■Drive Like Jehu
■Drive Like Jehu/Drive Like Jehu
![]() | Drive Like Jehu (1992/01/24) Drive Like Jehu 商品詳細を見る |
サンディエゴが生み出した伝説にして90年代のポストハードコアの最重要バンドであるDLJの92年発表の1stにして2nd同様に90年代のポストハードコアを代表する作品である。「西のFUGAZI/東のPitchfork」とまで評されたPitchforkを解散し、そのメンバーであったリックとジョンが結成したこのバンドであるが、ジョンのギターワークもリズムセクションも変拍子を駆使しながらドライブするビートもリックの熱情に満ちたボーカルも全てギリギリのラインでの緊張感で疾走する屈指の作品だ。
第1曲「Caress」からDLJの必殺の鋭角オルタナティブが炸裂し必殺の1曲になっている。不協和音を駆使したコード進行と、緩急のついたストップ&ゴーのリズムセクションと疾走するギターリフで冒頭から完全に聴き手をブチ殺しに来ている必殺のポストハードコア。不協和音の中に感じる哀愁のエモーショナルなリックのボーカルが胸を熱くし、キメと構成の美学を駆使し脳髄破壊のポストハードコア。もうこの1曲だけでこいつらがFUGAZI同様に誰も追いつけない完全に自らの音を見せ付けている事が分かるだろう。第2曲「Spikes To You」も不協和音のエモーショナルサウンドが爆走する2分間の硬質のサウンドにやられてしまう。しかしただ疾走するエモーショナルサウンドだけじゃ無いのがDLJだ。第4曲「O Pencil Sharp」の長尺の中での静謐なアルペジオの不穏さから冷徹なギターワークの快楽とミドルテンポでありながら時に暴発し、緻密な構成の中で中弛みする事など無く、静謐さと必殺のリフが渦巻く暴発パートの変化の付け方も見事だ。そこからジョンのお家芸であるスライドとチョーキング多用のギターワークと変拍子のキメが炸裂する爆裂ナンバーである第5曲「Atom Jack」へと雪崩れ込む流れもニクい。硬質のリズムセクションとギターワークがポストパンクのカラーを感じさせ、それにエモーショナルなサウンドをブチ込んだ第6曲「If It Kills You」の変則の変態性もDLJの懐の大きさを感じる。哀愁の旋律とジョンのギターワークが冴えまくりでキレまくりな第9曲「Future Home Of Stucco Monstrosity」も不協和音駆使のサウンドスタイルでありながら、それすらも胸を突き刺す感情の音であり、その中でバンドとしての肉体性を殺さないのが素晴らしい。
今作はジョンとリックのツインギターのギターワーク中心の楽曲を構成し、それを最大限に生かすリズムセクションを生み出し、フックと切れ味に満ちたリフの中に隠された叙情性と。複雑なビートを乗りこなし疾走しながらも、緻密な楽曲構成。そのギターワークを生かすアンサンブルと構成の美学は凄まじさしか感じる事が出来ないレベルだ。2ndも屈指の名盤として名高いが、この1stも90年代ポストハードコアの必殺の1枚だ。聴いてえ震えろ!!
■Yank Crime/Drive Like Jehu
![]() | Yank Crime (2002/11/19) Drive Like Jehu 商品詳細を見る |
間違い無く90年代のエモ・ポストハードコアの最強の1枚と言っても過言では無いサンディエゴが生み出した爆裂ポストハードコアバンドDrive Like Jehu(以下DLJ)の94年発表の2ndアルバム。歌心、変拍子を駆使しストップ&ゴーを使い分ける構成、そして疾走するリフから感じる泣きのメロディー。ここまで完全な形で全てが組み合わさり、一撃必殺の鋭角サウンドを鳴らしている作品は本当に少ない。
先ず特筆すべきはジョンのチョーキングとスライドを多様しまくったギターワークであろう。DLJの音はプログレッシブなリズムを鳴らす楽曲ばかりなのだが、ジョンのギターによってハードコアの破壊力を殺す事無く、プログレッシブでありながらもとんでもない疾走感をバンドに与えているのだ。それでいて不協和音ばかりのコード進行でありながらも、何故か胸に突き刺さるエモーショナルさが存在するのはリックの激情的なハイトーンボーカルと楽曲のドラマチックな構成によるのではないだろうか。爆音でバーストするパートからメロウで繊細なパートに移行し、そこから一気にギヤをフルスロットルにして爆発していく様は圧倒的破壊力を持っていると言っても過言では無い。第4曲「Luau」や第5曲「Super Unison」は特にDLJのエモの要素に特化した楽曲であり、Slintの様な緻密な構成力を持ちながらも、それをハードコアに変換する事によって、激情のバーストサウンドへと進化させているのだ!第11曲「Bullet Train To Vegas」の様なジョンのギターワークがキレまくった疾走感溢れる楽曲の強さもDLJならではだ、スライドギターを組み込んだリフは正に一撃必殺であるし、絡み合うツインギターも、変拍子駆使のビートも全てが三位一体となって襲い来る様は圧巻の一言に尽きる。
DLJはアルバム2枚しか残していない短命なバンドであったが彼等の存在はあまりにも大きく、後生のバンドに計り知れない影響を与えている。90年代アメリカで数多くの素晴らしいバンドを生み出したエモ・ポストハードコアというジャンルであるが、DLJが残した今作は語り継がれるべきマスターピースだ。JawboxやFugazi周辺のバンドを愛する人や、北海道のハードコアシーンのバンドを愛する人は聴いた方が良い。必殺の鋭角ギターリフに間違い無くブッ飛ばさるから。