■Deafheaven
■Sunbather/Deafheaven
![]() | Sunbather (2013/07/12) Deafheaven 商品詳細を見る |
これがブラックメタルのジャケットかよ!?って言いたくなる位にオサレサブカルなジャケットだが。これポストブラックのアルバムのジャケットです。先日の来日公演も本当に多くの集客と、その素晴らしいパフォーマンスで大絶賛・拍手喝采だったサンフランシスコの激情ポストブラックメタルバンドであるDeafheavenの2013年リリースの2ndアルバム。今作もリリースは前作に引き続きDeathwisから。
今作はPitchforkをはじめとする多くのメディアで大絶賛され、日本でも今作を切欠に一気に知名度を広め、普段ブラックメタルを聴かない層まで取り込んだ作品だけど、同時にそのヒップスターブラックの最右翼具合から多くのdisを浴びたりもした問題作だったりもしたんだけど、僕自身はDeafheavenというバンドにブラック云々っていうのは野暮だとすら思うのだ。確かにブラックメタル要素はあるけど、極限までポストブラックな作風は原理主義者からしたら無いのかもしれない。でも美轟音と共に放たれる激情のカタルシスの美しさが本当に素晴らしいのだ。
轟音系ポストブラックと言えばWolves In The Throne Room辺りのバンドが出てくる人が多いとは思うけど、今作はそれらのバンドと比べても明らかに洗練されまくっている。前作と大きく路線は変わらない筈なんだけど、2ndで爆発的に変化を感じさせるのは持ち前のメロディセンスを最大に生かし、ブラックメタルらしいブラストとトレモロの熾烈なる応酬が存在しながらも、同時に全ての音がポジティブに解き放たれている。第1曲「Dream House」の時点で彼らの進化は明らかで、胸を掻き毟りる青き旋律のトレモロリフからブラストビートが入りより熾烈に、より強く、より青き激情を放つ様になったサウンドが鼓膜と心に突き刺さる。フロントマンのジョージ君のボーカルこそポストブラック感溢れるがなり声ボーカルではあるけど、洗練された美旋律の応酬の中では見事に湿り気ある激情の体現者となり、またバンドサウンドと自然に融和しているのだ。バンドとしてのスケール感を格段に向上させ、楽曲のストーリー性や構築美を研ぎ澄まし、静謐なパートでの落とし方も更に上手くなり、楽曲全体でクリアな轟音系ポストロックを思わせるアプローチを導入しつつ、全体の音はあくまでもソリッドな攻めの音だから、より凄まじいカタルシスが生まれるのも事実。そして最後はここぞとばかりに轟音がピリオドの向こう側へと突き抜けていく瞬間は、もう熱くて熱くて最高だ。
また今作はメインになる長尺の楽曲4曲を機軸に構成され、その合間にインタールード的なインスト3曲が収録されているけど、そのインストの楽曲は完全にポストロックな曲であり、クリアな旋律を剥き出しにした第2曲「Irresistible」、Alcestのネージュ大先生の朗読とアンビエント・ドローンkらノイズ、そしてアコースティックへと形を変える第4曲「Please Remember」、アンビエントな揺らぎを見せる第6曲「Windows」も今作を構築する大切なピースとなっている。そして第3曲「Sunbather」だが、こちらはより激情系ハードコアの要素を強くし、のっけの轟音のフレーズから痛々しさ全開のメランコリックさにやられそうになるし、よりソリッドに、より熾烈になり、ダークな感覚を感じさせ、今作の中でも特にブラック色が強い楽曲であるにも関わらず、行き着く先は開放と救いであり、轟音系激情系ハードコアのそれでありながr、非常にドラマティックな楽曲構成の素晴らしさを知る。
今作でも一番の長尺である14分以上の大作「Vertigo」はメランコリックなアルペジオが非常に印象的でそんな静謐さからドラマティックな轟音系ポストロックの様に楽曲は展開し、シューゲイジングしまくるギターフレーズに酔い知れていたら、モダンヘビィネスな味付けのギターリフと研ぎ澄ましたギターソロ、そして怒涛のブラストとトレモロの絶頂具合!!14分の中で起承転結を明確にし、一つのストーリーを描くんだから堪らない。そして個人的に今作で一番大好きな最終曲「The Pecan Tree」は今作でも特に激情に振り切った名曲であり、冒頭からシューゲイジングするトレモロとブラストとジョージ君の痛々しくて自己陶酔感あるボーカルが三位一体で攻めまくり、そんな前半から後半からラストにかけては多幸感溢れるサウンドの高揚感の連続で、本当に聴き手を「heaven」へと誘ってしまうのだ。
多くの絶賛も批判も浴びた今作だけど、こうしてリリースから一年が経過し、来日公演を観た今になって改めて聴き直すと本当に洗練と多くの人々に訴える懐の大きさを感じる作品だし、何よりもバンドとして有無を言わせない説得力に満ちた作品だ。これまで多くのポストブラックメタルバンドが登場したが、彼等程に堂々とヒップスターブラックであり続けているバンドはいないし、だからこそ批判も浴びるかもしれないけど、でも僕はブラック云々以上に美轟音激情として今作は素晴らしい作品だと思うし、まだまだポストブラックの可能性は大きい事を見事に提示してくれたのだ。新たな地平を切り開くバンドとしてDeafheavenは素晴らしいし、そんな彼等を僕は支持する。