■ANYO
■In My Book/ANYO
激音フリークスの間では2016年にリリースされた大阪の激重神ことSecond To Noneの1stアルバムにボーカル4hoがゲストボーカルで参加した事で話題を呼んだANYOであるが、2018年元旦に突如として新作EPである今作を配信リリースした。
ハードコアからギターロックまでと本当に幅広いバンドと共演し、多方面から絶賛の声を惜しみなく浴びる大阪が誇る正しき突然変異ことANYO。今作はANYOがネクストフェーズへと突入した事を告げる快作に仕上がった。
ボーカル・ギター・ベース・ドラムというスタンダードなバンド編成からPortisheadからfra-foaとREDЯUMまで行き来し、独特の妖しい空気を纏い続けて来たANYO。今作ではよりトリップホップな方面へと舵をとっている。
ドラムとベースは淡々と冷酷なビートを作り上げ、多数のエフェクターで幻想的な音色を積み重ねるオーロラの様な感触のギター。至って最小限の音でアンサンブルを構築し、ミニマルから最大の効果を生み出していくANYO節は今作でも健在。
サウンド面だけでも非現実的な耽美な空気を見事に作り上げているが、それを決定的な物にしているのは4hoのボーカルだ。
これまでの作品はバンドサウンドの肉感的な感触もあったが、それを排除し人間味を無くした音に人の体温を与え続ける4hoのボーカルはANYOを語る上で絶対に外せない。
決してポップス側の歌物では無く、一聴するとアバンギャルドで実験的でもあるANYOの音を歌物として成立させるだけのボーカリストとしての力量は素晴らしく、儚く美しく神々しい声が音とシンクロし、よりドープなダークサイドへと聴き手を連れ去っていく。
緊張感を保ちながら酩酊を繰り返し、重苦しい空気のまま沈んでいく事が心地よく感じさせる。分かりやすい鋭さでは無いのかもしれないが、聴き手にアメーバの様に浸透し、犯し、病巣の様に巣食うANYOは非常に危険な音だけを奏でている。特に第5曲「I」は今作でも屈指の名曲だ。
美しさと暗さと深さ、その三点を徹底的に追求し、エクストリームミュージック以上の危険さ、ポップス以上の歌物、ポストロックやシューゲイザー以上の美しい構造美、非現実の世界へと誘う片道切符だ。
Portishead辺りのトリップホップは勿論、fra-foaやREDЯUM辺りの00年代初頭の女性ボーカルオルタナティブ、現在のTHE CREATOR OF辺りが好きな人には是非とも聴いてほしい。
今作にあるのは音楽の無限の可能性と危険さだ。一度飲み込まれたら二度と戻れない。