■deepslauter
■ELEVATION DEPTH/deepslauter
![]() | ELEVATION DEPTH (2014/11/05) DEEPSLAUTER 商品詳細を見る |
千葉県柏市が日本、いや世界に誇るハードコアバンドであるdeepslauter。キチガイとしか言えない本数のライブをこなしまくり、活動当初から知名度を上げまくり、今や日本のハードコアじゃ知らない人の方が少ない位の存在になったと思うけど、今作は2014年リリースの実に8年振りの3rdアルバムだ。TialaとShitとの3Wayスプリットや、kamomekamomeとFUCK YOU HEROESとの3wayスプリットの参加はあったし、そこに収録されている新曲は正に宇宙すら手に入れてしまいかねないハードコアが炸裂していたが、やっとリリースされた3rdは、更にロックに、更にキャッチーに、更にハードコアに、更に顔ティックに、そして更に楽しく。最高の爆裂パーティサウンドしかない全15曲24分の未知への招待状だ。
そもそもdeepslauterというバンドは、日本国内のハードコアの中でもかなり異端児だと僕は思っていたし、そのカラっと乾いた陽性のポップネスを混沌と狂騒でミックスしまくり、大半の曲が1分台というショートカットさの中に、膨大な情報量を埋め込み、正に柏市発宇宙行きなサウンドを展開していた。国内ハードコアよりも、海外のファストコアやカオティックハードコアんお影響を強く感じさせる音は、LOCUSTやThe Blood Brothersといった海外カオティックの異端児たちのそれと完全にシンクロしていたと思う。前作2ndやそれ以降のスプリットやオムニバスの楽曲はキャッチーでありながらも、脳天を吹き飛ばす奇天烈サウンドの連続による混沌であったけど、今作はそんな混沌はそのままに、よりロックでパンクでハードコアでキャッチーな作品になった。
先行公開されていた第1曲「RIP OFF」にて今作の凄さは分かるだろう。のっけからドラムの乱打で始まりながらも、ギターフレーズがこれまで以上にキャッチーになり、更にコーラスワークが格段に増え、しかし楽曲の展開はより奇天烈になり、しかしソリッドに高まっていく音は常に必殺であり続けている。この何とも言えないパーティ感はdeepslauterの大きな武器であったけど、それがこれまでの作品よりも進化し、混沌はそのままに、より間口が広く多くの人々を巻き込めるだけの物になっているのだ。第2曲「since then」もよりロッキンになったサウンドが展開され、リフの一つ一つがシンプルな格好良さを持っているのだけど、それを壊さない程度に分解し、ハイボルテージさだけで突き抜けまくっている。またビートの部分もより進化していると言えるし、彼等の持ち味である必殺のキメの数々はより研ぎ澄まされている。
しかし全編通して音のレンジの広さを感じさせながらも、爆裂っぷりは相変わらず過ぎる。彼らなりのメロコア調のアンセムであろう第3曲「Extraordinary」、スプリットに収録されている楽曲の流れを汲みながら、より宇宙へとぶっ飛ぶ激顔ティック脳天直撃サウンドである第5曲「Bombay」、変則ビートとうねるベースが印象的な第7曲「The Best Shower in My Life」、超光速ビートと共に天へと上り詰める第9曲「REACTANCE」、フリーキーなビートが引率する第12曲「FADE IN FUNK」、激情を最高にキャッチーに放つ第14曲「I'm here」とそれぞれの楽曲で多彩なアイデアを盛り込んでいたりもするけど、それらを全てdeepslauter印のサウンドに帰結させているし、よりオーソドックスなハードコアといった感触と、他に存在しないカオティックという両方の側面を両立させている。何よりも格段に増えまくったコーラスワークが激熱だし、ハードコアの楽しさを全身全霊で体現しているのは最高だ。最終曲「フィラデルフィア」は空間的なギターがトランスへと導きながら、最後の最後は狂騒のままに宇宙から柏市へと急降下する感じだし、こういった振れ幅を常にハイテンションで発揮しているからこそのdeepslauterなんだと思う。
実に8年振りのアルバムになった訳だけど、deepslauterだけが持つ事を許された狂騒は相変わらず健在であるし、より多くの人々を巻き込むパーティ感と楽しさがより際立った作品になった。30分未満で圧倒的情報量を休み無く繰り出し、最高にハッピーな興奮材料としての音は非常に危険でありながらも、最高にピースフルでもある。だからこそdeepslauterは無敵のハードコアヒーローであり続けているのだ。