■Red Ran Amber
■流転の幻日/Red Ran Amber

ここに存在するのは禍々しい凶音のみだ。元324のギターだった天野氏がドラムを叩いているベースレス3ピースカオティックグラインドコアであるRed Ran Amberの2014年リリースの5年振りの2ndは正にそんな作品だ。単なるグラインドコアでもなく、単なるカオティックでもない、圧倒的速さと美しさと熾烈さとダークさが渦巻く圧倒的な邪音の坩堝だ。
第1曲「硝子のシャワー」から驚かされる、轟音でありながら美しさを強く感じさせるギターフレーズから始まり、それがメタリックなリフを鳴らし、破裂音みたいな天野氏のドラムと共に確かな調和を生み出しながら、同時に破滅の予感を感じさせ、日本語での熾烈なるボーカルととんでもない速さのブラストビートが叩き出された瞬間に生まれる混沌。このバンドのグラインドコアは一般的なグラインドコアと全然違って、ベースレスの編成や熾烈なるブラストビートとかはあるけど、とにかくギターワークが異質すぎる。カオティックハードコア要素を感じるフレーズが非常に特徴的で、楽曲もショートではあるが非常に複雑だ。のっけからブラストビートとカオティックかつブルータルなギターリフが横断する第2曲「夢遊の宴」は非常にグラインドらしかったりもするけど、1分弱の中で目まぐるしく楽曲が展開され、単なるブラストビートでは無く、複雑なキメや店長を駆使しながらも、激烈なドラムを叩き出しまくる。第3曲「砂の悲鳴」なんてボーカルもギターもドラムも圧倒的テンションとボルテージで畳みかけまくっているし、絶妙なビートダウンからのドス黒いメロディアスさを確かに感じさせるギターフレーズの禍々しい美しさと、確かな激情を放つ第4曲「キラークイーン」、ブルータルグラインド絵巻である第5曲「カナリア」と、とにかく容赦なんて全く無いし、これぞ正に殺しに来ている音だ。ボーカルとギターとドラムだけで、おぞましい程にドス黒い音を放ち、瞬く間に血飛沫のシャワーが一面に広がる速さと混沌のカオティックグラインドに聴き手は確実に失禁&脱糞&嘔吐だ。
ダークな美しいアルペジオと熾烈なブラストビートと言う相反する音が闇の美しさを描き、その美しさに見入っていたら、メタリックなギターがいきなり顔を出し奈落への最強特急と化す第6曲「毒蛾」、合間に非常にハードコアライクなソロも盛り込みながらも、高速で刻まれるギターリフに惨殺な第7曲「何も見えずに」、今作で一番ストレートなグラインドコアを放ちながらも、リフの禍々しさと、ヘイトを吐き出すボーカルも、ブラストビートもブチ切れたテンションで腰を抜かす第8曲「真冬の夏」、のっけからクライマックスなギターリフから極悪なビートダウンのギロチンで首ちょんぱからのブルータルな疾走、そして再び極悪ビートダウンで死ぬ第9曲「destruction,me」、後半の破滅感溢れるギターフレーズが印象的な第10曲「遥かなる静寂」と、作品全体で本当に休まる暇なんて無い位の激烈なテンションは本当にどこから来るのだろうか。非常に複雑な楽曲ばかりだが、基本的にショートな楽曲ばかりだし、闇とカオスが濃厚過ぎる位だし、単なる速さと混沌ではなく、殺意の音を撒き散らしている。最終曲「忘却の空」も決して安易なドラマティックさに走ってはいないのに、激速サウンドから、冒頭同様に轟音の美しいギターが渦巻き、最後はあくまでも混沌とブラストビートと共に生命エネルギーを全て放ち、搾りカスになっても構わねえ!!とばかりの圧巻のエンディング。その瞬間に僕達はただ立ちすくむしか無くなる。
今年はこの手の音はZENANDS GOTSの一人勝ちだと個人的に思っていたけど、それは大間違いだったし、Red Ran Amberが負けず劣らず暗黒のカオティックグラインドの地獄をドロップした。とんでもなく速く、とんでもなくブルータルであり、とてつもない混沌は紛れも無い激音であり、グラインドの枠に嵌らない、暗黒激音の最強レベルの音が正に目の前にあった。凶暴すぎるサウンドでありながら破滅的美しさもあり、他のバンドには生み出せなかった混沌だ。グラインドフリークスは勿論、カオティック・激情好きもマストな一枚。