■Dirty Three
■Dirty Three/Dirty Three
![]() | Dirty Three (1995/07/21) Dirty Three 商品詳細を見る |
オーストラリアが生んだ偉大なるインストバンドであるDirty Three。バイオリンとギターとドラムという変則的な編成の3ピースバンドであるが、彼らはmogwaiに並ぶ轟音インストバンドの帝王であり、その唯一無二の音楽は凡百のフォロワーが永遠に追いつけない孤高の音だ。今作は95年に発表された1stアルバムである今作で既にそのスタイルを確立しており、静謐な美しさとバイオリンが暴れまわる粗暴な轟音が同居した極上のカタルシスが存在するのだ。
美しいバイオリンの音色が前面に出ており非常に厳格な空気を漂わせているが、ギターの音色と、タイトで力強いドラムが正に三位一体となって絶妙なバランスで鳴らされている音は非常にドラマティックな景色を描く。mogwaiでいうフィードバックノイズ代わりに、バイオリンの音が暴れ、とてつもない高揚感を持ち、徐々に熱を上げて爆発していく様は想像を絶する破壊力を持っている。特に第2曲「Better Go Home Now」のエモーショナルさは体中の熱を一気に高める物だ。また第3曲「Odd Couple」でクラシカルで体温の温もりを静謐に鳴らしているのも見逃せない。広大な大地を想起させ、そこで流れていく雲を眺めているかの様な壮大さを見せてくれるのもDirty Threeの魅力と言えるだろう。第4曲「Kim's Dirt」のスケールの大きいポストロック絵巻も絶妙な緊張感とオーガニックな温もりを感じさせ、包み込むかの様な音の優しさに心が洗われてしまう感覚に陥る。そしてラストを飾る第7曲「Dirty Equation」は間違いなく今作のハイライトだ。序盤から一気にメーターの振り切った轟音の嵐が吹き荒れ、ギターのフィードバックノイズと粗暴なバイオリンが重なりとんでもない熱量を生み出し、性急なドラムがそれを加速させdirty Threeが全てを解き放ち音のハリケーンで一気に全てを破壊する混沌は今作最大の聴き所だ!
1stアルバムでありながら自らのスタイルを完全に確立し、緻密に楽曲を組み立てていながら、三人の音がぶつかり合う即興性やカタルシスも見せつけ、インストルメンタルとしてほぼ完全とも言えるサウンドが今作では渦巻いている。今でこそインストルメンタル形式のバンドはとんでもない数存在するが、やはりオリジネーターとしての存在感はとてつもなく、ここまでのレベルまで達しているバンドは本当に少ない。Dirty Threeはインストルメンタルの静謐な美しさに感情のまま鳴らされる楽器の音のエモーショナルさや暴力性もブチ込み、轟音の最果てに到達してしまった。彼等の音楽は純度100%の無垢さを持っている。だから言葉と歌が無くても人の心を揺さぶる轟音を生み出しているのだ。