■あぶらだこ

■ADK/あぶらだこ


ADK(紙ジャケット仕様)ADK(紙ジャケット仕様)
(2008/06/06)
あぶらだこ

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 孤高のハードコアパンクバンドであるあぶらだこのADK在籍時の最初期の音源をコンパイルした編集盤である今作は、あぶらだこがまだ髪を立て、真っ当なハードコアパンクをやっていた頃の音が聴ける作品なのだが、一般的な奇怪なあぶらだことは違ってストレートなパンクサウンドが今作には詰まっている。しかし、そこはあぶらだこ。ストレートなパンクをやっても何処か奇妙な感覚はあるし、この頃からあぶらだこは異質な存在であった事が今作を聴けば分かると思う。



 まずこの頃からヒロトモにしか出せない独自の奇妙なボーカルは確かに存在している。第1曲「ランニングハイ」はストレートなパンクナンバーであるが、それとヒロトモのボーカルは奇跡的にマッチし、どことない奇妙な歪みを感じることが出来るだろう。また今作はあぶらだこ云々を抜きにして純粋にハードコアパンクとして必殺の楽曲ばかりが揃っているので、ジャパニーズパンクの格好良さも十分に楽しむことも出来るのは間違いない。キャッチー極まりない第3曲「エルサレムの屈辱」なんて単純に格好良いパンクナンバーだし、第7曲「米ニスト」と第8曲「クリスタル・ナハト」なんてパンクらしい初期衝動と瞬発力とキャッチーさに満ちているのに、あぶらだこにしかない独自の不穏さもしっかりと出ているのがまた素晴らしいのだ!
 しかしそのパンクの範疇から外れた曲もやはり存在しているのもまた事実だ。不穏さ極まりないダークなポジパン曲である第6曲「原爆」はあぶらだこの狂気に満ちているし、第12曲「童愚」なんてくぐもったインプロ風のサウンドにヒロトモの呻き声の狂気しか無い奇声のみが乗るという謎の1曲だ。最初期からこんな狂った楽曲とストレートなパンクナンバーの両方を鳴らしていたあぶらだこはやはり異端だったのではないか。そして第14曲「OUT OF THE BODY」はこれ以降のあぶらだこに通じる悲しみに満ちたダークさを持った楽曲。そして以降のあぶらだこは前人未到の孤高の世界に旅立ち、誰も追いつけない歪みまくったハードコアパンクを展開するのも頷ける。



 まだ覚醒する前のあぶらだこの音源集であるが、普通にジャパニーズパンクの名盤だと僕は思うし、この頃からあぶらだこにしかない奇妙な歪みと不穏さは確実に存在していたのだ。そして以降のあぶらだこは完全なる孤高。日本が生み出した誰にも真似出来ない世界を作り上げた最強のハードコアパンクの初期衝動が今作にはある。そしてやはりあぶらだこはあぶらだこでしかないし、誰もあぶらだこの代わりになんてなれやしないのだ。
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■あぶらだこ5th(月盤)/あぶらだこ


あぶらだこあぶらだこ
(2000/10/25)
あぶらだこ

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 日本が誇る唯一無二のカオティクハードコアバンドあぶらだこの00年発表の5th。ギターの大國氏が加入後初のアルバムである。イズミ氏脱退のピンチを極東最前線に収録の「横隔膜節」で高らかに乗り越えた後の作品だが、一曲一曲が2分3分の短い尺の楽曲の中で圧倒的情報量と転調しまくる構成と展開が繰り広げられるプログレッシブハードコア絵巻な全10曲である。



 第2曲「やまびこ」からヘビィなギターリフと歪んだベースラインが空間を支配しながらも、変拍子と転調を駆使した怒涛のカオティクなサウンドを展開する。明確な旋律をしっかり持ちながらもそれはズタズタに解体され、強烈な音圧で鳴らされている。第4曲「肴核」でも和の旋律を持つイントロから一気に性急なパンクサウンドミーツポリリズムな変態ハードコアを展開。今作の楽曲は尺の短いコンパクトな楽曲の中で何曲分にも及ぶ旋律の変化とアイデアをこれでもかと詰め込んだ事によって、分かりやすいアバンギャルドさを持つ作品になっている。ヒロトモ氏のボーカルも矢張りキレまくっている。拍とかそういった概念を自由に乗りこなしながら、奇声を駆使した叫びを聞かせる。
 第8曲「律動」から第9曲「冬枯れ花火」の流れは今作で蠢いている混沌が今作で最もいる箇所だと思う。ヘビィでやたら軽快なベースから祭囃子のビートと、ヒロトモの哀愁ある歌と、ポリリズムと少しばかりのキャッチーさとノイズが目まぐるしく展開される「律動」から、今作で最も分かりやすい旋律を持ちながらもそれをズタズタにし、僅か3分で見事に起承転結を体現し、ラストは演歌調の旋律で幕を閉じる「冬枯れ花火」と計算された混沌が一気に暴発する、あぶらだこにしか出せない混沌の音塊を見せているのだ。そしてノイズ塗れのプログレ絵巻「過去過去去来」で今作は幕を閉じる。



 あぶらだこの持つ計算され尽くした正気を保ちながら狂気を放つカオティクハードコアサウンドをよりハードコアとしての攻撃力を高め、コンパクトな楽曲の中に無駄無く詰め込まれたアイデアと混沌が今作ではジェットコースターの様に止まる事無く繰り広げられている。 あぶらだこ史上、変態性を全面に押し出した今作、全てを置き去りにし孤高のバンドとして闘うあぶらだこの破壊的混沌が圧縮されパッケージングされている。彼等は奇天烈でありながらも、僕達をいつも嘲笑うぬらりひょんの様だ。

■翌日/あぶらだこ


翌日翌日
(2004/01/24)
あぶらだこ

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 04年に発表されたあぶらだこ唯一のシングルである今作は、1stアルバムである「木盤」のラストを飾る混沌に満ちた名曲である「翌日」のライブ音源であり、その1曲のみが収録されている。しかし「木盤」では7分半であった曲が今作では約24分の長編としてアレンジされており、それにライブ特有の緊張感と張り詰めた空気と先の読めない恐怖心みたいな物が音源に色濃く反映され、あぶらだこの異質さが浮き彫りになり、そして後にも先にもあぶらだこが唯一無二の孤高のバンドである事を証明している。



 裕氏の図太いベースの音から今作は幕を開ける。序盤はインプロ的なセッションの様な先が全く読めない不穏さが空間を埋め尽くし、ほぼ大國氏のノイジーなギターで埋め尽くされている。そこに裕氏と伊藤氏のビートが緩やかにグルーヴを計り、さざ波がうねりを強めて大國氏のギターとはまた違う狂騒の下準備を整え始める。やがて大國氏のギターがよりうねりを強めながらリズム隊の作るビートに絡み合ってゆき、その頃には原曲である「翌日」が表情を見せ始める。
 ベースが印象的な「翌日」のベースラインを奏でる頃には、ギターはメロディーや音階を放棄した、狂騒を鳴らす物としてひたすらノイジーに暴れ、伊藤氏は手数をかなり増やし、ポリリズムの反復によるプログレッシブなビートとグルーヴを作り出して、三者の音が一つの計り知れない音塊として存在する。終盤で完全な形で完成された「翌日」にヒロトモの絶唱な乗った瞬間に、輪廻の渦の様な、逃れる事の出来ない混沌の坩堝が完成する。
 この世の全てを嘲笑うかの様な、誰も平等に逃れる事の出来ない、命の始まりと終わりを体現した生命の因果と輪廻の様な物を、この計り知れない音の化け物は作り出しているのだ。



 バンドがどのような意図で今作をライブで演奏し、音源として発表したかは僕には分からない。だが今作に存在する「終わりの始まり」と「始まりの終わり」が同居したかの様な因果律は底知れぬ渦を作り出している化け物だ。
 今作を聴いて宇宙を感じるのか、生命を感じるのか、彼岸を感じるのか、それは聴く人によって違うし、それぞれが想像する物だ。ただ「翌日」だけは何があってもこの世にやってくる。あまりにも重く、逃れられない「確定事項」として。

■あぶらだこ2nd(青盤)/あぶらだこ


あぶらだこ(2)あぶらだこ(2)
(1996/01/25)
あぶらだこ

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 日本のアンダーグランドが誇る、屈指のプログレッシブハードコアバンドであるあぶらだこの86年に発表された2ndアルバム。通称青盤である。(あぶらだこのアルバム名は全部あぶらだこである。)
 当時あまりにも奇怪な内容にレコード会社から販売する事が出来ず、自主制作で販売された代物である。そしてあぶらだこ屈指の奇怪さと異形さを誇りながらも、今なお色褪せる事の無い大傑作である。僕があぶらだこで一番好きな作品もこの青盤である。



 収録時間は12曲で25分と、かなりコンパクトな作品ではあるが、その短い収録時間には異形のカオスがどこまでも漂っている。オープニングを飾るインストナンバー第1曲「北極」から乱れ咲く変拍子の嵐、そして第2曲「29」にて混沌は一気に最高潮に!圧倒的な技術に裏打ちされた楽器隊のプログレッシブな演奏に、ヒロトモのぬらりひょんの喋り声みたいなボーカルが乗り、既に他の何処にも属さない圧倒的な個性を放っている。
 やたらメロディアスなのに、それが逆に余計おぞましさを感じてしまう第4曲「祝言」や第6曲「陰徳」。第7曲「南極」を皮切りに一気に突風の様に駆け抜けていく後半のカオスの数々!特に祭囃子の様なドラムが特徴的な第10曲「四部屋」は名曲!!
 そしてこのアルバムのハイライトはやはりラストの第12曲「アンテナは絶対」であろう!やたら哀愁を漂わせるベースで幕を開けコーラスのかかったやたら泣きのメロディのギターフレーズに性急に変拍子を繰り出すドラム、そしてヒロトモが繰りに出す深い意味がありそうで、でもそんな物は無さそうな感じの言葉の数々!!あぶらだこには似合わない言葉かもしれないが、どこまでもメランコリーな名曲だといえる。



 このアルバムから、木盤でサポートをしていた吉田達也から、現在でもメンバーである伊藤氏がドラムを叩いている。伊藤氏は吉田達也に負けず劣らず素晴らしいドラマーである。そしてギターのイズミ氏が最もブチ切れてたのは間違いなくこの青盤ではないだろうか。
 あぶらだこは現在までマイペースながらも活動を続け、数々の名作を残している。しかしこの青盤は、80年代ハードコアパンクの金字塔であり、ハードコアパンクのバンドでありながら、その音楽性を一気にブチ壊して、未開の極地に旅立ってしまったバンドが残した、規格外の大名盤、必聴!!!!!

プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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