■Converge
■All We Love We Leave Behind/Converge
![]() | All We Love We Leave Behind (2012/10/12) Converge 商品詳細を見る |
最早カオティックハードコアの世界で完全に孤高の帝王となってしまっているConvergeであるが、今作は2012年リリースの彼等の実に8枚目となる最新作。前作にて粗暴なハードコアへと回帰しながらも、自らの持つスケールもアップデートしてカオティック云々すら置き去りにした完全孤高の領域に突入したが、今作でも彼等の進化は止まっていない。カオティックハードコアの礎を作りながらも、それを自らで破壊するConvergeというバンドは唯一無二である事を今作でまた証明してしまっている。
粗暴なハードコアに回帰した前作の流れは確かに汲んでいるし、今作も直情的なハードコアばかりが並んでいるし、それらは相変わらず一撃必殺の破壊力を持っているが、まず今作での大きな変化は自らの持ち味であるカオティックさをよりダイナミックかつ分かり易い形でアウトプットしている事だ。シンガロング出来そうなパートも絶妙に盛り込みつつ、よりキャッチーにすらなっているのだ。Convergeといえば不協和音と変則的な楽曲が織り成す混沌であるけど、今作はよりメロディの部分も際立たせている印象を受けているし、そのキャッチーさを持ちながらもあくまでもブルータルに暴走しまくる激震サウンドが容赦無く押し寄せてくる。キャッチーな要素の比重が増えたからと言って、決して安易なポップ化をしている訳ではないし、持ち前のカオティックさを極限まで研ぎ澄ませたからこそ生まれた余裕ですらあると思う。リードトラックにもなっている第1曲「Aimless Arrow」から伺えるのは確実なる進化であるし、もう多くのバンドが模倣しまくってダダ滑りしまくってたConverge節としか言えない、カオティックなタッピングの嵐で幕を開けながらも、ハードコアの即効性と同時に不協和音が織り成す妙なメロウさと、それらが化学反応を起こして生まれる美しさが相乗効果を起こしてConvergeにしか生み出せないハードコアを圧倒的力量で展開されている。そして最後は怒涛の混沌へと雪崩れ込む辺りがもう完璧だし、その中で掛け合いのボーカルを盛り込んだりするキャッチーさも地味にあるのがまた良い。より直接的にカオティック&ファストなサウンドが展開されてる第2曲「Trespasses」でもサビではシンガロング必至なボーカルを惜しみなく入れて来ているし、所々でストーナー色を感じさせるギターフレーズを盛り込み、ハードコアであると同時にロックな格好良さも見せてくるからズルい!!サウンドプロダクトの方も今までに無いレベルでそれぞれの音の輪郭が明確になっているし、カオティックを明確なハードコアとしての形で打ち出しているからこそのプリミティブな破壊力に今作は満ちている。そんな中でも第7曲「A Glacial Pace」みたいな深遠な重みから激重のサウンドを繰り出し、不穏の美しさから一撃粉砕の音塊を叩き落している楽曲もあるし、第10曲「Coral Blue」では奈落の底に差し込む光の様な気高い風景すら見えてしまいそうな音を見せ付けてもいる。しかし説教臭さは全く無く、決して冗長の尺にしたりはしないで、常にどこかである種のキャッチーさを保ち続けてもいるのだ。そして第13曲「All We Love We Leave Behind」のConvergeが常に持ち続けておる美しき混沌が咲き乱れ、最終曲「Predatory Glow」でカオティックスラッジ地獄をお見舞いし、美しく破滅的な混沌のハードコア絵巻を美しく終える。
前作にてConvergeは第2の絶頂期を迎えたが、今作は更にその先を進み、より進化した作品としてカオティックハードコアの孤高の帝王が常に無敵であり続ける貫禄の作品に仕上がったと思う。時代を築きながらも、そこに満足しないで進化する事を決して止めない精神が彼等にはあると思っているし、だからこそConvergeは00年代の代表的バンドというポジションに甘んじる事無く、2012年現在も常に先を行く孤独なる覇者として君臨しているのだ。進化し続ける事=ハードコアである、それはConvergeが今作で見事に証明しているのだ。
■Axe To Fall/Converge
![]() | Axe to Fall (Dig) (Eco) (2009/10/21) Converge 商品詳細を見る |
カオティックハードコアの帝王であるConvergeの09年発表の7作目である今作は、Convergeの金字塔作品である「Jane Doe」以上のカタルシスに満ちた最高傑作と言っても良い位の激烈なハードコア絵巻が展開されている化け物みたいなアルバムだ。Convergeらしいカオティックさはそのままに、より粗暴なハードコアの暴君としての最強の肉体的強さをConvergeは手に入れたのだ!肉体と精神を一気にネクストレベルの世界に連れて行ってくれる化け物としか言えない。
ド頭の第1曲「Dark Horse」から脳汁が一気に噴出しまくる激情と肉体がブチ壊れてしまいそうになる位の乱れ咲くハードコアが展開されている。しっかりとシンガロング出来るパートがあったりと聴きやすい構成であったりとか、肉体を刺激し暴れざるおえない位の粗暴さを今作は前面に出しているが、それによってよりConvergeの混沌具合が浮き彫りになっているし、異形な存在である事を再認識する事が出来るだろう。序盤の楽曲郡は最強にブルータルな紅蓮の炎が燃え上がる暴虐さと残酷さを発揮しており、ハードコアの肉体的美しさを嫌という位に感じる事が出来るだろう。Cave Inのメンバーも参加している第4曲「Effigy」なんか特に楽曲全体に沸点しか存在しておらず、不穏の旋律から一気に全てを粉砕する暗黒神へと変貌を遂げる様など震える位だ。そして中盤からは破壊の美学に基づいた楽曲が続く。ハードコアの即効性をしっかりと持ちながらも、Convergeの持つ漆黒の美しさに焦点が当てられており、激烈にヘビィなリフで攻めてくる極悪な楽曲の聴き手は再び焼き尽くされてしまうだろう。そしてラスト2曲はConvergeの壮絶な美しさを感じさせてくれる。NeurosisのSteveが参加した第12曲「Cruel Bloom」の厳かで深みのある静謐さから第13曲「Wretched World」の悲しき終わりを告げるエモーショナルな楽曲で今作は幕を閉じる。
Convergeは今作で完全に自らのハードコアを更新し、恐ろしい位の進化を見せ付けてくれた。オーソドックスなハードコアの暴力を再び見つめ、それを前面に押し出しながらも、その反面では自らの深遠なる美しさを鍛え上げ、制御不能の怒りから、情緒豊かな悲しき漆黒の炎までを体言したConvergeであるが、やはりカオティックハードコアのシーンを作り上げたオリジネイターの無敵さと帝王の貫禄を今作で感じる事が出来る。ハードコアをネクストレベルまで更新した帝王の手によって、ハードコアがまた新たな次元へと到達した事を告げる屈指の大傑作だ!!
■Jane Doe/Converge
![]() | Jane Doe (2001/09/04) Converge 商品詳細を見る |
ボストン出身のカオティックハードコアのシーンを作り上げたといっても過言では無い、00年代のハードコアシーンを語る上では絶対にに外す事の出来ない最重要バンドConverge、そのConvergeが01年に発表したのが今作であり、00年代を代表するマスターピースの一つだ。一歩間違えれば崩壊してしまうアンバランスさでありながらも、混沌とした音が奇跡のバランスで組み合わさった瞬間、とてつもない破壊力を待ったカタルシスとノイジーな破壊音の雪崩の向こう側にある、百花繚乱の美しき地獄絵図と言っても過言では無い芸術性、文字通りカオティックハードコアであり、しかしその枠の中じゃ収まりきれない圧倒的な力を持った音楽がこの作品には存在する。
第2曲「Fault and Fracture」から名刺代わりと言わんばかりにどこまでもConverge節炸裂の混沌具合にブチ抜かれる、ノイジーであり、ポリリズムを乗りこなすテクニカルなギターのフレーズ、変態的なリズム隊のビートに、力の限り絶唱するボーカル、コロコロと変化していく展開、どの音も圧倒的な説得力と破壊力で鳴り響き、死神がサークルモッシュしてる轟音地獄へと連れて行かれる。第6曲「The Broken Vow」の様などこかキャッチーさを持っている楽曲でもそれは健在、一撃必殺のリフの応酬から、いきなり精神世界のカタルシスに持っていかれ、終盤で極悪ハードコア天国で暴れ狂うという2分弱に詰め込まれた様々なアイデアをどこまでも肉体的に表現している。全体的にコンパクトな形になっている事も、ハードコアとしての即効性や暴力性をしっかりと真空パックしている大きな要因になっていると思う。第8曲「Heaven in Her Arms」が特に素晴らしい楽曲だ、本当に目まぐるしく曲は展開し、暴力性の前半、ドゥームなヘビィさを持った後半、そしてそれに続く美しくノイジーな第9曲「Phoenix In Flight」と、この流れは何回聴いても鳥肌が立つ。そして圧倒的なアート性と美しさで鳴らされている11分以上に及ぶ大作である第12曲「Jane Doe」でこの混沌は一気に神々しさと禍々しさを以って響き渡る。リスナーはそのあまりの美しさに昇天してしまうだろう。
この作品がConvergeをカオティックハードコアの最重要バンドとしての地位を確立させる大きな要因になった事は間違いない。00年代のハードコアとしての形を作り、数多くのフォロワーを生み出した、しかし今作はシーンのオリジネーターの力を嫌でも感じるし、ここまでの域に達してるバンドは後続のフォロワーの中では皆無といっても過言では無い。Convergeはその後も進化を続け、今に至るまでシーンのトップに君臨し続けてる、王者が王者としての椅子を獲得するに相応しい作品だ。この作品が無かったら00年代のハードコアは全く違う物になっていただろう。それほどまでの力がここに存在するのだ。