■Tiala
■Epitome/Tiala
小岩が全世界に誇るハードコア番長であるTiala。これまで数多くの伝説的ライブを生み出し、常に現場主義ハードコアの姿勢を貫き続ける彼らの5年振りとなる2015年リリースの2ndフルアルバム。リリースは勿論Less Than TVから!!
これまでもTialaはハードコアの真髄は全くブレないまま、既存のハードコアから逸脱した音だけを鳴らし、フロアを狂乱に陥れ続けて来たが、今作でそんなTialaの独創性は完全に羽化し、最早他のバンドを引き合いに出して語る事が不可能な存在になってしまった。
音楽性としてはハードコアを基盤にしながら、ニューウェイヴやポストパンクの要素を詰め込んだのがTialaの特徴だけど、今作はそれらの要素を盛り込んだハードコアって説明だけじゃ全く凄さが伝わらないと思う。音楽的雑多さはより多岐に渡り、だがどの音を切り取ってもハードコアだ。
前作からの大きな変化としては、前作までにあったキャッチーさやポップさといった要素が後退し、よりシリアスでダークな感触を持つ音が増えた事。歌詞の方も第1曲「Resist」の「殺し合い 正義などない」という歌詞のフレーズが象徴する様に、よりシリアスなメッセージが増えた。それは現状の世界情勢や日本の政治情勢の問題に対する怒り、そしてそれらの感情の開放だ。
それこそ第1曲「Resist」には強烈なる怒りが封じ込められているが、そのエネルギーの開放方法が他のバンドとは全然違う。それぞれの楽器がフレーズをループさせるグルーブの陶酔から、それを爆発させた時のカタルシスはTialaの武器だが、それぞれのフレーズがより自由になり、好き勝手に音を鳴らしているのだ。でもそれらの音が自然と調和し合い、そしてフリーキーさが沸点を突破した瞬間の爆発。凄まじい熱量を感じる。これまで以上に音がキレまくっている第2曲「1825」は宇宙へと吹っ飛ばされる音を光速で繰り出すキラーチューン。
その一方で第3曲「Down」は54-71風に言えばスカスカなハードコアとなっており、ポストロック要素を導入した意欲作。以前からあったループ感を新たなる形で変換した楽曲となっているが、沈み込むドープさに冷や汗が流れる。
更に長尺曲になっている第4曲「Flames On Sand」と第6曲「Epitome」では前人未到の境地へ。クリーントーンの音の不気味な蠢きから、ノイジーに吹き荒れる暴動まで網羅し、よりスリリングさを加速させる「Flames On Sand。殆ど同じフレーズのループの進行でありながら、サイケデリックな酩酊感とポストメタル的美しさをTiala流に消化した「Epitome」。これらは既存のハードコアの文脈には無かった物となっており、どの様な文脈からこの音が生まれたのか全く読めない。だけどTialaだから到達できた境地だって事だけは分かる。
だけど最後の最後はフロアが大荒れ間違いなしな新たなる暴動のアンセム「White It」で締めくくられるのが何ともTialaらしいじゃないか!!
新しいハードコアを追求し続けてきたからこその会心の一撃であり、一見ハードコア色は後退したと思わせておきながら、よりフレーズが独創的になり、自由でありながら不気味に轟く衝動が充満している力作。
ハードコアを形骸化させる事に全力でNOを突きつけながらも、その精神性は間違いなくハードコア。聴いていると宇宙へと吹っ飛ばされてしまう。小岩のハードコア番長が生み出す圧巻の熱量と怒りのパワーにぶっ飛ばされるだろう。