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Funny!!!Funny!!!
(2004/10/06)
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 一夜限りの再結成ライブもいよいよ間近に迫ったsportsの04年リリースの1stアルバム。07年に活動休止をしてしまったsportsだが、このバンドがギターロックバンドが多く登場し混迷としていた00年代前半に登場し、それらのバンドの中でも屈指の完成度とポップネスを放ち、独自の道を切り開いていたのだ。今作はそんな混迷とした当時のシーンに必然として生れ落ちた名盤であり、決して時系列の彼方に葬ってはいけない作品だ。



 伊藤寛之、永井紀子、大石貴義。この三人によるsportsはバンドとして本当に完全であった。そもそもシーンの中でsportsというバンドは屈指の演奏技術を持つバンドだったし、伊藤君の空間系エフェクターを変幻自在に使いこなすセンスは郡を抜いていたし、元ハートバザールである紀子嬢の動くまくり、メロディを司りながらグルーブを支配するベースの凄み、大石君のダイナミックさをバンドに与え続けるドラム。このトライアングルが生み出すギターロックはバンドとして完全だったし、それでいて極上のポップネスを放っていた。
 一部でイントロのコード進行がモロにCOALTAR OF THE DEEPERSの「C/O/T/D」なのも話題になっていた第1曲「Super Sonic」から先ずとんでもない名曲だ。確かにイントロのコード進行はモロCOTDだけど、COTDに負けず劣らず轟音のポップネスが咲き乱れるこの曲をアルバムの頭に持っていったのは大正解過ぎるし、クリーントーンの爽やかなギターとソリッドさと轟音が渦巻く伊藤君ならではの独自の歪みの方法論、常に高揚感しか無くて、目前を疾風の様に駆け巡るギターサウンドは正に必殺であるし、同時に紀子嬢のあざとい位にメロディラインを引き倒し、独自の熱量をグルーブに託し、sportsというバンドのもう一つのメロディとして、更に絶対のグルーブを司る女神としての存在感。そんなイケメンと美少女の弦楽器隊に対して、男前ドラマー大石君は二人のバックを確かに支えるタイトなドラミング。しかしタイトでありながら大胆な熱情を同時に持っているし、駆け巡るギターとベースの音の粒子を統率するビートの守護神としてのドラム。この3人がsportsをやっている事だと思わせるアンサンブルの全てが「Super Sonic」には存在しているし、エモーショナルな初期衝動を爽やかなメロディで奏でながらも、どこか陰鬱な湿り気もあり、ギターロックバンドとして必要な物をこのバンドは全て持っていたのだ。
 ギターロックバンドに必要な物を全て持っていると書いたけど、それは他の楽曲を聴けばより一層痛感するだろう。第2曲「Heart Beat」や第3曲「Sports Wear」の歌物であり、バンドが持っている叙情的部分と繊細さを前面に押し出したこの2曲は静と激の対比も見事だし、楽曲としては徹底的に一つの憂いを持ち、これは80年代のバンドが持っていたそれだけど、しかし楽器隊の各フレーズはそんな楽曲の中でも攻撃的に攻めるし、浮遊感を持ちながらも、バンドとしての核は絶対的だし、一つの泣きを轟音のギターに全て託しているからこそ最高に格好良い。一方で伊藤君のピアノの弾き語りから始まる第4曲「鉄の街」の剥き出しになった哀愁も心が打たれるし、流麗のピアノに、バンドサウンドが入り、激情のサウンドを展開し、伊藤君のたおやかな歌から悲痛なシャウトを皮切りに轟音の激情へとドラマティックに展開していく楽曲構成も素晴らしい。
 またsportsはバンドとして非常に音楽的多様性を持つバンドでもあった。レゲエライクなカッティングとグルーブ理論をギターロックに持ち込んだ第5曲「D.Johnston」のメロディアスでありながらも、不穏さが木霊する感覚のダークネス、一転してsonic Youthばりのノイジーなギターワークが炸裂し、疾走感と共にギターポップにオルタナティブを持ち込み、怒濤のサウンドが全てを貫く第6曲「Ivy」という全く真逆な2曲がアルバムの中で同時に存在し、しかも統率されたアレンジで違和感を全く感じさせないのは、もう完全に伊藤君の天才的な職人肌のポップネスが成せる技なのだろう(それは現在の作曲家・アレンジャーとしての活動にも生かされている)。またどの楽曲も揺らぎと言う部分を非常に強く感じるし、それが前面に出たアンプラグド的なアレンジを施した「メロトロン」に表れており、伊藤君の中性的な歌声と見事に嵌る。
 そんなどの楽曲も屈指の完成度とポップネスを誇るアルバムだけど、その中でも屈指の名曲となっている第8曲「Pumping On The Radio」はsportsの中でも一番の王道ギターロックとしてのアプローチをしている楽曲でありながら、同時にやっぱり一筋縄じゃいかなさもあるし、美麗の旋律が楽曲を引率しながら、宇宙的浮遊感と高揚感が浮世を否定していく。そしてその先の世界を描く様な宇宙の果てを孤独に彷徨い、やがて考えるのを止めてしまいそうになる第9曲「Rhythm Drowner」の無慈悲さと、揺らぎの果ての世界もギターロックの残酷過ぎる魔法だ。



 sportsというバンドは間違いなくポップネスとギターロックの魔法を放つ言ってしまれば「選ばれた」バンドだったのだ。しかし05年の紀子嬢が体調不良で脱退し、サポートベースを迎えて活動を続けるも、07年に大石君が地元浜松に帰る事になりバンドは活動休止を余儀なくされ、2枚のアルバムと何枚かのミニアルバムとシングルを残し、混迷とした当時の時代と共にsportsは消え去ってしまった。しかしこのバンドは決してロッキン○オンがプッシュしなかったにしても(メンバー全員ルックスも良いし、正統派過ぎる位にギターロックバンドとして優れていて更にポップな要素もかなりあったのに何でプッシュされなかったか僕には理解に苦しむけど)、僕を始めとした多くの人にとってかけがえの無い魔法をかけたバンドだったし、僕はこのバンドの存在と彼等の最高傑作である今作の存在は絶対に当時の混迷の中で埋もれてはいけない作品だと思っている。国産ギターロックの金字塔だと断言する。




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メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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