■Lento
■Anxiety Despair Languish/Lento
![]() | Anxiety Despair Languish (2012/11/27) Lento 商品詳細を見る |
イタリアの超極悪スラッジ5人衆であるLentoの2012年リリースの3rdアルバムであり、今作もリリースはドイツのdenovaliから。前作「Icon」で余りにも極悪で、超音圧で黒煙と血飛沫が視界を埋め尽くす熾烈さを極めた激重の名作を生み出した彼等だが、今作は大きな変化を迎えた作品である。相変わらずその激重サウンドは健在ではあるけれども、楽曲がより幅広く洗練され、よりポストメタルに接近した作品に仕上がった。
まず大きな変化としてはその音作りだと思う。前作までは音階すら崩壊するレベルの音圧と音量で攻め立てていたが、今作では録音がかなりシャープで綺麗で聴き易い音になっている。それでいて彼等の持っているタイトなアンサンブルもより際立ち、それぞれの楽器の音もクリアになった印象を受ける。それでいて音楽的な幅もかなり広がった印象もある。2分台3分台の少し短めの楽曲の中でストイックさを極めて一撃必殺の音をアンサンブルとして構築していくスタイルになっているし、より美しさとかそういった部分が際立つ様になっている。更に大きな変化と言えば空間系の音色をフューチャーした楽曲が今作は多く、それに加えてトリプルギターがそれぞれ自らの音を拡張させながらも、一つのタイトさでぶつかり合っているし、アコースティックギターなんかも時には盛り込み重さと破壊力以外の新たな武器を手に入れた印象。より重くタイトになったMAREとも言える音はかなりポストメタルへと接近し、ドゥーム成分は大分薄くなっている。この変化に対して前作を愛聴していたフリークス達は戸惑うとも思うけれども、旋律を際立たせても、シャープな音作りになっても彼等の激重サウンドの破壊力は決して弱くはなっていないし、より屈強になったアンサンブルは一つの肉体美すら感じる。
第1曲「Glorification Of The Chosen One」からアンサンブルのタイトさとスラッジさと広がる空間的な音色で遅く重く攻めながら、時にメロディアスなフレーズも取り入れ、漆黒の美しく洗練されたファルムを見せ付けているし、第3曲「Questions And Answers」は暗黒の激重殺戮部隊の殺戮パレードとも言うべき漆黒の行進曲だと思うし、第5曲「Anxiety, Despair And Languish」ではKYOTY辺りに通じるリリカルさも感じさせながらも、重く重心の効いたアレンジが生み出す陶酔感も凄まじく、不穏のキーボードのフレーズが押し出されながら一つのドラマティックさすら感じるレベルでダークでありながらもやたら胸に突き刺さる旋律がかなり印象に残る。激重の轟音を展開する第6曲「The Roof」も彼等の変化と進化を強く感じるし、第8曲「A Necessary Leap」ではこれまでの様なドゥーミーさを感じさせる冒頭のリフの鉄槌から、それぞれの音が美しく花開き、奈落の彼岸花とも言える闇の美しさが目に見える最終曲「My Utmost For His Highest」ではカオティック成分とスラッジ成分とポストメタル成分がハイブリットな融合を見せ、最早一つの厳かさと神秘性を確立したエンディングを迎える。前作同様に合間合間にアンビエントな小品的な楽曲を入れているのも作品絶対のバランスを絶妙に保っているし、作品全体が本当に洗練された物になっている。
今作はLentoの大きな転換作になったと思うし、これまでの彼等を知っている人からしたら戸惑いも多いかもしれないけど、僕は今作での変化は進化だと思うし、持ち前のストイックさと徹底した重いサウンドを新たな形で打ち出した作品だと思う。個人的な我侭を言うなら、この方向性で前作の様な煙たさと音圧があればもっと良かったなんて思ったりもするけど、それは次回作辺りのお楽しみにしておくし、彼等がこの作品を経て、どのような進化を見せるのかが個人的に凄い楽しみだったりする。
■Icon/Lento

イタリアの地獄からの極悪なスラッジサウンドを轟かす五人組、Lentoの2011年発表の2ndアルバム。同じくイタリアの最強にパラノったドゥームバンドであるUfomammutと共に共作した事もあるバンドだけあって、低域が強調されまくりな重圧殺スラッジサウンドがこれでもかと展開されている。Ufomammutは重圧殺サウンドにドラッグをこれでもかとODしまくったかの様な危険な酩酊感を持っているが、Lentoはアンビエントなカラーを取り入れる事によって重圧殺でありながら精神的な狂気をこれでもかと言わんばかりに放っている、殺気と殺意に満ちた轟音大量殺人鬼である。
全10曲37分と、ドゥーム・スラッジ系のバンドにしては珍しく曲もあまり長くなくコンパクトな作りになっているが、コンパクトな作りになっているからこそ、その狂気と殺意は一点集中型であり、安心する隙なんてあった物じゃない。ほぼ全てのリフがとんでもない破壊力を持った一撃必殺のスラッジハンマーであり、一発食らったら脳髄が跡形も無く粉砕されてしまいそうな禍々しい凶器として、トリプルギターの轟音が存在している。
第2曲「Hymn」からその殺人鬼っぷりを発揮しているが、まだ少しだけ叙情的がある分救いがある、第4曲「Hymen」では少しの情けも無い、暗黒ギターリフの刻みが空間を埋め尽くしているし、第5曲「Still」は尺の短い曲だからこそ、Neurosis級の暗黒サウンドがより鮮明になっている。第6曲「Throne」みたいにバンドの深遠な美しさを魅せる楽曲もまた魅力的であるが、油断したら最後、回避不能のスラッジハンマーに潰されてしまう。第9曲「Icon」で今作最強の黒い血飛沫が大量噴出の轟音の濁流は本当にこの世の物とは思えない惨血で視界が見えなくなる感覚すら覚えてしまうからだ。
即座に身の危険を覚えてしまいそうな、光すら無い漆黒の残虐スラッジではあるが、どんなに頭の中で警笛が鳴っていても逃げ出せない恐怖、そしてその向こう側にあるのは深遠な轟音の美しさだ。振り切れまくった暴力性と狂気はここまでも美しく神秘的ださえあるのだ。酩酊した脳髄は何も考えられなくなり、轟音のスラッジハンマーで粉微塵になる。ここまで恐ろしい音を鳴らすバンドは中々いない。スラッジ・ドゥーム愛好者はこの音に是非とも粉砕されて欲しい。
因みにこの音源は日本国内のAmazonでは取り扱っておらず入手は中々難しいであろう。しかし下記のURLのレーベルの公式サイトにて全曲フリーダウンロード可能である。もし興味を持った人は、是非地獄のスラッジサウンドを味わって欲しい。公式でのフリーダウンロードなので、違法とかでは無いので、その辺りは安心して欲しい。
http://denovali.com/lento/(音量注意)