■SEI WITH MASTER OF RAM

■a sheep/SEI WITH MASTER OF RAM


a sheepa sheep
(2013/04/03)
SEI WITH MASTER OF RAM

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 かつてマシリトというバンドを率いていた印藤勢氏がマシリト活動休止後に結成したベースレスツインギター3ピースがこのSEI WITH~であり、今作は2013年リリースの1stアルバム。僕自身はマシリトはちゃんと聴いた事が無くて、マシリトでは歌謡フォークとヨーロピアンメタルの融合と言える音を鳴らしていたらしい。このSEI WITH~もそんな音楽性ではあるのだけど、もっと純粋な意味でのオルタナティブロックを僕は感じたし、フォークとヘビィロックの融合という言葉じゃ片付けられない作品だし、もっとロマンと沼みたいな深みと普遍性が今作にはある。



 そもそもオルタナティブとはなんぞやと言う問いに対して最早明確に回答をする事が出来る人って実は殆どいないと思うし、「概念」としての言葉であるから僕自身は具体的にこうだって言えない。寧ろ現在のシーンでは手垢に塗れて使い古されてしまった言葉であるし、オルタナって意味や真理を真面目に考える事は無意味だと思う。結局明確で全ての人を納得させる答えなんて無いし。でもSEi WITH~を聴くとこの音は間違いなくオルタナティブロックの一つの理想形であり、確かな回答だと思う。単に歌謡曲とフォークとメタルを融合させた音だからでは無い。食い合わせが一見悪そうな音が実は滅茶苦茶食い合わせが良く聴こえているし、今作を聴いて思うのは最早普遍性に満ちまくった音だし、もっと根本的なロックの流れにあると思う。異質だと思わせて実はこれ以上に無いスタンダード、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの中間地点にありながら、その両方にリーチする音。楽曲の完成度の高さと中毒性を生かした曲ばかりであるが、そこに縛りは何も無い。これこそが普遍性と異様さの結晶なんだと思う。
 第1曲「INDIAN FROM THE SKY」は正にSEI WITH~を体現するキラーチューンだ。四畳半フォークなアコギのフレーズと印藤氏の居場所の無い歌の哀愁。しかしアコギの音がヘビィなディストーションとなり、壮大で四畳半で大風呂敷おっ広げたみたいなやたらに壮大なリフからが本当の幕開けだ。ゴリゴリに高速の刻みのリフが渦巻き、ドラムも手数をガンガン放つタイプでは無いけど、ビートの骨格がこれ以上に無い位に強靭。こんなヘビィな音でありながら非常にメロいし、印藤氏はやたらにサイケデリックさを感じさせながらも、往年のHR/HM感のあるボーカルもキメるし、ソロはガッツり弾き倒すし、サイケデリックな音の妖しさもある。歌詞のフレーズにもある「正体不明の預言者」なんてフレーズが凄くしっくりくるし、ラストはゴリゴリにリフでキメる。この曲に関しては言葉にするのが本気で野暮だと思う位にキラーチューンであるし、捻れに捻じれた末に逆に真っ当になってしまったみたいな痛快さすらある。
 しかし今作の楽曲は非常に多様だと思う。第2曲「PONY」はハードロックらしいフレーズもガッツり盛り込みつつも、歌物としての色合いも強いし、もう何か普通にロックで良いじゃんって言い切ってしまいたい曲。一方で第3曲「TRACES REMAIN」はやたら壮大なメタル感溢れるスケールとフレーズを駆使しているのに、曲の持つクサさやメロさはフォークソングのそれだし、ラストの早弾きからのハイトーンシャウトのそれは見事なまでに古き良きメタル。バッキングとリードのツインギターの極意に満ち、攻撃性全開で攻める第4曲「浮墨ノ戦記」、ストーナー感を出しまくり、SEI WITh~流のサイケデリックロックでもある第5曲「CRYSTAL DOME PARADISE」もそうだけど、どの楽曲も多彩なアプローチをしながらも共通して言えるのはどの楽曲でも印藤氏の完全に好き嫌い別れるであろうボーカルなのに、ロックとメタルの両方の真髄を継承したボーカルを生かしているし、歌があって曲が生きる、曲があって歌が生きるという相互作用だ。
 そして特筆すべきは第6曲「絵空詩」だろう。今作で一番ストレートな楽曲でありながら、もっとも普遍性に溢れ、そこにあるのは余計な脳書きを無効にする歌とメロディの純粋な良さと凄みであり、満ち溢れる悲哀は涙腺を殴りつけてくるし、ラストの泣きまくったツインリードのソロなんかその涙無しでは聴けない歌同様に聴く人の心に「泣くが良い、声を上げて泣くが良い。」と伊藤政則ばりに訴えてくるだろう。第7曲「エンドロールを待たずに」のアンプラグドさと最終曲「慕情と墓標」のアコギと歌のみの消え入りそうなエンディングで今作は終わるけど。全8曲捨て曲無し、斬新であり、王道であり、異質であり、日本語ロックの一つの理想形だ。



 本質的な意味でのミクスチャーであると思う人もいれば、懐古的だと思われる音を出していると思わせておいて、それを蹴散らす音だと思う人もいるだろう。今作は人によって本当に多くの解釈が出来るし、その解釈に間違いは無い。それこそがもしかしたら本質的なオルタナティブなんだろうし、全てを受け入れる強さもある。しかしその根源にあるのは印藤勢という人間が持つロックに対する愛と憎悪なのかもしれないと僕は勝手に解釈していたりする。しかしこれだけは間違いないと思うのはSEI WITH MASTER OF RAMは自らロックの業を背負い、そして人々の音楽への愛と憎悪を背負ってもいる。だからこそどんな音を鳴らしても自らの音としての説得力があるし、だからこそ王道と邪道の両方をぶった切れるんだろう。日本語ロックの到達点であるし、理想形だ。



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メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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