■The Tidal Sleep
■Vorstellungskraft/The Tidal Sleep

今こそジャーマン激情は熱い!!昔から強靭凶悪なハードコアバンドばかり輩出しているハードコア先進国ドイツだけど、どの国や地域も時代や音楽性が循環しているのと同様にドイツも新たな循環が起きている。ジャーマン激情のベテランであり最高峰であるTrainwreckが2014年にリリースした最新作もこれまでのサウンドを良い意味で裏切りジャーマン激情の未来その物と言える大傑作をドロップしたし、Fjortといった有望な若手も登場した。そんな中で2014年にリリースされたThe Tidal Sleepの2ndである今作はジャーマン激情の新たなる未来の重要なピースとも言える傑作だ。
現在のTrainwreckやFjortといったバンドを例に挙げると今のジャーマン激情は「洗練」というのが大きなキーワードになると思う。これまでの歴史の中で欧州でも極悪なサウンドのバンドばかりドイツから生まれていた。しかしそんな過去の流れとは違う新たな流れが生まれているのも事実だし、Touche AmoreといったUS激情の新たな息吹が登場して素晴らしい音を鳴らしているのと同じで、今作は間違いの無い完成度を誇り、洗練されながらもジャーマン激情の歴史を繋ぐ作品だと思う。激烈なサウンドを叩きつけながらも、それは決して単に凶悪な激音では無くて、非常にメロディアスで作り込まれたサウンドだし、そんな繊細さを持ちつつも力強く叩き付けてくるハードコアサウンドは本当に頼もしい。オープニングを飾る第1曲「Old Youth」が正にそんな楽曲で、いきなりフルスロットルでバーストしまくったかと思えば、メランコリックなツインギターの絡みを聴かせてくるし、爆発するパートだけじゃなく、引きのパートでは絶妙な渋みもあり。第2曲「Thrive And Wither」は疾走感溢れる音を展開しているけど、そんな曲でも持ち前のメロディアスさが光る。第3曲「Angst」は最早激情系というよりも歌物ポストロックと言える曲になっているし、クリーントーンになるとより彼等のセンスが光る。
今作を聴いているとハードコアらしさも勿論あるし、クリーンでメロディアスでもあるし、激烈さと曲のクオリティの高さと美麗のサウンドのバランスの作り方に脱帽する。だからこそある意味で凄く大衆的で分かりやすいハードコアなのかもしれない。でもそれはセルアウトしたサウンドだってこ事じゃ無くて、ジャーマン激情らしい熾烈さを活かしながら新たな普遍性を手にしようとしているって事だと思う。完全にクリーントーンなインストポストロックである第6曲「If You Build It…」から爆走ファスト&ショートな第7曲「…They Will Come」が何の違和感も無く繋がってしまうし、特に終盤の楽曲はその激と美の触れ合いが完璧な形になっているし、それでも彼等のハードコアは全然揺るがない。
非常にハイクオリティな作品だし、同時に洗練された現在進行形のジャーマン激情の素晴らしさを見事に体現した名盤だろう。激音でありながらメランコリックな泣きを繰り出しまくり、時にはクリーントーンの音のみで勝負し、その結果生まれたニュースタンダードとも言える作品だろう。現在のTrainwreckのサウンドに痺れた人は勿論だけど、多くの人を虜にするバーストする美しきメロディと熱情は多くの人を惹きつけるだろう逸品。