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■STUBBORN FATHER

■STUBBORN FATHER/STUBBORN FATHER

Stubborn Father
Stubborn Father
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Stubborn Father
3LA LongLegsLongArms Records (2019-04-04)
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このアルバムを初めて聴いた時、脳内の細胞という細胞が焼き切れそうになる程の興奮を覚えた。
同時に重く後味の悪い映画よりも残酷な現実を突き付けられた様で絶望的な気持ちになった。
興奮と絶望が入り混じる感覚がずっと抜けず、リアルに体調を悪くしてしまう程に。
だけれど、このアルバムを聴いて感受性がフル稼働していたという事実、必死でその音を喰らおうとしていた自分がいて、自分が人間をまだやめていなかったことに嬉しくもなった。



今作は大阪が誇るハードコアパンクバンドSTUBBORN FATHER(以下スタボーン)が結成20年目に放つ1stアルバムであり、日本のハードコア史に残すべき大傑作となった。
20年に渡る長い歴史を持ち、フルアルバムこそリリースしていなかったが数多くの音源を残したスタボーンの集大成とも言うべき作品であり、同時に2018年7月にバンドを卒業したベーシストMorishitaが参加した最後の作品でもある。
サウンドエンジニアにはnemuの音無氏を迎え、スタボーンの持つ世界観を純度100%で体現。



今作は一言で言えば創造と破壊の象徴と言えるだろう。
ジャパニーズハードコアをルーツに持ちながら、作品を重ねる毎にエモヴァイオレンスの要素を色濃くし、最早激情ハードコア・エモヴァイオレンスと言った言葉で語ることは不可能となったスタボーンは衝動のままに新たな道を切り開く。

極限まで汚らしいサウンドミックス、荒々しい粒の音が吹き荒れながらも感じさせる美意識。
CamelのDビートとブラストビートが咲き乱れ、Morishitaのガレージパンクなジャリジャリのベースが暴走し、哀愁や美しさ以上に不穏さが際立つクリーントーンと変則的で多展開なディストーションフレーズを常識の外側から織りなすFukusukeのギター、そしてカリスマボーカリストShigeが狂った現実を暴き叫ぶ。それらの持つエネルギーは化物どころの話ではない。

楽曲はどれも既存のハードコアから逸脱し、過去の楽曲よりもスケール感が増幅されている。
美と激がリミッターを振り切り暴走し、混沌と呼ぶにはあまりにも生々しいリアリティを叫ぶ第一曲「間物」の時点で今作の異常なエネルギーに平伏す。
ギタリストFukusukeの作り出す唯一無二のカオティックかつフックに満ちたフレーズが剃刀の様に切り刻む第二曲「工程」。ex.ANODEの鈴木氏がゲストボーカルとして参加し、スタボンにとって鬼に金棒となったANODEの名曲カバーである第三曲「隠された太陽」。
それらの新曲群に加え、新たに再録された過去の楽曲たちも違和感なくアルバムに馴染み、作品全体に全く隙は見当たらない。

個人的に今作の一番の核は第七曲「陽極」から第八曲「火曜日」の流れにあると思う。
スタボーン史上最もカオスでありながらストレートであり、哀愁が渦巻き、叫びの中から希望を歌う様な言葉の数々が反逆のエネルギーを増幅させるアンセムである「陽極」と、これでもかと現実と対峙する事を突き付ける今作で最も緻密で変則的で断罪的な「火曜日」の2曲はスタボーンが放つ怒りを全く違う形で体現している。
狂った世界に鉄槌を下す様な「火曜日」は個人的に今作のベストトラックだ。

壮絶と呼ぶことすら生温いとすら感じる今作のラストを飾るのはAUBEの中嶋昭文氏が遺した無機質な電子ノイズが使われた「お前は燃えない塵のまま」だ。
今作は何一つ感動的なエンディングを迎えない。最後の最後に狂い続けるクソッタレな世界の絶望を無修正のまま突きつけてくる。
どんな残酷なフィクションよりも救いも逃げ場もないエンディングに直面した時、きっと貴方は何を感じるのだろうか?



アルバムがリリースされてから何度も何度も今作を聴きまくったが。不穏さと激情の狭間には、現実という化物に対して何度でも立ち上がり反逆する圧倒的なエネルギーと、それでも襲い掛かる現実に対する絶望の正面衝突が存在している。
極端にRAWな音は、綺麗に装飾された物語に対する反逆の様でもあり、同時に人間らしさが存在する。

今作にはユートピアも花園も存在しない。あるのは誰しもが生きていく中で逃げることの出来ないリアルだけだ。
そして人間であり続けるという強い意志が覚醒の先に到達した瞬間、確かに見える景色があるだろう。
哲学的でありながらストレートに怒りを吐き出す言葉がこれでもかと記された歌詞カードをしっかりと眺めながら聴いて欲しい。

バンドは現在、新メンバーにKokeとSankonを迎え、5人編成で新生STUBBORN FATHERとして新たな歴史を生み出し始めている。



お前たちがまだ人間をやめていないなら、この音を全感受性で喰らい尽くせ。



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プロフィール

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Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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