■Black Market
■Nightmare Deja Vu/Black Market
岐阜県を拠点に活動するドゥームトリオBlack Marketの2017年リリースの1stアルバム。
岐阜・愛知でドゥーム系バンドを集めた自主企画「DOOMSDAY」を定期的に開催し、その活動は精力的だ。
そんな彼らのドゥームロックは非常に突然変異的なものであり、今作を聴くとそれは十分に伝わるだろう。
Black Marketのサウンドの特徴として極限まで下げられたチューニングがまず上げられる。
ギターというよりは最早ベースの様な感触すら覚える程にチューニングは下げられており、ベースの方もかなりヘヴィな音を放つ。
まるでツインベースの低音が容赦なく圧殺していく様なサウンドプロダクトになっている。
しかしBlack Marketの音は決して拷問系ドゥームにはなっておらず、寧ろ純粋なヘヴィロック的でもある。
ギターリフがあくまでもロックを起点にしたものであることもあり、ギターソロではそのヘヴィさよりも煙たさや土臭さの方が際立ち、極悪な低音リフと見事に対比を描いてる。
それに加えてボーカルが非常に耽美で退廃的なのも大きな特徴だろう。
歌詞こそは英語詞ではあるが、不思議と歌謡曲的な歌メロが感じられる。
愛知のドゥーム御大ETERNAL ELYSIUMもドゥームサウンドの中から日本の古き良きロックサウンドのメロと歌心があるが、Black Marketの場合はもっとポップな印象だ。
音はドゥームロックらしく非常にダーティであり、使われてる音階は呪術的で正にDOOMSDAYな感触であるが、トータルの楽曲バランスの良さと、極端なサウンドプロダクトの中でもメロを想起させる手腕がある。
第一曲「Screaming Of Madness」や第二曲「Nightmare Deja Vu」の様なエクストリームなヘヴィさから狂気的な美しさを感じさせるBlack Market印な楽曲も非常に魅力的であるが、個人的には第四曲「Grief」が特に素晴らしいと思う。
哀愁へと突き抜けたメロウさはヘヴィさを凌駕し、汚しさの中での美しさを歌とメロディから感じさせてくれる。
エクストリームな方向に振り切りつつも、それを垂れ流しにするのではなく、確かなフックを持つバンドは強いが、Black Marketはその中でメロディと歌を大きなフックとし、極端なヘヴィさを下地にそれらを絶妙に活かしてくる。
サウンドスタイルとしてはドゥームロックとして見てもかなり異端ではあるが、そのオリジナリティをロックへと回帰させたのが彼らの持ち味だろう。
岐阜という土地から生まれた突然変異型ドゥームロックは東京や大阪のバンドとは全く違う物がある。