■Ry
■Ry/Ry
ancestor record (2015-10-10)
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2013年に結成された、ex.hawkcrower、The Rabiesのメンバーが在籍する3ピースポスト・ロックバンドの2015年リリースの4曲入り1st EP。
The Rabiesというデスメタル/ニュースクール・ハードコアのメンバーが在籍するとは思えない、オーガニックでクリーンな音色が清らかに流れる作品となっている。
今作はボーカル入りの楽曲が2曲、インスト曲が2曲という構成になっている。Ryの大きな特徴はアコースティックギターを取り入れたサウンドスタイルだろう。
ポストロックそのものが現在は普遍的なサウンドスタイルとして認知され、もはや本来の意味とは少し違う認識をされてしまっているが、Ryの鳴らすポストロックはカテゴライズされたポストロックでは無く、シンプルな3ピースの編成から最大の音の高揚を生み出す引き算の美学だろう。
第1曲『Flora』から感動的な涙の音楽がスピーカーから流れ出す。
メンバー全員が卓越した演奏技術の持ち主であるが、その技術を表現力へと活かし、優しい音色の中に不思議と漂う緊張感をアンサンブルで表現。
複雑なアンサンブルを展開しているにも関わらず、技術先行型のバンドと一線を画すのは、シンプルな楽曲の完成度と、それを活かすアコースティックギターの力が大きい。
ノスタルジックなメロディと静寂の中から生まれ落ちたやわらかな生命の息吹。派手なディストーションサウンドを排除し、むき出しのままの芯が通った音の強さで勝負している。
多岐に渡るサウンドの影響をじわりと感じさせながら、筋の通った歌ものとして成立させているのはRyのセンスの素晴らしさのあらわれだ。
Ryの奏でる音は正統派であり異端だ。そぎ落としたシャープな音像の中にもバンドとしての筋力の高さが存在しており、決して砕けることのない絶対の強度を誇っている。
スロウテンポのパートではじっくりと歌を聞かせ、複雑なアンサンブルが疾走するパートでは精神の解放へと聴き手を導く。
だからこそRyはポストロック好きはもちろんだが、あえてうるさい音楽が好きな人にも触れて欲しいバンドだ。
Ryの鳴らす音は新たなる生命の呼吸そのもの。キラキラと降り注ぐ日射しのようにRyの音は聴き手の耳から体内へと優しく浸透していく。