■2010年11月

■The Visitors From Deepspace/COALTAR OF THE DEEPERS


THE VISITORS FROM DEEPSPACETHE VISITORS FROM DEEPSPACE
(1994/04/21)
COALTAR OF THE DEEPERS

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 今や特撮を始め、多方面で活動するNARASAKIのメインのバンドがこのCOALTAR OF THE DEEPERS(以下COTD)である。様々な音楽性を自在に変化させているバンドであるが、COTDのサウンドの基盤である、シューゲイザー×スラッシュメタルのサウンドは初期からの基盤であり、それを十二分に体感出来るのが、94年に発表されたこの1stアルバムである。未だにファンの間では名曲と語り継がれている楽曲揃いの充実の一枚である。



 第1曲のTHE CUREのカバーである「Killing An Arab」から原曲破壊のゴリゴリのヘビィネスサウンドと狂気値を振り切ったデスボイスでで攻め立てる!そして必殺の第2曲「Amethyst」で魅せるカンノ氏の正確無比なドラミングとズクズクと刻みながらもキャッチーな轟音リフが堪らない!良い感じでツボを突いてくるキメもまた気持ち良い!激しくもギターロックとしてのキャッチーさやポップさも忘れないのはCOTDのサウンドの大きな特徴である。第5曲「Summer Days」の印象に残る美しいアルペジオから一気に脳汁が溢れ出る様な攻撃的かつ宇宙行きの必殺のリフ!NARASAKIの甘い声と疾走感が見事にマッチしている。そして第6曲「Snow」は浮遊感とメランコリーなメロディが美しい1曲。徐々に胸を詰まらせる哀愁のサウンドからラストの轟音の嵐は惚れ惚れする。ハイライトはCOTD屈指の大名曲である第7曲「Blink」だろう。2カウントから雪崩れ込む轟音、サビでの刻みのリフの正確無比さから、ワウを駆使しシューゲイズする音。カンノ氏のドラムも一段とキレており、ラスサビ前のデスメタル的なラインから再び轟音へと自然に繋げるのは屈指の構成力である。そしてドラマティックな大団円なラストと一寸の隙も見当たらない。



 今作が94年発表とは思えない位に斬新な音の数々、疾走感と攻撃性と即効性溢れる楽曲、そこに激しさだけでなくメロウさや美しさを自然な形で融合させてるのは本当に凄い。今作以降COTDは様々なアプローチを見せるが、やはり原点はこのアルバムでの衝動と即効性であろう。キラーチューンしかない名盤!轟音の宇宙へのパスポートだ。



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■サヨナラクソ世界/PIGMEN


サヨナラクソ世界サヨナラクソ世界
(2008/05/21)
PIGMEN

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 90年代に活動してたポストハードコアバンドFunhouseを母体にして結成されたハードコアバンドがこのPIGMENである。今作は2008年に発表された2ndアルバムであり、デラシネの風間コレヒコが加入してから初の音源である。リリースは日本が誇る爆裂音源製造工場Less Than TVから。
 8曲で10分未満のショートカットチューンの嵐だが、圧倒的な濃度と情報量を持った音が嵐の様に吹き荒れていく。ハードコアでありながらも歌詞は聞き取りやすく、戦争や社会風刺をテーマにした歌詞がユーモアと毒気たっぷりに吐き出されていく。鋭角のパンク・ハードコアの殺気立った音の殺傷力は抜群である。

 第1曲「FREEDOM / 君ハ何処ヘ堕チタイ?」から圧倒的に早いファストコアな音で攻め立てる!ストップ&ゴーな緩急が見事な第3曲「NEW CITY IS HEY CITY / 希望の王国」の様な曲では、バンドのセンスの高さと演奏力を見せ付けている。
 特にお見事なのは第5曲「FRIENDSHIP / 戦争にゴー」である。結城氏の独自の言語感覚で脳髄を焼きつかせる言葉の数々に、コレヒコのテンションの高いハイトーンのコーラスが見事な掛け合いを見せている。圧倒的な手数と変拍子を繰り出すドラムも凄まじい、そして必殺のギターリフと、ハードコアを基盤にしながらも、アイデアとセンスが十二分に発揮されている。1分半の中で見事に変幻自在なしなやかさを持った楽曲だ。
 第7曲「WISH YOU WERE HERE / 未来」は唯一物悲しさを持った1曲。Funhouseで言うなら「The Angel(A Wish)」の様な楽曲であるが、ノイジーなサウンドに、この世の終わりみたいな虚無感を感じる。ギターの音はまるで放射能の雨であり、繰り出されるドラムはミサイルの雨、ベースは爆破していく地雷の様だ。

 1st「少年アルトラ」以上に速く、危機感を募らせる破壊力を持った楽曲が増えた様に思える。ユーモア満載ながらも笑えないシリアスさも併せ持ったのは、やはりコレヒコの加入が大きいだろう。スローペースな活動ながらも、このバンドが残している爪痕は大きい。百戦錬磨のハードコアの奇才達による、ラジカルかつ、即効性と毒素たっぷりの危険な音楽だ。

■刺したい/百蚊


刺したい刺したい
(2007/09/19)
百蚊

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 福岡在住の4ピースポストパンク・ジャンクロックバンド百蚊の1stアルバム。全7曲、それぞれの曲で見せる表情は実にバラバラ。フロントの弦楽器隊3人ともボーカルを取り、計算高さと抑えきれない狂気がギリギリのバランスを保ちながら、いつ何が起こるか分からない展開をしてゆき、聴き手を混乱に導いていく。

 第1曲「エンゼルフィッシュ」はアンビエントな感触を持った不穏の1曲。音数少な目の音で少しずつ展開し、梶原の病んだボーカルが恐怖感を煽る。そして中盤から美しいノイズギターが響き、一気にジャンクロックへと変貌する。そして終盤のノイズギターの応酬!一気に狂気は加速する。と思ったら第2曲「ライオット」はキャッチーかつパンキッシュに変化する。博多仕込みのジャンクさとノーウェイブ感を見事に見せ付けている。
 不穏のベースラインとピアノ、破綻寸前の音から一気に制御不可能なブチ壊れ具合を発揮するパラノイアなナンバーである第3曲「刺したい」は秀逸である。梶原が一気に全てを形振り構わず破壊し尽くしている。「嘘をつけ!!」のシャウトから一気に形が崩壊する楽曲、通りすがった人々を全員刺し殺していくかの如きトチ狂った様は絶句である。
 第4曲「Sick Girl」の奇妙なガレージパンクさ、第5曲「シングルコイル」の日本人らしいセンチメンタルさをフォーキーに表現した楽曲、第6曲「Telephone Number」でのシングルコイルの鋭角ギターと変拍子と掛け合いのボーカルが生み出す奇妙なポップさ、それぞれが人を食ったかの様に変貌していく。まるで聴き手を指差して笑うかの如く。そしてシューゲージングな美しさを持った歌物ナンバーである第7曲「スカイライン」で幕を閉じる。

 荒涼とした世界を気持ち悪く、そして猟奇的に表現しているのは見事だ。しかもそれらは綺麗にまとまっていないからこそ、より鮮明に浮き彫りになっている。普通そうな大人しそうな顔をしてる人間が実は一番狂ってるのかもしれないと思ってしまう。お見事!

追記:梶原さんは無茶苦茶美人で、なおかつ脚が無茶苦茶細いです。メンバー全員ライブでは狂ってますが、一番トチ狂ってるのは梶原さんです。素なのか演じてるか分からないから余計に。

■雨に撃たえば...!disc2/七尾旅人


雨に撃たえば...!disc 2雨に撃たえば...!disc 2
(1999/08/04)
七尾旅人

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 孤高のシンガーソングライターである七尾旅人が10代の終わりに完成させた99年発表の1stアルバムである。現在のエレクトロニカの感触は全く無い。宅録サウンドとアコースティックの狭間とも言える様な言えない様な音。そして独自の言語感覚で紡がれる歌は若さとかそうゆう物では片付けきれない程に痛々しいまでに心を晒した歌である。メロディアスでありながら分解された曲に、独特の不敵さと情緒不安定さを重ねている。簡単に何処のシーンに属しているとかそうゆう次元では語れない、完全にオリジナルな世界を旅人は10代でそれを確立させてた。



 子守唄の様なオルガンのイントロと旅人のパラノイアな言葉と不気味なコラージュが響く第1曲「最低なれピンクパンク...!」から異質の世界を一気に展開していく。そこから第2曲「ココロはこうして売るの(2)」のメロディアスなアコギのイントロから一気に不穏の轟音の渦が蠢き始める。アコースティックなサウンドに乗るの言葉の一つ一つがとてつもなく重い。美しきラブソングである第6曲「萌の歯」も素晴らしい。純粋過ぎて恐怖と美しさすら感じてしまう音数の少ないシンプルながらも福音の様な優しいメロディが響く。第8曲「コナツ最後の日々。」は哀愁と絶望的な世界を美しく描くレクイエムであり、第11曲「コーナー」は今作で最もポップかつ激しい楽曲でありながらも、七尾旅人の世界を別のベクトルで描きシンクロさせた名曲である。
 そして今作のハイライトであり、屈指の大名曲「ガリバー2」は七尾旅人という人間の世界を表現した曲である。若干チープなリズムとシンプルなギターの音と共に紡がれる言葉は、圧倒的な質量を持ち、一つ一つが心を突き刺していく。極私的なミクロの世界がじんわりと広がり浸透していく。10分の長尺ながらも、その音の一つ一つが言葉の一つ一つが、世界を塗り替えていく。言葉で上手く表現出来ないのが悔しい限りではあるが、是非聴いて欲しい。
 書ききれないがアルバムのサウンドの方向性はバラバラだ。ドラムン・シューゲイザー・サイケ・アコースティック・ジャズ・オルタナと楽曲によって表情をコロコロ変えていく音。しかしその音はどこまでも統率されており、どこをどう聴いても七尾旅人の音楽だ。それは第4曲「ルイノン(9 May'99)」の骨だけにまで削ぎ落とされた美しきゴスペルを聴くと分かるが、この歌の力が凄まじいのだ!どんな音も旅人のミクロの世界に飲み込まれていく。



 長々と書いたが、この作品の圧倒的な素晴らしさと世界はとても僕なんかでは文で表現出来ない。こうゆう表現者を天才という言葉で表すととチープになってしまうけど、七尾旅人は天才・奇才というカテゴリーすら不要なのかもしれない。
 旅人は作品毎にサウンドを変え、歌のベクトルも変えていく事になる。それらの作品は簡単に消費されやしない重さと存在感を持っている。この若き歌うたいの作ったミクロの世界を表現したアルバムは、最終的に聴き手のミクロに潜り込む優しい福音になった。屈指の大傑作、今すぐにでも聴いて欲しい。

■A Bureaucratic Desire for Extra Capsular Extraction/Earth


A BUREAUCRATIC DESIRE FOR EXTRA CAPSULAR EXTRACTION (ア・ビューロークラティック・ディザイアー・フォー・カプセラー・エクストラクション)A BUREAUCRATIC DESIRE FOR EXTRA CAPSULAR EXTRACTION (ア・ビューロークラティック・ディザイアー・フォー・カプセラー・エクストラクション)
(2010/11/24)
EARTH (アース)

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 SUNN O)))にも影響を与えたドローン破壊神Earthの91年に発表された1stアルバムである「Extra-Capsular Extraction」に、同時期にレコーディングされていた音源4曲を追加する形で再発されたのが今作である。「Earth 2」の様な無機質なドローン絵巻ではなく、あくまでもスラッジコア・ドゥームとしての初期衝動的なEarthの世界が展開されている。しかしながらこの時点でEarthはバンドとして確固たる物を獲得しており、当時からドローン・パワーアンビエント的なサウンドはある意味完成されていたといえる。



 組曲になっている第1曲と第2曲「A Bureaucratic Desire for Revenge」の存在感がまず凄まじい。単一リフを徐々に変化させてく展開。ビートは本当に最小限の音だけがインダストリアルな感触で鳴らされており、推進力の重いビートとリフがズルズルと這いつくばっている。そして第2曲にてボーカルを取るのは、あのNIRVANAのカート・コバーンである。ディラン・カーソンとは唯一無二の親友であったカートが歌っているのだ!カートの歌声はボソボソと今にも死んでしまいそうな絶望感を持ったテンションで遺言の様に言葉を紡いでいく。そして重たいビートとリフとアンビエントなノイズとシャウトとカートの歌声が病巣の様な世界を暴いていくかの様に響き渡る。第3曲「Ouroboros is Broken」は「Earth 2」のどこまでも無の等しいカルト的虚構の世界が既に完成されてた事を証明する1曲だ。第4曲「Geometry of Murder」では一転して、インダストリアルな感触のスラッジ・ドゥーム的世界を展開させているし、第7曲「Dissolution 1」などはGodfleshの様な無機質さと暗黒さを孕んだ完全なるインダストリアルナンバーだ。ビートがしっかりとした形で鳴らされている事に驚きを隠せない、Earthの別面を見事に見せ付けている。そしてラストはしっかりとEarth流ドローンサウンドに帰結するのは流石と言った所である。



 カートが参加している作品というのを抜きにしても、この作品はドローン・ドゥーム界隈ではかなり重要な作品であったと思うし、追加音源も素晴らしかった。このような形で再発してくれたサザンロードには頭が下がる。そしてこの世界観が大傑作「Earth 2」に繋がっているのもまた興味深い。「Earth 2」よりも格段に聴き易い作品でもあるので入門編としても最適だ。ディラン・カーソンの才能はこの頃から発揮されているのだ。



■被覆する閉塞/heaven in her arms


被覆する閉塞被覆する閉塞
(2009/02/11)
heaven in her arms

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 heaven in her armsの2009年に発表されたEP。前作「黒斑の侵食」で見せた激情系ハードコアの攻撃的なサウンドは薄くなり、より情緒性と静謐さが際立つ4曲入りのEPである。しかしそれは攻撃性とダークさをより際立たせる物になっている。長尺の曲が殆どで、この頃からHIHAは大作思考に移行し始めてるといえる。基本的なサウンドは前作の延長にあるが、より音は説得力を持ち、深い世界観を表現出来る様になったのではないだろうか?より美しさを増し、より漆黒へと近づいた見事な傑作である。



 第1曲「縫合不全」からバンドの進化は伺える。深遠なるアンビエントさと美しいポストロック的なフレーズにシリアスなポエトリーリーディングが入っていく。不穏さと悲しさは少しずつ濃度を増し、そしてポエトリーと悲痛な叫びが混ざり合い始め、一気にシンフォニックかつ悲しみに溢れた激情パートに移行しバーストしていく、ドラマティックな名曲だ。
 第2曲「錆びた爪痕」も同様に抜け出す事が困難な深い森に迷い込んでしまったかの様な1曲。少しずつ絶望感で埋め尽くされてく楽曲は悲しみとダークさに比例して激しさを増し、全てを焼き尽くす漆黒の炎の様に燃える。ディストーションのギターとクリーンなアルペジオのフレーズが混ざり合い、悲しみの残響音に乗るのは「眼球をつるせ!」という悲しい叫び。そして再び美しいアルペジオが響くパートから絶望を鳴らす轟音が響き渡る。
 そしてハイライトである第4曲「角膜で月は歪む」はHIHA屈指の大名曲であろう。シンフォニックな美しさを持った激しいギターが響き渡る。のっけからクライマックスな壮大な深遠さと、絶望感と、少しばかりの慈悲深さと、それらの感情が一気に駆け巡っていく。



 そしてHIHAは次回作「幻月」で更に深い怨念と悲しみのマグマを表現する世界へと旅立つ。この作品でHIHAは確固たる世界を確立した。他の何処にも属さない孤高の轟音を鳴らすバンドとして、確かな強さを今作でHIHAは手に入れた。

■PARADAISE-K/割礼


パラダイスK [紙ジャケット仕様] [ボートラ付]パラダイスK [紙ジャケット仕様] [ボートラ付]
(2010/01/20)
割礼

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 長らく廃盤になっていた割礼の86年発表の1stアルバムにリマスターを施し、追加音源を収録し再発されたのが今作である。今の割礼よりもストレートでロックな曲が並んでいるが、この頃から割礼の世界観は完成されている事を見事に証明している。20年以上前の作品ながら、今でも色褪せない新鮮さを確かに持っているし、この作品は当時のサイケデリックロックやパンク・ニューウェイブの流れを感じるものだが、しっかりと割礼としてのカラーを確立している。
 幻想と甘さと陶酔感と哀愁。これらは割礼が昔から今に至るまで揺るがずに持ち合わせている物であり、その確かな芯があるからこそ、今作以降スロウかつダークな楽曲がメインになってもバンドとしては何も揺らぐ事は無かったのでは無いだろうか?

 第1曲「キノコ」は現在のスロウコアな割礼の流れに通じる横揺れのサイケデリックナンバー、日本のサイケの先人達へのリスペクトを感じる曲でもあり、哀愁漂うノイジーなギターが印象的だ。しかし第2曲「ベッド」はBPM速めな縦ノリのロックナンバーであり、宍戸の声も若々しい。Television等のニューヨーク・パンクの流れも見事に継承。歯切れの良いギターのカッティングも気持ちが良い。
 第4曲「ゲーペーウー」が今作のハイライトではないだろうか。シンプルながらもうねるベースラインに、シンプルなビートと、パンキッシュながらもルーツミュージックとしてのロックを感じるギターフレーズ。割礼は根本の部分は今も昔も変わってない。宍戸のセンチメンタルな歌とアッパーかつ横ノリな曲調が見事にマッチしている。
 後に発表されるライブ盤にも収録されている第5曲「ラブ?」のサイケデリックな陶酔感。第7曲「光り輝く少女」のスロウかつ幻想的な世界観。それらは今も昔も決して揺らがない割礼のカラーをしっかりと浮き彫りにしているナンバーだといえる。

 今作の再発で、音源を持っていなかったファンも、新たに割礼を知った人も、割礼のバンドとしての若かりし時代を知る事が出来るであろう。割礼はこの作品以降メジャーから音源をリリースしたり、バンド自体が無くなったりしながらも今に至る。強靭なる世界を持ったバンドの記念すべき最初の足跡である。

■kamomekamome/kamomekamome


kamomekamome(RE-MIX Edition)kamomekamome(RE-MIX Edition)
(2007/11/07)
kamomekamome

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 柏の伝説的ハードコアバンドであったヌンチャクの向達郎を中心に結成されたkamomekamome。2005年に発表された1stアルバムが今作である。ヌンチャク時代の「3コードで悪いか?」なシンプルかつ暴力的なサウンドは此処には無い。複雑な楽曲構成と、壮大なスケールの楽曲の数々。内省的な歌の世界。全てがヌンチャクとは別物になっている。10曲で70分近くの収録時間も、この作品がとてつもない濃度と壮大さを持っている事を表す証拠になっている。
 シャウトに頼り過ぎない繊細な向の歌、複雑に絡み合う二本のギター、変拍子とポリリズムが交錯するドラムと不気味なうねりを持ったベース。全てが規格外になっている。

 第1曲「ハミングエンバーミング」からその世界観は健在。約2分半の短い楽曲ながらも、プログレッシブなフレーズとヘビィなリフが交錯して、絶望的な歌詞の世界観を彩っていく。メランコリーなメロディが胸を突き刺していく。今作のキラーチューンであり、ドラマティックな展開と、向の悲痛なシャウトとヘビィなサウンドが特徴的な第3曲「くくりヶ丘」、ポリリズムが撃ち乱れるリズムと、それを乗りこなす独特の拍で紡がれる歌から、ポストロック的なパートへと落ち着き、一気に激情パートへとワープし、再びスロウコアへと回帰する百花繚乱の第5曲「コピーアンドペースト」と多彩な楽曲の数々は聴き所が多い。
 第6曲「秘密のテープ」は見事なまでのプログレッシブメタル絵巻である、Toolを彷彿とさせるベースのイントロから、Meshuggahをメロディアスかつ陰鬱にしたかの様なフレーズが次々と咲き乱れ、次第にスロウコア的な美しさと重さを孕み始め、再びプログレッシブな病んだ世界へと戻っていく。会心の1曲だ。
 アコースティックギターの絡みのイントロから一気にヘビィなプログレッシブリフが咲き乱れ、四つ打ちのビートで打ち抜くオープニングが印象的な第8曲「巻き戻らない舌」はカモメ流のプログレ絵巻だ。複雑さとエモさを良いバランスで融合させ、全編渡ってハイライトといった出来になっている。一気にダークさを加速させて向の痛々しい叫びが胸を撃ち、ストリングスとピアノのパートで静かに終わりを迎えていく。
 そして今作中最も優しいメロディと感情に訴える説得力をもった激情ナンバー「スーツデリケイト」でEDを迎える。

 複雑な楽曲を乗りこなす演奏力と説得力を持ち、数多くのフレーズと世界観の一つ一つがしっかりと何かを訴えかけていく。今作以降、カモメはこの演奏力とドラマ性はそのままにハードコアに接近したサウンドに変貌を遂げていくが、今作のハードコアを通過したプログレッジブと病んだ世界観が咲き広がる様は必見だ。この作品から柏の伝説は新たな形で動き出した。

■Dopesmoker/Sleep


DOPESMOKER(直輸入盤・帯・ライナー付き)DOPESMOKER(直輸入盤・帯・ライナー付き)
(2009/06/27)
SLEEP(スリープ)

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 当時メジャーからリリースが中止され、発売される事なくSleepが空中分解し、99年にようやくリリーズされた全1曲のスラッジ・ストーナー史に残る大傑作であるSleepの3rdアルバム「Jerusalem」に削られてたパートを追加し、リマスターされたのがこの「Dopesmoker」である。1曲一時間超えの圧倒的なスケールを持ったマリファナ騎士団のエルサレムを目指す旅を表現した大作であり、Sleep史上はおろか、歴史的な名盤になったといえる作品であろう。

 楽曲は基本的に単一のリフが延々と繰り返されるギター、それに上手く変化を付けてくリズム隊といった非常に聴き手を選別してしまう内容ではあるが、圧倒的な音圧で鳴らされる一寸の隙の無い緊張感と、ズルズルと聴き手をドープな世界に引きずり込むリフ。そして楽曲中の三度のギターソロは素晴らしい。特に合間合間のソロは、聴き手の脳髄から危険な分泌物を全て引きずり出しかねない圧倒的な煙たさと酩酊感を持っていて、マリファナの煙にまみれてる感覚になってしまう。単調な構成でここまでの物に仕上げてしまっている事、所々の見せ場となるパートの圧倒的な存在感の強さ、そして引き摺る単一リフで終わるラスト。最初から最後まで聴き所しかない。
 そして今作ではボーナストラックとして未発表曲である「Sonic Titan」のライブ音源も収録されている。「Sleep's Holy Mountain」の頃のSleepに近い感触の楽曲であり、ストーナーなサウンドがドープに這いずり回る名曲だ。こちらもギターソロがかなり素晴らしいプレイを見せているので是非聴いて欲しい。終盤の一気に昇天してしまいそうなサウンドも最高だ。

 SleepはHigh On FireとOMの二つに空中分解してしまったが、現在でもそれぞれが素晴らしい音楽を鳴らしている。Sleepというバンドの存在は奇跡だったとすら思ってしまう。今作で鳴らされている音の一つ一つの存在感は凄まじい。未開の地に到達してしまったSleepの歴史的作品である。

■脳内フリクション/SPIRAL CHORD


脳内フリクション脳内フリクション
(2005/04/27)
SPIRAL CHORD

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 元COWPERSのゲンドウ、元ナンバーガールの中尾憲太郎、200MPHのヘラという日本のオルタナティブシーンを引っ張ってきた猛者によって結成されたのがこのSPIRAL CHORDである。2005年に発表されたこの1stは初期衝動全開のフルスロットルな作品に仕上がった。
 COWPERS時代からの不協和音を巧みに使ったゲンドウならではのメロディーは健在、しかしそれ以上にライブ盤かと思ってしまう勢いの音質の悪さ、荒ぶるディストーションの濁流にゴリゴリに弾き倒す中尾節なベース、変拍子を織り交ぜながらバーストするドラム。これは3ピースという形での音の殺し合いと言っても過言ではない。ギリギリの調和を見事に保ちながら爆走していくガレージな感触のサウンド、メーターなんてとっくにぶっ壊してしまってるではないか!

 ノイジーなサウンドが一気にぶつかり合うインストナンバーである第1曲「Theme Of Junkhead Vs Trash Boy」から第2曲「New Truth」に雪崩込む。不協和音とエモーショナルな歌とメロディ。必殺のリフと、うねるリズム隊!名刺代わりにするには殺傷力が強すぎるナンバーだ!
 第4曲「脳内フリクション」は最初から爆走するソリッドさが印象的だ、硬質なサウンド達が文字通り軋轢を起こしている。ベースラインが非常に印象的な第5曲「Hell Or Heaven」では空間系も巧みに使ったギターフレーズも素晴らしい少しBPM遅めの1曲、間奏の徐々に各楽器がカタルシスを起こす様は必見だ!そこからまた暴走していく第6曲「煉獄XTC」と、全編に渡って爆走する緊張感は止まらない。そしてラストの第10曲「Last Gasp」後期COWPERSの歌心を感じる1曲ながらも、やはり軋轢は健在。最後の最後まで全てを吹き飛ばすノイジーなカタルシスは貫かれ、ラストのゲンドウのシャウトが胸を熱くしていく。

 それぞれが積み上げたキャリアをしっかりと生かしながらもそれに留まらないサウンド。三者三様のカラーが見事に軋轢を起こし奇跡的に不協和音のハーモニーを作り上げた今作。ライブでのテンションもそのままに真空パックでパッケージングされてると言えるのではないだろうか?
 日本のオルタナティブロックを支えた当事者同士だからこそ生れ落ちたマスターピース!爆音で聴け!!
 

プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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