■about me
■acts of kindness/about me

山形でマイペースに活動するポストロックバンドであるabout meの1st音源。downy辺りに通じる轟音系ポストロックであるが、ポストロックの無機質さを徹底的に排除し、静謐なメロディと柔らかな温もりを感じるその音は優しくもありながらも強い意志を確かに感じさせてくれる物だ。バンドとしての鉄壁のアンサンブルを待ちながらも、その音はしっかりとボーカルを支え、歌と轟音が自然な形で同居し、美しい音色を聴かせてくれる。
彼らはポストロックを基調としながらも、同時にシューゲイザー的要素やエモ的要素を同居させている。第1曲「acts of kindness」の静謐さから始まり、徐々に体温を高めていって美しき轟音パートに帰結する様などはエモーショナルな要素を十分に感じる事が出来る。彼らの音はどこまでもオーガニックでありドラマティックだ、感情の起伏や、風景の変化といった物を見逃すことなくバンドのアンサンブルに取り入れている。第2曲「bind in home」はかっちりとしたバンドのアンサンブルの強さに重きを置いた楽曲であるのだが、その様な楽曲でもしっかりと起承転結が存在し、それをわざとらしく展開させるのではなく、あくまでも自然な流れのまま展開させるのだ。だから突然轟音ギターの嵐が吹き荒れてもその流れが揺らぐことは決して無い。一つの生き物として楽曲が呼吸をしているのだ。緻密に練られたサウンドでありながら、そこにわざとらしさは全く無い。自然体のまま彼らは音を鳴らしている。第4曲「no one like to steel」なんかでは初期Radioheadの様なドラマティックさを孕みながらも、そこには陰鬱さは存在してない。ボーカルは伸びやかに歌を紡ぎ、楽器の音は人間的温もりを持った音で聴き手を包み込んでくる。祝福と哀愁に満ちた福音がそこには存在している。
山形でマイペースに活動しているからこそ、何があっても揺らぐ事の無い強さをabout meは持っている。mogwaiやmonoの様に壮大さを以って鳴らす音では無く、あくまでも自然なスケールで大らかに歌われている感動的世界。今作に録音された音は一つ一つの音が確かな意思と躍動を持っている。だからどこまでもエモーショナルであり、オーガニックな優しさを持っているのだ。