■2011年07月

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■Recitation/Envy


RecitationRecitation
(2010/09/22)
envy

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 激情系ハードコアのその先へ。激情系の礎を作り上げながらも、常にその音を更新させ続けているEnvyの2010年発表の6枚目にあたるアルバム。「Insomniac doze」以降、その音楽性を大きく変え、静謐な美しさすら鳴らす様になったEnvyであるが、今作ではそれを更に突き詰め、それでいてハードコアとしての形を崩すことなく突き進んでいくかの様な作品だ。今作にあるのは溢れんばかりの眩い光に満ち溢れた、美しくも力強い轟音の嵐だ。Envyはまた自らの音を進化させたのだ。



 まずSE的な役割を果たしている第1曲「Guidance」からその美しい物語の幕開けを彩っている。女優の奥貫薫のポエトリーリーディングと美しいアルペジオの旋律の優しい温もりに心がキュッと締め付けられそうになる。そこから静謐で美しいアルペジオから一気にドラマティックに轟音ハードコアへと変貌を遂げる第2曲「Last Hours Of Eternity」で一気に体中が熱くなり、力強い激情の世界へと飛び立つ様は本当に美しいといか言えない。音こそとんでもない音圧で、壮大なスケールを持っているが、ダークさは全く無く、ただ光に手を伸ばすかの様なエモーショナルな世界が展開され序盤から一気にクライマックスへと飛び立つかの様な穢れ無き純度の音が優しく聴き手を包み込んでいくのだ。第3曲「Rain Clouds Running In A Holy Night」の激情ハードコア絵巻でそのドラマティックな世界は美しくヘビィでありながら、止まることの知らない希望と光に満ち溢れた賛美歌の様な音塊へと雪崩込み、Envyが近年追い続けた光と力強さと美しさの激情が最高の形で完成した事を見事に証明している。また今作はハードコアを基調としながらも、その音楽的な広がりも見せ付ける物になっている。ポストロック色の強く、オーガニックさと温もりに溢れた旋律が印象的な第5曲「Light And Solitude」はそのエモーショナルさに満ちた終盤のハードコアパートで一気に音の粒子が爆発するかの様な美しさを感じるし、ここ最近のライブでは必殺の1曲となっている第6曲「Dreams Coming To An End」の疾走感とポジティブなエネルギーは自らを鍛え上げたからこその揺ぎ無い強さを感じさせてくれる。特に素晴らしいと思ったのは第8曲「Worn Heels And The Hands We Hold」だ。恐らく今作で最も力強い希望を感じさせてくれる必殺の激情が暴発するこの曲はハードコアとしてのスタイルを貫いたまま壮大なスケールを持った光と闇が交錯する1曲。長い夜を超え、昇り上がる朝日を見つめているかの様な情景すら浮かんでしまう。「今日を精一杯駆け抜ける君に、鼓動を刻む明日は来る。」なんてフレーズはかつてのEnvyじゃ絶対に言わなかったフレーズだろうし、痛みすら乗り越えた先の世界を鳴らすバンドにEnvyは進化したのだ。第11曲「0 And 1」なんて今作で最も異質なスラッジナンバーなのだが、そこにダークさや殺気は一切存在せず、ただ光を追い求める叫びが力強くヘビィに鳴り響いている。そして第12曲「Your Hand」で再び奥貫薫のポエトリーリーディングによってこの壮大でドラマティックな激情ハードコア物語は終わりを告げる。



 今作には「君の靴と未来」の頃の様な痛みを鳴らす激情ハードコアとしてのEvnyは存在しない。下手したらポップな要素すら感じさせながらも、闇の中から眩いばかりの優しく美しい光を誰よりも強く鳴らすハードコアとしてのEnvyがここには存在しているのだ。レーベルメイトであり後輩格のheaven in her armsが抜け出す事の出来ない痛みと闇をヘビィかつ壮大に鳴らしているのに対して、Envyはシリアスでありながらも、確かな力と叫びを光差す方へ歌うバンドに進化したのだ!シーンを作り上げた先人は進化を止める事は無い。Envyもまた全てを置き去りにし、美しい光を描くハードコアバンドとして、見果てぬ彼方へと走り続けているのだ。



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■Sinking Slowly/COALTAR OF THE DEEPERS

Sinking Slowly



 今やその知名度を大きく広げているCOTDの92年発表の4曲入りEPが今作だ。そして今作はCOTDの中でも屈指の名盤だと僕は思っている。現在でもライブで演奏される事の多い楽曲が収録され、全4曲でありながらその4曲全てが必殺の楽曲という作品だ。シューゲーザー×スラッシュメタルなその音はとてもじゃないけど92年に発表された作品とは思えないし、幻想的で甘い旋律と鋭利な音が最高の形で組み合わさり、どこをどう切ってもCOTDだからこそ鳴らせる音となっている。キャッチーさ、甘さ、鋭利さ、その全てが必殺と言っても過言ではない。



 まず第1曲「When You Were Mine」の破壊力が凄まじい。この曲はPrinceのカバーなのだが、原曲はズタズタに破壊され完全にCOTDの物になっている。シューゲイジングしているノイズギターにワウをかまし、破壊力に満ちながら、浮遊感漂う音になっている。しかし続く第2曲「Deepers Are Scheming」はそれ以上に必殺の幻想的世界を展開している。シューゲイジングな轟音ギターが全てを埋め尽くし、それでいてドラマティックな展開がそれを加速させていく。正確無比極まりないドラムがマシンガンの様に放たれ、バンドとして強靭な肉体性を持ちながらも、それだけでなく浮遊しまくる甘い旋律が一気にエモーショナルさを増していく名曲だ!終盤の鬼の刻みのリフの嵐からボサノバ調になるパートなんてより胸を熱くさせられてしまう。そして第3曲「My Speedy Salah」が間違いなく今作のハイライトである。イントロから刻みのリフと正確無比なドラムが乱れ打ちになり、そこから幻想的なギターフレーズが空間を埋め尽くしたと思えば、また必殺のリフが吹き荒れる。荒涼とした物悲しさを感じさせながらも、温もりに満ちた旋律が存在しているし、気付けば涙腺すら刺激されてしまいそうな真冬の吹雪の中で僅かな温もりを感じさせるかの様な、幻想的で聴き手の心を揺さぶる風景が描かれている。そしてラストを飾る第4曲「Sinking Slowly」は非常にドラマティックなシューゲイザー絵巻だ。静かな海を終わり無く漂うかの様な、全ての感覚と思考が無に還っていくかの様な終わり無き轟音の海だ。浮遊するNARASAKIの声と微かに聴こえるシンセの音がその世界をより現実離れした物にし、幻想世界の小旅行の様な楽曲だと言える。そうしてドラマティックな轟音の航海で今作は終わる。



 超初期の作品でありながら、既にCOTDの基礎となる音楽性は今作で完全に完成されており、現在でも色褪せる事を知らない轟音の幻想世界が今作には満ちている。今でもCOTDが今作に収録されている楽曲をライブで演奏するのは、今作の楽曲がCOTDというバンドにおいて、かなり重要な立ち位置になっているからだろうし、そこからCOTDは様々な方向へその音楽性を広げていったからだと思う。どちらにしても甘く幻想的な儚さを持ちながらも、キャッチーで鋭利なCOTDは今作から音楽性を変えながらもずっと一貫しているし、だからこそ今作の音は本当に不動の物なのだ。個人的に今作はCOTDの中でも一二を争う程の名盤だ。絶対に変わらない幻想世界がここにある。



■Take As Needed For Pain/EyeHateGod


Take As Needed for Pain (Reis)Take As Needed for Pain (Reis)
(2006/06/27)
Eyehategod

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 スラッジコアというジャンルを語るに於いて今作の存在は絶対に外す事は出来ない。このEyeHateGodの93年発表の2ndアルバムは間違いなくスラッジコアの基礎を確立した作品であり、ヘビィなリフがズルズルと這いずり回る極悪なグルーブに満ち溢れ、ハードコアを経過しながら、Black Sabbathの様なヘビィで煙たいリフが充満する遅く重苦しい殺気に満ちた極悪極まりない大傑作である。



 今作にあるのはあくまでもハードコアとしてのカラーを守りながらも、そこからは大きく音楽性を進化させたEHGのスラッジコアの真骨頂である。第1曲「Blank」から徹底して引き摺るヘビィなリフの強烈な音圧だ。そして推進力無く引き摺るかの様なリフとビートが益々窒息してしまいそうな重苦しいグルーブを生み出している。音数こそは多く無いけれど、それを埋めるのはリフの煙たい残響音だ。手法はあくまでもハードコアなんだけれども、そこに初期サバス直系のヘビィさと煙たさをブチ込んだ事によってサイケデリックな酩酊感すら生み出している。そこに乗る殺気に満ちた爬虫類ボイスのシャウトがそれをより極悪で殺意に満ちたえげつない音を加速させている。また今作に充満しているグルーブは70年代ロックのグルーブだ。先人達が作り上げたロックのグルーブの危険な酩酊感を受け継ぎ、それをハードコアとして鳴らしている。それこそがこのバンドが生み出したスラッジコアのグルーズであり音楽的要素だ。しかしながらただ引き摺る様な重さだけで攻めるのでは無く、所々にヘビィではあるがやたら躍動感に満ちたパートが存在する事によって楽曲の緩急も見事についているし、楽曲構成の作り方も本当に上手い。それでいて徹底して渇ききった荒涼としたスラッジサウンドを徹頭徹尾鳴らしているのだから本当にタチが悪いのだ。



 EyeHateGodが生み出した今作によってスラッジコアはハードコアの極悪さを追求した進化系という一つの形を完全に確立した。今作はハードコア以外の要素も多くあるが、それでも一貫してハードコアのまま、その先に存在する更に危険な次元へと到達してしまっているのだ。スラッジコアは更に形を変え、拡散していっているが、やはり今作に存在している純度の高い危険な音は凄く魅力的であるし、本当にサイケデリックである。ジャケットは非常に悪趣味であるし、拷問の様な殺気に満ちているが、脳髄を揺さぶられる様な陶酔感とハードコアとしての強靭な強さを兼ね揃えたハードコア・スラッジコアの大名盤だ。ここにある音は本当に危険でゾクゾクする。



■Romantik Suicide/KANASHIMI

40074_kanashimi_romantik_suicide.jpg



 静岡出身の自殺系ブラックメタルのユニットであるKANASHIMIの09年発表の6曲入りの作品。全てのパートを首謀者であるMisanthropの手で行っており、完全なる独りブラックメタルであるが、メロウで耽美な旋律と、くぐもったギターリフが作り出す陰鬱で刹那的で終わりを鳴らすかの様な虚無感が作品全体に満ちており、名前通り計り知れない悲しみを鳴らしている。



 第1曲「Romantik Suicide」からKANASHIMIの陰鬱で耽美なブラックメタルの世界が展開されている。ピアノの旋律は儚く、スローテンポの曲調と深い森の中の霧の様なギターリフが幻想的でありながらも、希望など全く存在しない絶望的世界を作り上げている。ガナリ声のボーカルもまた、その絶望的世界に拍車をかけてくる。音の篭りなくったギターリフで埋め尽くされる第2曲「Kanashimi no Rensa」も徹底して終わりの無い悲しみをミドルテンポで鳴らしている。薄っすらと入るキーボードの旋律が効果的にその黒の世界に黒を塗りつぶすかの様な感傷を加速させ、聴き手に甘く陰鬱な絶望を浴びせてくる。
 そしてハイライトは第5曲「Zetsubou no Namida」だ。スローテンポでじりじりと展開されるこの曲は、人の精神世界に入り込んでいるかの様な終わりなき苦痛と悲しみが走馬灯の様に流れていくかの様な楽曲だ。今作で最も美しいこの曲はとんでもない耽美な甘さを持っているし、それがまたこの絶望的世界に入り込んだまま抜け出せなくなってしまいそうになる要因だ。徐々にその神秘的な世界を加速させてゆき、そのまま消え去って行くこの楽曲の美しさは素晴らしい物がある。



 自殺系ブラックメタルという取っ付き難さのある音楽ではあるが、全体的にメロウで美しい旋律もあり、耽美な甘さがあるから楽曲の世界に感情移入する余地は十分にあるし、かなり聴き易い作品ではないかと思う。ここら辺のジャンルに興味があるけど、ちょっと手を出すのが怖い人にもお勧めしやすいし、自殺系ブラック愛好家の人もこの耽美で美しい世界に癒されると思う。国産自殺系ブラックのかなり良質な作品なので是非とも機会があれば聴いてみて欲しい。

■Deep Politics/Grails


Deep PoliticsDeep Politics
(2011/03/08)
Grails

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アメリカはオレゴンからダークで深淵で神秘的な音を鳴らすGrailsの2011年発表の7枚目の作品が今作である。ストリングスの音を大きく取り入れ、深い森の中から神秘的な風景を想起させるかの様な音、ヘビィではあるけれども決してゴリ押しで攻めるのでは無く、一個一個の音が繊細に鳴らされ、美しい粒子を描いているかの様な作りこまれたアンサンブル。非常に幻想的であり、奈落の底に堕ちていくかの様な美しい仄暗さを持つインストゥルメンタル作品だ。



 第1曲「Future Primitive」から描かれているのは深い森の奥で止まない雨が降り注ぎ続けているかの様な情景だ。トライヴァルなギターのリフとアコギの音色とストリングスの音はどこか郷愁すら感じさせるスケールの大きさを見せながらも、精神世界の螺旋を描き、終わらない迷路の中をグルグルと回っているかの様な感覚だ。他の楽曲でも、ポストロック・プログレ要素・フリージャズ・ドローンとあらゆる要素を持ちながらも、それらが深淵なる世界を描く為の物として帰結している。第4曲「Deep Politics」のピアノとストリングスが作り上げる葬列曲の様な物悲しく空虚さを感じさせる様なアンサンブルの美しさは本当に鳥肌が立った位だ。そこから力強いビートが入り込んで来た瞬間に地獄でも天国でも無く、完全なる無へ旅立つ人へのレクイエムの様な無慈悲であり、それでいて僅かばかりに感じる人間らしい悲しさがまたこの音に説得力を持たせている様にも感じたし、終盤の3曲で描かれる音は本当に高い完成度を持っていると言えるだろう。バンドサウンドを前面に押し出した第6曲「Almost Grew My Hair」の絶妙な熱量で鳴らされる時空を超える音の広がりはとてつもない高揚感も持ちながらも、もっと地底の奥底に落ちていくかの様な残酷さを混じるし、最終曲である第8曲「Deep Snow」でのアコギを前面に出した上での構成やアンサンブルは、人間の温もりと静かな雨に濡れながらも、この世の全てを優しく見守るかの様な感触、そして中盤から一気に轟く音の洪水がこの世界の全てを洗い流すかの様な神々しさを持ち、止む事無く降り続く雨模様の先に一筋の光が差し込むかの様な救いを持っている。その瞬間に今作で鳴らされた世界はその微かな光に導かれながら、静謐に終わりを迎える。



 僕は今作を聴いて、方向性こそ全く違うがGY!BEやDirty Three級の深淵なるインストゥルメンタル作品の力を強く感じた。今作で鳴らされている世界はインストゥルメンタルをまたネクストレベルまで確実に進化させた物であるし、仄暗い音から浮かび上がる情景は本当に多彩だ。ここまでの情景を音のみで描ける事に僕は恐ろしさを感じてしまった位だ。インストゥルメンタル音楽の新たな地平を切り開く大傑作。間違いなく最重要作品になる大傑作!心して聴いて欲しい。



■空谷ノ歪音/discotortion

FINETUNING-23.jpg



 北海道のハードコアシーンを引っ張り続ける猛者共によって結成されたdiscotortionの2011年発表の2ndアルバム。ツインドラム編成となってから初の作品であるが、重厚な音圧によって繰り広げられるのはハードコア・オルタナティブロックを基盤にしながら雑多な要素をジャンクに食らった、超爆音のギターリフが空間を埋め尽くす本質的な意味での混沌と、脳髄直撃の爆音ダンサブルオルタナティブロックだ。ゲストとしてL!EFのマツウラヨシタケ、Zの根本潤、魚頭圭がゲストで参加し、より混沌を極めているのも見逃せない。



 まず今作に存在する音は全く整理なんかされていない。爆音の中でかすかに聴こえてくるキーボードの音であったりとか、硬質でダンサブルなビートがツインドラムの音圧で鳴らされていたりとか、NO WAVEなカラーも思い切り吸い込んだ上で、それを脳直で本能のままに鳴らしているのが今作の大きな魅力だと言える。楽曲の基盤になっているのは爆音で殺気だった一撃必殺のギターリフの格好良さであり、それをストレートに鳴らしながらも、正当なオルタナティブロックのマナーなんか無視し、多くの音を未整合のままブチ込んでいるのだ。Shellacにも通じる硬質のビートを解体し、より混沌に向かい暴走しているとしか思えないのだ!何よりもバンドとしての腕力と馬力が圧倒的。このバンドにあるのは豊かな音楽性と、サンディエゴ直径のハードコアサウンドをズタズタにしてしまう暴力性であるけど、その音を鳴らすバンドとしてのパワーが本当に絶大!バンドが持つ原子的な力が凄まじいからこそ、このジャンクで残酷な音は、狂気に満ちたオルタナティブ殺戮兵器として猛威を振るっているのだ!



 先人達の影響とリスペクトを感じさせながら、それを模倣するのでは無く、ズタズタにしてしまった上で、整理なんかしないで本能のまま爆音で鳴らしてしまった今作。本当にオルタナティブであるし、脳髄を叩き潰す極悪な爆音のギターリフと冷徹でダイナミックなビートは全てを粉々にしてしまうだけの力を持っている。耳を劈く爆音サウンドに僕の心は完全にノックアウトされてしまった。2011年のジャパニーズオルタナの傑作だ。今作は是非とも超爆音で聴いて、その脳髄を完全粉砕されて欲しい。



■For all the innocence/LITE


For all the innocence(初回盤)For all the innocence(初回盤)
(2011/07/06)
LITE

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 日本のマスロックの代表格として今や人気バンドになっているLITEの2011年発表の3rdアルバム。ここ最近のLITEはシンセライザーを導入し、より自分達の音を広げて来たが、それが今作で見事に一つの形に帰結し、マスロックの枠を超える表情豊かであり、豊かな色彩を描くLITEの音は更なる進化を遂げ、とんでもないレベルにまで自分達の音を成長させた傑作と言って良いだろう。攻撃性とオーガニックさと幻想的な色彩が同居したLITEだからこそ鳴らせる音が今作には存在している。



 まず第2曲「Red Horse in Blue」からLITEの進化を伺う事が出来る。オーガニックな感触のシンセライザーの音がループし、その緩やかな音の中でそれぞれの楽器が緊張感に満ちた音を繰り広げる、徐々に高まっていく熱量はスリリングでもあるし感情豊かだ。第3曲「Rabbit」ではキャッチーさも存分に取り入れ、広がっていく音の数だけ、その聴き手に突き刺さる攻撃的な部分も鋭利になっていくのだから恐ろしい。それでいてドラマティックな展開は激情系のそれに通じる部分があったりするし、バンドとしての音楽的な縛りは益々無くなっているし、それをLITEの音に帰結させているのだ。「The Sun Sank」のフレーズほ再び使用した第4曲「Perican Watched As The Sun Sank」何かは余計に今までのLITEを完全に置き去りにし、今のLITEへと完璧な形で更新する尖り具合と、豊かな旋律と、叙情性と、複雑であり鉄壁のアンサンブルが存在している。
 そしてよりダンサブルな音を鳴らし大胆にコーラスを導入している第6曲「Pirates and Parakeets」はLITEが新たな地平を切り開いた事を証明している。鉄壁のリズム隊のアンサンブルが完全に踊れるビートを鳴らした事によってLITE流のディスコナンバーになっている。これライブでやられたら堪らないだろうななんてニヤニヤしてしまった。鉄壁のアンサンブルの上でどこまでもオーガニックで感情に溢れた音はボーカルの存在なんか無くても、そのアンサンブルが全てを雄弁に鳴らしている。柔らかな優しさと、確かな強さを手に入れ、そこに枠組なんか必要としない多方面に飛び交う豊かな音楽的要素とカラフルな音の波をLITEは今作で完全に自分達の物にしているのだ。そして第10曲「7day Cicada」では王道のマスロックの音に帰結しながらも、エモーショナルさと攻撃性に特化したアンサンブルが脳の快楽中枢を一気に刺激させられてしまう様な高揚感を感じさせる。あくまでもLITEとしての基盤を壊すこと無く、理想の形での進化を遂げたと感じさせてくれた。



 LITEは国内のインスト・マスロックの中でも圧倒的な存在感を放っていたバンドであるし、その音楽は多くの人に評価されていたが、まさかここまで劇的な進化を遂げるとは思っていなかった。自らに満足する事無く、アンサンブルをストイックに鍛え上げ、音楽性を確かな形で広げた事により、一回りも二回りも大きくなっている。やはり国内マスロックの第一人者はその音を自らの手によって更新させる。今作での進化も凄まじかったが、LITEならその先の次元にも到達出来るんじゃないかと期待すら抱かせてくれる。益々このバンドからは目を離せなくなりそうだ。今作は間違いなく2011年の日本国内のインストゥルメンタルミュージックの最重要作品と断言出来る。より多くの人にこの音が届いて欲しいと願うばかりだ。

■Aesthethica/Liturgy


AESTHETHICA (エスセシカ)AESTHETHICA (エスセシカ)
(2011/07/20)
LITURGY (リタジー)

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 ここ最近になって益々多様化が進んでいるブラックメタルというジャンルであるが、ブルックリンのLiturgyはその多様化していくブラックメタルの前線にいるバンドであり、ブラストビートやトレモロリフといったブラックメタル要素をしっかりと持ちながらも、その先にある純白の神々しさすら感じさせてしまうバンドだ。最近はブラックメタル側からシューゲイザー要素や音響的要素を積極的に取り入れるバンドが増えたが、この2011年発表のLiturgyの2ndである今作はその流れが益々拡散し、より豊かな音楽性を見せ付けている事を証明すらしていると思えるのだ。



 まずブラストビートやトレモロリフといったブラックメタルの基礎となっている要素は確かに持っている、しかしその音質はかなり良いし、演奏もシャープで非常に鋭いものとなっている。更にバンドサウンドの中にエクスペリメンタルな要素をブチ込んでいる事によって本来のブラックメタルとはまた違う不穏でありながらも光と闇が瞬時に交錯していくかの様な音が簡単に思い浮かぶのだ。楽曲の展開も単調さからは程遠く、ドラマティックであり、ツインギターのトレモロリフの音がその世界に重厚さを与えている。その神々しさを感じさせる音は陰鬱でありながらも、トランス出来るトリップ感覚すらあるのだ。
 それにしても楽曲の基盤となっている旋律がまた不思議な物であるのだ、不協和音であるのに、メロディアスさすら感じさせ、かといえば不穏の轟音とも取れる不穏の音。しかしその掴みどころの無い旋律こそがLiturgyの大きな魅力と言っても良いだろう。更に曲によってはマスロック的なキメを多用するパートが登場する曲もあったり、陽性のキャッチーさを仄かに感じさせる旋律が登場したりと、本当に雑多な要素を持っているバンドだと言える。そしてそれらを超ドラマティックでありながら感情移入を許さない冷徹さで鳴らしているのだ!



 ブラックメタルというジャンルは最早簡単に括る事が出来ない位に多様化が進んでいる。そういった流れの中でLiturgyの様なバンドの登場は必然といっても良いだろう。王道のブラックメタルからはかなり程遠いバンドではあるし、最早ブラックメタルの枠組を考える必要性すら無いバンドではあるが、Liturgyの持つ超ドラマティックであり冷徹な世界はブラックメタルの進化を象徴しているのでは無いかと思ったりもするのだ。

■Slow Riot For New Zero Kanada/Godspeed You! Black Emperor


Slow Riot for New Zero KanadaSlow Riot for New Zero Kanada
(1999/03/30)
Godspeed You Black Emperor

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 最早ポストロック云々の枠や議論すら粉砕するかの様な神々しい音を鳴らすカナダの轟音オーケストラ集団GY!BEの99年発表の2曲入りのEP。収録曲こそ僅か2曲であるがそこはGY!BE、たった2曲で30分近くにも及ぶ壮大な楽曲を展開している。そしてEP作品でありながら今作に収録されている2曲はとんでもない名曲であり、GY!BEが他のバンドには到底追いつけないとんでもない次元の音を鳴らしている事を証明している。



 まず第1曲「Moya」はGY!BEの中ではかなり短い曲ではあるが(それでも約10分)、序盤のストリングスの音色の美しさと畏怖の年すら感じさせるおぞましさが同居した感覚がいきなり聴き手を別の次元へと誘ってゆく。少しずつ入ってくるギターの音色は緊張感に満ちていて、物語の語り部的な役割を果たし、そこからマーチングの様なタイトさと力強さを持つドラムが入った瞬間に熱量は高まってゆき、気が付いた瞬間には全ての音が悲痛な叫びを上げるかの様な緻密でありながらもとんでもない爆発力を持つ轟音にその姿を変え、一気に暴発していく、悲しみと怒りに満ちたシリアスな音はGY!BEだからこそ鳴らせる物であり、このバンドは言葉なんか無くても、その音で全てを伝えることが出来る事を改めて証明していると言える。そして第2曲「Blaise Bailey Finnegan III」がGY!BE屈指の名曲と言っても過言では無い位に凄まじい高みまで上り詰めているのだ。冒頭の語りのパートから異様な緊張感が続き、そこから静謐なアンサンブルで吹雪が吹き荒れる真冬の町並みの様な風景を想起させ、郷愁に満ちた轟音が吹き荒れてゆく。しかしこの曲はとんでもなくドラマティックな楽曲であり、モノクロの風景を想起させる様な色合いを感じさせてくれる楽曲ではあるが、その淡く悲しい色彩の中で描かれる風景はとんでもない数だし、そのアンサンブルは決して揺らぐことの無い美しさと強さを持っている。何より終盤のアンサンブルは本当に涙が止まらなくなりそうだ。力強く鳴らされるドラム、全てを無に還す様な純白のギターの轟音、ストリングスの音は天からの祝福の様でもあるし、人間に対する自然界の怒りでもあるかの様な、黒と白が混ざり合うその様はジャケットにヘブライ語で描かれている「カオス」その物であるが、ここにあるのはそんな陳腐な単語じゃとてもじゃないけど言い尽くせない人類なんかじゃ抗えない様な見えないけれど圧倒的な力だ!!



 今作はGY!BEにしては短めの尺の曲2曲で構成されているので、GY!BEに取っ付き難さを感じている人はまず今作から入ることをお勧めしたい。しかしそれだからこそ濃縮されたGY!BEのサウンドスケープはとんでもなく濃密だし、そのドラマティックでシリアスでエモーショナルな世界は絶対に揺らぐことが無いのだ。本当にこのバンドが描く世界は人間が作り出しているとは思えない位に美しいし、どこまでも僕の心に突き刺さる。本当に恐ろしいバンドだ。



■親指姫/山瀬まみ

oyayubi.jpg



 今作はタレントとしてお馴染みの山瀬まみの89年発表の作品である。「山瀬まみロック化計画」という企画の元に発表された作品であり、芸能人やタレントが課外活動的にCDを出したりするアレな感じの企画なんだろうけど、これがとんでもない方向でガチな作品になってしまって謎の名盤になってしまった作品である。



 まず上記の画像を見て頂きたい。これが今作のジャケットなのだが、あまりにもサイケデリックな仕上がり、とてもじゃないけど有名タレントの企画物CDのジャケットじゃない。もうなんていうか80年代末期から90年代頭にかけてのアングラな空気をまんま出てしまっているジャケット。つうかマジで怖い。山瀬さんこっち見んなって感じだ。そして今作に参加している方々があまりにも豪華すぎるのだ。以下参加アーティスト。

サセキけんぞう、大山正篤、大槻ケンジ、泉麻人、奥田民生、横関敦、デーモン小暮、戸城憲夫、内田雄一郎、矢野顕子、三柴江戸蔵、諸田コウetc

 もう何というか豪華過ぎる上にガチ過ぎるのだ。ていうか筋少関係者が4人もいるってどうゆう事だよ!もうこれでお分かり頂けるとは思えるだろうがとてもじゃないけど芸能人が片手間に出すCDとしてはありえない位ガチなのだ。そりゃ中には普通にとんでも無い歌唱力を持った裏方が二人いて楽曲も超完成度の高いポップスな野猿とか、坂本教授との共作で超絶暗黒精神世界を展開した中谷美紀とかタレントや女優の企画物でも普通に完成度の高い音楽を展開した例はあるけどさあ。山瀬まみの音楽的趣味がそっち方面だったのか、たまたまそうゆう面子になったかは非常に謎である。というか多分前者だと思う。
 さて肝心の内容についてだが、まず第1曲「ゴォ!」から飛ばしまくってる。これは民生作曲であり、ユニコーンを彷彿とさせるキャッチーで性急な曲だが、楽曲の完成度に加えて、テレビでお馴染みのあの鼻声で歌う山瀬の声がとんでもない化学反応を起こしているのだ。作品全体でも性急でパンキッシュな歌い方がその凄みを増しているし、80年代末期の空気を思い切り吸い込んだアングラな香りとキャッチーさが奇跡的に同居したガールズロック・パンクな作品と言っても過言ではない。第6曲「I WANT YOU」はモロ筋少なスピードチューンであるし、閣下作曲の第8曲「YAMASEの気持ち」なんてシンフォニックメタルであり、諸田コウのベースも非常に印象的だし、山瀬の歌唱力の高さがフルで発揮されてる。というか普通に名曲だし。奇妙に歪んだピアノプログレとも言えそうな第5曲「ヒント」では矢野顕子の作った曲をエディが編曲するとかいう奇跡まで起きてるし。そして最終曲の「恋人よ逃げよう世界はこわれたおもちゃだから!」はオーケン作詞の楽曲であり、オーケン的世界を山瀬が歌い、非常に幻想的でパラノった狂気の世界が展開されて終わるといった物。



 楽曲の完成度こそ若干バラつきはあるけれど、普通に企画物のCDとは思えない完成度だ。80年代末期のバンドシーンの空気がモロ出ている作品でもあるし、それを山瀬まみが自らの物にしてしまっているのが凄い。だがあまりにも謎過ぎる珍盤だ。普通に名盤でもあるけどさ。芸能人の企画物も結構馬鹿に出来ないなあと思った限りである。まあなによりも

どっかのだわぁいに比べたら明らかに良い作品だね!!

プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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