■hue
■easing into emoting/hue

栃木県の某高校にて結成された4人組hueの待望の1stアルバム。個人的に僕と同郷出身のバンドという事もあって前々から名前は知っており、ライブも何度も拝見していたバンドだけに、こうして1stアルバムがリリースとなったのは何とも感慨深い。
世代的に若手バンドであり、エモ・激情ハードコア界隈では期待の新人として評価されて来たが、今作を聴いて時代は確かに循環している事、Cap’n Jazz系統という言葉じゃ片付かない新世代ならではのオリジナリティがそこにある。
hueが共振する音は非常に多岐に渡る。90年代USエモは勿論、現在進行形のエモリヴァイバルや激情ハードコアやマスロックといった音楽性を持つが、それらをシャープで切れ味鋭い演奏で鳴らし、それだけに留まらずにキャッチーなメロディが目まぐるしく展開していくキラキラのポップネスも兼ね備えている。
今作で大きな特徴として挙げられるのは熱いシンガロングパートだろう。爽やかなメロディとナード感が堪らないボーカルとテクニカルなツインギターの絡みが印象深い第2曲「メイクチェンジ」からほぼ全曲に渡って導入されているシンガロングには拳を熱く握り締めたくなる。
イントロのアコギの調べから一筋の風が吹き抜ける様な疾走感溢れる衝動溢れる楽曲と洗練された演奏の煌きが胸に染み込む第3曲「switch me once」、athelasとのスプリットに収録された楽曲の再録であり、イントロのギターリフから一気に持っていくhue独自の激情を打ち出したキラーチューンである第5曲「ハロウ」、マスロック感全開でありったけの感情を詰め込んだhueの新たなキラーチューンとなるだろう第7曲「OFFLINE」、そしてトランペットの音色とアルペジオの旋律の調和が生み出す青臭さが涙腺に来る最終曲「warm regards,」までhue節とも言える独自性が爽やかにだけど熱く迸る。
ライブを何度も拝見しているけど、彼らは高い演奏力を持つバンドであり、今作の楽曲のアレンジも洗練されているが、その透明感溢れる音から滲み出る甘酸っぱさはhueの一番の武器だろう。あらゆる音楽を無邪気に消化してきたバンドだからこそ生み出せたピュアで繊細で力強い衝動は理屈抜きで心に突き刺さる。
90年代のリアルタイムエモから現在のエモリヴァイバル、それらと繋がっていくあらゆる音楽。hueが鳴らすのは世代もジャンルも超えた計算されていない音楽である事は、甘いメロディが常になっているのにありったけの叫びをただ吐き出す石田氏のボーカルを聴けば伝わってくる。
音と声と感情が優しく共存する新生代の答えが今作だ。本当は誰もが無邪気な頃に戻れる無垢さを音楽に求めているのかもしれない。hueにはそれがある。