■ANODE
■孤高の存在/ANODE
インディーズ レーベル (2007-10-01)
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多くの人は日本国内の激情ハードコアと言うとenvy、killie、heaven in her armsといったバンドを思い浮かべると思う。
それらのバンドは素晴らしいバンドであり、シーンを作り上げた立役者であるが、それらのバンドと全く違う位置にあるバンドもシーンを作り上げたのも事実であり、メインストリームの文脈から外れた位置にあるバンドもまた確かな文脈を作り出している。
かつてANODEという本当に素晴らしい激情ハードコアバンドが存在した。今作はそんなANODEの07年リリースの1stフルアルバム。COSMIC NOTEとKAFSの共同リリースの全7曲入り。
アルバムタイトルは「孤高の存在」。とんでもないタイトルを自らの作品に冠しているが、ANODEは本物の孤高の存在であると今作を聴けば分かる。
僕自身はANODEが墜落してから彼らの存在を知り、リアルタイムで追えなかった身だが、何度今作を聴いてもANODEの中に存在する文脈や影響が本当に分からない。
決して奇をてらったサウンドスタイルではなく、むしろストレートな激情ハードコアを鳴らしているが、「◯◯っぽい。」とか「◯◯の影響を受けている。」といった要素がANODEには全く無い。
ただ一つだけ確かなのはANODEは紛れもなくハードコアパンクの真髄を鳴らしている事だけだ。
ツインギターの悲哀に満ちた独自のメロディ、苦悩や葛藤を曝け出し、世界と対峙する言葉の数々、異常なまでに緊張感に満ちた空気。
厳格極まりない音と言葉は快楽的な退廃感とは全く無縁であり、研ぎ澄ませた精神を真っ直ぐに解放するのみである。
激情と美しさの狭間にありながら、洗練とは無縁で泥水の中をひたすら泳ぎもがく様な激昂のノンフィクションをANODEは描いている。
ANODEは09年にこちらも大名盤である2ndアルバム「負の新種」をリリースし、その直後に墜落してしまった。
しかしANODEは文字通り孤高の存在として今なおフリークスの心の中で生き続けている。
他所からサウンドスタイルを借りパクなんかせず、自らのハードコアパンクを突き詰めた結果、似ているバンドが全く存在しないANODEだけの表現が今作には存在している。
ANODEが鳴らすハードコアパンクは魂で触れなくてはいけない切迫感と厳格さがある。
00年代日本という時代を駆け抜けたANODEは、決して忘れ去られてはいけない存在だ。その存在が消滅した現在だが、多くの人々に語り継がれるべきバンドだ。