される奈落のブラッケンドクラストはポストメタルもブラックメタルもアンビエントも喰らい尽くし、強靭なるキメラとして目の前の物を全て邪炎で焼き尽くす。
1stアルバムでありながら、とんでもなく大作志向であり、しかもその芸術性もそうだけど、ほぼ全編に渡って繰り出される熾烈なる暗黒クラストの煉獄は他に例を見ない凄まじい物だし、ネオクラスト好きは勿論だけど、ここ最近のAmebix好き、ブラックメタル好き、スラッジ好きと数多くの激烈音楽を愛する者を虜にする壮絶なる一枚だ。個人的にネオクラストの重要作品に上げたい位な屈指の名盤。また今作はバンドのbandcampページにて公式でフリーダウンロードで配信されているが、個人的には聴いて気に入った人は、そのバンドの拘りを強く感じるLPの方で是非購入して欲しい。これマジで凄いわ。