■REDSHEER

■ETERNITY/REDSHEER





 「新たなる激音」これ以外に今作を体現する言葉は正直無いとすら思う。
 ex.ATOMIC FIREBALL、ex.SCALENE、ex.Bucket-Tのメンバーによって2013年に結成され、2014年のライブ活動開始から精力的かつ圧倒的テンションのライブによって多くの注目を集め、過去のキャリアを知らない世代からも大きな支持を集めた激音3ピースハードコアであるREDSHEER。
そんな彼等の1stアルバムがTILL YOUR DEATHからドロップされた。メンバーそれぞれのキャリアの流れにある音ではあるけど、それの焼き直しでは無い、40代の漢三人によるオリジナリティと圧倒的テンションの「愛と憎悪」を提示したサウンドは複雑怪奇でありながらメロディアスでエモーショナルであり、ダークでおぞましいのに感動的で泣けるオルタナティブロックの最高峰とも言える大傑作となった。
またジャケットアートワークはMario(Khmer)、クレジットデザインは栁澤友己(Starlingraid)がそれぞれ担当。



 REDSHEERの音楽性はカオティックハードコアや激情系ハードコアにカテゴライズされるであろう音ではあるかもしれない。
でもそれらの言葉だけじゃとてもじゃないけどREDSHEERの音楽を語る事は不可能だと思う。90年代ポストハードコアからデスメタルまでメンバーそれぞれのルーツは多岐に渡り、それらの影響を受けながら既存の音楽をトレースする事に中指を立て、自らのルーツとキャリアを大切にしながらも、それらを嘲笑うように既存の音楽に無いREDSHEER is REDSHEERのみを追求したサウンドは激烈で膨大なエネルギーを持ち、変拍子とリズムチェンジも多い複雑さが生み出す構成美もあり、人間臭い生々しさもあり、聴き手の肉体をゴリゴリ破壊する攻撃性と、聴き手の内面を破壊するダークネスとサッドネスを兼ね備えている。
 だけどNOISE ROOM STUDIOとつばめスタジオという二つのスタジオでの録音によって、ライブでの激しさと全てを空っぽにするテンションだけじゃ無く、同時にメロディの良さも最大限に活かし、激音の中に一種の聴き易さも付け加えられた音は既存のハードコアに対しての宣戦布告でもあり、同時にこの音を多くの人に届けたいというバンド側からの一つの愛なのかもしれない。
REDSHEERというバンド自体、TOOL、割礼、Hoover、Botch、Slint、THE CREATOR OFといったバンドが持つオリジナリティと残酷さと優しさと痛烈さを持っていると個人的に思うけど、こうして他のバンドの名前を上げる事すら実際野暮でしかないし、オルタナティブロックの最新で最凶の理想形でしか無い。何よりも全ての音と叫びが哭き喚く純粋過ぎる爆音の渦なのだ。

 先ずはアルバムのイントロを飾る第1曲「Eternity」に驚かされた。てっきり頭から痛烈なる激音で殺しに来ると思ったら全然違ったからだ。
この曲は日本が誇るノイズ夫妻ユニットASTROとのコラボ曲であるが、美麗でありながら不協和を感じる美とダークネスのアルペジオの反復にASTROが強烈でありながらも、どこか暖かさを感じる轟音の電子音を加え、熱情と狂気と慈愛の三つが静かに結ぶ付き分解していく様な、静かな夜の道をゆっくり歩く様なイントロに仕上がった。
この1曲のイントロだけでもただならぬ完成度であるけど、これはあくまでもイントロに過ぎない。
 第2曲「Silence Will Burn」からはいよいよREDSHEERの本領発揮!!最初から完全に殺す気しかないギターリフの断罪と爆音でタメを活かしまくったトライヴァルなドラムと這い寄るベースの不気味すぎるグルーブ。そしてノイジーに過去されたボーカルは痛々しく殺気だけを放ちまくり、繰り返される激音のリフはドス黒さしかない。
でも激音で一辺倒でREDSHEERが終わる訳が無い。中盤ではSlintばりに冷徹さの中に熱情を感じるクリーントーンのギターのみが鳴り響き、そしてその静寂を曲名通り燃やし尽くす激音へと変貌し、最後の最後はメロディアスでありながらも煉獄と化したサウンドによって地獄を見せられる事になってしまうだろう。この曲は正にREDSHEERを体現する曲だと僕は個人的に思うし、今作でも一番大好きな曲だ。
でもやっぱりただ激烈なだけじゃ無い。第3曲「Blindness」は激音の中の歌心や優しさを感じる名曲になっているし、エモいだけじゃない、ただ混沌としているだけじゃない。熱い抱擁をされている様な感覚すら覚えるし、これはもうオルタナティブラブソングなんじゃないだろうか。
Slintばりの不気味なアルペジオから始まる第4曲「In A Coma」は最早ポストメタル的複雑極まりない構成で激と静の対比を何度も繰り返し、積み上げては壊しを際限無く楽曲の中で展開され、本気で頭がおかしくなりそうだし、最後の最後は出口の無い闇へと引きずり込まれる気分になる。
だからこそ第5曲「Rule The Gray World」で展開されるミドルテンポのメロウな激音のバラッドは今作の前半の一つの気付きや救いに聞こえたりもした。

 アルバム前半では全然ベクトルの違う5曲が激情とメロウとダークネスの混沌の中の愛を音にした様な曲が並んだけど、後半の5曲はより地獄へと叩き落とされる。
この曲も個人的にREDSHEERを代表する曲だと思っている第6曲「The End, Rise Above」のリフとアルペジオの他にこんなギターワーク思いつく人いないよってなってしまうギターワーク。テンションの高さは常に振り切っているのに常に泣けるメロディしか聞こえてこないし、この曲は聴いてて本当に何度も涙がこみ上げそうになるし、でもそれは感動的だからじゃなくて、このメロディアスさはその後に待ち構える地獄を予言しているし、絶望的なまでに救いが無いからだ。
その予言通りに第7曲「Curse from Sad Spirit」は本気で地獄を見る。REDSHEERにしか無いコード感によるアルペジオから始まり、2分以上にも及ぶ静謐さの不気味さから切り裂く断末魔のギターリフによって僕たちが生きる世界は何処までも悲しい残酷な悪夢だと知らされる。
ポストメタル的複雑に完成された楽曲展開でありながら激のみを突き通し、その激が複雑に絡み合う事による鳥獣戯画の様な世界をハードコアから提示され、だけど常にメロウに加速し、それはまるで破滅への急降下だ。
そして曲の終盤のスラッジなビートダウンから繋がる形で第8曲「Gloom」へと突入。地獄のワンリフ展開のダークアンビエントなこの曲によって悪夢の最果てへと連れて行かれ、うねる音と叫びが終わりなく木霊し、目の前で幾多の生命が無慈悲なるサイコパスによって刈り取られる情景すら浮かび、恐怖すら超えたアパシーな感覚に陥る。

 そんな地獄の果てに待つのは第9曲「Yoru No Sotogawa」であり、これがREDSHEER流のメタリックハードコアのアンセムとも言えるキラーチューンだ。
ゴリゴリの刻みのリフとタイトなビートは開放的であり、今作唯一の日本語詞で叫ぶのは乾きを知らぬ愛と憎悪と欲望であり、壮絶な世界から個人的感情の世界へとフッと連れ戻され、これまで目にしてきた惨劇の数々は人間のエゴとサイコさが生み出す物である事に気づかされたし、実質この曲で今作は締めくくられると言っても良いし、それは終わりのない人間の欲望はこれからも続くという事だ。
最後の最後のエクストラ的な最終曲「Leaving Myself in Darkness」は再びポストロッキンなアルペジオとビートによって脈々と続く秩序を描き、だけどスラッジなリフとビートと多重録音されたボーカルによって生まれるまた別の煉獄であり、結局救いの無き世界で僕たちはずっと泣き叫びながら行き続けなければいけないという残酷だけど確かな宣告であり、そんな曲で終わるからこそ、このアルバムを聴き終わった後に残酷な余韻に取り残されるだろう。



 全10曲50分は本当にあっという間に終わるし、激音でありながら尖りだけじゃ無く独特の丸みも音に感じるし、何よりも全10曲のベクトルは全然違うのに一つの世界観で統一されているし、それは正に「愛と憎悪」だ。
そんな作品を単純にカオティックとか激情と言う言葉で終わらせるのは絶対に違う。新たなスタンダードを提示したオルタナティブロックであると同時に、唯一無二の激音で地獄を生み出す作品でもあるのだ。
だからこそ今作は燃え上がる感情の叫びと共に、全ての音が雄叫びを上げて泣き散らす、確実に聴く者の肉体と精神を破壊する殺傷力と毒素の劇薬であり激音だ
 この世で最も純粋な愛と憎悪を音として表現した大傑作であり、確実に心の一番奥底の脆く純粋な感情に訴える極限世界!!聴いて狂ってしまえば良い!!粉々に砕かれた感情の破片が舞い散るその瞬間は本当に悲しくも美しいのだ。
紛れも無い2015年最重要作品であり、歴史的名盤!!!!!



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Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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