■mono
■The Last Dawn/mono
![]() | The Last Dawn (2014/11/05) MONO 商品詳細を見る |
日本が世界に誇る轟音ポストロック4人組であるmonoの2年振りの2014年リリースの最新作は、「明」と「暗」をテーマにした2枚同時リリースとなり、2枚で2つの世界を描き、それぞれのベクトルでmonoは極限世界を描いているのだけど、今作は「明」をテーマにして作品となっており、ここ最近のオーケストラとのコラボでは無く、再び4人の音に回帰した作品にはなっているけど、闇から光を描く今作は恐らく多くの人がイメージするmonoその物な音が存在し、シリアスでありながらも、闇の世界を切り裂く光を轟音で描き、全6曲に渡って新たなる夜明けの物語を描く。
今回の2枚同時リリースとなる最新作は、monoの原点を見直しながらも、そこに回帰するのでは無く、それをより進化した最新のmonoのサウンドで描くといった物になっているし、今作では過去のmonoの作品も、ここ最近のmonoの作品の感触や空気感を確かに受け継ぎながらも、それをネクストレベルに更新する事に成功している。「明」をテーマにしながらも、monoが安易な光を描く訳が無いし、monoが持つシリアスな緊張感を充満させながらストーリーを描くソングライティングの世界は今作で更に研ぎ澄まされていると言える。そして作品全体で紡がれる物語は、最早オーケストラ抜きでも圧巻のスケールなのだ!!
もうこれ以上に無くmonoらしいと言える第1曲「The Land Between Tides & Glory」から今作は幕開けなのだが、序盤の静謐なパートは「明」をテーマにした今作の中でも物悲しさに溢れた2本のギターによって紡がれる。チェロの重々しい音色とアルペジオとトレモロによる三重奏に、徐々にビートが入り込み、静謐さから次第に躍動の音色を見せ、この悲しみに満ちた世界を少しずつ崩壊させんとするアンサンブルは漆黒のキャンパスを徐々に白が侵食して染めていく様な感覚を覚えるし、深みと壮絶さに満ち溢れたトレモロとmonoお得意のマーチングの様なビートが物語を加速させまくり、次第に世界は白銀の轟音で塗り潰されていく。そして轟音パートの後にピアノとヴァイオリンの織り成すエンドロールは、悲しき世界へのある種のレクイエムであり、そして新たな始まりの宣告でもある。非常にmonoらしい楽曲でありながらも、これまで以上に研ぎ澄まされた世界観は非常に感動的。
そして第2曲からはmonoによる光の物語が続く。第2曲「Kanata」はドラマ「かなたの子」に提供した楽曲であり、まるでAnathemaの様なピアノのフレーズが楽曲を次第に色彩で染めていき、闇の底から光へと手を伸ばす。叙情性溢れる音色、壮絶な轟音とはまた違う、トレモロが時に叫びを上げながらも、ピアノの美しき音色が奏でる心を豊かにしていく一編の壮大な叙情詩だ。約6分半程とmonoにしては短めの尺でありながらも、美しいアルペジオから世界を祝福する轟音のシャワーへと雪崩込み、全てを解き放つ第3曲「Cyclone」、monoが持つ映画的世界観をより明確に進化させ、エヴァーグリーンな空気と共に、湖畔で静かに夜明けを見つめている様な情景がスっと思い浮かんでしまい、ピアノとヴァイオリンとギターが交錯し織り成す音色の美しさに惚れ惚れしてしまう第4曲「Elysian Castles」も素晴らしいけど、第5曲「Where We Begin」のmono史上最もポジティブなメロディを持ち、ラスト2分の轟音パートはまるで賛美歌の様でもあり、明確な強度で終わりに対して絶対のNOを叩きつけている様なカタルシスに溢れ、肉体と精神が別次元へと解放される感覚が最高にグレイトだし、世界の全てを肯定する様な光のクライマックスは本当にmonoという神に選ばれし4人の奏者による闇に飲まれた人間共に対する救済だ。エンディングの最終曲「The Last Dawn」は本当に映画のエンドロールの様な感覚で紡がれ、同時に、特にクリーンでありながらも確かな歪みや鉄の感触を感じるギターの音色が印象に残る。そして最後はまた新たな始まりをたおやかに描き、今作という光の物語を総括する。
「暗」をテーマにした「Rays Of Darkness」とは完全に真逆のベクトルの作品であるし、ここ最近のmonoが持つ世界観をより明確に具現化した作品だと言える。monoが持つ映画的ソングライティングセンスの凄みと、アンサンブルの壮大さ、本当に轟音系という音楽が世に溢れまくっている昨今だけど、monoは常に別格の存在である続けているし、今作に溢れる美しき音色を数々は僕たちの穢れた魂を浄化してくれる。そして今作を聴き終えた後に僕は思った。monoってやっぱ凄いと。
■Rays of Darkness/mono
![]() | Rays of Darkness (2014/11/05) MONO 商品詳細を見る |
今や日本が世界に誇るバンドだと思うし、日本のバンドの中でも特に世界で評価されているであろう轟音系インストバンドであるmonoの2年振りの2014年リリースの最新作はまさかの2枚同時リリースだ。ここ最近の作品はオーケストラとのコラボレーションによる作風であったし、それもとんでもなく絶賛されたけど、今回の新作は再び4人でのバンドサウンドに回帰し、そして「明」と「暗」をテーマにmonoが描く情景の極限世界をそれぞれ描いている。今作はタイトル通り「暗」をテーマにして作品で、mono史上最もダークであり、漆黒の轟音渦巻く全4曲となっている。
ここ最近のmonoは壮大なスケールでシリアスでありながらも闇に差し込む光を映画的な世界観で描き、重さこそあれど、その先に確かな光を生み出していたし、そこには至福の音色があった。でも今作では救いなんて全く無い。第1曲以外は比較的尺はこれまでのmonoに比べたら短めの曲が収録されてはいるけど、そこに救いは全く無い。盤が進む程に黒で黒を塗り潰す様な、精神的な痛みを音で体現する作品になっている。初期のmonoは確かにダークなシリアスさもかなりあったし、こうした路線の作風は決して予想外って訳では無いけど、でも初期の作品と比べても明らかにダークサイドに振り切っている作風になっているし、それを現在のmonoの表現力で描いているのだから、過去の作品と比べても明らかに説得力とスケールが違う。
静謐なアルペジオに引率されて始まる第1曲「Recoil, Ignite」から先ず空気がこれまでの作品と格段に違う。ミドルテンポのビートにすら重みがあるし、アルペジオとトレモロリフの2本のギターが織り成す音色は、鋭利な刃の様に牙を剥いているし、徐々に熱量とスケールを高めていく展開はmonoのお家芸とも言える物であるけど、よりダイナミックなカタルシスと重みを音から感じるし、轟音による破壊力はこれまでの楽曲の中でも屈指の出来になっているだろう。特に後半からの轟音スケープが渦巻くサウンドの寒々しさは凄まじく、ディストーションギターが悲鳴を上げ、ビートが叫び狂い、ノイズにこの世の悲哀の全てを詰め込み、聴き手の心を握り潰していく。終盤はまるでこの世を飲み込む洪水の様な悲劇的な結末を体現する轟音ノイズの嵐だし、そのカタルシスには救いは全く無い。monoのこれまでの強靭なる轟音組曲の数々すら無二還してしまうであろう名曲だし、ただ沈んでいくだけだ。
第2曲「Surrender」では幽玄のサウンドスケープが織り成す美しい音色に惚れ惚れしてしまうけど、推進力をかなり放棄しているグルーブの重みと、終わり無く降り注ぐトレモロとゲストであるJacob Valenzuelaのトランペットの調べが溶け合い、精神世界の螺旋階段を終わりなく上り続けているのか、ただ下り続けているのか、それすらも分からなくなってしまいそうな迷宮っぷり。轟音カタルシスこそ無いけど、個人的にThe Kilimanjaro Darkjazz Ensembleが描くダークジャズな世界観と同じ物を感じた。第3曲「The Hands That Holds The Truth」に至っては最早ポストブラックメタルの領域に達しているサウンドだし、mono特有のドラマティックな表現力を存分に生かした前半のクリーントーンのギターの調べの前振りからラスト2分半のポストブラック化したサウンドに乗るのは、あのEnvyの深川哲也氏のボーカルだ、これまでになくドラムの音も荒れ狂い、轟音ギターもmono史上最も攻撃的に狂い記し、深川氏のボーカルと共にダークなエモーションを放ち、漆黒の業火として全てを焼き尽くす。そして最終曲「The Last Rays」は約6分半に及ぶ暗黒ドローンであり、ノイズのみで描かれる荒涼とした情景は完全に無を描き、これまでのmonoのイメージを完全に裏切る美しさすら放棄したノイズの洪水。そこには何の救いも無いし、心を真っ暗に塗り潰されたまま終わる。
全4曲に渡り、それぞれが全く違うベクトルの楽曲でありながらも、確かな繋がりを感じるし、作品の中で明確なストーリーを生み出すのは正にmonoとも言うべき手腕ではあるけど、今作はまるで残酷過ぎる大量虐殺映像のBGMなんじゃねえかって救いの無さだし、今作から聴き手はまたそれぞれストーリーを想起するんだと思うけど、でも今作の音に光を感じる人は決していないだろう。monoというバンドが持つシリアスさを究極レベルまで高めた末に描く轟音による奈落、その世界は酷く残酷だけど、それでも美しい。