■Stop It!!
■Self Made Maps/Stop It!!

ヴァージニア州リッチモンド出身の激情ハードコアであるStop It!!の06年リリースの9曲入アルバム。city of caterpillarのメンバーも在籍しているらしいこのバンドなんだけど、これが本当に言葉で例え様の無い独特の激情系ハードコアであり、それが滅茶苦茶に格好良いのだ。シーンの隠れ名盤的作品だと思う。
本当に一概といってこれって例え方が出来ない作品ではあるけど、一番感触として近いのはOff Minorだと思う。しかしOff Minorとも違うし、本当に上手い言葉でその音楽性を表す事が出来ないバンドなのだ。第1曲「Maybe She's Born With It」から冷徹なフレーズと絶妙に外した拍の数々、鉄の振動を感じさせるギターの感触も、機械的な冷徹さを持つビート、不協和音のギターフレーズと硬質のビートの絡み合いが見事でありながら、そのひんやりした感触の奥底にあるエモーショナルさ、数多くの必殺のキメを繰り出しながら進行していく楽曲が生み出す熱さが非常に魅力的だ。特に第2曲「Name + Number」は今作でも屈指の名曲で、人力マシンビートなドラムと、不穏のアルペジオの反復が生み出す不穏さが渦を生み出し、それなのに妙にメロディアスさを生み出しているし、少しヘロッとしたボーカルから感じる謎な歌心、特に終盤の轟音フレーズを入れ込んできてから転調して楽曲のテンションを一気に変えて、COWPERS辺りを彷彿とさせるタッピングのフレーズの嵐と共に一気に激情で畳み掛けてくる瞬間は鳥肌物の格好良さだ!!
本当に上手く言葉で表せないけど、静と動の使い分け、不穏さの中のメロウさ、鉄の音から感じる熱さ、ある種の相反する要素が必然として存在しているし、上がっている様な落ちている様ななんとも言えない感覚、その音は確かにUS激情のそれであるのに、その枠組みに当てはまってくれなさ。それらが持つ中毒性は本当に凄い。第4曲「A Clever Play On Words」はインストでありながら、揺らぎのアルペジオのフレーズが耳に残り、静かに高まっていく哀愁が本当に堪らないし、その悲哀には涙が溢れそうになるし、一転して第5曲「Remove Your Teeth」はカオティックなフレーズのストップ&ゴーから不穏な轟音の濁流へと雪崩れ込み、不穏の音の乱打を見せながらも、それでもやっぱり歌心溢れるボーカルが呼び寄せる悲哀はなんなのだろうか。今作でも屈指の痛々しい激情を爆発させる第6曲「S.S. Betrayel」、そのアンサンブルの奇跡的な組み立て方もスリリングさも見事な第8曲「Here's To New Shortcuts」、そして燃え上がる寸前のタンションのまま燃え尽きていく様な最終曲「Beethoven's Funeral」の一つの断罪の音、そのどれもが素晴らしく、そしてくすぶりながらも燃え落ちる様な激情は本当に唯一無二だ。
Off Minorやkillie辺りのプログレッシブな要素を持つ激情が好きな人や、LEVEL PLANEのバンドが好きな人には是非ともお勧めしたい作品だが、それらのバンドとは全く違う音を放っているし、US激情の流れにありながらどうしてこう突然変異してしまったのだろうか。本当に例え様の無い変則性を持ちながら、独自の熱量を生み出しているStop It!!。このくすぶり燃えるエモーショナルさは確かに胸を焦がすのだ。最高に格好良い。
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