■Comity
■The Journey Is Over Now/Comity

やっぱフランスってすげーわ。各ジャンルで本当に高水準の音を送り続けているフランスという国だが、このComityもフランスが生み出した独自の激重カオティックハードコアバンドだ。今作は彼等の2011年リリースのアルバムであり、1stでありながらとんでもなく濃密な名盤となった。リリースはThroatruiner Records。
そもそもこのバンドの生み出すカオティックはある意味では聴き手を突き放している物なのかもしれない。全4曲約50分と言う収録内容もそうだし、曲名は「Part I」、「Part Ⅱ」、「Part Ⅲ」、「Part IV」って感じだし、大作志向のカオティックと言えるだろう。彼等のbandcampページのプロフィールには好きなバンドにTHE DILLINGER ESCAPE PLAN、CONVERGE、CAVE IN、TODAY IS THE DAYといったカオティック・激情の偉大なる先人達の名を上げているし、これらのバンドの影響下には確かにあるとも言えるけど、USカオティックや欧州激情のサウンドとはまるで違うし、僕は個人的にカオティックハードコア側からのある意味での「ポスト」的な作品だとも思う。確かに機軸になっているのはカオティックハードコアだし、随所随所では彼等が好きなバンドに上げている先人達の音の流れもあるけど、本当にそれを独自の方法論で進化させたバンドなのだ。ポストメタルやスラッジの流れにあるサウンドがかなり目立つし、ブラックメタルやグラインドコアの流れも確実に存在する。そして大作志向と本当にフランスのバンドらしい徹底した美意識で完成度の高い作品を生み出したと言えるだろう。
言うならば彼等の生み出す音は新たなる混沌だ。作品が始まった瞬間にハウリングノイズと共に幾多の雄たけびが木霊し、いきなり激烈なカオティックハードコアサウンドでブチ殺してくる。不協和音の洪水の中で幾多の叫びが血管ブチ切れるテンションで放たれ、カオティックなパートの変則的過ぎるキメや転調の嵐から一転してポストメタル・スラッジ要素の色濃くでたミドルテンポのフレーズへと雪崩れ込み、その中でもカオティック成分は全く衰えないし、しかし楽曲構成も分かりやすい起承転結で構成されてないから、いきなりクリーントーンの不穏なフレーズが入るし、エクスペリメンタル差を色濃く出したパートから再びカオティックな暴虐の限りを尽くしたり、聴き手を完全に突き放して置き去りにしてしまう。だが一貫しているのは彼等の放つ音は徹底してドス黒いし、第1曲と第2曲はそんなドス黒いヘイト全開のエクスペリメンタルカオティックハードコアが怒涛のテンションと混沌と美意識によって闇を膨張させて爆発しまくり、漆黒のカタルシスの連続だ。
一方で第3曲はアンビエント・アコースティックのテイストがかなり強く、アンビエントなダークなコラージュをバックに、アコースティックな音色の爛れた美しいギターの調べがまた別ベクトルでの闇を生み出し、内省的なサウンドに力強いドラムとベースのポストメタル感出しまくりなビートが入り、最後はエクスペリメンタルな音の波状がドラマティックな闇の不協和音の先の美しさを生み出し、それでも最後の最後まで爛れたアコースティックなギターが耽美な世界を形成し、また別の方面での美意識も見事にアピール。そしてラストを飾る第4曲は実に22分にも及ぶ超大作だ。完全にスラッジコア色を全開にし、今作で一番の激重サウンドを繰り出し、エクスペリメンタルも不穏な静謐さも飛び出し、カオティック側からの壮絶なる地獄巡りを描くのだ。
カオティックハードコアでありながら独自の進化を遂げ、カオティックを機軸に異質さのクロスオーバーを成し遂げ、それを徹底的にドス黒く描く。バンドとしてのテンションもダークさも美意識も高水準だし、カオティックハードコアの一つの可能性を提示した名盤となっているし、カオティックとしてだけじゃなくて、スラッジ・ポストメタル的な作品としても素晴らしい。また今作はbandcampの方でもname your priceで配信されている。