■Tetola93
■Tetola93/Tetola93

2012年に解散した栃木県足利市を拠点に活動していた激情系ハードコアバンドであるTetola93。そのディスコグラフィーLPが2年の歳月を経て2014年にリリース!!リリースはMeatcube LabelとZegema Beach Recordsの共同リリース。Meatcube Labelのライアン氏は解散を知りながらも今作をリリースしたが、それ以上に一応はディスコグラフィーではあるけど、全曲再レコーディングされており、実質彼等のフルアルバムでもあるのだ。既にバンドは無いにしても、こうした形で音源が残るのは嬉しいし、ダウンロードコードにCDプレイヤー再生用のCD-Rにステッカーに封筒に封入された歌詞カードとかなりしっかりした形でパッケージされてるのもリスナーとしては嬉しい。
そして肝心のTetola93というバンドであるが、僕は解散後に彼等を知ったのでライブ等は観た事が無いし、今作で初めてしっかりと彼等の音に触れたのだけど。ダークでシリアスなメッセージを放つ激情系ハードコアとしてとんでもないエネルギーを持っているのだ。是非とも今作を購入したら歌詞カードをじっくりと読んで欲しいのだけど、現在の社会の闇を体現し、切り込む様な主張と思想に溢れた言葉達は本当にシリアス極まりないし、そんなテーマは間違いなく彼等の音にも表れている。基本的に彼等の楽曲は本当に瞬発力が凄まじく、曲も基本的にショートなんだけど、だからこそその一瞬にとんでもないエネルギーが込められている。何ともらしいタイトルであるSEの第1曲「nagasaki nightmare」の蝉の鳴き声とアコギのフレーズから、ロウに潰れまくったサウンドと、荒々しく歪んだサウンドで、一気に暴発を繰り出し、行き先不明のままメンバーのボーカルリレーと、不意に入り込むキメや複雑かつ荒々しく展開される第2曲「take away the life there is no right」でもう完全に押し潰される。彼等のサウンドは非常に瞬発力とフックがあるし、だからこそ一瞬一瞬のキメや転調によって起こるカタルシスは相当な物だ。そして暴走を繰り出しまくる決して音質が良いとは言えないサウンドでありながら、終末観の美しさもあり、国内激情だったらkillieにも近い物を感じたりもするけど、彼等は彼等でまた独自の激情を生み出していたのだ。混迷を繰り出しまくる音から、不意にアニソン的な歌メロをクリーントーンで歌い出し、しかし他のボーカルはブチ切れたテンションで叫び、混迷のまま終わる第3曲「改竄された習性」も破壊力が凄いし、彼等の楽曲はジェットコースターな激歪サウンドの凄みと、ハイテンションで繰り出される叫びの連続だけじゃなくて、時折入る妙にアニソン的な感覚を感じるクリーントーンのボーカルが大きく、潰れた音じゃ分かり難いのかもしれないけど、ファストに暴走するサウンドでありながら、曲のメロディはここ最近のBorisにも負けない位にアニソンライクなキャッチーさがあったりもする。そんな要素がTetola93の激情を独自の物にしているし、同時に確かな世界観を生み出す要因にもなっているんだと思う。
ドラマティックに破滅へと雪崩れ込むディストピア感が充満しまくった第5曲「腐敗の一死報国」からの、まさかまさかのアニメ「ぼくらの」の主題歌のカバーである第6曲「アンインストール」だ。このカバーは驚いたけど、しかし見事に音は激情系ハードコアになっていて、原曲知らないと間違いなく普通に彼等の楽曲だと勘違いすると思うけど、しっかりと随所随所で原曲のメロディと歌メロを生かし、まさかまさかの「アンインストール!アンインストール!」とサビの歌詞フレーズをシンガロングパートにしちまっているし、これは見事すぎる名カバーだし、そんな曲から理不尽すぎる暴力的な痛々しさしかない第7曲「英才教育」が全然自然に繋がっているから凄い。今作の中でも最も青くストレートな疾走感を感じさせ、クリーントーンの歌主体で進行する第9曲「焦熱の果て」は胸を締め付ける郷愁と熱さが最高過ぎるし、そこから一転してシリアスな痛みを言葉でも音でも放つ第11曲「業」、ファストなカオティックパートからビートダウンし、地獄の呻き声ボーカルと断罪のダウンテンポの音達が全てを憎み呪う第12曲「sinks in marsh」と終盤になると一気にダークな世界になり、そして最終曲「葬列」は今作で唯一の7分超えの長尺の楽曲で、壮絶にドラマティックな名曲であるけど、そこに救いは全く無いし、この曲の歌詞カードを読んで本当におぞましくなった。ここまで人の闇や社会の闇を体現した曲は無いだろ。
合間合間のSEも非常に効果的だし、基本的にはショートでファストでカオティックな楽曲ばかりが並ぶが、世界観は本当に見事過ぎる位に統率されているし、単純にカタルシスが凄いだけのバンドじゃないし、その音と叫びだけで、彼等が歌っている事は本当にシリアス極まりないのは分かるだろう。是非とも今作を購入したら歌詞カードと向き合いながら彼等の音に触れて欲しいと思う。何よりも、既にバンド自体は存在してはいないけど、栃木県足利市と言う特別大きい訳でもない地方の一つの街にこんなに凄いバンドが存在していたという事も忘れてはいけない。何よりも彼等の放つ音と言葉はこの2014年にとんでもない説得力を持っている。