■COHOL
■裏現/COHOL

いよいよCOHOLが全世界へと飛び出した!!
2013年にフランスの超名門レーベルOsmose Productionsと契約した事が話題を呼んでいたが、2015年いよいよそのOsmose Productionsから5年振りの2ndアルバムがリリースされたのだ。日本国内ではDaymare Recordingsからのリリースと磐石の体制。
1stアルバム「空洞」、heaven in her armsとのスプリット「刻光」でも圧倒的な存在感と生身の表現を繰り出していたが、今作でそのオリジナリティを確固たる物にしてしまった。
今作を実際に聴いて思ったのは、今のCOHOLの前ではハードコアとかブラックメタルというカテゴライズは完全に無意味だという事だ。実際にこれまでの作品よりもブラック要素は増えたけど、既存のブラックメタル・ブラッケンドハードコアとは全然違う。ドス黒くありながら、その音はどこまでも透明感溢れるという、黒い結晶。
歌詞で歌われている事も以前よりも徹底的に現実的な闇といった物を想起させられるし、アルバムタイトル通り「裏側の現実」を描く今作はCOHOLもまたエクストリームミュージックから全てを暴くバンドだと言う事だ。
濃霧に包まれた深い森を歩くような幻想的なイントロダクションである第1曲「冷たい石」から残酷なまでに現実に放り込む第2曲「下部構造」へと雪崩込むオープニングは秀逸であり、「下部構造」はより進化したブルータリティを発揮した「刻光」の進化系だ。
より美しく鬱苦しいメロディが増えているが、バンドアンサンブルの突進力もビルドアップし、繊細過ぎる程に作り込まれたサウンドプロダクトが為せる音だろう。特にKYOSUKE氏のドラムが複雑極まりないのに、とんでもなく速いビートをこれでもかと叩きつけているし、KYOSUKE氏の進化は現在のCOHOLを形成する上で絶対不可欠な物だっただろう。
怪鳥の如し獲物を一瞬で八つ裂きにするITARU氏のギターと憎悪を吐き散らすボーカルとベースを披露するHIROMASA氏と、爆発力と繊細さの狭間をすり抜けて刺し殺すKYOSUKE氏の三位一体アタックが恐ろしい第3曲「暗君」、幻想と現実の両方の世界観を突き詰め、静寂の美しさから発狂の美しさへと雪崩込む第4曲「地に堕ちる」とCOHOLの現在進行形の黒と透明の境界線をぐちゃぐちゃにかき回す激音は聴き手の心に強烈なトラウマを残す。
全体としてブラックメタル・デスメタルの要素が増えているけど、それらのサウンドの獰猛さを抽出し、そこにスケール感と美しさを加えたのが今のCOHOLだし、カオスに次ぐカオスを放出しながら、最後は無慈悲な浮世の闇を描く第5曲「葬送行進」も素晴らしい。
特に最終曲「急性期の終わり」は今作の中でもベストトラックで、ブルータルなリフで始まったと思えば、ブラックメタルとハードコアの衝突地点に存在するそれぞれの最も純粋な原液を混ぜ合わせた様な計算され尽くしているのに、それでも止められない暴走。最後の最後は「また会う日まで。」とほんの少しだけの救いの言葉で締めくくり、アンビエントな濃霧へと消え去ってしまう。
そしてそこからまたアルバムの冒頭「冷たい石」へ繋がっているし、40分というある程度コンパクトな尺の作品でありながら過密な情報と音の濃度によって強烈で新時代的な音を刻みつけている。
メタラーからもハードコアパンクスからも熱い支持をこれまで集めてきたけど、今作でCOHOLは完全に勝負に出たし、ブラックメタルとかデスメタルとか激情系ハードコアとかアンビエントだとかの境界を無効にし、日本の東京という都市で生きて感じた事を音として表現された音は確かなる現実に対する宣戦布告だ。
描く世界こそ漆黒ではあるが、その黒い瞳の奥には微かな光が見えてくるし、黒いフィルターを通して放たれる光は確かな希望なのかもしれない。
COHOLは今作で闇で埋め尽くしても消えない光をもしかしたら描いているのかもしれないし、それは2015年の現代に最もリアルに響く音だ。
■空洞/COHOL
![]() | 空洞(クウドウ) (2010/11/17) COHOL(コール) 商品詳細を見る |
東京で活動する激情系ブルータル・ブラックメタルバンドであるCOHOLの2010年発表の1stアルバム。tialaの柿沼氏のレーベルから発売された今作は、激情系ハードコアの流れにありながら、ブルータルデスメタル・ブラックメタル・グラインドコア・カオティックハードコアの要素を取り入れて、かなりボーダーレスな混沌とした重厚な音圧と激情と殺意が渦巻く狂気の作品に仕上がっている。
第1曲「回廊」の不穏のインタールードから第2曲「底知れず吠える軟弱」から破滅に向かって爆走しまくるとてつもないテンションと殺気が押し寄せてくる。哀愁と絶望のメロディがブルータルなギターフレーズから感じることが出来るし、決して単調になる事の無い楽曲の展開はブラストビートを基調にしながらも複雑なフレーズを勢いを殺す事無くバーストさせまくるドラムだったり、ブルータルなトレモロリフだけで無く、クリーントーンの不協和音の美しさの部分だったりも大きな要因を占めてる様にも思える。第5曲「諦めに届かぬ反復行動」なんかはheaven in her armsの様な静謐な美しさを持った激情系ハードコアのカラーをしっかりと見せつけながらも、プリミティブの粗暴さを見事に融合!涎を垂らしながら、殺気を憎しみを撒き散らす姿が醜く無様な姿でありながらも不思議と美しく見えてしまうから凄い。終盤は激情の流れを持ったメロディアスな曲で畳み掛けてくるが、そこでもブルータルの狂気は一向に衰えない。そして最終曲である第9曲「砂上」が今作を総括するに相応しい出来になっている。崩壊と悲しみの賛美歌が響き渡っている。
楽器隊の音もかなりテクニカルでありながらも、破綻寸前の狂気と混沌を絶妙なバランス感覚で表現しており、かなりスリリングな音になっている。heaven in her armsは激情系を基盤にしながらブラックメタルとスラッジコアの要素をブチ込みながらよりスロウかつヘビィになったが、COHOLは激情系の基盤に、ブルデスとブラックメタルをブチ込み、疾走する殺意と狂気を描いている。3ピースでここまでの音圧を叩き出せるのは凄い。これからの激情の流れを一気に塗り替えてくれるであろう激烈なバンドが現れた!これからの躍進に期待したい。