■アジアの純真

■レジスト・レジスター/アジアの純真

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 元々はParc Fermesというバンド名で活動していたが2014年からアジアの純真へとバンド名を改名、それと同時にリリースされた自主制作1stフルアルバム。長方形型の特注スリープに、7枚の歌詞カードが記載された厚紙アートカードが封入されたバンドの拘りもかなり強く感じる仕様になっているし、Parc Fermes改めアジアの純真の渾身の一枚になっている。



 しかしながらこのバンドは本当に特異なバンドである、ライブではメンバー全員が学生服、若しくは活動家みたいな黒ずくめの衣装に身を包んでいるし、自ら「ポリティカル・ハード・アート・チーム」を名乗り、「革命と闘争のロマン」をテーマに掲げ、数多くの思想や事件が持つエネルギーを考察し、それを音楽だけで無く、ライブパフォーマンスやアートワーク等でも体現していくスタイルはバンドと言うより一つの演劇的な表現集団と呼べる物だ。今作に収録されている楽曲も、キューバ革命・ロスチャイルド家・三島由紀夫・天皇・自衛隊・戦争と日本といったテーマを基に作られている楽曲ばかりだ。そんな彼等だから音楽性も一筋縄ではいかない。ハードコア・レゲエ・パンク・オリエンタル・レトロといった雑多な要素を持ちながら統率された楽曲、泉中水氏のポエトリーとラップによるボーカルスタイル、それぞれの楽曲が持つ情報量の多さ、どれも異質であり、異様なエネルギーを持っている。
 アルバムのSEとなっている第1曲「イデアリズム」からアジアの純真の世界は始まり、第2曲「メガロマニア」からその世界は炸裂する。ドラッギーなグルーブが渦巻きまくり、レゲエミーツハードコアのギターワークが切れに切れまくり、捲くし立てる演説の様なボーカルが更なる性急さを生み出し、パンキッシュな躍動感を持ちながらグルーブを重視したサウンドはバンドの世界観云々以前に非常に異様なエネルギーを持っている。第3曲「ロスチャイルド」は一転してレゲエ的なアプローチが色濃く出た楽曲だし、ラップ調のボーカルと横ノリのグルーブのファンキーさは見事にマッチし、同時に単なるグルーブ重視のサウンドに仕上げるのでは無くて、パンキッシュな攻撃性も大切にしているし、「ぶっ壊せマネーシステム!!」と叫ぶサビのパートではその攻撃性が前面に出たフレーズが楽曲に見事なアクセントを作り出している。
 作品も後半になると更にこのバンドの深淵に入り込む。第4曲「ノスタルジア」のドープなサウンドと、盛り上がるパートでは直情的なサウンドになり、中盤のリードギターの泣きのフレーズなんか非常に堪らない。変則的なサウンドスタイルでありながらも、それを必然として聴き手に受け取らせるのはバンドの持つ世界観が成す技なのか、もしくは一つのテーマを持ち、それを演劇・アート的に表現するバンドだからこその必然なのか、いずれにせよ、バンドサウンドの面だけで語り尽くすのは難しいし、聴いてて本当に歌詞で放たれる圧倒的情報量の言葉や、アートワークや、音もひっくるめて聴き手に考える事を促すサウンドだし、向き合わせる音なのだ。第5曲「マイノリティ」はそんなバンドサウンドが展開されながらも、「天皇!核!自衛隊!」と捲くし立て叫ばれる言葉と共にシリアスかつスリリングに展開される楽曲が非常に魅力的であり、このバンドの楽曲はどの楽曲もドラマティックな楽曲構成と展開を持っているし、引きの部分を大切にしているからこそ、ここぞと直情的なボーカルとサウンドが展開される押しの部分で一気に感情を掻き毟るのだ。これは僕の個人的な見解ではあるけど、このバンドは世界観やアート的な部分を抜きにして本当に素晴らしい激情を放っているし、それはバンドの真骨頂とも言える「戦争と日本」をテーマにした第6曲「ヒューマニズム」を聴けば明白だ。そして最終曲「ノーフューチャー」はこのバンドの持つ激情のエネルギーが最もストレートに出た名曲であり、レゲエライクなカッティングのギターと変則的なビートで展開しながら、泉中水氏が「ノーフューチャー!!」と魂の叫びを放つサビのパート、そして吉松氏の感情を揺さぶりまくる激情のギターフレーズは魂を本当に揺すぶられてしまう。



 全7曲に渡って、圧倒的情報量と激情のエネルギーを持つ特濃厚の作品であり、都内のライブハウスシーンで活動しながら、何処にも属せない異質さ、そのバンドとしてのスタイルは劇団的でもありながら、そのエネルギーを考察し、体現する事によるシリアスなリアリズム、このバンドは決して誰もが賛同する音楽性や活動スタイルでは無いのかもしれないし、下手したら本当に多くの賛否両論や議論を起こす可能性もあるバンドだと思ったりもする。だからこそバンド・音楽という部分だけでなくて、アートワークや歌詞の点も含めてアジアの純真というチームを構成する大切な要素なのだろうし、テーマを掲げ、そこに真摯に向き合い続けているからこそ生まれる激情のエネルギーに僕は大きな賛辞を送りたい。



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Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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