■2011年10月

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■Hesperus/5ive


HesperusHesperus
(2008/02/19)
5ive

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 たった2人で全てを粉砕する激重サウンドを放出するマサチューセッツのユニット5iveの08年発表の3rdアルバム。02年の1stでは無慈悲極まりないスラッジサウンドを聴かせていたが、今作ではヘビィさは変わらずポストメタル要素がかなり強くなった印象を受ける作品だ。放出されるヘビィなギターとドラムのみの音を洗練させ、スラッジさだけでなくポストメタルならではの計算された構成とメロウな旋律も今作には存在する。強靭さだけでなく知性も手に入れた作品だ。



 先ず1stに比べて明らかにクリアのなった音が印象強い。ドラムのビートは相変わらず一撃粉砕の重戦車の如し、ミドルテンポで岩石が降り注ぐ様なビートで全てを薙ぎ払って行くのだけれど、ギターの方が時には激歪な音色も奏でるし基本的にはスラッジそのものなリフを降り落としてはいるが、音が全体的にシャープになっている。時折見せる微かなメロウさ、ドラムと呼吸ピッタリなキメと鋭角さも身に付けているのを第1曲「Gulls」を聴けば分かると思う。第2曲「Big Sea」ではトライヴァルなビートの反復によって不穏の空気を充満させ、そこから決壊するヘビィなスラッジリフの濁流という流れを見せており緩急をつけた構成を見せる。持ち前のスラッジさだけで無く、構成力や緻密さも見せ付ける1曲になっている。静謐なポストロックなフレーズも導入し、それがヘビィさを際立たせる構成も1stには無かった物だし、ヘビィネスの中で旋律の美しさや緩急をつける楽曲の変化等を計算的に導入した事による変化は本当に大きい。不穏さと時にサイケデリックな感触でグラグラさせそこに持ち前のスラッジサウンドを鉄槌の様に下し、確実に聴き手を粉砕する音が生み出す破壊力は相当な物。美しいスラッジの轟音が押し寄せる第5曲「Polar 78」、組曲になってる第6曲と第7曲の「News」の深遠なるポストメタルなメランコリーに満ちたアルペジオの調べに酔いしれさせ、最終的には1stで見せた様な全てを埋め尽くすスラッジリフの黒煙を噴出し隕石が終わり無く降り注ぐ様なスラッジ地獄へと変貌する様などは特に圧巻である。



 次元を歪ませ全てを震わせ打ち砕く激重スラッジをより緻密に美しく鍛えた結果生まれた今作は静かに波打つ様な水面の波紋の様な音から巨大火山が噴火する様な全てを震え上げさせる破壊の音まで巧みに使い分け、超次元の轟音へとバーストしていく作品となった。1stの激スラッジさに心の底から震えたが今作の美しく鍛え上げられたサウンドフォルムが生み出す静謐さの世界からの粉砕神としての猛威にも僕は震えた。超激重デュオ5iveは健在である。



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■GreenAppleQuickStep (ROCK'N'ROLL) /GreenAppleQuickStep


GreenAppleQuickStep(ROCK'N'ROLL)GreenAppleQuickStep(ROCK'N'ROLL)
(2009/05/05)
GreenAppleQuickStep

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 北海道のサイケデリックロックバンドGreenAppleQuickStep(以下GAQS)の09年発表の1stアルバム。不失者、渚にてのメンバーでもある高橋幾郎も在籍しドラムを叩いているバンドだ。GAQSは21世紀に70年代ジャパニーズロックを体現するバンドだと言えるが、彼等はロックの地底の奥底に潜っていく様なダークさと酩酊感を鳴らすバンドであり、横ノリのサイケデリックなビートが深みへと誘う麻薬の様なロックが今作だ。



 GAQSはあくまでストレートなロックをやっているバンドであるが、何処か重みを感じるドープなビートと切れのあるギターの音色と陰鬱で耽美な空気を持つボーカルだけで空間を自らのロックで染めてしまう。彼等はロックの密室的な要素を特に強く鳴らしているし、アプローチは違うけど、割礼の地底からのダークなピュアネスと耽美さ、ちゅうぶらんこの横ノリのビートの揺らぎ、裸のラリーズのアシッドフォークな楽曲にある様な静かな狂気、それを併せ持つバンドだと言える。地下室の奥深くで鳴るロックだ。第1曲「ロックンロール」はそんな彼等の名刺代わりの1曲であり、淡々としていながら引き摺っていく感触を持ったビートがバンドとしての骨組みを形成し、切れ味鋭くどこかインプロ的でもあるギターが生み出す酩酊感の空気、それが脳髄に入り込みクラクラする様な横揺れの揺らぎと陶酔出来る甘さに飲み込まれて行く。しかしあくまでも彼等は何のギミックも無いロックバンドだ。第2曲「祭り」の横ノリ全体のグルーブ、第3曲「残響」のアシッドフォークなコード進行と空気とリードギターのファンキーさはロックバンドとしてスタンダードさに真っ向から向き合った上で生まれた音だと言える。今作は第4曲「夜のにおい」が特に名曲であり、物悲しいコード進行でビートもギターも淡々と進行し、哀愁漂う歌を楽器隊の音が支える最も歌物な1曲だが、GAQSの内側に向かう精神世界で鳴らされるロックを一番体現した楽曲であり、静けさの中で歌われる感情の世界を時に主張を強めるギターがアクセントをつけ、静謐さの中で広がっていく物悲しさには惚れ惚れする。第7曲「みつけて」もインプロな楽器隊の音がサイケデリックな空間を生み出し、その中で消え入りそうな歌が儚く紡がれていく歌の世界は悲壮感と人間の中にある死へと感情が近づいたからこそ見える奥底の世界へ導いていく名曲だ。



 GAQSはストレートなロックの純度の高さをそのまま鳴らしているバンドだが、決してロックスター的な華やかさはあるとは言えない。しかし地底の奥で鳴らされる麻薬の様な危険な空気を鳴らすという意味では紛れも無いロックバンドなのだ。割礼や裸のラリーズの様な人間の内側にあるドロドロした感情を鳴らす素晴らしい先人達と同様に彼らもロックの深層へと入り込んでしまったバンドなのだ。そんな感情にGAQSの音は優しく寄り添ってくれるし、ただ天井を眺めながら自らの世界へと潜る時に彼等の音は本当に沁みる。



■パンクの鬼/The Gerogerigegege

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 80年代後半から活動し、ノイズ界の異端児の中の異端児としてカルト的人気を持つ山之内純太郎によるThe Gerogerigegege(ゲロゲリ)の90年発表の作品。今作はまず参加しているメンバーのクレジットが山之内以外は「死にました」になっているというふざけたクレジットがされているが、全75曲という曲数、全曲大体30秒程で1分超えの楽曲は1曲も収録されていないという構成、そして蛭子能収の手によるジャケ等全てがガチのぶっ飛び具合だ。



 先ず今作はライブ音源であり山之内によるライブ告知のMCもしっかり収録されていたりするのだが、全曲に共通して言えるのはタイトルを叫ぶ→「ワンツースリーフォー!」のカウント→30秒程のノイジーかつパンキッシュな演奏→次の曲、といった本気で馬鹿過ぎる構成。山之内が叫び、ノイジーかつ性急な演奏を繰り返すだけの作品なのだ。しかも何故かThe Doors、The Rolling Stones、The Cure、果てのは何故か三原順子、ダウンタウン・ブギウギ・バンドのカバーまで収録されているという謎っぷりだが全くカバーなんかしておらず前述の通りパンキッシュかつノイジーな超ショートカットチューンをブチ撒けるだけといった物。しかしその曲名が大体酷いのだ。特に秀逸なのを挙げるとするならば、「サザエさんとマスオのSex」、「タラちゃんのオナニー」、「戦メリ3分なめとんのか」、「マリオ80万点」なんかだ。ここまでの説明で大体今作の音についての説明は終わってしまったが、ここにあるのは全75曲にも及ぶ全力の初期衝動オンリーの正にパンクロックだ。演奏がグチャグチャでノイズまみれだろうとタイトルを叫び、力の限りのフォーカウントを決め、そしてあっという間の演奏、。それが75曲ノンストップで続くカタルシスは相当な物であるのは間違いない。



 今作は言ってしまえばスカムパンクの作品であり、ぶっちゃけてしまえば特別聴く必要なんか全然無い作品だ。しかし大真面目に大馬鹿そのものな手法で山之内は自らの初期衝動を全力でブチ撒ける。本当に初期衝動オンリーなその姿勢は正にパンクの鬼でしか無いのだ。演奏技術も計算も構成だとか展開も、小細工なんか全て捨ててその一瞬を突っ走って行く様は本当に胸が熱くなる。その初期衝動だけで今作は最高に格好良いパンクロック作品なのだ。特別聴く必要は全然無いけど、ただその初期衝動は自分の胸にあるパンク魂を確実に熱くしてくれる。そんなパンクロックしか今作には無い。だから最高なのだ。



■focus/The Carnival Of Dark-Split

the carnival of dark-split



 BONESCRATCH、キウイロール、GOMNUPERSのメンバーにより構成されていたオルタナティブハードコアの煉獄こと北海道のカオティックハードコアバンドであるThe Carnival Of Dark-Splitの唯一のアルバム。リリースはHG FACTから。BONESCRATCHは日本でかなり早い段階でカオティックハードコアをやっていたバンドだったが、BONESCRATCH以上にダークサイドの混沌を強めた今作は負の感情を無慈悲に叩き付けるカオティックハードコアの傑作となった。



 彼等の音は圧倒的密度によって鳴らされる負の感情そのものであり、キャッチーさなんか微塵も存在しない。不協和音で構成されたリフの殺傷力がまず凄まじく、楽曲の中で大きな落差のある構成によって鉄槌を下す様な残虐さもかなり際立っている。サンディエゴのポストハードコアとヘビィネスが融合し、そこからダークさのみを抽出した結果生まれたカオティックハードコアと言えるだろう。第1曲「Disdance」の不穏なくぐもったシンセから無慈悲に振り落とされるギターリフの破壊力は圧巻。リフの破壊力や落差を巧みに使い分ける構成も見事だが、コーラス等の空間系エフェクターを使いこなし時に不穏の空間的な音も顔を出し、そこに乗る殺意と狂気に満ちたボーカル。正に殺意のハードコアだ。蠢くベースラインから混沌に満ちた不協和音へと雪崩れ込む第2曲「Melt Delusion」も終末観と混沌の中で頭は覚醒し正常でありながらも全ての神経を逆上させる。後半からのコーラスを巧みに使った破滅的旋律の中の哀愁のコード進行も見事だ。特に必殺の1曲は第3曲「Sludge 72」で間違い無いだろう。蠢く空間系エフェクターが生み出すノイズをバックに今作で最も殺傷力のあるリフと共にバーストとダウンを繰り返し混沌を加速させた末にタイトなリフで振り落とし終わる楽曲だが、2分弱の中で変化していく構成と必殺のキメ、邪悪なリフと同時にエフェクターによって音階が崩壊していくギターリフが刺さる名曲だ。脳髄で暴れ回る負の感情と狂気を描いた様な第6曲「New Normal」も見事でゆるやかに漂う音と独白めいたボーカルからリフとビートの応酬なバーストするパートへの切り替え方も絶妙。作品全体で一貫しており、混沌と共にバーストするパートとゆるやかに空間的な音が不穏の空気を生み出すパートを使い分け、変拍子の中で巧みなキメを入れるビートと激歪かつ空間的なノイズを撒き散らし暴走するギターリフがドス黒い血を撒き散らしていく様な残血具合。とにかく混沌を完全に負の方向へと向かわせた結果生まれた精神の暗黒世界へと引きずり込むハードコアが生まれてしまったのだ。



 
 残念ながらギターボーカルのカンノ氏の死によってThe Carnival Of Dark-Splitは解散してしまったが、彼等の残した負の感情と混沌を鳴らすハードコアは唯一無二であり、その暗黒世界に飲み込まれてしまったら二度と抜け出せない中毒性も持ち合わせている。不協和音が轟くハードコアの世界をここまで高い次元で完成させてしまった今作はカオティックハードコア屈指の名盤である事に間違いない。漆黒の精神世界へと引きずり込まれてしまう事は間違い無いだろう。

■Ⅱ/Angel'in Heavy Syrup

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 大阪が生んだ伝説的ガールズサイケデリックプログレバンドであるエンジェリンの92年発表の2nd。エンジェリン特有の日本語フォーク的な退廃感、時に甘い旋律を時にノイジーなファズギターをといった酩酊感と甘くも柔らかに突き刺さる旋律も発揮され、それをプログレッシブに鳴らすという音は91年の1stから99年の4thまでエンジェリンの核として存在しているし、今作でもそれは変わらないが、今作は特にプログレッシブかつ長尺の楽曲が並び、僅か5曲であるがその内の3曲がそんなプログレッシブな楽曲だ。



 先ずエンジェリンらしい甘いアレペジオが重なるフレーズから第1曲「Introduction Ⅰ ~ Naked Sky Hi」が幕を開く。淡々とした進行の中で徐々に音のテンションを高めていくIntroductionのパートを終え、本編の「Naked Sky Hi」からその空気を一変させる。鉄琴の音をフューチャーし、その儚い歌声と今にも崩れてしまいそうな楽曲の旋律の美しさに聴き手は破滅的世界へと否応なしに飲み込まれていく。だがフランジャーのかかったギターがサイケデリックな色を持ち楽曲はまた一変。ファズギターの音をバックに、ワウをかましたギターのフレーズが徐々にその旋律を変貌させ別次元の空間へとトリップしていく。その流れからの終盤は鳥肌物でより儚い歌世界の美しさが退廃の世界へと飲み込んでいく様はエンジェリンだからこそ出来るサイケデリックなプログレ絵巻だ。轟音とフォーク音階の旋律が織り成す天国でも地獄でも無い世界の悲劇を描く第2曲「Crazy Blues」も圧巻のサイケデリック絵巻であり、フィードバックする音の儚さとは別にタイトに変拍子を刻むビート、今にも消えてしまいそうな歌声を皮切りに轟音が崩壊を描き、美しい音世界を焼き尽くしていくドラマティックさ。そして最終的にプログレッシブなパートへと帰結していく楽曲構成。一つの楽曲の中で幾多のドラマを描き、優しく儚い世界からの崩壊を描いていく様には身震いしてしまう。1stの再録である第3曲「きっと逢えるよ」のノイジーかつプログレッシブでありながら日本語フォーク的世界観と音階が生み出す耽美な美しさもエンジェリンの音をこれまでに無い位に叩き付けてくる名曲だ。今作は第4曲「Introduction Ⅱ」という2分弱の楽曲で完結し実質4曲の構成であるが、たった4曲で一つの美しい破滅を嘆く天使の歌を見事に完成させてしまっている。ボーナストラック的な立ち位置になる第5曲「I Got You Babe」は60年代から70年代に活動していた男女フォークデュオの名曲のカバーであり、エンジェリンのルーツを垣間見れると同時に、原曲に忠実でありながらもその儚い歌声とサイケデリックさはエンジェリンの物でありこちらも名カバーと言える。



 今作はエンジェリンで最もプログレッシブかつ壮大なスケールを持つ楽曲が並ぶ作品となった。エンジェリンはその儚い天使の歌声とサイケデリックな音のスケールとフォークソング的世界観が売りであるが、花電車等に影響によるプログレッシブさこそが彼女達の楽曲の核でもある。それが前面にでているし、そのプログレッシブさがあるからこそエンジェリンは美しく儚い崩壊の音を鳴らしているのだ。



■All The Way/Growing


All the WayAll the Way
(2008/09/09)
Growing

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 ブルックリン出身の音響デュオであるGrowingの08年発表の6th。彼等はギターの音のみでジャンルすら超える自由な音を模索するユニットであるが、ドローンから始まったGrowingはエレクトロニカ・アンビエント・ミニマム・クラウトロックをその2本のギターのみで横断する音を鳴らす様になった。今作はミニマムな要素をかなり強めた作品であるが、その反復する音は聴き手の快楽中枢を刺激する非常に気持ちの良い音になっている。



 彼等は多数のエフェクターを使用し、2本のギターのみで全ての音を構築するスタイルのユニットだが、今作の大きな特徴としてトレモロのかかったパルス音を終わりなく反復させ、そのミニマムさから徐々に音の色彩を増やし広げていくという物になっている。最小限まで音を絞りそれらのループが生み出す音波の螺旋の快楽に溺れてしまう。第1曲「Green Flag」は正にそのループするトレモロ音のミニマムな快楽世界に引き込まれてしまう事は間違い無しだ。その反復するミニマムな音をベースに楽曲によってカラーもしっかり変えてくるセンスもまた彼等の持ち味であると言える。第2曲「Wrong Ride」ではよりアンビエントなカラーを強めて、美しいドローンな世界へと誘われるし、第4曲「Innit」では小刻みに反復するギターがビートを生み出し、ミニマムテクノなダンサブルな音を展開している。その音響的な残響の余韻も巧みに操り、限られた音の中だからこそのアイデアの自由さとそれを生かす楽曲構成は彼等の実験精神と聴き手の快楽を熟知したセンスがあるからこそ出来る芸当だ。ループする音は徐々に聴き手の耳から神経を刺激し、音波が快楽信号として脳細胞に入り込んでくるのだ。特に第6曲「Reconstruction」なんてクラウトロック的なアプローチも感じさせ、打ち込まれる電子音の様なギターとボーコーダーボイスとミニマムなノイズの断片にて楽曲を構成し、徐々にダンサブルなカラーを強めていくという今作で最もその快楽性が強いだけで無く、Growingの音の幅広さも実感させる1曲だ。



 2本のギターでミニマムな音のループを生み出しそこから自在に音を変化させ、共振する反復するビートすら生み出すGrowingの音は本当に自由な物になっている。ミクロな音の粒子がその音波の波状によって少しずつ広がっていく細胞レベルで浮遊する音の波は静かに聴き手を刺激していく。多くの人に効果のあるミニマムな音の快楽世界へと誘われていくのだ。



■James Blake/James Blake


James BlakeJames Blake
(2011/03/22)
James Blake

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 世界各国で多くの賞賛を浴び、この日本でも話題にもなっている新鋭のポストダブステップのアーティストであるJames Blakeの2011年発表の1st。今作で日本でもブレイクを果たしたと言っても過言では無い。James Blakeの音は最小限の音で生み出すビートと旋律の美しい機能美と儚げな歌声が生み出す静謐さの中のどこか耽美な音の奥深さに気が付けば引き込まれてしまっているのだ。



 基本的には王道のダブステップの音の揺らぎを生かしたビートが主軸になっているのは間違い無いのだけれども、最小限まで絞った引き算によるビートと音の構成理論は静けさの中で一個一個の音が確かな存在として鳴らされている。効果的に取り入れられるシンセの旋律の歎美さも美しく、音的にはスカスカではあるけど、その空白も生かすビートの機能美はJames Blakeの手腕が光る。しかしJames Blakeの儚い歌声を生かすという意味でこの楽曲の作り方は本当に大きな意味を持っている。今作は非常に歌物要素の大きい作品であると言えるし、そのサウンドフォルムは歌を最大限に生かすのに大きな効果を持っている。第3曲「I Never Learnt to Share」なんてそんなJames Blakeの歌を堪能できる1曲だ。その中で時折主張を強めるシンセとビートがまた楽曲に良いアクセントを付けているし、その旋律は甘い哀愁にも満ちているからこそダブステップとしての音の機能美と染渡る歌の両方を生かし堪能出来る様にしているのがニクい。哀愁のピアノと揺らぎのビートに乗る歌声が非常にソウルフルな第6曲「Limit to Your Love」の最小限の音と歌で生み出す深遠さにはかなり引き込まれるし、ミニマムなビートの中で幽かな光が差し込む様な第1曲「Unluck」と聴き所も多い。哀愁の歌とビートが生み出す幽玄な音の世界には本当に引き込まれる。



 James Blakeの音は多くは語らないが、その最小限の音の中で微かな感情が確かに根付く感触がある。独創的な音と同時に研ぎ澄まされたビートは聴き手に覚醒感を時に与えてくる。そしてコンパクトな作りの中でどこまでも心にスッと入り込んでくる歌は世界を虜にするのも納得である。新鋭アーティストによる静謐で優しいビートと歌の世界の効力は本当に大きいみたいだ。

■Empros/Russian Circles


EmprosEmpros
(2011/10/25)
Russian Circles

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 シカゴのポストメタルの雄ことRussian Circlesの2011年発表の4th。今までの3枚のアルバムはそれぞれのカラーを持った名盤であったが、今作で今まで培って来た物を最大限に生かす作品となった。ハードコアの強度も、ポストロック的知性も、美しい旋律も、ダークなカラーも、今までに無い位にそれらの要素を盛り込みそこからヘビィでタイトな音を放出したのが今作だ。目まぐるしい展開の中でヘビィな轟音と抒情性溢れる旋律と肉体の神経を刺激する躍動感を物にした作品だ。



 今作では今までに無い位に美しい旋律が際立っている印象を先ず受ける。ドラマティックかつ抒情性溢れる旋律によってRussian Circlesの中でも屈指のキャッチーさを感じさせてくれる楽曲が並ぶ。このバンドは安易に暴発パートにはならず、クライマックス寸前の絶妙な緊張感を維持する構成が売りであるが、今作は今までに無い位に暴発した音が目立つ。しかしそれは静謐さから轟音へと移行するといった作風では無く、ダイナミックなバンドのアンサンブルがより際立ち、それに加え旋律のドラマ性の相乗効果による物だ。第1曲「309」はいきなりクライマックスと言わんばかりに重厚な轟音のアンサンブルが降り注いでいる。しかしそのクライマックスの爆発からその熱量をじわじわ維持したり落としたり、また上げていったりという構成はやはりRussian Circlesならではだ。空間的な音に反し、激重のベースラインのヘビィさとダイナミックといった要素もバンドの変化を強く感じる。特にバンドの大きな成長を感じたのは第2曲「Mladek」だ。反復するアルペジオとダイナミックなリズムセクションからダークさを感じさせる旋律とヘビィさの際立つパートへ移行し、そこから焦らす様なアレペジオとビートの反復、徐々に熱量を上げては落としてを繰り返し、焦らしに焦らすRussian Circles節も炸裂する。今までのRussian Circlesの音を総括する様な名曲に仕上がった。今作は楽曲のバリエーションも本当に豊富で、第3曲「Schiphol」の静謐さを感じさせながらスラッジな音が無慈悲に振り落とされるパートからその闇を引き裂きカオティックな轟音で突き抜けて行くカタルシス、第4曲「Atackla」のポストロック色の強いギターフレーズの反復とは対照的に今作の大きなキモになっているダイナミックなリズム隊の躍動感が生み出すバンドとしての馬力と終盤の三位一体のヘビィネス、第5曲「Batu」の静けさの中から美しい轟音の旋律の抒情性。本当にそれぞれの楽曲のアプローチは今までに無く幅広くなった。だからこそRussian Circlesのバンドとしての核がより強くなり、自らの強靭なアンサンブルがより鉄壁になった今作は彼らがネクストレベルへ進化し、ポストメタル勢の中でも独自の音と方法論を完全に確立した事の証明でもある。



 ポストメタル勢でも異質の存在であったRussian Circlesであるが、今までの自らの音を消化し、バンドとしてのダイナミックさと旋律の美しさとキャッチーさ、独自の構成と展開の方法論を格段に向上させた今作は紛れも無い傑作である。そして何よりも彼らの中のハードコアの血肉を今作ではより強く感じる事が出来たのも大きい。2011年のポストメタルシーンの重要作品であるのは間違いない。彼等にしか出来ないポストメタルは先人達すら喰い殺す勢いだ。

■Cryonics/HOT CROSS


CryonicsCryonics
(2003/05/20)
Hot Cross

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 SAETIA, YOU & I, OFF MINOR, NEIL PERRY, THE NOW, JOSHUA FIT FOR BATTLEのメンバーのよって構成されたアメリカはフィラデルフィアの激情ハードコアバンドであるHOT CROSSの2003年発表の1st。日本ではEnvyのSONZAI RECORDSからリリースされている。決してヘビィな音では無いが、小刻みに変拍子と転調を多用し、ポストハードコア、カオティックハードコア、激情系ハードコア、どの視点で見ても屈指の出来であり、このHOT CROSSの音楽は多くの激情系ハードコアのバンドに多大な影響を与えている。



 その音はツインギターの音の絡みを存分に有効活用し、不協和音のギターリフが時に疾走感たっぷりに、時に小刻みな転調を繰り返し、時にカオティックハードコアなフレーズを盛り込むという物。ハードコアらしい疾走感は常に暴発しているが多用される転調とキメでそれを解体している。必殺のキメと同時に目まぐるしく変化していく展開と構成の作り方がしっかりとツボを押さえて来る。マスロック的な手法を取り入れた先のカオティック激情ハードコアと言っても過言では無いだろう。どの中で激情系らしい悲哀感のある不協和音の旋律も顔を出すのだが、HOT CROSSはその哀愁の旋律を決して前面には押し出さず、歌メロとの激情を支える物として使用している。あくまでもハードコアとしてのタフネスと持ち前のマスロック的なテクニカルなカオティックさで攻めるのだ。第1曲「Fortune Teller」はそんなHOT CROSSの音が存分に盛り込まれた楽曲だ。しかし第4曲「A Tale For The Ages」では持ち前のビロビロの不協和音のクリーントーンのギターサウンドから悲哀感に満ちた泣きのサウンドを展開させたりと、ストレートな激情を鳴らすHOT CROSSも見せ付けてくれている。要所要所に哀愁を押し出す楽曲を盛り込む事によって作品全体に良いアクセントもつけているが、矢張り目まぐるしく変化していくジェットコースターサウンドのドライブ感こそがHOT CROSSだDrive Like Jehu辺りのポストハードコアサウンドの流れを受け継ぎながらも、旋律とキメを存分に絡めた音はHOT CROSSにだからこそ出せる音だ。



 目まぐるしい展開、必殺のキメ、絡み合うツインギター、捻れた疾走感のビート、哀愁の旋律と、本当に美味しい所取りでありながら、そのマスロック・カオティックな要素を完全にハードコアとして生かすHOT CROSSの音は日本のkillie等にも大きな影響を与えた物だ。今は亡きHOT CROSSであるが、激情のシーンに与えた影響は本当に大きい。それだけの物を感じさせてくれる激情の傑作だ。

■YOLZ IN THE SKY/ヨルズインザスカイ


YOLZ IN THE SKYYOLZ IN THE SKY
(2007/04/04)
YORZ IN THE SKY

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 ヨルズインザスカイ(以下ヨルズ)は00年代の関西から登場したNo Waveのジャンクさを継承し、それをダンサブルな16ビートの悪夢として鳴らす人力ダンスバンドだ。今作は07年に危険音源発信レーベルとして名高いless than TVからリリースされたヨルズの1stアルバムである。初期Sonic Youth、P.I.L、等の80年代初期のバンドの影響を消化し、00年代の混沌のダンスミュージックとして鳴らすヨルズは4ピースのシンプルなバンド編成とは裏腹に、硬質のジャンクロックなギターの感触、無機質なビート、それに乗るハイトーンのボーカル、混沌へと向かう悪魔がヨルズの音だ。



 ヨルズはテクノとポストパンクのビート理論の独自解釈によるジャンクなビートが先ず大きな持ち味である。不協和音の音階を行き来するベースラインと金属的な音色のドラムのビートは人力でありながらも、機械的なビートを叩き出している。そのビート理論とNo Waveなノイジーかつジャンクなギターの音はカオティックなダンスミュージックとしての猛威を発揮する。第1曲「Master Bait Wave」からジャンクなハンマービートと蠢くベースがビートを生み出し不協和音のギターとハイトーンボーカルによって悪魔のダンス天国が生み出されている。ヨルズの音は無慈悲なジャンクロックであるが、その楽曲はどれもダンサブルな曲であるのだ。ノイジーな音の中で反復するビートが相乗効果となって踊れるNo Waveミュージックとなっている。それはいけない物をキメて覚醒と酩酊が同時進行する脳髄から神経へとヨルズの音が伝達して肉体を動かす。第2曲「地下室のピエロ」の耳に残る必殺のアーミング駆使のギターリフと性急なビートの変則的な音がスリリングなキラーチューンにもそれは大きく現れている。ミニマムなビートのDNAの様なノイジーなギターが特徴的な第4曲「デタラメ」なんかはヨルズのルーツとなっているNo Waveの時代の音の空気を継承した上で、それをより混沌へと向かわせる楽曲だ。徹底してジャンクさとダンサブルなビートは今作で貫かれているが、第7曲「赤い雨」はそのヨルズ印の音を10分以上にも及ぶ尺で感傷的な旋律も盛り込みながら終わりへとフラフラ導かれる名曲だ。



 ポストパンクとNo Waveとダンスミュージックとジャンクロックの理論を配合し、それを00年代関西の混沌の音として唯一無二のダンスミュージックとして表現した今作であるが、その奇妙な歪みを生かし、その断層から混沌へと手招きするピエロが眼球剥き出しで血塗れで踊る悪夢のダンスミュージックは正に危険信号その物だ。その混沌と共に肉体が朽ちるまで踊るだけだ。

プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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