■2011年03月

■The eyes of single eared prophet/Envy


The eyes of single eared prophetThe eyes of single eared prophet
(2000/07/18)
envy

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 7EPである「最後の証明の瞳」に未発表曲2曲を収録してCD化されたのが今作である。しかしながら単なる企画盤的なEPでは全く無い。僅か5曲の収録曲でありながら、激情系のシーンを作り上げてきたEvnyというバンドが最も激しく、最も痛々しく、最もブチ切れてると言っても過言では無い傑作だ。Envyが生み出した大名盤「君の靴と未来」同様にEnvyを語る上では絶対に外せない作品だと思う。それほどまでにこの作品に収録されている5曲は大きな存在感を持っている。



 第1曲「Echo regenerates」メロディアスでありながらも、ダークな緊張感を持ったハードコアで攻めまくっている。僅か3分にも満たない尺でありながらも、とんでもなく痛々しい感情をドラマティックに鳴らしている。第3曲「Awaken eyes」なんかは静謐なアルペジオから一気に轟音バーストの悲痛な音に変貌を遂げ、終盤で一気に加速していき、悲しみと美しさが交差していく様なんか神秘的ですらある。第4曲「Testimony to the existence」は現在のEnvyにも通じるであろう、光すら見えてくる神々しい1曲だ。1分半の尺であそこまでドラマティックで美しい曲を鳴らす事が出来るのはEnvyが形だけでは無い、本当の意味での激情を奏でているバンドだからだと思う。



 Envy史上最も激情系ハードコアの部分が出ている作品であり、とんでもない濃度で痛々しい悲しみを激情として鳴らした作品でもある。後のEnvyの作品にも通じる箇所も幾つもあり、かなり重要な作品だと僕は思ってる。それ以上に単純にEnvyの激情系ハードコアとしての力の強さを思い知らせるには十分過ぎる作品だ。EPでありながら重要作品、爆音で聴いて感情のまま叫べ!



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■The Inalienable Dreamless/Discordance Axis


Inalienable DreamlessInalienable Dreamless
(2005/01/04)
Discordance Axis

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 グラインドコアの歴史に大きな足跡を残したDiscordance Axis(以下DxAx)の00年にHydrahead Recordsからリリースされた作品であり。全17曲の目まぐるしいスピード感と、ベースレスとは思えない押しつぶされてしまいそうな音圧、カオティックでありながらも切れ味が鋭過ぎるギターリフと、光速かつ凄まじく複雑でテクニカルなビートの嵐、JON・CHANGのカリスマ性と狂気溢れるシャウト、ここまで危険で人を狂わせる音は中々無いと言っても良いだろう。



 終盤の第14曲~16曲を除くと、2分未満の曲ばかり、わずか1分ばかしのショートチューンが殆どである。グラインドコアとしての圧倒的な速さを誇り、とてつもなくテクニカルに止まる事を知らない暴走列車を運転している作品だ。それでいて全く単調にはなっておらず、わずかな尺の中でこれでもかと必殺の武器を使いまくり、グラインドコアとしての王道のサウンドでありながら、そこに甘える事無くカオティックでありノイジーな音は更に破壊力を高めている事になっている。スラッシュメタル的なリフは速さを追求するあまりに、耳にこびり付いて離れないでいて、光速回転しまくる死神の鎌の様なジェノサイド具合だ。何よりドラムが本当に凄まじいの一言、本当に人間が叩いているのかと疑いたくなってしまいそうになる速さで繰り出されるブラストビート、しかしブラストを基調にしながらも、とてつもなくテクニカルで複雑なフレーズを効果的に入れる事によって楽曲のアクセントを付けるだけでなく、より禍々しい音に仕上げてしまってる。その音にJON・CHANGのハイトーンシャウトからデスボイスまでを巧みに使い分け、病的な不健康さを持ったパラノり具合で撒き散らすゲスいシャウトが乗ってDxAxの音が誰にも追いつけない領域の音になっているのだ。



 グラインドコアな作品としては勿論だが、もっと広義な意味でのハードコアの作品として今作の存在価値はかなり大きい。00年代のカオテイック勢の台頭を予言しているかのような音の混沌具合、単純な物差しではとてもじゃないけど計れない作品だ、何よりグラインドコアの純粋な意味での狂気と破壊力もメーターを振り切りまくっている。この地獄の超光速スプラッシュマウンテン、一度乗ってしまったら抜け出せなくなる事は保障する。グラインド好きは勿論、激しく狂った音が欲しい人は間違いなく必聴盤。



■Jane Doe/Converge


Jane DoeJane Doe
(2001/09/04)
Converge

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 ボストン出身のカオティックハードコアのシーンを作り上げたといっても過言では無い、00年代のハードコアシーンを語る上では絶対にに外す事の出来ない最重要バンドConverge、そのConvergeが01年に発表したのが今作であり、00年代を代表するマスターピースの一つだ。一歩間違えれば崩壊してしまうアンバランスさでありながらも、混沌とした音が奇跡のバランスで組み合わさった瞬間、とてつもない破壊力を待ったカタルシスとノイジーな破壊音の雪崩の向こう側にある、百花繚乱の美しき地獄絵図と言っても過言では無い芸術性、文字通りカオティックハードコアであり、しかしその枠の中じゃ収まりきれない圧倒的な力を持った音楽がこの作品には存在する。



 第2曲「Fault and Fracture」から名刺代わりと言わんばかりにどこまでもConverge節炸裂の混沌具合にブチ抜かれる、ノイジーであり、ポリリズムを乗りこなすテクニカルなギターのフレーズ、変態的なリズム隊のビートに、力の限り絶唱するボーカル、コロコロと変化していく展開、どの音も圧倒的な説得力と破壊力で鳴り響き、死神がサークルモッシュしてる轟音地獄へと連れて行かれる。第6曲「The Broken Vow」の様などこかキャッチーさを持っている楽曲でもそれは健在、一撃必殺のリフの応酬から、いきなり精神世界のカタルシスに持っていかれ、終盤で極悪ハードコア天国で暴れ狂うという2分弱に詰め込まれた様々なアイデアをどこまでも肉体的に表現している。全体的にコンパクトな形になっている事も、ハードコアとしての即効性や暴力性をしっかりと真空パックしている大きな要因になっていると思う。第8曲「Heaven in Her Arms」が特に素晴らしい楽曲だ、本当に目まぐるしく曲は展開し、暴力性の前半、ドゥームなヘビィさを持った後半、そしてそれに続く美しくノイジーな第9曲「Phoenix In Flight」と、この流れは何回聴いても鳥肌が立つ。そして圧倒的なアート性と美しさで鳴らされている11分以上に及ぶ大作である第12曲「Jane Doe」でこの混沌は一気に神々しさと禍々しさを以って響き渡る。リスナーはそのあまりの美しさに昇天してしまうだろう。



 この作品がConvergeをカオティックハードコアの最重要バンドとしての地位を確立させる大きな要因になった事は間違いない。00年代のハードコアとしての形を作り、数多くのフォロワーを生み出した、しかし今作はシーンのオリジネーターの力を嫌でも感じるし、ここまでの域に達してるバンドは後続のフォロワーの中では皆無といっても過言では無い。Convergeはその後も進化を続け、今に至るまでシーンのトップに君臨し続けてる、王者が王者としての椅子を獲得するに相応しい作品だ。この作品が無かったら00年代のハードコアは全く違う物になっていただろう。それほどまでの力がここに存在するのだ。



■The Martial Arts/Cinemechanica

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 アメリカはジョージア州出身の4人組爆裂系マスロック・ハードコアバンドCinemechanicaの06年発表の1stアルバム。Tera Melosの様な疾走感溢れるジェットコースターの様なマスロックに、エモーショナルハードコアの成分をこれでもかと言わんばかりに注入した結果、テクニカルなだけで終わらない、どこまでも激しさと快楽性の強いサウンドになってしまっている。全9曲30分とかなりコンパクトに纏めてる事もあってか、作品全体通してテクニカルなピロピロマスロックサウンドと、その中から滲み出る男臭いハードコアな格好良さに陶酔してたら作品があっという間に終わってしまう。そんな作品だ。



 第1曲「Yen」から先ずブッ飛ばされそうなテクニカルかつエモーショナルな爆裂具合、At The Drive-Inがマスロックをやってしまった感じだ。テクニック・展開・メロディ・そして血管が切れそうなテンションのボーカルとどこを取ってもしっかりCinemechanicaのカラーを確立している。第2曲「Antsinjapants」も基本はマスロックでありながら、そこに90年代のサンディエゴ周辺のポストハードコアのバンドのカラーを感じるエッジの効いたギターリフと疾走していくエモーショナルサウンド!第5曲「Take Me To The Hospital」の様な若干スロウなインストナンバーでしっかりと作品にアクセントをつけながらも、マスロック・ポストコアバンドとしての懐の大きさをじっくりと聴かせているのは見事。そこからバーストしまくる破壊的な第6曲「Get Outta Here Hitler」を経て再びエモーショナル絶叫マシーンに突入していく第7曲「Ruins Of Karnac」のそれぞれのベクトルからCinemechanicaの音を見せ付けて、一気に混沌へと雪崩込んでいく流れは秀逸としか思えない。



 どうしてもテクニック先行になりがちで個性を生み出せないバンドが多かったりするマスロックの中でも、ここまで爆裂な必殺のサウンドとエモさとマスロックならではの疾走ピロピロサウンドは融合させてしまったバンドはいないのではないだろうか。マスロックがどうにも説教臭さを感じて苦手って人も、この即効性の高いエモーショナルハードコアサウンドは是非聴いて欲しい。マスロック好きは勿論、エモ・ハードコア・スクリーモなんかが好きな人も虜に出来る激しさと懐の深さをこのバンドに感じる。



■Yanqui U.X.O./Godspeed You! Black Emperor


Yanqui UxoYanqui Uxo
(2002/11/19)
Godspeed You Black Emperor

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 先日のI'LL BE YOUR MIRRORでも圧倒的としか言えない壮絶なアクトを見せ付けたGodspeed You! Black Emperor(以下GY!BE)の02年発表の3rdアルバム。そしてプロデューサーはスティーブ・アルビニと、この組み合わせによって作られた今作はとんでもないミラクルを起こしてしまった。実質全3曲でありながら70分超えの収録時間と何処までも圧倒的なスケールを持つ楽曲はどこまでもシリアスな緊張感を以って鳴らされている。大所帯バンドならではの重厚なアンサンブル。インストゥルメンタルだからこそ各楽器の音は聴き手に緊張感を与える。



 長尺でありながらも退屈なループは全く無く、一つの物語として音が起承転結をしっかり刻み込んでいく。静謐なパートでは管楽器のアンサンブルがオーガニックな感触と共に物語の語り部的な役目を果たし、燃え上がる様な壮絶な轟音パートになると、幾つものギターの轟音が怒りと悲しみを表現し、逃避する隙など微塵も与えないシリアスさで鳴らされている。シンプルでありながらもタイトなドラムは圧倒的なヘビィさを孕んでおり、楽曲に大きな緊張感を与える。オーケストラの様な緻密さを、ポストロックの軸で鳴らすだけではこんな音にならない、それ以上に大きな精神性がGY!BEに於いて大きな要因になっているのではないか。ポリティカルなメッセージを歌に頼らずどこまでも壮大なアンサンブルだけで勝負し、聴き手の想像力を喚起させていく。そこにあるのは美しい轟音バーストだけでなく、シリアスな悲しみと怒り、自然的な風景、聴き手によって様々な物を感じるのではないだろうか。特に組曲になっている第4曲と第5曲の「Motherfucker=Redeemer」は30分に及ぶとんでもない大作であり、とてつもない数の色彩が目まぐるしく点滅しているかの様なプリズムの世界が目の前に浮かんでくる作品だ。それぞれの楽器がそれぞれの色と音を奏でていて、それが一つになった瞬間にとんでもない轟音と共にこの穢れきった世界を浄化していくかの様な感覚さえ覚えてしまいそうになる。静謐でシリアスな中盤から熱量を上げてゆき、最後にビッグバンが起きたかの様な大爆発を想像させる終盤の轟音バーストは正に宇宙レベルの終わりと始まりを同時上映してしまっているかの様だ!



 mogwaiと共にポストロックのオリジネイターとして圧倒的な存在感を放っているGY!BEだが、時間だとか風景だとか、そういった四次元的感覚と、聴覚だとか視覚だとかいった五感をここまで刺激するバンドはいない。インストゥルメンタルとして出来る限りの事をやり尽くした果てにあったのは、ミクロとマクロの両方を支配する陳腐な感情や感覚を無効にする音の塊だった。インストゥルメンタルの究極体といっても過言では無い大名盤!!



■Souvenirs D'un Autre Monde/Alcest


SOUVENIRS D'UN AUTRE MONDE (別世界への追慕)(直輸入盤・帯・ライナー付き)SOUVENIRS D'UN AUTRE MONDE (別世界への追慕)(直輸入盤・帯・ライナー付き)
(2010/04/17)
ALCEST(アルセ)

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 様々なバンドで活躍するフランスのNeige率いるバンドがAlcestである。そのAlcestの2007年発表の1stアルバム。ブラックメタルを基調にしているが、ブラックメタル特有の殺伐とした狂気や極悪さは全く無く、ブラックメタルの美しい部分だけを抽出してどこまでも神秘的で美しい轟音を奏でている。今となっては地味に定着しているシューゲージングブラックメタルもこのAlcestがなければここまで音楽ファンの間で定着しなかったのかもしれない。21世紀型のポストブラックメタルの確かな礎になっている金字塔的大名盤だ。



 第1曲「Printemps Emeraude」が始まった瞬間に鐘の音の様な美しいシンバルの音から、一気に全ての景色を塗り替えてしまう美しい轟音が響き渡っている。センチメンタルな哀愁と、癒しの福音のメロディが鳴り響き、聴き手はこの世の物とは思えない幻想の世界へと旅立っていく。下手したらGODSPEED YOU! BLACK EMPEROR辺りに通じる重厚でクラシカルな音の世界。ブラックメタルの持つヘビィさの流れを180℃真逆のベクトルに変えた結果、ブラックメタルの壮大な世界観やクラシカルさを、地獄の憎悪ではなく、天界への祝福になってしまっている。
 特に第2曲「Souvenirs D'un Autre Monde」と第5曲「Sur L'autre Rive Je T'attendrai」が素晴らしい。前者はアコースティックギターの美しい音色から轟音が曇りなき光の様に視界に飛び込んでくる錯覚を覚えてしまいそうだ。シンシンと振り注ぐ雪や、切なさとメランコリーを刺激する雨模様の景色の先にある優しい温もりが安易に想像できてしまう。ここまで聴き手に一つのストーリーを想像させてしまう音は少ないと思う。後者は印象的な轟音のギターフレーズがどこまでも耳に残る今作のハイライトといっても過言では無い楽曲だ。トレモロリフはどこまでも美しく幻想的で、ヘビィな音はどこまでも壮大さを表現し、そして何処までも優しい音になっている。



 ヘビィさと美しい福音の融合という点ではベクトルは全く違うがJesuにも通じる部分はあるしAlcestの音はブラックメタルの重厚で壮大な世界観を愛する人間にも、シューゲーザーの緩やかで優しい轟音を愛する人間にも有効な音になっている。Alcestの音楽はどこまでも聴き手を選ばない唯一無二の神秘性を持っている。この世界観の虜になってしまったら二度と抜け出せなくなるであろう。21世紀の音としてここまでカテゴライズが不要な音は本当に少ない、もっと多くの人の耳に届いて欲しい限りだ。揺ぎ無い金字塔。



■空洞/COHOL


空洞(クウドウ)空洞(クウドウ)
(2010/11/17)
COHOL(コール)

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 東京で活動する激情系ブルータル・ブラックメタルバンドであるCOHOLの2010年発表の1stアルバム。tialaの柿沼氏のレーベルから発売された今作は、激情系ハードコアの流れにありながら、ブルータルデスメタル・ブラックメタル・グラインドコア・カオティックハードコアの要素を取り入れて、かなりボーダーレスな混沌とした重厚な音圧と激情と殺意が渦巻く狂気の作品に仕上がっている。



 第1曲「回廊」の不穏のインタールードから第2曲「底知れず吠える軟弱」から破滅に向かって爆走しまくるとてつもないテンションと殺気が押し寄せてくる。哀愁と絶望のメロディがブルータルなギターフレーズから感じることが出来るし、決して単調になる事の無い楽曲の展開はブラストビートを基調にしながらも複雑なフレーズを勢いを殺す事無くバーストさせまくるドラムだったり、ブルータルなトレモロリフだけで無く、クリーントーンの不協和音の美しさの部分だったりも大きな要因を占めてる様にも思える。第5曲「諦めに届かぬ反復行動」なんかはheaven in her armsの様な静謐な美しさを持った激情系ハードコアのカラーをしっかりと見せつけながらも、プリミティブの粗暴さを見事に融合!涎を垂らしながら、殺気を憎しみを撒き散らす姿が醜く無様な姿でありながらも不思議と美しく見えてしまうから凄い。終盤は激情の流れを持ったメロディアスな曲で畳み掛けてくるが、そこでもブルータルの狂気は一向に衰えない。そして最終曲である第9曲「砂上」が今作を総括するに相応しい出来になっている。崩壊と悲しみの賛美歌が響き渡っている。



 楽器隊の音もかなりテクニカルでありながらも、破綻寸前の狂気と混沌を絶妙なバランス感覚で表現しており、かなりスリリングな音になっている。heaven in her armsは激情系を基盤にしながらブラックメタルとスラッジコアの要素をブチ込みながらよりスロウかつヘビィになったが、COHOLは激情系の基盤に、ブルデスとブラックメタルをブチ込み、疾走する殺意と狂気を描いている。3ピースでここまでの音圧を叩き出せるのは凄い。これからの激情の流れを一気に塗り替えてくれるであろう激烈なバンドが現れた!これからの躍進に期待したい。



■Si Monumentum Requires Circumspice/Deathspell Omega


Si Monumentum Requires CircumspiceSi Monumentum Requires Circumspice
(2006/11/14)
Deathspell Omega

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 フランスの様々な情報が謎に包まれているブラックメタルバンドであるDeathspell Omegaの04年発表の3rdアルバム。70分にも及ぶ非常に壮大な作品であり、王道のブラックメタルサウンドの大きな宗教性と芸術性を融合させてしまった非常に奥深いサウンドになっている。楽曲の一つ一つがかなり作りこまれている反面、プリミティブな粗暴さも持ち合わせており、ブラックメタルの一つの到達点に達してしまった金字塔的作品だ。



 第1曲「First Prayer」でいきなり宗教的な不穏のスロウナンバーで幕を開け、そこから第2曲「Sola Fide I」からのプリミティブでありながらもブルータルな野生が剥き出しの極悪チューンの嵐に一気にDeathspell Omegaの憎悪と憎しみに満ちた世界に連れて行かれてしまう。ブラックメタルらしいトレモロリフを聴かせながらも、その向こう側にある美しさを感じるメロディの断片が、このバンドの芸術性をとんでもないレベルまで上げてしまっているのは間違い無い筈だ。ドラムのビートも圧倒的な音圧を誇りながらも複雑でプログレッシブなフレーズがガンガン登場してるし、絶望そのものを撒き散らすボーカルは侠気そのものだ。合間合間に入る静謐かつ不穏なギターフレーズや転調が、バンドの楽曲に高い神秘性を与えてる要素だと思う。特に第8曲「Si Monumentum Requires Circumspice」の全てを焼き払ってしまうブルータルさはとんでもないインパクトだ。序盤の爆走しながらもプログレッシブなギターリフがかなり強烈であり、中盤からの儀式めいた邪悪でカオティックな音塊は是非聴いて欲しい。なにより滝廉太郎の「荒城の月」のフレーズが中盤に入ってくる第11曲「Carnal Malefactor」は11分にも及ぶ大作であり、この作品のハイライトと言っても過言では無い大名曲だ。中盤の静謐なコーラスパートから終盤の全ての崩壊を謡うかの様な残虐さを極めた荒涼としたブルータル具合は、体の震えと鳥肌が止まらなくなってしまうだろう。



 全編通して圧倒的な負の塊で全てを塗りつぶしてしまうかの如き、絶望のブルータル暗黒サウンド。90年代の王道のブラックメタルのサウンドの流れを汲みながらも、そこに芸術性・宗教性・美しさ・残酷さをより特化させ00年代のブラックメタルを代表するサウンドに仕上がった。この世界観をここまでのスケールで描けるバンドは本当に少ないと思う。ブラックメタルの金字塔だ、紛れも無い必聴盤!!



■I'LL BE YOUR MIRROR(2011年02月27日)@新木場STADIO COAST

 All Tomorrow's Partiesの姉妹イベントという形で日本に上陸したI'LL BE YOUR MIRROR、Godspeed You! Black Emperor・Dirty Threeという奇跡の来日を果たしたヘッドライナー2組に加え、BoredomsやBorisに終いには灰野敬二というかなり強烈な面子ばかりを集めたイベントになった。
 13時ちょい過ぎには会場に到着。新木場駅周辺にはチケット難民やダフ屋が現れるレベルまで、こんなマニアックなイベントがソールドアウトしてしまった事も驚きだ。10分程押して13時40分頃に開場、COASTはかなりの人で埋め尽くされていた。あと外国人の客がかなり多かったのも印象に残ってるなあ。以下見たアクトのそれぞれの感想。



・BOREDOMS

 14時40分に10分押し位でスタート。個人的にかなり愛聴しているバンドであるがライブは観るのは初めてだったし、どのような編成でライブが行われるのかも全く想像がつかなかったが、結論から言うとトップバッターからいきなりとんでもない量のメインディッシュ食わされてしまったかの様な圧倒的なアクトだった。編成はドラムセットを6台円形にセットして、6人のドラマーと山塚EYEという編成。そして巨大なスクリーンにはステージを上から映した様子が映されてして、ドラムセットがそれぞれ光ったりと、視覚的にもかなり楽しめる形になっていた。6人のドラマーが圧倒的な技術に基づいた民族的な大地を揺るがす様なビートを繰り出し、指揮者の様に暴れ叫ぶ山塚の動きに合わせて、ノイジーでアンビエントな音が加わっていくという形、一時間ノンストップで繰り出される圧倒的な音の世界。終盤で一気に高ぶりをみせて、満員のSTAGE1は一気にダンスフロアに!更にはダイブする外国人まで現れるというとんでもない盛り上がりを見せていた。1時間のアクトだったが10分位で終わった感じもあったし、3時間位やった感じもあった。という時間軸が歪みまくりな大地のビートに心が奪われっぱなしであった。まだまだ音楽の手法なんて幾らでもあるんだなって事も実感させられたし、世界で活躍するBOREDOMSの底力を十分に味わえたナイスなアクトだった。



・Boris

 続いてはBoris、BOREDOMSのセットの撤去からBorisのセッティングまで一時間近くかかってしまったりしていて、一抹の不安が過ぎる。そして16時30分頃やっとBorisのスタートとなった。09年のleave them all behind以来、観るのは二度目であり、leave them all behindの名演からかなり期待していたアクトであったが、正直に言うと今回のアクトはイマイチであった。栗原ミチオ氏をゲストに迎えてのアクトであったが、1曲目の「決別」は一気にBorisの世界観を見せ付けていて素晴らしい物ではあったが、2曲目の新曲がまあ見事にBorisどうなってしまったんだ!?状態な安っぽいギターロックな曲で一気に不安になる、その辺りからSTAGE1から離れていく人がかなりいた様にも見えた。3曲目は必殺のキラーチューンである「Statement」だったが、Borisらしい凶悪なサウンドは見当たらずであった。4曲目「虹が始まる時」から終盤までの流れでようやくBorisらしい重厚なサイケデリックな世界の一部を表現出来てたとは思うが、正直言って「決別」以外は消化不良であった。楽しみにしていただ残念である。ここだけの話、裏の灰野敬二行けば良かったって思ったりもした。



・Envy

 そしてBorisが終わり、そのままSTAGE2に移動し日本の激情系ハードコアの大御所であるEnvyのアクト。STAGE2が仮設テントの様なステージだったので音が悪かったり、前に行ってもステージで演奏するメンバーが全く見えないというステージの低さとか、次回に向けて主催者側が改善しなければいけない点は目立ったが、そんな事どうでも良くなってしまう位にEnvyは圧倒的なポテンシャルを見せ付けてくれた。1曲目「Worn Heels And The Hands We Hold」から一気にクライマックスへと激走していくかの様な圧倒的激情に胸を熱く焦がされていく、前方ではモッシュの嵐!そこから「Dreams Coming To An End」と去年発表した名作「Recitation」から必殺のキラーチューンで一気にバンドとフロアの熱量は上がっていく、そしてEnvy最強ナンバーである「Left Hand」で巻き起こるモッシュの嵐!そして「Scene」から後半は静謐で美しいEnvyを見せ付ける流れ、バンドとフロアの呼吸が見事に合わさっていた素晴らしいアクトであった。そしてラストはまさかの「Farewell To Words」!!フロアは一番の盛り上がりとモッシュの嵐!!ラストのノイジーな残響音と暴れ狂うメンバーの姿に胸が打ち抜かれてしまった。激情系ハードコア代表格てしての力を200%は発揮していたのではないだろうか。素晴らしいの一言に尽きる。



・Dirty Three

 STAGE1の方がかなり押しまくっていたらしく、当初より45分押しでDirty Three。Envyが終わった後、STAGE2のMelt-Bananaも観たかったのだが、Dirty Threeがいつ始まるか分からない事から断念。しかしDirty Threeが始まる前にMelt-Bananaのアクトは終了しており、何だ観る余裕あったじゃんと後悔。
 という訳でDirty Threeからの2アクトは2階席でゆったりと見ていたのだが、Dirty Threeのスタート演奏前にバイオリンのウォーレン・エリスは通訳を介しながら陽気に喋り捲り(というか曲間のMCでもかなり喋っていた)フロアを爆笑の渦に巻き込んでいたが、いざライブアクトになると一転、ギター・バイオリン・ドラムのみのシンプルな構成でありながら奏でられているのはかなり重厚な轟音の嵐、音源の優しい趣とは全く違う圧倒的な暴力性とエモさがこれでもかと溢れていた。全5曲、約50分があっという間に終わってしまった。ウォーレンはここぞとばかりに暴れまくっていて、美しさだけでなく、粗暴さも見せ付けていた。この圧倒的アクトを今回目撃出来た人は本当に幸福だと思う。最高にピースフルな空間を満喫出来て幸せ。



・Godspeed You! Black Emperor

 奇跡の再結成から奇跡の来日と、まさかの日本降臨となった訳であるが、今回の素晴らしいアクトの数々が霞んでしまう位の超絶の世界を一気に叩き付けられた。あまりの音の気持ちよさにウトウトしてしまったりしたのではあったが、異世界に連れて行かれたのは間違いないであろう。8人にも及ぶ最早オーケストラレベルのアンサンブルとスクリーンに映し出される映像が神秘の一言では片付けられない幻想的な世界へと僕達を導き、静謐な音から一気に轟音のノイズサウンドに移行していく瞬間は本当に鳥肌が立つってレベルでは無かった。音源以上の感動と深遠さがダイレクトにアンサンブルという形で耳に入って来ていて、二時間というかなり長時間現実世界からの悲しみと轟音のパラレルワールドへとあの場にいたオーディエンスは連れていかれたいた。この様なアプローチをするバンドはかなり増えたし、MONOの様に日本にも素晴らしいアクトを見せ付けてくれるバンドもいる、しかしその流れを作ったオリジネーターはやはり無敵である事を証明していた。ヘビィさ、静謐さ、轟音、美しさ、緊張感、どれを取ってもここまでのアクトを見せ付ける事が出来るのは世界で彼らだけであろう。この場にいれた事が本当に幸せであった。



 この様なマニアックな面子を集めて、イベントをソールドアウトに出来た事は本当に大きな意味を持っていると思う。STAGE2の音響の悪さや時間配分や会場の場所等、主催者側の課題もそれなりにはあるとは思うが、この様なイベントを主催してくれたクリエイティブマンには感謝と今後への改善とイベントの定着を期待したい。また会場でお会いしお話させて頂いた方にも改めて感謝を。何より素晴らしいアクトを見せてくれた出演者に改めてリスペクトを。日本でこのイベントをやる事はかなり大きな意味があると思う。次回にも是非期待したい!
 
タグ : ライブレポ

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AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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