■Fountain Of Rich Aroma
■Fountain Of Rich Aroma/Fountain Of Rich Aroma

もう既に解散してしまったバンドではあるが、都内で活動していた3ピースポストハードコアバンドであるFountain Of Rich Aromaの07年リリースの単独音源。リリースは愛媛が誇る国宝レーベルであるImpulse recordsから。全7曲でパッケージは特製スリープという中々凝った物だ。
そのジャケットからもダークで妖しい空気が滲み出ているが、出している音は本当にそれである。サンディエゴ系統の音を放っているけど、もっとダークでノイジーな音だし、3ピースという最小限表現形態だから余計な装飾なんて何も無い。メロディアスさや感情移入の余地を全く許さない狂気の音像は恐怖感を覚えるし、何よりも変則的で混沌としている。
個人的にこのバンドの音を聴いて想起したのが北海道が生んだ伝説的カオティックハードコアバンドであるTHE CARNIVAL OF DARK SPLITだ。あのバンドが持っていた空気を見事に継承しているのだ。リフの作り方とかビートやグルーブの理論なんかはサンディエゴポストハードコアの礎の上にあると言えるけど、とにかくジャンクでノイジーだ。Shipping NewsやSLINTといったバンドが持っている冷徹さもあって、より混沌とした印象を受ける。第2曲「Claster」から炸裂するジャンクでノイジーなギター、ハイトーンのパラのったボーカルもあり、よりダークな狂気を感じるし、機械的なビートと、反復の理論と、ノイジーなジャンクさが組み合わさったギターリフのおぞましさはとにかく暗黒。しかもその暗黒さも耽美さや世界観があるダークさと違って、クスリで頭がおかしくなって人気の無い夜の道で男女問わずにレイプして刺し殺して内臓を食う食人強姦殺人鬼の狂気だ。変則性に溢れていながら、各楽器の音が暴走しまくるポストパンク性も溢れ、負の方向へと暴走する初期衝動に満ちた第3曲「Prince Buster」の蠢く邪悪さとサイコパスっぷりはもうヤバい。随所随所でアンビエント成分を生かしているのもまた良いし、密教感とノイジーさが手を組んだ第4曲の渦を描いて底に落ちていく感触もグッド。更に全てを分断する非人道的ビートの応酬とか人でないしも良い所だ。
とにかくダーク!ジャンク!妖しい!残忍!そんな要素しかないノイジーなポストハードコアだけど、冷徹なサウンドの奥底から滲み出る狂気は震えるし、ダークサイドのポストハードコアとしてはかなりグッドな作品だと思う。全7曲に渡って徹底的に暴発する殺意の塊は聴く物を凍りつかせるだろう。