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■それでも世界が続くなら

■消える世界と十日間/それでも世界が続くなら

消える世界と十日間
消える世界と十日間
posted with amazlet at 18.02.20
それでも世界が続くなら
ベルウッドレコード (2017-07-26)
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それでも世界が続くならというバンドほど不器用なまでに普通なら見たくない事を暴こうとするバンドはいないと思う。

結成から現在に至るまで人の痛みとリアルを愚直なまでに歌い続けて来たそれせかの2017年にリリースされた7thアルバムは「一人の人間の人生を、よりリアルに音楽に閉じ込める」ことをコンセプトに、篠塚が約十日間に渡り楽曲を作り上げたドキュメント作品となっている。



これまでの作品同様にほぼ一発撮りでライヴでの空気感をそのまま音源にした様なサウンドプロダクトに仕上がっているが、今作ではそれがより作品のコンセプトにリアリティを与えている。
並べられた楽曲こそ様々な表情を見せるが、どの楽曲もこれまで以上に「暴く」という事により大きな比重が置かれている。

楽曲そのものはポップであり、歌物としてのクオリティが凄まじく高いにも関わらず、それをズタズタに切り裂くノイズギターとざらついた音と言葉の数々。作品が進んでいく程により突きつけられる感覚に襲われる。
鋭角なノイジーさがバーストする新たなキラーチューンである第1曲「人間の屑」、繊細なアンサンブルの静けさからドラマティックに轟音がバーストする第7曲「消える世界のイヴ」の二曲からは特に痛みを乗り越えた先を生きることを新たなる犯行声明として歌う楽曲も魅力的だが、僕個人は第4曲「正常」と第9曲「水の泡」の2曲が特に今作の核となる楽曲だと思う。



風俗嬢も 警察も 詐欺師も 先生も
言いたい事は同じ 金を稼げ

正常/それでも世界が続くなら




残酷なまでに綺麗事抜きの真実を死刑宣告の様に歌う「正常」はそれせかの持つバンドとしての本質が特に表れた楽曲だろう。

「水の泡」も同様だが、当たり前に横たわる見たくもない聞きたくもない真実を突きつけ暴くのがロックである事からそれせかは逃げていない。
耳触りの良い言葉を選ぶのなんて本当に簡単で、世の中なんて綺麗な言葉だけを欲しがる人間ばかりだ。そんな人間相手に教祖様になればもっと売れるし、もっと金も稼げる。
じゃあそれせかは何故それをしないのか。まだ正常でありたいからこそ、狂った事が当たり前になってる事を暴き続けるしかないのだ。




今作も楽曲の完成度自体とんでもなく高く、純粋にギターロック/オルタナティブロックとしてのメロディセンスの凄まじさもそうだが、そんな楽曲に乗る言葉は普通なら選ばれない言葉ばかり。だから暗くて重く、聴き手を本当に選ぶ。

だからこそ聴き終えた後に聴き手の心に確かな楔を打つ。だからそれせかはロックの本質だけを常に掴み続けるのだ。



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■最低の昨日はきっと死なない/それでも世界が続くなら





 2011年にex.ドイツオレンジ篠塚氏を中心に結成された通称:それせかの2015年リリースの6thアルバム。2013年にメジャーデビューを果たしたが、2015年5月にリリースした5thアルバム「僕は透明になりたかった」を最後にメジャーからのリタイアを宣言。それから半年程でのリリースとなる。
 レーベル無所属という完全自主制作作品となっており、まるで生き急ぐ様に作品リリースを重ねているから色々心配になってしまったけど、今作は紛れもなくバンドにとっての最高傑作であり、国産ギターロックの金字塔的作品だと僕は勝手に思っている。



 今作の大きな特徴は二つある。一つは多重録音やクリック等を一切使わず、廃カラオケボックスの一室で一発録音された作品である事。「僕は透明になりたかった」もメジャーとは思えない音の荒さや生々しさが強かったが、それの比じゃない切迫感が作品には充満している。そしてほぼスタジオライブと同じ環境で録音されたにも関わらず音源としての完成度が素晴らしい。ライブバンド:それせかの実力を真空パックした作品だ。
 もう一つは「希死念慮」が今作のテーマになっている事。これまでもいじめ、虐待、家庭環境、病気、レイプ等の重いテーマを曲にして来たけど、それすら超えてただひたすら死について歌った作品となっている。
 今作にはアッパーな曲や分かりやすいディストーションサウンドの楽曲はほぼ皆無だ。空間系エフェクターによるポストロックな音色こそ多いけど、静謐さで引っ張る曲ばかりであり、内側へ内側へ沈み込む音ばかりが続く。なのに血流する絶望と渇望の感情。そしてただひたすらに暗く悲しく美しい。
 スロウテンポで削りに削った音数で歌われる第1曲「昨日が終わるまで」から死の匂いしかしないトレモロフレーズに心が引き込まれていくが、第2曲「浴槽」はバンド史上最も痛々しく終わりを願う名曲。トレモロリフのみで進行する楽曲、何度も悲痛に歌われる「返して」という言葉。この2曲だけで、目の前にぶら下がった死へと否応なしに向き合うしか無くなる。
 ビートこそやたらダンサブルさもあるのに、ドープに沈むビートと自傷的ディストーションのラストにハッとさせられる第3曲「冷凍保存」、篠塚氏の弾き語りによる分かり合えない事に対する諦めを歌った第4曲「ひとりぼっち」、透明になりたいのになれない淀みの中を彷徨うシューゲイジングギターが消え入りそうな儚さを描く第5曲「傾斜」、重低音の効いたビートが小宇宙の中でただ笑う事すら忘れて取り残される第6曲「落下」、メランコリックなメロディであるのに、聴いていると叫びそうな気持ちになってしまう第7曲「少女と放火」まで本気で絶望的な曲しかない。
 篠塚氏の歌の力は歌詞と共に嫌でも聴手に突き刺さってくる。決して誰かに押し付けるトーンで歌っていないのに、だけど歌と言葉が音と共に共存し合っているからこそ、聴いてて涙が止まらなくなる。僕が個人的にこの感覚を覚えたのはisolate苔口氏のバンドであるRegret Griefを聴いた時以来だ。
 そんな曲ばかり並ぶ中で唯一アッパーな第8曲「最後の日」は行き着く先はそこにあったのかと気付かされる。bloodthirsty butchersの吉村氏のギターの音を個人的に思い出した優しいファズギター、「俺はもう長生きでいいよ」という歌詞のフレーズはどんなに死を望んでいても結局は「死なない」という悟りの境地にまで達している。
 そして再び自問自答の世界で「死なない」日々へと消えていく最終曲「失踪未遂」で取り残された気持ちで終わる。



 まるで「生活」の頃のエレカシとSyrup16gと「深海」の頃のミスチルとブッチャーズが全く薄くならずに共存してしまった世界。安易な絶望や慰めすら尻尾を巻いて逃げ出すリアル。完全に悟りの境地であり、アンビエント色の強い音色が余計に悲しく響く。底の底に沈んだ先に何を見るかは聴き手それぞれだ
 だけどカテゴライズされた絶望や死にたさでは無く、本気で足掻く人を優しく包み込む作品だ。こんなリアルで生々しくて残酷で優しくて透明な音は他に無い。
 それせかがずっと描き続けたポピュラーミュージックの到達点であり、そこにあるのは目を背けたくなる日々の絶望と現実。だけど何があってもこの歌は死なない。打算も理想も無いからこそ、この歌が届いた人にとっては掛け替えのない物として残り続ける。だからこそこのバンドは本物だ。



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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