■2011年05月

■Alchera/Heirs


AlcheraAlchera
(2009/06/09)
Heirs

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 オーストラリア産暗黒ポストロックバンドであるHeirsの09年発表の1stアルバム。ポストロックを基盤としながらも暗黒の黒煙が生み出す螺旋の渦を描き、インダストリアルやポストロックを自在に行き来し、音楽的な幅広さを持ちながらも徹底して描かれるのは荒涼とした風景であり、闇の中で蠢く僅かな色彩の世界に聴き手はズブズブと落っこちてしまう事は間違いないであろう。



 第1曲「Plague Asphyx」からインダストリアルなビートを機軸にした黒煙の渦巻く奈落の世界へと聴き手を迷い込ませる、決して分かりやすい轟音サウンドではなく、ヘビィでありながらもくぐもった音圧を持つ音塊が渦巻く奈落への門が開かれている。その門の先に待ち構えている楽曲の数々はポストロックの静謐な響きに重苦しい陰鬱で這い蹲るかの様な音を鳴らしている。歪みまくったベースラインに導かれながら重なり合う轟音はどこまでも無慈悲で無機質であり、終わりのな悪夢を見せられているかの様な感覚に陥ることは間違いない。
 人力インダストリアルの要素も持つドラムの音は一音一音が緊張感を孕みながら鳴らされ、精神的なヘビィさをより確固たる物にしているし、そこに乗る旋律は不安を増幅させる物であって、それらの音が螺旋を描きながら漆黒の地下世界へと堕ちていくかの様な救い様が無いのに美しさを感じる終わりを告げる轟音としてくぐもったまま響き渡るのだ。街の雑踏と「とおりゃんせ」の信号機のメロディから一気に噴出する破滅的轟音が印象的な第6曲「Russia」は漆黒を極めた楽曲であり、美しい轟音がフェードアウトした先に待ち構えるドローンとしたハウリングの音は精神世界の暗黒旅行の終わりを告げる奈落の審判の先に待ち構える完全なる「無」の前兆であるかの様な恐怖を描いている。そしてそこから完全に「無」に還り今作は終わる。



 今作に渦巻くのは救い無き無機質の漆黒だ。感情など微塵も存在していないし、無慈悲な黒の轟音が気付いたら背後に忍び寄り、そして聴き手の首を静かに刈り取っていく悪夢の音だ。血飛沫が吹き荒れた余りに辺りは決して消える事の無い黒い鮮血で染まり、それが乾いて終わりなき奈落へと変貌する。聴き手の精神世界を破壊する暗黒の音楽がここに存在しているのだ!



今作は下記URLのdenovaliのレーベル公式ページからフリーダウンロードされている。もし興味を持った方は漆黒の螺旋の渦に堕ちていくかの様な音に触れてみて欲しい。

http://denovali.com/heirs/
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■Adrenaline/Deftones


AdrenalineAdrenaline
(1999/04/30)
Deftones

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 90年代末期から00年代前半にかけて世界中で大きなムーブメントを起こしたモダンへビィネス。数多くのバンドが登場したが、その中でもDeftonesはやはり別格であると僕は思っている。へビィなサウンドは勿論であるが、その中でも陰鬱な精神世界の螺旋を描けていたバンドは本当に少ないし、へビィネスであると同時にオルタナティブでもあったのだ。それでいてポストロックに近いものを感じる音の響きだったり浮遊感だったりもDeftonesは体現している。95年に発表された1stアルバムである今作は、1stアルバムらしい荒削りな部分は多々あったりするのだけれども、この当時からDeftonesにしか出せない陰鬱で美しくへビィな音を確立していると言っても過言ではない。



 第1曲「Bored」からへビィな刻みのリフのイントロから始まる楽曲であるのだが、そのストレートなへビィロックの音に宿るのは精神的トラウマで頭を抱えてのたうち回るかの様な重苦しいグルーブだ。静と動を巧みに使い分け、暴力的なへビィロックの音と、ダークな音の鳴りが同居する事によって、ただ単に馬鹿の一つ覚えみたいにチューニングを下げているだけのバンドを一瞬で皆殺しに出来る殺気と狂気に満ちた音に仕上がっているのだ。その中でも第7曲「7words」みたいにフロアでヘッドバンギングが咲き乱れる様なアンセムもしっかりと作っているのも流石といった所。へビィネスの原始的な即効性や格好良さを前面に押し出していながらも、精神的陰鬱さから発せられる怒りに満ちたシリアスさは第9曲「Engine No. 9」にも現れており、チノのボーカリストとしてのカリスマ性をどこまでも味わえる楽曲になっているのではないだろうか。そこにヘビィであり、なおかつ陰鬱で美しい旋律を鳴らすギターと、タイトであり躍動感溢れるドラムが咲き乱れ、低域を蠢くベースラインがズッシリと鳴らされる事によって生まれる殺意と狂気のヘビィロックは今作から現在に至るまで変わることの無いDeftonesの核になっているのだ。



 今作以降は今作で鳴らしていた陰鬱なヘビィネスの世界観をより進化させた作品を発表し、Deftonesはモダンヘビィネスのシーンに於いて圧倒的カリスマ的存在になるのだが、原始的な怒りとヘビィさが最も表れているのはやはり今作じゃないかと僕は思う。怒りと殺意と暗黒のヘビィネスサウンドは今作で既に確立されており、その核は決して変わることの無い物だと僕は思っている。



■Misanthrope/Celeste


MisanthropeMisanthrope
(2010/01/18)
Celeste

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 先日、日本が誇る暗黒激情系ハードコアバンドであるheaven in her armsと共にツアーした来日公演も記憶に新しいフランスの激情系スラッジコアバンドであるCelesteの2010年発表の作品。激情系ハードコアを基盤に、スラッジコア・ドゥーム・ブラックメタルのエッセンスを注入し、その結果全編に渡って渦巻くのは殺人的音圧が空間を支配し、その向こう側に悲しみの旋律が鳴り響く暗黒の果てにある美しい轟音だ。



 正直に言ってしまうと、今作に収録されている楽曲に大きな差異は無く、作品全体を通してのアプローチはかなり統一された物になっているが、それによって止まる事の無い激情と轟音の漆黒の炎が終わり無く燃え続ける作品になっている。美しいアルペジオが鳴り響きながらも、激重のギターリフは隙間無く鳴り響いているし、パラノイア具合が振り切れまくったシャウトも涎を垂れ流しながら引き摺る様にバーストしまくっている。Celesteは一貫したスタイルの中でブルータルな暴力性と、漆黒の轟音の濁流と、その轟音の向こう側にある陰鬱さを極めきった世界観を徹底して鳴らしているバンドだと僕は思っている。その徹底的に貫かれた漆黒の美学が近作の最大の魅力であると僕は思っており、Deathspell Omegaの様なブラックメタルのエッセンスがその世界観をよる深い物にしているのだ。



 終わり無く繰り広げられる激重と激情のハードコアサウンド、救いなど全く無い暗黒絵巻は荒涼としており、あまりにも陰鬱で悲しい物ではあるが、その向こう側の神秘的で美しい旋律に背筋に電流が走る感覚を僕は覚えてしまう。徹底して繰り広げられる黒い音楽、この轟音の濁流の美しさとブルータルさこそがCelesteであり、壮大な漆黒の世界は一度入り込んだら絶対に抜け出すことの出来ない物になっている。圧倒的な轟音の美しさにブチ抜かれてしまえば良いのだ!!



 因みに今作を始めとするCelesteの作品は、下記URLのレーベルの公式サイトからフリーダウンロードで聴く事が出来る。日本国内では音源の購入は難しいので、興味を持った人は是非是非聴いてみて欲しい。漆黒を貫いた音楽がそこにあるから。

denovali内のcelesteのページ(音源フリーダウンロード可能)



■Oceanic/ISIS


オーシャニックオーシャニック
(2010/01/22)
アイシス、ISIS 他

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 00年代に幅広く拡散したヘビィロック。その中でもポストメタルというジャンルはISISの手によって確立されたジャンルと言っても過言では無い。02年発表の2ndアルバムである今作はポストメタルというジャンルを確立した大きな意味のある作品であり、前作までNeurosisとGodfleshの流れを受け継ぐ邪炎のハードコアを鳴らしていたISISは一気に覚醒し、幽玄で美しい蒼白の炎の様なヘビィで殺気に満ちながらも、壮大で美しいヘビィロックを確立した。



 第1曲「The Beginning And The End」からいきなり今作はクライマックスを迎える。大地の躍動を感じる重低音の効いたヘビィなリフから、反復し暗闇の中で僅かな光を反射するかの様な静謐なアルペジオが鳴り響き。それでいて神話の様な神々しさを持つ、自然界の神に近付いたかの様な美しさなのだ。前作の様なスラッジサウンドを聴かせる第3曲「False Light」でも、ハードコアの粗暴さを感じさせながらも、より広がりのある深海の様な不穏さを体現しているし、第4曲「Carry」の緊張感に満ちた音の交錯から大津波の様な轟音に雪崩れ込む様など恐怖すら覚えてしまう。
 今作ではドラムのアーロン・ハリスの覚醒具合が凄まじい。寸分の狂いも無いビートを刻みながら、繊細でありタイトなドラムを聴かせてくれている。彼のドラムはISISのサウンドをとんでも無いレベルまで持ち上げていると僕は思う。そして第8曲「From Shinking」のスラッジコアの黒き波動がドラマチックに鳴り響く様と、第9曲「Hym」の美しき崩壊を描く様は間違いなくISISだからこそ描く事が出来る描写だ。



 ISISは今作以降も進化を続け傑作を生み出しているが、今作は間違い無く00年代のヘビィロックの中でも最重要作品だ。偉大なる先人達の意志を受け継ぎながらも、それを進化させたISIS。ポストメタルというジャンルは現在も数多くのバンドを生み出しているが、ISISは今作でその礎を作り上げたのだ。
 音の粒子が見えると言われるISIS。その音は激流であり、大地の躍動でもあり、天からの啓示の様ですらある。

■The Grimmrobe Demos/SUNN O)))


ザ・グリムローブ・デモス(紙ジャケット仕様)ザ・グリムローブ・デモス(紙ジャケット仕様)
(2007/10/31)
Sunn O)))

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 超殺人的重圧殺ドローンユニットであるSUNN O)))の00年発表のデモ音源にボーナストラックを追加し再発されたのが今作だ。多彩なゲストを迎えている現在と違い、オマーリーとグレッグの2人だけで今作は制作されている。
 SUNN O)))はEarthの無慈悲さを極めたドローン絵巻であるEarth 2にインスパイアされたユニットであるのは有名だが、このSUNN O)))の最初の作品である今作は、余計な装飾など一切無い、Earth 2の世界をより凶悪に、より殺人的爆音にした作品だ。



 全編に渡りベースとギターのリフの概念すら崩壊した超低域の殺人ドローンサウンドが終わり無く反復し、ドラムレスな事もあってか楽曲に推進力は皆無だ。全4曲とも徹底して終わり無く歪みのかかりまくった低域の音のみが存在し、そこに感情移入する余地は無く、ただ無に還ったかの様な地獄が終わり無く広がるだけである。展開も構成も放棄し、大音量で殺意のみが放出されている。
 特にEarthの首謀者であるディランへのリスペクトを曲名に冠した第3曲「Dylan Carlson」の圧倒的スケールで繰り広げられる全ての形や概念すら存在しない完全に無慈悲な音塊と、第4曲「Grimm & Bear It」の殺人的歪みにより、ノイズとして形すら消えたドス黒い霧に包まれてしまったかの様な音には震えが止まらなくなる。



 今作を軸にSUNN O)))は様々な音楽的要素を強めていって多方面に拡散するドローンユニットとなり、アンダーグラウンドのある意味カルトアイドルとも言える存在になっていくのだが、やはり今作での圧倒的音量と圧倒的音圧で繰り返される無慈悲なドローンさはSUNN O)))を語る上では絶対に外せない要素である。
 今作の音は確実に人間を破壊する悪夢の音だ。耳に入り込んだ音塊は聴き手の感情も耳も全てを破壊していく。だからこそこの悪夢の重圧殺ドローンサウンドに取り憑かれ抜け出せなくなった人は確実にいるのだ。何の装飾も無き虚無と虚構を埋め尽くす黒い煙。迷い込んだら二度と抜けだせない。

■Infinity/Jesu


インフィニティインフィニティ
(2009/08/19)
イェスー

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 09年発表のJesuの3rdアルバムは一曲50分越えの実験作品になっている。ダブステップ的要素を持ちながらも、Godfleshを彷彿とさせるインダストリアルなビートも健在。ジャスティンは「Conqueror」以降から極上のオーガニックさと美しさを持つ、無限の色彩が視界に入り込む様な作品を発表していたが、今作はそれらのJesu節とも言える静謐で神秘的な旋律とヘビィなリフが奇跡的に同居する実験的大作になっている。



 冒頭のオーガニックなダブステップのビートから直ぐ様、スラッジ色の強いギターリフが空間を支配している。その中でインダストリアルなビートも鳴り響くJesuの中でもかなりヘビィな作品になった。しかし重いビートと重いギターリフと裏腹に、これぞジャスティンと言わざるおえない色彩豊かで美しい旋律も鳴り響き、スラッジハンマーを振り落とすかの様なヘビィなリフとプリズムの様な天にも昇るかの様な旋律が同時に鳴り響く事によって生み出された化学反応は凄まじい。最強にヘビィでありながらも最強に美しい、ヘビィロックを始点にしあらゆる音楽要素を飲み込み拡散するJesuの音楽性をとんでもなく高い純度で体現しているのだ!
 中盤でジャスティンはGodflesh時代を彷彿とさせるシャウトも解禁。楽曲も引き摺る様な重さを見せている。そして後半からの神秘的轟音を鳴らすJesuと破壊力に満ちた重圧リフを鳴らすJesuが交互に顔を出し、地獄と天界がグルグルと切り替わっていく様は言い知れぬ神秘性を持っている。そこから引き摺るリフとオーガニックなアルペジオの余韻を残したまま今作は幕を閉じる。



 作品全体では非常に有機的で豊かな色彩を感じる事が出来るが、今作でのジャスティンはJesu史上最も音楽的縛りを感じさせ無い自由な音を鳴らした。ヘビィなスラッジ色の強いリフと、ダブステップ×インダストリアルなビートと有機的で純白の旋律が同居し混ざり合い、渦巻きながら無数の光を生み出しているかの様な極上のJesu節の音になっているのは流石だと思う。
 数多くの経験と音楽知識を持つジャスティンだからこそ、縛り無き音を鳴らせるに違い無いと思う。それに今作の様な実験作でもJesuにしか成し得ない音のプリズムは見事に健在だ。

■Lost Summer Daze/THE CREATOR OF


LOST SUMMER DAZELOST SUMMER DAZE
(1999/06/19)
THE CREATOR OF

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 THE CREATOR OF(以下TCO)は紛れも無くハードコアだ、ヘビィロックだ。しかしその文脈だけで語るのは本当に難しいバンドでもある。99年発表の1stアルバムである今作は、ハードコア・ヘビィロックの即効性と破壊力を思うがままに出していながらも、その枠を自ら破壊し進化する音になっているからだ。90年代~00年代にかけての時代は数多くのヘビィロックバンドが台頭したがTCOはその中でも異質だ。



 例えば第2曲「TAKE A GOOD LOOK AT YOURSELF」や第7曲「HEALTH」は単純に日本人離れしたタフさを全面に出したヘビィでシンプルな格好良さが出ている楽曲であるが、その中にも日本人にしか出せないパラノイアな感覚だったりとか哀愁だったりを全面に出しているのだ。シンプルなパワーコードのリフで作られた楽曲に、ポリリズムを駆使し、トライヴァルなドラムが鳴り、それでいてパンク・ハードコアのシンプルな音の暴力をしっかり持っているのだ。しかしながらヘビィロックとしての強さだけでなく、感情豊かな繊細さを持つのがTCOである。第5曲「TAKE THE STAIRS DOWN TO THE BASEMANT」で見せる静謐であり陰鬱な旋律が鳴り響き、力強くも抜け出せ無い悲しい精神世界の渦であったりとか、第10曲「PACIFIC OCEAN」のバンドとしての世界観の深さと静謐さとドラマチックかつ複雑な展開や構成を見せつける壮大で陰鬱な楽曲にこそTCOの本質がある様にも僕は思ったりする。個人的にハイライトは第9曲「偽神」と第11曲「HI ON」だと思う。「偽神」は日本語詞で絶望とパラノイアの螺旋が作り出すヘビィな精神的坩堝を何の装飾も無い真摯なハードコア・ヘビィロックとして鳴らした破壊力に満ちた楽曲であるし、「HI ON」は15分にも及ぶ壮大なプログレッシブヘビィロック絵巻だ。特に「HI ON」は移り変わる風景を想起させ、精神世界の旅をする感覚に聴き手を陥らせるかの様な名曲だ。プログレッシブさとハードコアの強さが見事に結び付き、終わり無き螺旋を描いている。



 TCOは02年に「IN RESERVOIR」という今作で見せた精神としてのハードコアとヘビィロックをより確固たる物にした傑作を発表するが。今作の様なヘビィロックの破壊力を全面に出した作品でも、TCOの一筋縄ではいかないハードコアサウンドはとんでもなく高い純度で鳴らされている。これは日本人にしか鳴らせない陰鬱でありながらも美しく深遠なハードコアだ。そしてTCOは現状に一切満足などせず、現在も活動を続け、自らの音を確実に進化させている。



■あぶらだこ5th(月盤)/あぶらだこ


あぶらだこあぶらだこ
(2000/10/25)
あぶらだこ

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 日本が誇る唯一無二のカオティクハードコアバンドあぶらだこの00年発表の5th。ギターの大國氏が加入後初のアルバムである。イズミ氏脱退のピンチを極東最前線に収録の「横隔膜節」で高らかに乗り越えた後の作品だが、一曲一曲が2分3分の短い尺の楽曲の中で圧倒的情報量と転調しまくる構成と展開が繰り広げられるプログレッシブハードコア絵巻な全10曲である。



 第2曲「やまびこ」からヘビィなギターリフと歪んだベースラインが空間を支配しながらも、変拍子と転調を駆使した怒涛のカオティクなサウンドを展開する。明確な旋律をしっかり持ちながらもそれはズタズタに解体され、強烈な音圧で鳴らされている。第4曲「肴核」でも和の旋律を持つイントロから一気に性急なパンクサウンドミーツポリリズムな変態ハードコアを展開。今作の楽曲は尺の短いコンパクトな楽曲の中で何曲分にも及ぶ旋律の変化とアイデアをこれでもかと詰め込んだ事によって、分かりやすいアバンギャルドさを持つ作品になっている。ヒロトモ氏のボーカルも矢張りキレまくっている。拍とかそういった概念を自由に乗りこなしながら、奇声を駆使した叫びを聞かせる。
 第8曲「律動」から第9曲「冬枯れ花火」の流れは今作で蠢いている混沌が今作で最もいる箇所だと思う。ヘビィでやたら軽快なベースから祭囃子のビートと、ヒロトモの哀愁ある歌と、ポリリズムと少しばかりのキャッチーさとノイズが目まぐるしく展開される「律動」から、今作で最も分かりやすい旋律を持ちながらもそれをズタズタにし、僅か3分で見事に起承転結を体現し、ラストは演歌調の旋律で幕を閉じる「冬枯れ花火」と計算された混沌が一気に暴発する、あぶらだこにしか出せない混沌の音塊を見せているのだ。そしてノイズ塗れのプログレ絵巻「過去過去去来」で今作は幕を閉じる。



 あぶらだこの持つ計算され尽くした正気を保ちながら狂気を放つカオティクハードコアサウンドをよりハードコアとしての攻撃力を高め、コンパクトな楽曲の中に無駄無く詰め込まれたアイデアと混沌が今作ではジェットコースターの様に止まる事無く繰り広げられている。 あぶらだこ史上、変態性を全面に押し出した今作、全てを置き去りにし孤高のバンドとして闘うあぶらだこの破壊的混沌が圧縮されパッケージングされている。彼等は奇天烈でありながらも、僕達をいつも嘲笑うぬらりひょんの様だ。

■Chapter Ahead Being Fake/TORCHE×Boris


チャプター・アヘッド・ビーイング・フェイクチャプター・アヘッド・ビーイング・フェイク
(2009/08/19)
ボリス トーチ

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 アメリカのストーナーロックバンドであるTORCHEと日本が誇る全方位拡散ヘビィロックバンドであるBorisのスプリット作品。アメリカにて共にツアーを回った両者は意気投合し今作に繋がった訳なのたが、それぞれ僅か1曲しか提供していない計2曲の作品でありながらも、その中に濃密なヘビィロックの現在と未来がパッケージされた作品に仕上がっている。



 第1曲はTORCHE側から「King Beef」。メンバー脱退のピンチを迎えていたTORCHEだったが、今作ではヘビィさと音圧をビルドアップさせた事によってメンバー脱退によって生まれた穴を埋めるだけではなく、ストーナーロックのヘビィな部分を抽出したサウンドになった。2ndアルバム「Meanderthal」ではストーナーポップな疾走感溢れるサウンドを見せたが、今作ではタイトなリズムとヘビィなリフに歌心を加えた事によって、大地を揺るがすヘビィさと煙たさを持ちながらも、TORCHE節なキャッチーさは健在なヘビィロックを見せつけてくれた。
 迎え打つBorisは第2曲「Luna」でBORISとborisが結合した、ヘビィでありながら壮大な空間的奥行きを持つ美しさを見せてくれている。Borisの大名盤「feedbacker」をよりキャッチーにしたかの様な楽曲なのだが、何重にも重なるヘビィでシューゲイジングなフィードバックノイズと静謐なアルペジオ、それに反して性急過ぎるAtsuo氏のブラストビートが不思議と化学反応を起こし、全方位に拡散するヘビィアンビエント絵巻だ!Takeshi氏の歌はどこか気の抜けた感じだが、バンドの強烈なノイズと音圧に反して鳴らされる優しい旋律と重なり合い、宇宙へと突き抜ける様な光と闇が交錯する名曲に仕上がった!



 TORCHEとBorisというヘビィさと煙たさという確かな共通項を持つ2バンドは全く別の方向を向きながらも軸足は同じ場所にいる。僅か2曲のスプリットでありながらもそれぞれが既存のヘビィロックを破壊し構築し進化するバンドである事を証明た作品となった。
 決して現状に満足する事無く、ストイックに自らを鍛えるTORCHE。ヘビィロックの枠を破壊し、あらゆる音を鳴らし変化と進化を続けるBoris。この両者が結び付いた事は必然なのだ。

■Nadie/Corrupted






 日本が誇る暗黒ドゥームを鳴らす孤高のバンドCorruptedの95年発表の初期EP。Corruptedは数多いドゥームのバンドの中でも、ハードコアを遅く重くする事よってCorruptedにしか無い荒涼とした音を鳴らしているが、今作は余計な装飾などは勿論無く、ハードコアの暴力性が剥き出しのままパッケージングされたハードコアとしての強さを持った作品だ。



 まず今作はCorruptedの中でも比較的に尺の短い曲で構成されているコンパクトな作品であったりする。第1曲「Nadie」はCorruptedの中でも珍しく5分に満たない楽曲だ。しかしCorruptedの遅く重く暗くなスタンスは健在、あまり良くない音質で録音され、ベースとギターがひたすら重過ぎる低域の主張しまくったフレーズを繰り返し、Chew氏のドラムは楽曲により重さを与え、引き摺るBPMの楽曲に乗るhevi氏のボーカルがその暗黒の意志をえげつないまま拡散させる。第2曲「Bajo De Cero」でも同じハードコアに重きをおいた暴力的サウンドを展開している。第3曲「Esclavo」は今作で最も凶悪な曲になっている。ハウリングのノイズが空間を支配し、全てを塗り潰す漆黒のサウンドを展開している。hevi氏の声も重低音が作りだす黒い煙の中に埋もれてしまっている位に殺人的な音圧とヘビィさを誇っているのだ!ひたすらに鳴るハウリング音と終わりが見えない地獄を繰り返すかの様なリフの繰り返しに飲み込まれてしまいそうになるのは、Corruptedが終わり無き怒りと殺意をそのままサウンドに反映させているからだと僕は思う。そして耳鳴りの様な強烈なハウリング音と共に今作は終わりを迎える。



 初期Corruptedの代表作とも言える今作だが、やはりCorruptedの核になっているのは純度の高いハードコアである事が分かるし、それを漆黒のサウンドに仕立て上げたからこそCorruptedにしか鳴らせないドゥームサウンドとなっているのだ。現在に至るまでCorruptedの核の終わり無き地獄の様なハードコアサウンドは決して変わる事無く存在している。彼等程にストイックに人間の負の感情と悲しみを荒涼と鳴らすバンドはいないのだ。



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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