■none but air [at the vanishing point]
■none but air [at the vanishing point]/none but air [at the vanishing point]
![none but air[at the vanishing point]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/31hNoqR78wL._SS200_.jpg)
2010年結成の京都の若手激情系ハードコアバンドnone but air [at the vanishing point]の1stEP。Tokyo Jupiter招聘の外タレ公演のサポートも務めているし名前を知ってる人も地味に多いと思うが、今作が初の正式単独音源。リリースは少し意外ではあったけど静岡のfurther platonicからで500枚プレス。
僕は今作で初めて彼等の音に触れたけど、元々はインストバンドだったらしく、そこから現在の激情系ハードコアのスタイルになったらしい。そしてサウンドの最大の特徴はプログラミングを駆使しまくった壮大で宇宙的なサウンドだろう。バンドサウンドとしてはポストロック要素も盛り込みつつも、基本的には激の要素を全開にしたサウンドであり、そこにストリングス等のプログラミングを加える事によってオーケストラの様なサウンドスケープを作り上げている。初期のheaven in her armsとライブでのバンド編成でのworld’s end girlfriendとドイツのエモヴァイオレンスを自然な形で配合させたらこうなったという感じだろうか?でも個人的に凄い好感が持てるのはこの手のバンドはクリーントーンサウンドに走りがちではあるし、それでスケールを生み出すという手法は最早鉄板だし、彼等もそんな手法を用いているけど、でももっと根底としては激の部分がかなり色濃く出ているし、そこにプログラミングの色付けによって激の中でスケールを膨張させているって事だ。
引きちぎる様なギターストロークと時計の針の音のプログラミングが見事な始まりを告げる第1曲「終幕」から先ず素晴らしい。約7分間の中で楽曲は組曲の様に展開し、激情系のエチケットとも言えるトレモロフレーズやクリーンなアルペジオといった要素もガンガン出てくるけど、すり減らしまくったボーカルとん半ば叫ぶ様なポエトリーはかなり印象深いし、好き嫌いは分かれそうだけど、悲壮感は全開。確かにHIHAといったバンドの影は見えるサウンドかもしれないけど、このヴァイオレンスな生々しさは堪らないし、唐突にブチ込まれるヴァイオレンスなパートの中にはドイツのエモヴァイオレンスの影響も感じたり、第2曲「憧憬 I」はそんなエモヴァイオレンス感がより強く出たりもしているけど、それでもスケールは全然失われていないし、第3曲「回想」は前半のエモヴァイオレンス成分とイタリア激情成分を和製激情として消化したヘイトの暴発から後半のクリーントーンからのスケールアップもベタだけで中々の物。ピアノフレーズと激なサウンドが疾走する第4曲「憧憬 II」も素直に格好良い。このバンドはストリングスやピアノといったプログラミングがかなり大きな肝になっているし、それがバンドサウンドに完全に溶け合っているのは本当に大きいし、より感情に訴えるサウンドを生み出している。
特に終盤の2曲は屈指の名曲で、第5曲「閉鎖」は悲痛な叫びと化したポエトリーが完全に極まっているし、プログラミングのピアノとストリングスもよりスケールアップ。何度も何度も「答えてよ!答えてよ!」と訴える叫びと叙情性溢れるギターフレーズが本当に涙腺崩壊サウンドとなっているし、今作でも一番のダークな痛さに満ちている。そして最終曲「六月、雨と相反する」ではストリングスも完全に激情仕様。加速しまくるバンドサウンドと共に何度も何度も爆発を起こし、ドラムンベース的なビートを叩き出すドラムが疾走し、轟音と美旋律と激が宇宙へと飛び立って行くロケットとなり、闇から微かな希望へと飛び立つ高揚感に溢れ、そして最後の最後でまるで映画のエンドロールの様な美しい幕引き。文句の付けようなど全く無い。
「envyやheaven in her armsの影響系だろ?などと是非舐めてかかって欲しい。」なんて色々と喧嘩売りまくったリリースインフォもあるけど、でも本気でそう思う。「またこの手の芸風でしょ?飽きたわ(笑)」なんて思っている人程恐らくぶっ飛ばされるだろうし、これまでの歴史を踏まえながら彼等はその先を間違いなく鳴らしている。間違いなく時代は塗り変わっていくし、その中で彼等は未来でも決して失わない輝きを持っている。超速で目まぐるしく変わっていく情景の数々と共に、その感情と景色の一番純粋なエッセンスを彼等は最も正しいやり方で描いている。個人的には東京のlang、青森のkallaqri、そしてこの京都のnone but air [at the vanishing point]が激情の新時代を作り出していくと信じているし、「今のバンドはつまんね(笑)」みたいにほざいている老害共をブチ殺してくれると確信している。