■2011年11月

■2006-2009/La Quiete

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 CONTRASTO、RAEIN、NEIL ON IMPRESSIONのメンバーも在籍するイタリアの激情神ことLa Quiete(ラクイエテ)の09年発表の7曲入りの編集盤。06年発表の「pure pain sugar」と08年発表の「sons of vesta」の2枚のEPをコンパイルした作品であり、2枚ともアナログのみのリリースな上に現在入手困難となっているので、La Quieteの貴重な音源をこうしたCDのフォーマットで聴けるのは嬉しい限りだ。そしてたった7曲にLa Quieteのサウンドが濃縮されているし、La Quieteの魅力を存分に堪能出来る1枚となっている。



 先ず彼等のサウンドは激情系でありながらも非常に風通しの良いクリアなサウンドが特徴的である。クリーンなギターの絡みと、ハードコアというよりもエモに近い感触の楽曲が並ぶ、それを複雑極まりない展開と構成で演奏するのが彼等のサウンドの大きな特徴だ。それでも決して難解にはなっておらずメロディアスな要素に重点を置いて、歪んだ激情よりも透明感に満ちたクリアな郷愁のサウンドを聴かせてくれる。第1曲「Sulla Differenza Fra Un Sorrisi E Una Risata」はハードコアな疾走感が強いけれど、クリアな泣きの旋律と共に変拍子と転調を駆使したマスロック色の強いフレーズの応酬で一気に胸の鼓動が加速してしまう。一方でkillieもカバーしている第2曲「Giugno」は透明度の増したアルペジオの旋律が胸を焦がすエモーショナルさとメロディックさが前面に出た1曲。その高揚感が軽やかに飛翔するサウンドは郷愁と感動を呼び起こす。第4曲「Cosa Sei Disposto A Perdere」は激情とエモが絶妙のバランスで融合したポストハードコア色の強い1曲で、楽曲の緩急のつけ方の軽やかさにも持っていかれるし、ポストロック色とメロウさが際立つ第5曲「Musica Per Un Giardino Segreto #4」、ダークさも持った旋律と悲壮感に満ちた今作で最もドロっとした感触の強い第6曲「Le Conseguenze Di Un Abbraccio」と、それぞれの楽曲の完成度は本当に高いし、統率されていながらも多彩さを持っている。歪んだディストーションのサウンドは殆ど見受けられず、クリーントーンの中に少しばかり歪んだ音色で攻め立て焦燥と郷愁の音色と、それをハードコア・エモ・マスロック・ポストロックのカラーを巧みに取り入れた結果の追従不能のハードコアだ。



 音楽的には全く違うけれど、フランスの激情神Aussitôt Mort同様に、独自の進化の方法論にて誰も追いつけない激情を生み出しているLa Quieteも激情のシーンに君臨する帝王の一人であるのだ、多くのバンドに影響を与え、多くの人々の支持を集めているのも納得だ。純度の高い旋律と、それをカオティックにしながらもよりストレートな音に仕上げ放っているLa Quieteは偉大なる激情バンドである事は絶対に揺らがない。
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■Unknown Lands/The Caution Children

Unknown Lands



 09年にベルギーの激情バンドであるThe Black Heart Rebellionと共に来日を果たしているアメリカの激情バンドであるThe Caution Childrenの2011年発表の2nd。日本盤はTokyo Jupiterからリリースされている。レコーディングとミキシングにPianos Become The TeethのMike Yorkを迎えた今作は、繊細でありストレートでありながらも悲痛な痛みと、その先の希望を鳴らした作品だ。それでいて奥行きあるスケールもあり、楽曲その物の旋律の強さを生かした激情系ハードコアとなっている。



 第1曲の穏やかかつメランコリックなインストから今作は幕を開けるが、第2曲「Cahuachi」から一転し、悲痛な叫びとともに感情的な旋律がこれでもかと轟音として押し寄せる。静謐なキーボードのみのパートが効果的に入り、そこから全てを打ち破る轟音へと雪崩れ込む様は非常にドラマティックだ。その音はハードコアを基調にしているが、非常にクリアであり夜空に広がる無数の星屑が降り注ぐ様な情景を感じさせてくれる。時折入るクリーンなアルペジオもそうだし、例え悲痛な叫びに満ちていても何処かポジティブな力強さを感じる。音楽性はまた違うけどRaeinの旋律のクリアさと、ここ最近のEnvyのリリカルさと前向きな衝動を彼等からは感じるし、静謐さと轟音の対比が生み出す楽曲の繊細さと、加速する激情が爆発するカタルシスこそが彼等の魅力だ。第6曲「Strange One, Mysterious One」は今作の中でも一番完成度の高い楽曲であり、闇夜を切り裂く絶大なる光その物を描き、高揚感に満ちた旋律が彼方へと煌き、その先の希望を掴む1曲だ。どの楽曲にも言えるのだが、時折静謐なパートを挟みながら、美麗なる激情サウンドをあくまでもハードコアとして具現化し、類まれなる楽曲の旋律を最大限に生かす為のサウンドこそが彼等の核になっている。そしてその壮大さにも胸を打たれるし、全ての闇を切り裂く光を描くハードコアなのだ。そしてその強さは揺るぎの無い物である。



 全身全霊で魂の激情を聴かせてくれた今作であるが、静謐さも激情もひっくるめて、その先の光を壮大に描く彼等の音は本当にひたむきな物であるが、全力でその感情を鳴らすからこそエモーショナルであるし、だからこそ感動的な激情であるのだ。今作は下記リンクのTokyo Jupiterのサイトから購入可能であり、300枚限定のリリースだが廃盤になっていないので感動的スケールの光の激情に是非触れて欲しい。



Tokyo Jupiter Records



■Loaded, Lowdead, Rawdead /BOSSSTON CRUIZING MANIA

Loaded,Lowdead,Rawdead



 東京Boredomの首謀者の一人でもあり、様々な形で東京のアンダーグラウンドシーンの工作員として暗躍するボストンの実に7年振りの2011年発表の4th。その行動理念の自由さやユニークさもそうだが、それは彼等の音楽にも現れており、ポストパンクの独自解釈と破壊と構築を際限無く繰り返した末の分類不能なサウンド、首謀者のカシマエスヒロのポエトリーリーディングともラップとも言えそうで言えない独自のボーカルスタイルで繰り出す圧倒的な情報量の言葉の数々が放出する独特の毒に気が触れそうになる作品だ。プロデュースはPANICSMILEの吉田肇を迎えている。



 ファンク・ダブ・ポストパンクを独自解釈した末に破壊し構築したサウンドは非常にグルーブ感に満ちた物であるが、同時にポリリズムは大量導入した末にズタズタなビートにもなっている、しかしジャンクになると見せかけてズタズタのビートは新たなビートとして構築されており、時にパーカッシブなビートも取り入れ、難解ではあるが、肉体への有効性は失われるどころかよりダイナミックになっている。ギターワークも切れ味鋭いカッティングをメインに攻めるリズムギターともう1本の不意にディストーションギターを見せ付けたり、リズムギターと同時にカッティングの絡みを見せたり、空間的なノイジーさも見せるフリーキーさ。そんなバンドの音に乗るエスヒロ氏のボーカルはかなり独自であり、分解と構築を繰り返しまくったサウンドとの調和を目指した末にポエトリーでありながらも独特のタイム感とグルーブを持ち、時に性急になりながらもどこかクールな感触も持った毒として際限無く言葉を繰り出しているのだ。パーカッシブなビートを機軸にし、楽曲によってはダブ的なコラージュも施され、その毒の効能をより強くしている。緻密に裏拍を取り入れ、際限無く反復していくフレーズのグルーブを積み重ね時にそれを崩壊させる構成もやはり神経質であり、異質だ。ファンキーな音を見せ付ける第1曲「完璧な隠れ家」から彼等の異質さは発揮されているし、ドープさの中で破壊と構築を繰り返す第2曲「Low Down」、ポストパンクとファンクの配合と、時に緻密な重厚なグルーブを破壊する転調が印象的な第5曲「Building Is Destroyed」、ボストン流のダブサウンドを聴かせる第8曲「Who Is Next」、スカスカのビートの空白すらグルーブにし、ジャンクなビートと地下に沈んでいく感覚に襲われる第9曲「Tokyo Custro」とどの楽曲でもボストンの破壊と構築の美学は徹底して貫かれている。特に終盤の楽曲である、痙攣ビートと麻薬的な断層のサウンドの業を感じさせる第10曲「FiX!」と、今作で最も多い情報量を持ち、緊迫感と脅迫観念に襲われ、終盤の性急さに満ちた生き急ぎの音の切迫感へと帰結する第11曲「Loadead,Lowdead,Rawdead」は本当にボストンにしか作れない楽曲だ。



 今作は全ての概念を知り尽くしているからこそ生まれた概念を破壊し、それを新たな概念として生み出すパラノイアの音だ。幻想的なサウンドなんか全く無く、現実世界とリンクした冷ややかな感覚と重苦しいグルーブは熱情も絶望も無いフラットな感情を行ったり来たりしてる。ミクロとマクロのどっちにも偏執し、それを具現化するセンスと演奏技術のレベルの高さには脱帽だし、それを最終的には聴き手の肉体への信号として発信するダンスミュージックにすらしてしまっているのが驚きだ。自らの音を完全に独自の領域まで持っていったボストンは異質でありながらもどこまでも徹底して面白い音楽を鳴らしているし、東京アンダーグラウンドシーンの参謀として絶対的な存在であるのだ。



■[keep the hope] extra(2011年11月27日)@代官山UNIT

 BALLOONSの呼びかけで始まり、3/11の東日本大震災の復興支援イベントとして始まったこの企画はチケット代や物販の収益、それぞれの持ち込んだフリマの売り上げを全て寄付するという物であり、収益は全て震災孤児への支援として、あしなが育英会の「震災・津波遺児募金」へ寄付しているというイベントであるが、そんなBALLOONSの呼びかけに多くの猛者が賛同し、全13バンドが出演するという大規模なイベントになった。2ステージで昼からノンストップで猛烈な音が鳴り響くこのイベントに僕だけで無く本当に多くの人が賛同し、今回のイベントは代官山UNITという大きなハコで実に約650人を動員したイベントとなった。BALLOONSの働きは勿論素晴らしいのだけれど、チャリティ云々抜きにして日本のアンダーグラウンドシーンの猛者達のアクトは本当に素晴らしく、とんでもない熱量を持つ音楽イベントとして大きな意味を持つ物になったと言えるだろう。僕は会場に入って直ぐに物販を買ったり、長丁場のイベントだったので流石に途中で休憩を入れたりしたのでそのアクトを見たのは13バンド中10バンドなのだけれど、どのバンドのアクトも強烈であり、全バンドが主役と言っても良い物であった。



・PASTAFASTA

 会場に入った時には1バンド目のATATAが既に始まっており、ロッカーに荷物を預けたり、物販で買い物したりしたのでライブを見たのは2バンド目のPASTAFASTAからであったが、赤石氏の「代官山UNIT!!ブッ殺してやる!!」というなんとも物騒な叫びから始まったアクトはのっけから圧倒的悪意のテンションをバラ撒く物であった。キャッチーかつテクニカルかつショートなファストコアサウンドの殺傷力は抜群であるし、性急に破滅へと暴走しながらも、3ピースとは思えない音圧と、その混沌を描く為の高い演奏技術にも圧倒された。特に必殺の1分間な「Satanic」の破壊力には圧倒されまくりだった。代官山UNITというお洒落なライブハウスらしかぬ悪意と下劣さと前面に押し出しているバンドであるが、そんな事はおかまいなしに瞬殺の混沌で駆け巡るアクトであった、ラストは「地獄を見せてやる!」という言葉通りに一転してスラッジなサウンドを聴かせ、飛び入りのゲストボーカルまで迎えての爆音地獄で宣言通り代官山UNITを大量殺人の犯行現場にしてしまっていた。



・deepslauter

 そして間髪入れずに柏が誇る若手最強ハードコアことdeepslauterへ雪崩れ込む!1曲目から必殺の1曲「TIMechanical」でPASTAFASTAが作り上げた爆音ファストの狂気に連なる力強くもショートな激情カオティック絵巻へと続いていった。メンバーはテクニカルなフレーズをキメながらも、ステージを所狭しと楽器を振り回しながら暴れまくっていたし、勿論畳み掛ける様に連発される楽曲の熱量もとんでもなかった。独自の方法論で生み出したポップさを持ちながらも、やはり鼓膜をブン殴る爆音電撃ハードコアこそが彼等の一番の武器であり、それを音源以上にテンションで放出しまくった日にはもう即死物であった。20分程のアクトで実に10曲以上をノンストップで繰り出し、柏ハードコア代表として申し分ない力を見せ付けていた。PASTAFASTAに続きこいつらのアクトもハードコアの原始的な粗暴さが咲き乱れていたのだ。矢張りハードコア激戦区である柏でkamomekamome同様に帝王として君臨する彼等の風格は揺ぎ無かった。



・akutagawa

 少しブランクをおいて次は山形出身の激情系ハードコアバンドakutagawa。先程までのファストなハードコアの空気を一変させる哀愁と郷愁の世界を見せ付けてくれた。30分のアクトで全3曲と長尺の楽曲ばかりを演奏していたが、ポストロック等の要素も取り入れ、ドラマティックな旋律と展開が生み出す感動的な音の風景をライブでも再現していたし、シャウトを殆ど使わない牧歌的な感触すら感じさせるクリーントーンのボーカルが郷愁の音をより加速させていた。ボーカルが半分屈んだ体勢で体を震わせながら全身でそのエモーションを吐き出す姿にも胸が打たれたし、akutagawa節としか言えない壮大なスケールのエモーショナル絵巻はライブでは更に純度を高めて描き出されていた。何のギミックもこのバンドには無いが、ただ真摯に自らの音を鳴らすだけで世界を塗り替えるだけのバンドである事を再確認した。ライブを見たのは初めてだったが音源以上の純度に涙が零れそうになった位だ。山形という片田舎で培ったピュアネスを美しい旋律と轟音で奏でる彼等は本当に感動的だった。



・LITE

 次は国内マスロック最強バンドであるLITE。彼等のライブを見るのは実に一年半振りだったし、大傑作「For all the innocence 」にやられた人間として今日のアクトは非常に楽しみであった。最早お馴染みの「Ef」で始まった時はまだギアがイマイチ入ってなかったが、2曲目からは完全にLITEの音源完全再現の精密機械の様な緻密さがMAXになっていて、その音の切れ味は相当な物であった。打ち込みとバンドサウンドの相性も抜群であり、音源を忠実に再現しながらも、それに加えてダンサブルなビートと切れ味鋭いツインギターが肉体的な快楽の信号として発信させられていた。打ち込みやシンセを導入し、マスロックに肉体に有効なダンスサウンドを取り入れたLITEの音に多くの人が体を揺らしていた。色彩豊かな音と、変拍子とダンサブルなビートとギターの鋭いリフと緻密なアンサンブルが結びついた先のLITEは本当に違う次元のバンドであると実感させられた。国内マスロックの帝王として君臨しているかはを体で再認識したアクトだ。



・BALLOONS

 そして主催者であるBALLOONS。killieの後件肯定参加バンドであるが、その音に触れるのは実は初めて。音楽的にはとんでもなく高い演奏力で奏でるポストロック・マスロックサウンドでクリーントーンを基調にしたサウンドは本当にクール。個人的にはkillieの伊藤氏がかつて在籍していた3cmtourにも通じる物を感じたりもしたが、より鋭利な緊張感を感じたし、クールでありながらも、何処か生き急ぐ性急さも感じた。複雑に絡み合う楽器隊の音が捻れを生み出し、それが暴発は決してせずにひんやりとしたままとぐろを巻く様は脳髄が本当に犯される感覚になった。初めて見たがその音には惚れ惚れとしたし、企画バンドとしての貫禄は十分に見せ付けてもらった。



・crypt city

 BALLOONSの後にカフェで一時間程休憩してからのcrypt city。ex.NUMBER GIRL、ex.SPIRAL CHORDの中尾憲太郎率いるバンドだ。その高い評判は色々な所で聞いていたので期待していたが、その期待以上のアクトであった。メンバーの半分が外国人という事もあり、そのグルーブは規格外だし、ポストパンクとNo Waveとオルタナティブを遠心濃縮したダンスサウンド、効果的な打ち込みサウンドと共に圧倒的な轟音と爆音のグルーブは圧巻!中尾氏お得意のルート弾き倒しぼゴリゴリのラインと、BIG BLACKを独自解釈したかの様な機械的でありながらも人力のダンサブルなビートとパワフルな音の熱量も凄まじく、そこにスポーキンかつクールな狂気に満ちたリバーブかかったボーカルが乗るというサウンドスタイルは邪悪さと共に開放された音であり、その人力ポストパンクのダンサブルな音は宇宙へと繋がっており、多くの人を狂騒のトランス世界へと導いていた。その評判以上の音にこれから発表されるであろうアルバムへの期待も高まった。これからに益々期待したい!



・thread yarn

 そして3ピースでどこまでもストレートなポストハードコアを奏でるthread yarnへ。変拍子を駆使しながらドライブするビートで、全フレーズが瞬殺必死の鋭角ギターリフのみで全てをブチ殺す彼等はライブでこそその真価を発揮する。絶唱に告ぐ絶唱のツインボーカルと共に爆音で自らのオルタナティブサウンドを叩きつける彼等のライブはただでさえ必殺の音がより高いテンションで常に爆発しているし、音源以上に性急な演奏とアンサンブルは下手したら崩壊寸前であるが、その崩壊寸前に緊張感と、全てを燃え上がらせるテンションの熱量がただ体中を熱くしてくれた。これから音源になるであろう新曲でもその鋭角さはより進化しており、2年前に彼等のアクトを体感した時よりも格段の進化を遂げていた。特にラストの「Resume」は音源よりもBPMがかなり早くなっており、完全にカオティックなギターリフ天国へ!僅か1分をフルストッルで暴走する音は無敵だった。Drive Like Jehu直系のサウンドを進化させ続ける彼等はよりネクストレベルのバンドになっていた。



・Z

 「自分達がやらなければいけない事は理屈抜きにやるべきだ。」という魚頭氏のMCから魚頭激情第1部のZへ!何度もその異次元のアクトを体感していたが、メンバーチェンジしてからは見るのは初めて。今回は5曲中4曲が目下最新作である「新今日」以降に製作された新曲であり、よりシンプルかつヘビィになりながらも、ハードコアの先の異質のハードコアは益々制御不能になっていた。魚頭氏のギターリフは益々明確に殺傷力の高いリフを徹底して拘った機材とセッティングでより別次元の音として全ての空気を一変させるだけの力をもっているし、根本氏のサックスも格段に精神世界の混沌を加速させるフリーキーかつノイジーな物になっていた。特に根本氏のボーカルも益々個人的感情暴発な物になっており、狂気と妄想でおかしくなった頭で言葉にならない叫びと妄想に脳髄がやられて狂ってしまっている様でもあった。1stである「御壁」以降シンプルになりながらも益々多様化し、どこにも属さない純度1000%の完全自由な音を奏でているが、それは今回演奏された新曲でもライブアクトでも健在で、それどころか益々開放された音になっていた。ラストは唯一「新今日」から「蛇鉄」TOOLを独自解釈したかの様なドープかつダンサブルなグルーブにUNITは完全に昇天してしまった。異形のハードコアを鳴らすZの音は今回のアクトでも発揮されており、やはり彼等は最果てのバンドであった。



・killie

 そしてトリ前はenvy同様に国内激情の最高峰として君臨するkillie。恐らく多くの人がかなり楽しみにしていたアクトだっただろうが、結論から言うと言葉になんかとてもじゃないけど出来ない訳の分からなくなるアクトであった。伊藤氏と吉武氏の犯行声明的なMCから始まった1曲目はなんと「キリストは復活する」!!印象的な静謐なアルペジオのイントロが鳴った瞬間にフロアからは大きな歓声が上がる程であり、1曲目からクライマックスへとワープしてしまっていた。静謐なパートから轟音が渦巻く激情パートへと入り込んだ瞬間にフロアは瞬く間にモッシュの嵐!完全にマスロックの域に到達してしまっている複雑極まりないアンサンブルも伊藤氏の叫びも全てはその激情を表現する為に手段でしかなく、ライブではそれが全身全霊の激情として全てを叩き潰していくのだ。ドラマティックな構成の「キリストは復活する」はとんでもない次元の物になっており、モッシュの中で多くの人がそのスケールの感動していた筈だ。そして「性欲の果てに土を掘り返す」に雪崩れ込みモッシュは益々加速していく。もうkillieは細かい演奏のミスとかチューニングが狂ってるとかは本気でどうでも良い事であり、複雑な楽曲を演奏しながらも、音源とは違い完全なるロックとハードコアとして最強の物としてのライブを見せつけ、それがフロアの熱量も高め、たった2本の足元の蛍光灯のみが映し出すkillieの5人は神秘的ですらあった。続く「契約解除」も吉武氏の弾き倒すベースの音が響いた瞬間にクライマックスとなり、繰り返されるキメの数々にブチ殺されたし、その後は個人的にkillie最強の1曲である「先入観を考える」!!!!!!!!!!!そしてラストは1分半の激情すら超えた完全なる衝動「落書きされた放置死体」その2曲でフロアはライブでは無く完全なる惨劇の現場となっていた。感極まった伊藤氏の「お前ら最高の客だ!!」のMCに応え惨劇を増幅させるフロアの人々は正にkillieの共犯者であったし、僕もその瞬間のカタルシスにただひたすらその肉体で応えていた。ラストでは伊藤氏がフロアにダイブし、吉武氏に至ってはベースをまるでサーフボードの様にしてフロアにダイブ。その一瞬の静寂も制御不能の混沌も自らの音として鳴らすkillieは最強であったし、間違いなく今回のベストアクトであり一番の盛り上がりを見せていた。



・AS MEIAS

 そしてトリはkillieの惨劇から一転の魚頭激情第2部のAS MEIASへ。killieとは一転し、風通しの良さとテクニカルなフレーズが生み出す郷愁のエモーショナルサウンドに多くの人々が胸を打たれていた。魚頭氏がMCで色々な想いを語っていたし、今回のイベント限りで終わりにしたく無いという事や、バンドを続けていく意味や、完全に無料のフェスを開きたいという事を語っていた事からも魚頭氏の今回のイベントに対する情熱を強く痛感したし、それはAS MEIASのアクトにも現れていた。2ndからの楽曲中心のセトリだったがテクニカルな楽曲を純粋に完全再現する馬力とバンドとしての技量に先ず圧倒されたし、それに加えてよりダイレクトに伝わる郷愁の音のメロウさとアンサンブルの屈強さは彼等だからこそ生み出せる物であるし、その懐の大きい音の強さをライブではより明確になっていた。アンコールでは1stの名曲である「Sloughy」を演奏し、その音はどこまでも力強く羽ばたいていた。



 多くのバンドがMCでその熱い想いを語っていたが、今回のイベントはチャリティイベントとしてだけで無く、純粋に面白い事を音楽でやりたいという想いも強いイベントだったと個人的には思う。今回のイベントに集結した650人もの人々にもそれぞれの想いがあり、僕にも強い想いがあり、出演したバンドや今回のイベントに携わったスタッフにもそれぞれの想いがある。それが共犯者として今回のイベントを生み出したとなれば本当に感慨深い。そして魚頭氏のMCでの言葉通り、それを今回で終わりにしてはいけないのだ、バンドもスタッフも客も関係無しで色々な考えや想いを明確な形にしたからこそ、今回のイベントが実現された訳であるし、それがこれからも続いていけばもっと大きな力になるのだ。今回出演したバンドは勿論、そのスタッフや代官山UNITにいた650人の人々に大きなリスペクトを。



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今回物販で購入したkillieのTシャツ。物販の収益も寄付されるらしいので少しでも被災地の子供たちの役に立つ事を祈っています。
タグ : ライブレポ

■Garten Der Unbewusstheit/Corrupted

Garten Der Unbewusstheit




 大阪が誇る日本最強激重スラッジバンドであるCorruptedの実に6年振りの3枚目のフルアルバム。今まで発表された2枚のフルアルバムがワントラックの超長尺曲だったのに対し今作は全3曲となっている。しかしながら3曲で60分越えのスケールは相変わらずであるし、へビィでありながらも芸術的な美しさを持つ音を鳴らすコラプの真骨頂は今作でも発揮されているどころか、更なる進化を遂げている。冷徹な音の世界へと誘われる事は間違いないであろう。



 今作はコラプの中でも屈指のフューネラルさを持った作品であるし、静謐なパートで極端に少ない音が作り出す緊張感は神経の一本一本まで刺激する脅威となっている。第1曲「Garten」から29分近くに及ぶ大作であるし、序盤の静謐なギターのクリーンな音色と、今にも消え入りそうなハイハットの音のみで作り出す荒涼とした風景は寒気しか感じない位に悲しみの音色を奏でている。2ndでもこの様な作風を見せていたのだけれど、より高まった表現力を今作では痛感するし、長時間の静寂を打ち破り、hevi氏の悲しみと痛みに満ちたボーカルと歪んだギターリフの鉄槌が下った瞬間のカタルシスはやはりかなりの物。しかしながら今作はヘビィである事には変わりは無いのだけれども、それに加えて人間の負の感情をより刺激する旋律も明確になっているし、それに加えて徹底した芸術的な美しさも加速しているから恐ろしい。アンビエントパートでのhevi氏の語りに聴き手は正座で聴き入るしか無くなり、再びそれを打ち破る美しさとヘビィさと悲しみがMAXになった轟音の洪水に飲み込まれるだけだ。徹底した美意識と緻密さをコラプは手に入れてしまったのだ。アコースティックな4分半のインストでありながら重苦しさは全開の第2曲「Against The Darkest Days」を挟み、第3曲「Gekkou no Daichi」へ。この曲はEP「Se Hace Por Los Suenos Asesinos」に収録されているアコースティックな楽曲である「月光の大地」のリアレンジであるが、全く別の楽曲になっており、序盤の静謐かつ緊張感に満ちたアコギのフレーズからコラプのお家芸である、激重のリズムが鳴った瞬間に、破滅寸前のスラッジサウンドがその静謐さを破壊しながらも、その空気感と悲しみは地続きどころか更に増幅している。スラッジどころかフューネラルドゥームの領域に到達した悲しみのヘビィネスが渦巻き、終わり無きフューネラル絵巻へとなっている。今までのコラプも勿論、人間の内面の負の感情をかき集め、それを誰にも真似できないヘビィさで放出していたが、そこに旋律の美しさとより明確になった音の輪郭が加わった事によって、自らの音を完全に次の次元へと到達させてしまったのだ。そして終盤の輪郭を失った轟音が渦巻く瞬間に、聴き手はどこか浄化された感覚すら覚えるのだ。



 今作は既に脱退してしまったボーカルのhevi氏とギターのTalbot氏が参加した最後の作品となってしまったが、それでも彼等が長年に渡り鍛え上げた物が今作で極まっているし、それだけに二人の脱退は本当に惜しいが、しかし我が道を歩む事を決めたhevi氏とTalbot氏とは別にコラプは新メンバーを迎えて現在も活動している。今作すら置き去りにする作品を生み出す為にコラプは続いているし、今作で見せた進化と芸術的スラッジ絵巻は絶対に消える事は無いのだ。



■sulla linea d'orizzonte tra questa mia vita e quella di tutti/Raein

Sulla linea dorizzonte tra questa mia vita e quella di tut



 00年代初頭から活動休止期間を挟みながらも今もなお最前線で活動するイタリアの激情系ハードコアであるRaeinの2011年発表のアルバム。LA QUIETE、NEIL ON IMPRESSIONのメンバーが在籍してる事もあって日本の激情フリークの間でも人気の高いバンドだ。僕は今作でRaeinの音に初めて触れたが、へビィさよりも、どこまでも感情に突き刺さるメロディセンスと長年培ったバンドアンサンブルの屈強さ、ボーカルの激昂。全てが体温を上昇させる音になっている。



 Raeinは非常にメロウな旋律を基調にしているバンドであり、そのメロウな泣きの旋律こそが最大の武器であるバンドなのだけれど、そのメロウさだけが武器じゃないバンドだ。あくまでもストレートな音を鳴らしながらも、決して長尺では無い楽曲の中で巧みに転調なども盛り込み、感情暴発パートだけでなく、スロウなリリカルなパートも取り入れ、ポストロック的静謐かつ緻密なフレーズも盛り込んでくるのがRaeinのサウンドの大きな特徴になっている。しかし説教臭い印象は全く無く、持ち前のリリカルさとメロウさを前面に押し出した上でのサウンドであるから、楽曲の中で疾走する旋律の破壊力は全く失われていないし、そのクリアな旋律が生み出す光が差し込む様な高揚感のグルーブは絶対的な物であるのだ。また激情系でありながらも90年代のオルタナティブの土臭い香りも感じさせてくれる部分も彼等の個性だ。落差こそ大きくはないが絶妙な曲線で描く緩急の付け方も旋律を自然な形で生かす物になっている。第1曲「Se la notte sogno, sogno di essere un maratoneta」や第4曲「Costellazione secondo le leggi del caso」はそんな彼等の魅力が特に強い楽曲になっているし、何よりも楽曲の血肉になっているクリアな旋律の惚れ惚れしてしまう。第6曲「Oggi ho deciso di diventare oro」なんかは激情要素だけで無く、オーソドックスなオルタナティブの感触が特に強く、流れる様な陽性のメロディと力強さが本当に心臓の鼓動を速くしてくれる。暴走するBPMの速さや邪悪さはRaienにはほぼ皆無だが、ストレートな感情直結のサウンドとグルーブに全く淀みは無いし、ピュアな激情を本当にストレートに鳴らしている。



 全力で疾走するメロウな泣きの激情は激情フリークスだけじゃ無く、エモ・オルタナ好きにも有効な音になっているし、それだけ彼等のクリアな旋律を基調しにたハードコアサウンドは多くの人の胸に突き刺さるだけの力を持っているのだ。透明感溢れる旋律が生み出す激情サウンドは僕達を光へと導いてくれる。どこまでも心に温もりを与えてくれるのだ。
 また今作は下記リンクの公式サイトからフリーダウンロードで配信されているので是非チェックして欲しい。



sulla linea d'orizzonte tra questa mia vita e quella di tutti/Raein ダウンロードページ

■IE/THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUT

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 共同生活、アンチドラッグ、左翼思想、完全なるDIYな活動形式。SWIPEのメンバーだった根本兄弟と魚頭圭に森暁夫を加えた4人組であるゼアイズはハードコアバンドとして完全理想主義を掲げたバンドだ。国内激情系のカリスマとして君臨した彼等の00年発表の唯一のアルバムである今作は沸点なんざとうにオーバーした激情に満ちている。二本のギターが生み出す不協和音と変則的リズムを基調にしながら決して長尺にはせずに、その瞬間のカタルシスを鳴らすバンドとしてゼアイズは最強であった事の証明とも言える作品であり、国内激情の最重要音源の一つだ。



 先ず魚頭氏の不協和音のディストーションギターをメインにした作曲形式による混沌なレベルが半端じゃない。あくまでもハードコアの範疇の音を鳴らしながらも、静と動を使い分け、静謐なパートでも不穏のアルペジオが不安を煽り、動のパートでは全てを焼き尽くす歪んだ音色のギターが燃え盛る。名刺代わりにしてはとんでもない破壊力を持つ第1曲「SURU」だけでもゼアイズの音楽性は十分に伝わる筈だ。根本兄は歌詞等解読不能のハイトーンボーカルをかまし、個人的妄想と制御不能の狂気をぶつけてくる。楽曲構成やキメも緻密に構成し、性急さを持ちながらも普遍的なビート等皆無なドラムなんかもその混沌を加速させている。当時の国外エモ・ポストハードコア・激情のシーンと完全にリンクしていながら、和の魂をブチ込みゼアイズにしか鳴らせないハードコアを体現している。第2曲「This Flavor」はゼアイズの中でもエモーショナルさと感傷的旋律と歌心を感じさせてくれる楽曲だが、楽曲その物はキャッチーなコード進行等皆無、不協和音の組み合わせと根本兄の歌のみでここまでグッと心に入り込む感情と温もりも感じさせてくれる所もこいつらの恐ろしい所だ。リフの輪郭の崩壊した歪みまくった轟音と不協和音のアルペジオの対比も、巧みな構成の美学のゼアイズの大きな魅力であり、1stの頃のkularaと共振する部分も感じさせてくれるけど、ゼアイズはもっと素直な音でもあるのだ。ハードコアとしか言えないバンドサウンドの中で出来る事をやり尽くし、それを超濃密な激情と殺し合いの様な各楽器のアンサンブルによって純度をMAXにしたからこそ生まれた音であるのだ。鉄槌の様なリフとダウナーとアッパーが入り乱れる曲構成が脳髄をズタズタにした挙句、終盤でドラマティックなメロウさも見え隠れする第5曲「Parallel」、Slintの独自解釈とも言える第6曲「MOERO」、どの楽曲も濃密だ。そして第7曲「Ichiban-Shita」でタッピング多用のギターフレーズと這いずる音と今作で最もブチ壊れた根本兄の激情が言葉通りカオティックハードコアとしか言えない音塊をぶつける。終盤でブレイクダウンしディスコードの不穏さで終わっていく。



 数多くの猛者を生み出した90年代末期~00年代初頭の国内激情のシーン。その中でもゼアイズは誰よりもピュアな音を鳴らしている。その独自の活動形態も注目される事が多かったらしいが、やはり不協和音と無慈悲なディストーションサウンドに乗る激情のカタルシスこそゼアイズの武器であったし、暴発型個人感情表現楽団という名前に全く偽りは無いのだ。オルタナティブであるという事。ゼアイズはそれに対して誰よりも真摯だったし、それはゼアイズ解散後のZにも音楽性は変われど精神的な面で受け継がれている。魂を震わすネガティブもポジティブも喰らった末のハードコア、ゼアイズは最強の激情バンドだったのだ。また今作は現在ディスコグラフィー盤としてリリースされている「SHOUTou」に全曲収録されている。

■水/さかな


水
(2009/01/05)
SAKANA

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 アコースティックな音楽性で80年代から現在も活動しているさかなの90年発表の3rd。2ndである「マッチを擦る」の続編となる作品でありエンジニアにJAGATARAのエマーソン北村を迎えている。殆どの曲が3分未満の小品的な楽曲が並び、必要最小限のアコースティックサウンドに空間的なサウンドコラージュが施されており、緩やかなポコペンのボーカルが詩的な言葉を紡ぎ、その歌世界は非常に幻惑的である。



 今作はアコースティックギターとパーカッションと音のコラージュとポコペンの歌という本当に最小限のアコースティックな形式の作品であり、音という音を徹底的に削ぎ落としている。今にも止まりそうな緩やかなスピードで楽曲は奏でられ、シンプルでありながらも夢遊病の様な幻想的な歌の世界へと聴き手を導く。第1曲「コカ」の歌と音の湿度が印象的であるし、第2曲「ピアニア」では少し不規則なシンバルの反復とミニマムなギターフレーズが織り成す不穏さと、さかなの水のベールで包み込む様な感覚の音が時に聴き手に一抹の恐怖感も与えてくる。第3曲「あの人」のポコペンの平熱の中での悲壮感の歌唱を前面に押し出し、ポコペンのボーカリストとしてのポテンシャルを感じる。彼女の歌は決して派手な感情を表に出さないボーカリストであるが、その平熱の悟りと諦念の入り乱れる淡々とした歌はさかなの音により明確な世界を与えてくる。その浮遊感は癒しとかそう言った類の物では無く静かな狂気と瘴気がもたらす微かな毒素だ。その中でも第6曲はテンポも速めのパーカッションが今作の中でも異質であるが、それでも反復する音と細切れの歌が性急さに反し気だるさを残す。代表曲である第7曲「レインコート」が今作で最もオーソドックスな構成の楽曲だが、ギターの音色と歌の隙間すら聴かせる楽曲の引力に感服する。基本的にスタイルはオーソドックスなアコースティックである筈なのにどの密度を空白ばかりにし、スタンダードな形の楽曲を少しだけ分解し再構築したかの様な感覚をどうしても覚えてしまう。それこそが今作の幻惑と浮遊感の核になっているのかもしれない。第10曲「目」の拍の概念を放棄したスカスカの混沌から第11曲「ぬれた床」のワンコードの反復と無機質なボーカルのみが消え入る様に終わり。完全に取り残されたまま正体不明の幻惑の歌世界の旅路は終わる。



 今作は音自体は本当にシンプルなアコースティック作品なのに正体不明の靄に頭が包まれたまま作品は独自のタイム感で進行する。サウンドコラージュも非常に効果的な役割を果たしているが、ポコペンの無気力かつ悟りきった歌と鳴らすコード自体はスタンダードでありながら、そのフレーズが分断されたアコギの音のみでここまで摩訶不思議な世界を描いている。催眠術にかかったかの様な感覚を今作を聴くと味わう事になるだろう。透明な純度を持った甘い麻薬の様な作品、引き擦り込まれたらもう抜け出せなくなる。

■5 pieces songs/kulara

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 数多くの素晴らしい激情系ハードコアの中でもやはりkularaは完全に異端な存在だ。ハードコアを分解しまくった末のズタズタな楽曲に内に向かう狂気その物を歌う彼等は日本の激情の中でも唯一無二の暗黒神であった。カオティックからポストロックからアンビエントまでボーダーレスなその音は超絶に変則的であるのだ。今作は99年にNever Shown Faceからリリースされた5曲入りEPであるが、今作で既にkularaの音は完全に確立されている。



 その音はハードコアらしさなど皆無でありながら、ハードコアでしか鳴らせない漆黒の激情そのものであり、決して長尺の楽曲が収録されてる訳では無いのだけれども、その4分、5分の楽曲の中で予測不能な展開を見せ付けながら、感情移入する余地など全く無い冷徹な狂気が狂い咲く。第1曲「Two Suns Day」からいきなりダークアンビエント×ポストロックなフレーズで幕を開ける。ハーモニカの音色とコーラス使用のポストロック的硬質かつ幾重にも重ねられたギターが異形の世界へと導いてくれる。美しくクラシカルな轟音の海からフリーキーなポストコアへと変貌し終盤になってやっと猟奇的なボーカルと共にその築き上げた音を打ち砕く。変拍子のビートと共にのっけから重厚なリフとシャウトが生み出すプリミティブな憎しみを鳴らす第2曲「Your Own Gain」でもその異質さは健在。目まぐるしく変わるフレーズを拍をわざとずらしたキメとか不協和音のリフとか明らかに異物感に満ちた要素を完全に激情に変換している。ポストロックと激情を融合させた第3曲「Fate」は特にその緻密に練り上げられた楽曲と不穏のコード進行が妖しさとアンビエントさから激情の音に切り替わる瞬間のカタルシス。奇数拍のリフの不穏の足取りで破滅へと雪崩れ込む今作屈指の名曲である。ファンキーさも感じさせるダンサブルなビートとマスロックの様なキメの嵐が咲き乱れる第5曲「Human Pattern」で今作は幕を閉じるが全5曲共にハードコアの範疇では語れない独自の方法論を確立している。



 今作で培った物を更にスケールアップさせ2ndであり日本の激情系ハードコア屈指の大名盤「a naked landscape」へとkularaは進化していくのだが、持ち前のプリミティブかつ冷徹な狂気と、多くの楽器を導入しボーダーレスな音を振り落とすというスタイルは今作で確立してると言って良い。99年という激情の黎明期にここまで先を行った音を鳴らしていたバンドはkulalaだけであるし、こいつらが残した財産はあまりにも大きい。
 また今作と「a naked landscape」と初期のデモ音源をコンパイルしたディスコグラフィー盤である「1997-2001 hue」がkularaの自主レーベルである蜜からリリースされており、今作が500枚限定プレスで既に廃盤なのもあるので、是非現在でも普通に購入出来る「1997-2001 hue」にてkularaの音に触れて欲しい。こいつらは激情の中でも屈指の完全オリジナルの音を鳴らしているバンドであるから。

■ZERO/DEAD END


ZERO[+2](初回仕様限定盤)ZERO[+2](初回仕様限定盤)
(2009/12/23)
DEAD END

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 80年代に活動しジャパメタにもヴィジュアル系にも多大なる影響を及ぼした伝説的バンドであるDEAD ENDの89年八票の4th。PINKの岡野ハジメがプロデューサーを務めている。ジャパメタ要素はかなり影を潜めている作品でありコーラス多様の耽美なアルペジオを基調にしたギターワークが耽美なDEAD ENDの世界観と見事にリンクした楽曲が並んでおり、メタル路線からの作風の変化に当時は賛否両論が巻き起こったらしい。



 今作の楽曲は先ず非常に開放的な高揚感に満ちた楽曲が多い。第1曲「I Want Your Love」からもそれは伺えるだろう。ビートロックに近い感触の抜けの良いタイトなビートと動きまくりメロディラインをなぞるベースと時に泣きの旋律を聴かせるディストーションギターとコーラスによるクリアでありながら耽美さも持ったギターのアルペジオの親和性も非常に高いし、ストレートな歌唱を見せ付けながらもカリスマ性に満ちたMORRIEのボーカルが正に精神への開放と空へと飛び立つ様な高揚感を見せ付けてくれる。個人的には当時のポジパンの影響も伺える部分も多く、開放的な楽曲と同様に持ち前の妖艶さを失っていないのも大きなポイントだと言えるだろう。第5曲「Crash 49」の流麗な旋律を最大に生かすクリアなギターワークが生み出す妖艶さにも惚れ惚れしてしまう。勿論その演奏技術は折り紙付きであるし、その演奏技術を表現力へと変換する彼らのバンドとしてのポテンシャルは本当に高い。今作の中でもメタル色の強いリフとビートロックとポジパンを融合させた第3曲「Baby Blue」、パーカッシブなビートを取り入れながらも、それに反して性急さが鼓動を速くする今作で最もドロドロとした第8曲「Promised Land」とそれぞれの楽曲の完成度も非常に高く、統一された世界観に引き込まれる事は間違いない。泣きまくりなギターソロが炸裂する第10曲「I'm In A Coma」とクラシカルかつ壮大なスケールに圧倒されそうになる第11曲「Serafine」の終盤の2曲の流れはDEAD ENDがバンドとして本当に完成されている事の証明だ。



 今作は実に20年以上前の作品であるが、古臭さというのは皆無であり、90年代に巨大なムーブメントを起こしたヴィジュアル系のバンド達に本当に多大なる影響を与えた事が今作で知る事が出来る。広大なる開放のスケールで描かれる美しい旋律とMORRIEのボーカルが聴き手を飛翔へと導く1枚。きっと今作はあまりにも早かった作品であったと思ったりもするのだが、今だからこそ今作がもたらす衝撃は大きい。



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Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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