■2011年12月

■Clappedout air/Fragile

Clappedout air



 奈良と大阪を拠点に活動する男女ツインボーカルツインジャズマスターな4ピースであるFragileの2012年リリースの1stミニアルバム。満を持しての処女作でありFragileというバンドの魅力がパッケージングされた作品だ。demo音源ではDrive Like Jehu直系のポストハードコアサウンドを展開していたけれど、今作ではUSエモ・ギターポップのエッセンスも強くなり、尖ったオルタナティブさと浮遊するポップ感をFragileというフィルターを通し、自らの音に昇華した作品に仕上がっている。



 demo音源では男Gt&Voであるminameeeのセンスが前面に出ていた印象だけれども、今作では女Gt&Voの大塚絵美のカラーも本当に色濃く出ている。第1曲「マリオネット」は風通しの良いエモーショナルなコード進行と轟音サウンドが浮遊するポップさが前面に出ている1曲だけれど、絵美嬢のウィスパーボイスとフィードバックするギターの調和が見事だし、胸を締め付ける郷愁の音色と疾走感がドライブする鋭利さもある。フロントの2人を支えるリズム隊のコシの強さがバンドのグルーブに確かな芯を持たせている。ポップな風通しの良さと同時にオルタナティブロックの強度も確かに存在している。対する第2曲「Bazzet」はサンディエゴのポストハードコアサウンドが炸裂し鋭角リフの応酬が体の体温を一気に上昇させるminameeeがボーカルを取るFragileの鋭利さが前面に出た1曲だ。振り落とされる硬質なサウンドで聴き手を確実に突き刺していく。そこでもリズム隊の強度も大塚絵美のキャラクターも楽曲のカラーを更に変化させているし、単純な正統派ポストハードコアサウンドってだけでは無く、それを消化した上でのFragileだからこそ出来るポストハードコアになっているし、そのサウンドに頼もしさを感じる。終盤からのフィードバックギターのノイズとminameeeの血管ブチ切れボーカル、それに反する微熱の絵美嬢のコーラスが楽曲のカラーを巧みに変化させるセンスは確かな物だ。第3曲「みずたまり」はFragileの哀愁の要素を前面に出し、緩やかなテンポで淡々とセンチメンタルさを増幅させる歌物な1曲。この前半の3曲がそれぞれ全く違うアプローチの楽曲になっているし、Fragileの多方面に渡るベクトルの魅力を統率し、雑多にするのでは無く、どの表情を見せてもFragileとして堂々とした音になっている。オルタナティブとポップネスが正面衝突した第4曲「Alter」も、絵美嬢の弾き語りから発展した歌物ナンバーである第5曲「fade out」でもそのツインフロントの二人のカラーとそれを支えるリズム隊の屈強さが織り成す雑多ではあるが、統率された衝動とポップネスには確かなFragile印が刻印されている。



 奈良という地から登場したFragileは同郷のLOSTAGEとも北海道のハードコアともUSエモやサンディエゴのポストハードコアとリンクしながらも、それらの雑多な音を喰らいまくった末にツインフロントのそれぞれの個性がポップさもオルタナティブさも交錯しまくるサウンドはBP.やmoonwalkとサウンドこそ違いはあるがそれらのバンドに連なる物をFragileは持っている筈だ。Fragileの魅力が十分に伝わる処女作となったが彼等はまだまだこんな物じゃないと思っているし、これからの進化に心から期待したいバンドだ。
 今作はFragileのライブ会場と下記リンクのdisk unionのページで購入可能になっている。また取り扱い店舗も随時増えると思うが、先ずは下記リンクのdisk unionのページで視聴可能になっているのでチェックして欲しい。



disk union 視聴&購入ページ



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■2011年BESTアルバムTOP30

という訳でいよいよ2011年の年間BRSTの発表です。今年は去年に比べたら色々と新譜を聴けたのでTOP20からTOP30に枠を増やしました。それでも聴けてない作品とかもあったりするのは仕方ない感じです。惜しくもTOP30には入らなかったけど、そんな作品も良い作品ばかりでしたし今回の選考はかなり悩みに悩んだ末に出来た物です。本来だったら作品の一つ一つにコメントをつけたかったりしたかったけど今回は後述の文の方で総括的に書かせて頂きます。尚、【Review】をクリックしたら当ブログの各作品のレビューページへと飛べる形になってます。それではどうぞ!!






Hardcore Will Never Die But You WillHardcore Will Never Die But You Will
(2011/02/15)
Mogwai

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第30位:Hardcore Will Never Die But You Will/Mogwai

【Review】






Presences of AbsencesPresences of Absences
(2011/05/24)
Asva

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第29位:Presences of Absences/Asva

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I Was Here For a Moment, Then I Was GoneI Was Here For a Moment, Then I Was Gone
(2011/06/06)
Maybeshewill

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第28位:I Was Here For A Moment, Then I Was Gone/MayBeSheWill

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Sulla linea dorizzonte tra questa mia vita e quella di tut

第27位:Sulla linea d'orizzonte tra questa mia vita e quella di tutti/Raein

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For all the innocenceFor all the innocence
(2011/07/11)
LITE

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第26位:For all the innocence/LITE

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CONTEXTCONTEXT
(2011/08/03)
LOSTAGE

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第25位:CONTEXT/LOSTAGE

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ampere_like_shadows.jpg

第24位:Like Shadows//AMPERE

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キャラペイスキャラペイス
(2011/01/06)
石橋英子

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第23位:Carapace/石橋英子

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AESTHETHICA (エスセシカ)AESTHETHICA (エスセシカ)
(2011/07/20)
LITURGY (リタジー)

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第22位:Aesthethica/Liturgy

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FINETUNING-23.jpg

第21位:空谷ノ歪音/discotortion

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Until Fear No Longer Defines UsUntil Fear No Longer Defines Us
(2011/08/23)
Ghost Brigade

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第20位:Until Fear No Longer Defines Us/Ghost Brigade

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Celestial LineageCelestial Lineage
(2011/09/13)
Wolves in the Throne Room

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第19位:Celestial Lineage/Wolves In The Throne Room

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第18位:as the earth drinks/滅(metsu)

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Gottesmorder_st.png

第17位:Gottesmorder/Gottesmorder

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心ノ底ニ灯火トモセ心ノ底ニ灯火トモセ
(2011/05/18)
eastern youth

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第16位:心ノ底ニ灯火トモセ/eastern youth

【Review】





Masakari Alpinist Split LP

第15位:Masakari Alpinist Split LP/Alpinis×Masakari

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New AlbumNew Album
(2011/03/16)
Boris

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第14位:New Album/Boris

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AscensionAscension
(2011/05/10)
Jesu

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第13位:Ascension/Jesu

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Loaded,Lowdead,Rawdead

第12位:Loaded,Lowdead,Rawdead/BOSSSTON CRUIZING MANIA

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The Book Of KingsThe Book Of Kings
(2011/11/01)
Mournful Congregation

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第11位:The Book Of Kings/Mournful Congregation

【Review】





kmp1.jpg

第10位:Child's Hill/Kurio Mori

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AsylumAsylum
(2011/06/20)
Morne

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第9位:Asylum/Morne

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フォークフォーク
(2011/09/21)
Discharming Man

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第8位:フォーク/Discharming man

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Garten Der Unbewusstheit

第7位:Garten Der Unbewusstheit/Corrupted

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EmprosEmpros
(2011/10/25)
Russian Circles

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第6位:Empros/Russian Circles

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lento-icon.jpg

第5位:Icon/Lento

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Deep PoliticsDeep Politics
(2011/03/08)
Grails

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第4位:Deep Politics/Grails

【Review】





TotorRo_AllGloryToJohnBaltor.png

第3位:All Glory To John Baltor/TotorRo

【Review】





Light Bear - Lapsus

第2位:Lapsus/Light Bearer

【Review】





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第1位:The Long Now/Grown Below

【Review】





TOP3はまさかのポストメタルという結果になってしまいました。しかもTOP3全てが1stアルバムになったのも何かの因果を感じます。12月になって購入したGrown BelowとLight Bearerが1位と2位になるという事態になりましたが、両者共に1stとは思えないとんでもない作品を作り出しました。Grown Belowはベルギーから突然変異の様に登場し、Amenra直系の極悪なスラッジさと多様な要素を内包した超スケールのポストメタルを展開。Light BearerはNEUROSISとSigur Rosとまで言われる激重さから神々しい音世界を描いてましたし、この2バンドの登場は本当に大きいと思います。Tokyo JupiterからリリースされたTotorRoも轟音ポストロックからハードコアも激情も食らい、とんでもないデビュー作品を生み出したと言えるでしょう。他にも自らのリリカルさを更新し最高傑作を生み出したRussian Circles、超重厚なスケールの傑作を生み出したMorne、カナダの若きホープである滅(metsu)とポストメタルは今年に入って一気に若手バンドの飛躍の年になったと思いますし、来年も益々シーンの進化から目が話せないでしょう。
ポストロック系ではGrailsとの出会いが本当に大きかったです。最近のEarthにも連なる物がありながら、どこまでも豊かな音色が描く情景には惚れ惚れとします。MayBeSheWillの蒼い音色にもmogwaiのクリアに変貌した音にも心がキュッっとなりました。それと個人的にKuroi Moriは今年一番再生した作品だと思います。どんな場所にも嵌まるシンプルでありながら豊かな感情を持つ電子音の揺らぎに飲み込まれてました。スラッジ・ドゥームではLentoに粉砕され、CorruptedとMournful Congregationのフューネラルは格の違いを痛感。それと今年は日本国内のバンドの新譜をあまり買わなかったと反省してます。しかしeastern youthとDischarming Manは僕の魂を本当に熱くしてくれたし、新たなスタートを切ったLOSTAGEの進化も、実に7年振りの新作となったBOSSSTON CRUIZING MANIAはかなりヘビロテしてるし、Borisの3枚の新譜にも驚かされたが、その中でも完全にポップサイドに突入した「New Album」が3枚の中で一番のお気に入りになりました。
まだまだ色々と書きたい事がありますけどいい加減長くなるのでこの辺で、色々と書ききれなかった事は2011年の総括の記事でまた書くと思います。でも自分で作ったTOP30を見ると本当に新たなポストメタルバンドの躍進の年になった気がしますし、来年もポストメタルは追いかけます。それとTOP30にはRaienとAMPEREしか入ってませんが旧作を中心に激情系ハードコアを漁りまくってたので来年はそちらの新譜も更に色々聴きたい所です。
タグ : 年間BEST

■2011年BESTソング10

第1位:フレア/Boris





第2位:Mladek/Russian Circles

第3位:The Long Now/Grown Below

第4位:Primum Movens/Light Bearer

第5位:The Stamped/TotorRo

第6位:Deep Politics/Grails

第7位:Urja Ibra/Kuroi Mori

第8位:Clawmaster/Ghost Brigade

第9位:Hell/LOSTAGE

第10位:Inversion Operation/heaven in her arms





今年愛聴した10曲はこんな感じになりました。1位は今年色々と話題の多かったBorisですが、まさかのアニソン・ロキノンテイストの楽曲で戸惑った人も多かったと思いますし、僕も最初はBorisに何があったんだ!?ってなりました。でもBorisが本来の爆音を敢えて抑えてポップの方向に突き抜けるエクストリームさを求めた楽曲でもあるし、本来爆音サウンドを抑えれば「俺を捨てたところ」も「Korosu」も「フレア」に連なっている楽曲でもあると思います。本来持っていたBorisのポップサイドの魅力を高い精度で体現しているし、リスナーの期待を良い意味で裏切り続けるという意味ではBorisは何も変わっていないと思います。この「フレア」からBorisはどこに向かうのかは僕としてもかなり気になる所です。
2位~5位の3曲はポストメタルな3曲ですが、こちらもかなり愛聴しました。6位からはポストロック・エレクトロニカ・ゴシックドゥーム・ポストハードコア・激情系ハードコアとかなりバラバラになっていたりしますけど、自分の日常生活の中で本当に再生する機会は多かったと思います。
色々と語りたい事もありますが、そこら辺は年間BESTアルバムと内容が被りそうなのでここでは省かせて頂きますけど、今年はやはりBorisの「フレア」が僕の中でのアンセムになりました。
タグ : 年間BEST

■2011年旧作BEST10

さてさて2011年もいよいよ終わりに近づいて来たので、今年も年間BESTなんかを発表しようと思いますが、今年はベストソング10曲と旧作BEST10も発表します!先ずは旧作BEST10の方から。2010年以前にリリースされた中で今年特に気に入った10枚を発表する形ですが、言ってしまえば僕がリアルタイムで聴けなかった名盤10枚を紹介するだけだったりします。でもそんなの関係無しにどれも素晴らしい作品なので是非聴いてみて下さい。特に順位は付けないで10枚選ぶ形にしました。また【Review】をクリックするとそれぞれの作品の当ブログのレビューページに飛べる形にしております。





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Mass III-IIII/Amenra

ベルギーの暗黒激重神であるAmenraのTokyo Jupiterからリリースされた編集盤。全てを燃やし尽くす漆黒の煉獄の如しスラッジ地獄を描き、どこまでも無慈悲な音を奏でているが、その破壊力だけでも凄まじいのに、緻密な構成力と芸術的な音を圧倒的負のパワーで放出しているからこそ恐ろしい音になっているのだ。激重パートと静謐なパートの落差こそ彼等の武器であるし、その落差と対比が彼等の音を荒涼とした感覚で鳴らすからこその漆黒の美しさを見せてくれる作品。NEUROSISのレーベルであるNeurot Recordingsと契約を果たした事実も納得の傑作。

【Review】






Hydra LernaiaHydra Lernaia
(2009/06/23)
Eryn Non Dae

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Hydra Lernaia/Eryn Non Dae.

数多くの猛者を生み出しているフランスのポストメタル・スラッジ・カオティックの1st。ポリリズム駆使の複雑極まりないカオティックな楽曲を激重のスラッジさで鳴らし、ブルータルな感触と共に緻密な構成で鳴らすかなりハイブリットな1枚。正直1stでここまでの傑作を生み出してしまった事実に驚きであるが、統率された混沌その物をこいつらは鳴らしているし、緻密でありながらもハードコア×デスメタルな粗暴さも際立っている。絶望的であり破壊的なサウンドは多くのフリークスをブチ殺す事間違い無し!早く2ndを出して欲しい限りだ!

【Review】






AnthropocentricAnthropocentric
(2010/12/01)
Ocean

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Anthropocentric/The Ocean

ドイツの超芸術的ポストメタル集団の2010年リリースの作品であり、間違いなくポストメタル史に語り継がれるであろう名盤。同じく2010年に発表された「Heliocentric」の続編であるが、後編の今作はISIS以降のポストメタルを完全に新しい次元にまで進化させてしまったと言っても良いだろう。パワフルな破壊の音であり、宇宙を感じさせる壮大なスケール。生命の躍動その物なハードコアサウンドを完全に違う次元で鳴らしてしまっている。こいつらの存在は間違い無くへビィロックの歴史を変えてくれる筈だ!

【Review】





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Montuenga/Aussitôt Mort

今年はheaven in her armsとのスプリットのリリースがあったフランスの激情神の2nd。ミドルテンポのドゥーミーな引き摺るリフと感情を刺激しまくるメロウさ、スラッジ・ドゥーム・激情は勿論、ポストメタル・アンビエントまで飲み込み彼等にしか生み出せないグルーブを完成させてしまったのだ。暴虐極まりないサウンドスタイルでありながら、芸術性の高さも見事だし、誰も追いつく事の出来ない激情系ハードコアを今作で確立しているのだ。激情フリークは勿論だが、全てのハードコアフリークス必聴の一枚!

【Review】






The DarkThe Dark
(2010/11/08)
Third Eye Foundation

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The Dark/The Third Eye Foundation

Matt Elliot率いるブリストルの暗黒音響系ユニットの実に10年振りの2010年発表作品。ドラムンベースやダブステップのビートを基調にして描かれるのは徹底してダークであり耽美な美しさを持つ暗黒絵巻。重苦しいビートを基調にし、ストリングスの音色の美しさに酔いしれそうになるが、不協和音と暗黒のビートが反復し、聴き手を終わりの無い悪夢へと誘う1枚。麻薬の様な甘さは神経に到達する猛毒であるし、徹底して絶望を鳴らしているMatt Elliot節がこれでもかと炸裂している。

【Review】





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Terminal Stage of Decay/STARLINGRAID

ロシア人ボーカリストローマ率いるグノーシスコアバンドの1st。激情・カオティック・アンビエント・ポストロック・インダストリアル・ドゥームと本当に多岐に渡る音を飲み込み完全にオリジナルな歪みまくった激情系ハードコアを今作で展開している。狂気と陰鬱さを極めた末に完全に奇怪極まりないダークサイドのハードコアを鳴らし、解読不能の構成と展開を見せ付ける彼等の音は本当に識別不能であるし自らが自称するグノーシコアでしか無いのだ。今年はついに初ライブも敢行したし、これからの活動を追いかけるつもりだ。

【Review】






5ive5ive
(2002/11/26)
5ive

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5ive/5ive

マサチューセッツのスラッジデュオの1st。ギターとドラムのみの編成でありながら超重圧殺悶絶スラッジ地獄を描き出す超極悪な1枚。このギターリフは時空すら歪ませるだけの圧力があるし、聴き手の脳髄を粉砕しグチャグチャの粉微塵にする事は必至だ。終わり無く渦を巻く煙たさと音塊、全てを飲み込む濁流と振り落とされるスラッジハンマーと噴出する酩酊の煙が三位一体となった殺人音楽。その猛威にはただ震える事しか出来なかった。今年聴いたスラッジ系の中でも一番の傑作。

【Review】






We're Here Because We're HereWe're Here Because We're Here
(2011/06/07)
Anathema

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We're Here Because We're Here/Anathema

My Dying Bride、Paradise Lostと並びゴシックメタル御三家として名高いAnathemaの2010年発表の8枚目の作品。メタル要素こそ殆ど無いが、ゴシックらしい耽美さと天上の気高い旋律が神秘的であるし、眩いばかりの光を神々しく描く傑作だ。細胞レベルまで拘ったアレンジや美意識を通し、柔らかでありながらも確かな強さを持っているし、その壮大なスケールは本当に一つの神話の様であり、そのドラマティックさにも魅了される。メタルフリークスだけで無く、本当に多くの音楽ファンに受け入れられるべき作品だ。

【Review】






IIII
(2008/04/08)
Humanfly

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Ⅱ/Humanfly

イギリスのポストメタルバンドであるHumanflyの08年発表の作品。漆黒の雷鳴の様なサウンドスケープがまず圧巻であるし、全6曲60分という徹底した大作志向で描く暴風雨の様なポストメタルだ。初期Pelicanの様なスタイルを継承し、幾重にも重なり合う音が宇宙へと導いてくれるし、時空と次元の破滅と創造を描いたかの様な壮大なスケールにはただ平伏す事しか出来ない。冗談抜きにポストメタル史屈指の名盤であるし、煉獄から宇宙へと導く音にはやられてしまう事は間違い無いだろう。

【Review】






ヴァルハラヴァルハラ
(2009/09/02)
8TH WONDER

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ヴァルハラ/8th Wonder

東京を拠点に活動する3MCこと8th Wonderの09年発表の1stアルバム。disc2枚組全16曲という濃密な収録内容もそうだが長尺の楽曲も多くそ、詰め込まれた圧倒的な情報量にも脱帽。ハードコアとへビィメタルの影響を感じさせるトラックの格好良さにも痺れるし、シリアスな言葉の数々が言葉の洪水として押し寄せてくる。どこまでもへビィでどこまでもシリアスなヒップホップを体現している。決してちょっと聴いただけで全てを理解出来る様な作品じゃ無いけど、この言葉と音はこの先も不変の重みを持っているに違いない。

【Review】





上記の10枚以外にも今年は本当に多くの音に出会えた。例えリアルタイムじゃなくても良い音楽の価値は決して変わらないし、来年も今は知らない未知の音を多く知る事が出来るなら、それは本当に幸せな事だと思う。
タグ : 年間BEST

■Bipolaire/Kimika


BipolaireBipolaire
(2009/04/14)
Kimika

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 GY!BE等を輩出してる事でお馴染みのカナダの音響系ポストロックバンドであるKimikaの04年の録音された1st。2011年になってFluttery Recordsから再発された音源だ。今作はボーカルの入った楽曲も多く、基本的には静謐で波打つ波紋の様な静かな広がりを見せるポストロックなのだが、アコースティックなテイストを前面に押し出している楽曲もあり、ボーカルの入った楽曲は完全なる歌物作品にもなっている。オーガニックな柔らかさが聴き手に染み込む優しい音色で作り上げたポストロックだ。



 ポストロックでは静謐なパートから空間系エフェクターを駆使し轟音パートに移行しカタルシスを生み出すバンドも多かったりするが、今作は実際その様な要素は存在はするが決してそれを前面には押し出しておらず、あくまでも静謐さの中で煌く旋律の美しさと優しさに大きな比重があると言える。第1曲「Quartier D'eÌ?toile」の純度の高い透明な空気の中で緩やかに進行する音は素朴でありながらも、かなり洗練されている。第2曲「Last Words」は一転してアコースティックな歌物になっており、繰り返すコード進行の反復に乗るおぼろげなボーカルの繊細な空気は幽玄の物であるし、核になっているオーガニックさのみで勝負している様な感触がある。しかし後半から轟音のサウンドが入り込むが、それはポストロック的な轟音では無く、エモやインディーロックの系譜にあるサウンドなのだ。高まる熱量と共に剥き出しの感情を奏でる轟音サウンドはポストロックの系譜にありながらも、もっとロックバンドらしいストレートさを持っているし、それでも失われない純度の高さと柔らかな空気は陶酔する事間違い無しだ。彼等も轟音系ポストロックバンドではあるのだが、その王道の流れの中で更にロックバンドである事に意識的でもあるし、彼等の轟音からはロックの激情、静謐なパートではポストロックらしい洗練された美意識と共にその音色の純度を守るクリアなアレンジと核になる旋律の優しさが確かに存在している。完全にアコースティックに振り切った第4曲「Ghost」にこそ彼らのサウンドの根っこみたいな物が存在しているし、インディーロックの系譜を感じさせるだけでなく、微熱の歌のささやかに尖ったコード進行と歌の奥行きの深さはシンプルな形態でありながらも、削ぎ落とした先の鋭利さがある。後半は特に轟音サウンドを封印し、自らの静謐さと浮遊する旋律を確かな熱量で鳴らしているし、彼らはポストロックバンドであると同時に、もっとプリミティブなロック魂をシンプルでありながらも洗練させたサウンドで鳴らすバンドである事を認識したし、その熱量をポストロックのフィルターで通した上で鳴らしているのが彼らの魅力でもあるのだ。



 カナダの広大な大地で静かに育まれたポストロックはロックバンドとしての土着的な力を感じさせてくれるし、一つの音を一歩一歩踏みしめる様な旋律とサウンドスケープはオーガニックであるし、確かな熱量があるからこそ静かに浸透していく。決して派手な音では無いけれど、その音は長い時間に渡って聴き手の中で静かに呼吸し続ける強さがあるのだ。だからこそKimikaの音には頼もしい強さを感じる。

■自我と煩悩/屍

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 日本が誇る陰惨さを極めたハードコアバンドである屍の00年発表のEP。HIS HERO HAS GONR等に通じるファストなハードコアサウンドを鳴らしているがダークな旋律とデスボイスをフル発揮し、単純にハードコアとしての肉体性を持ちながらも、その旋律と言葉はどこまでも内側に向かっている、自らに対する憎悪を暴発させるハードコアとして唯一無二であり、ハードコア愛好家以外にも彼等の音に惹かれる人は多い。



 第1曲なんていきなり「憎悪」という直球なタイトルを冠してしまっているけれど、タイトル通り憎悪を激情として吐き出すハードコアの毒素に満ちているし、メロディアスでありながら硬質のリフの応酬と巧みにブレイクを盛り込んだ楽曲構成なんかはハードコアバンドとして優秀であるし、音は正統派なハードコアサウンド。音の厚みも絶妙であるし、何よりもメロディアスさに特化したハードコアは胸を熱くしてくれる。しかしそれらは全てボーカルの板倉氏の救いようの無い絶望を際立たせる為の物であるし、それらの要素があるからこそ屍は境界性人格障害ハードコアなんて呼ばれたりもするのだ。第2曲「繰り返し…そしてまたその繰り返し…」は泣きの旋律から始まり、メタリックなリフが無慈悲に刻まれる作品であるが、フラットなテンションで少しずつメロウさを増していく楽曲に比例する様に板倉氏のボーカルと言葉の救いようの無さは加速しているし、終盤での激情パートでそれが爆発する構成なんかはハードコアバンドとしての構成の美学も感じさせながらも、ダークサイドに全てが振り切れている。今作で最も激情の色が強い第3曲「自我と煩悩」なんか屍の真骨頂とも言える鬱病ハードコアだし、人間の内面に潜む精神の猛毒に埋め尽くされ、胸を打つメロウな旋律と負の感情が外側にも内側にも放出されていく様は救いが無いかたこその美しさがあるし、それに飲み込まれそうになるし、飲み込まれたままでも良いとすら思ってしまうサウンドと世界観は彼等にしか生み出せない物である。今作に収録されている楽曲はサウンドのスタイルも一貫しているが、それ以上に世界観も徹底しているし、何処を切っても救いは無いし、ネガティブ極まりない脳内世界に引き擦り込まれるだけだ。



 ダークサイドのハードコアとして屍はやはり絶対的な存在であるし、ハードコアの肉体性と板倉氏の精神世界が見事に結びついたからこその音は高い純度で結びついている。ネガティブさを極めたからこその激情の音は屍の最大の魅力であるし、それは本当に多くの人に評価されるだけの物であるし、屍が屍である証明でもあるのだ。

■The Long Now/Grown Below

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 ベルギーからとんでもないバンドが登場してしまった。こいつらもThe OceanやLight Bearer同様にISIS解散以降のポストメタルシーンに登場するべくして登場したバンドだと断言できる。今作はそんなGrown Belowの2011年発表の1stであるが、1stにしてポストメタルの先人達に負けない激情と激重と芸術性を持ったバンドである。ベルギーと言えば激重神として君臨するAmenraの存在があるが、Amenra直系の痛烈なスラッジサウンドを展開しながら崩れそうな儚さを持つ静謐なパートとの落差も凄いし、美し過ぎるへビィネスを鳴らしている。



 こいつらの凄さは第1曲「Trojan Horses」から痛感する事になる。いきなりAmenra直系激重スラッジリフの応酬が待ち構えているのだから。地を這うリフとボーカルが一瞬で視界を漆黒の煙で埋め尽くしていく。しかしこいつらは決してAmenraの真似事バンドなんかでは無い。渦巻くスラッジリフの轟音の中で見せる微かなリリカルさ、低域シャウトに反し、クリーントーンのエモーショナルなボーカルも聴かせるし、長尺なのを良い事に激重の音から静謐なメロウなフレーズも同居させ、壮大なストーリーとしてそれらは展開していく、そして終盤ではダークなスラッジ系ポストメタルから一変し、リリカルさを極めた轟音系ポストメタルへと変貌する落差!しかし相反する要素がしっかり結び付き、激情のポストメタル絵巻として完成されているのだから恐ろしい。正直言ってデビュー作でここまでの名曲を作り上げてしまっている事にも驚きだ。しかし第2曲「Devoid of Age」では残響音の美しい音色とリリカルなフレーズの激重リフが入れ替わりまくり4分間の中で全てを粉砕する破壊の限りを尽くしながら、その惨殺方法の美しさに見とれてしまうのだからまた驚く。楽曲の幅の広さも新人らしかぬ懐の大きさを感じるし、第3曲「The Abyss」ではヴァイオリンを取り入れ、へビィながらにも耽美なゴシックさを感じさせるし、女性ボーカルとクリーントーンのボーカルと殺気に満ちたシャウトがリリカルなパートで重なり合うのなんかAmenraの名曲「Am Kreuz. 」を思い出したりしたが、Amenraは殺気的へビィネスに特化してるのに対し、こいつらはヘビィさも徹底してるがもっとメロウであるのだ。スラッジの炎と共に堕ちていく退廃感をこれでもかとドラマティックに描いていたりするから涙腺が壊れそうになって仕方ない。第5曲「End of All Time」では今作で最も王道のポストメタル色の強い激情と静謐のコントラストを描いていたりもするが、その様な楽曲でも徹底して研ぎ澄ました芸術感覚は健在だし、どんな手法で楽曲を作っても自らの色を出し切っているし、楽曲の方向性がそれぞれ違いながらも、その核が同じだからこそ一貫性もあるし、ストイックな芸術性と進化としてのハードコアを開放しまくっている。そんな彼らの武器という武器を駆使しまくった第6曲「The Long Now」は間違い無く今作のハイライトであるし、閉塞感に満ちたスラッジで始まり、リリカルかつ静謐なパートを挟み、Russian Circlesと末期ISISが正面衝突したかの様な激リリカルパートへ突入!カオティックなピロピロフレーズと、ポストメタルらしい轟音の激重リフがぶつかり合い、一気に胸が燃え盛る位だ。その激情の余韻を残したまま、クリアなギターフレーズが世界を作り上げていく中盤の美しさは息を飲むし、女性ボーカルがそれを引き立てるが、次第に暗黒スラッジリフの刻みが不安を煽り、終盤で全てが暴発した先の異次元の轟音の別世界へと突入していく、そして自らのヘビィネスを再び開放して終わる約17分にも及ぶ長編ポストメタル絵巻に昇天必至だ。



 Light BearerがNEUROSISとSigur Rosの融合なら、Grown Belowはポストメタルもスラッジもアンビエントも轟音系ポストロックも耽美さも全て食らい尽くし、徹底して漆黒のヘビィネスを鳴らし、徹底して芸術的美しさの轟音を響かせ、徹底して胸を焦がすリリカルさで攻め立てているのだ。デビューしたばかりの新人としてはあり得ない完成度を誇っているし、間違い無くこれからのシーンを背負う存在になるだろう。2011年はLight BearerとTotorRoの登場という大きな実りがあったが、Grown Belowの登場も間違い無くポストメタルのシーンの事件であり、間違い無くシーンを背負う存在になるだろう。1stにしてポストメタル史屈指の超傑作を生み出してしまったのだ!!
 また今作は下記リンクのBandcampの方で視聴&MP3形式での販売がされているので是非ともチェックして、その圧倒的ポストメタルに触れて欲しい。



Grown Below Bandcamp



■YOU BARK WE BITE/STRUGGLE FOR PRIDE


YOU BARK WE BITEYOU BARK WE BITE
(2006/05/17)
STRUGGLE FOR PRIDE、カヒミ・カリィ 他

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 ライブハウスだけでなくクラブでもライブ活動し、日本のアンダーグラウンドシーンの中でも屈指のカリスマとして君臨する日本のノイズコアの英雄的存在であるSFPの06年発表の1stアルバム。MerzbauやGuitar Wolfとのスプリットの発表やECDとの関わりなのでハードコアシーンだけでなく多くのシーンに爪痕を残してるだけあって多彩なゲストが参加していたりするのだが、何より今作はまさかのエイベックスからのリリースであるのだ。そしてとんでもないノイズの音圧渦巻く破壊的かつハッピーな粗暴さ渦巻くハードコアがここにある。



 そもそも第1曲「REFLECTOR」はカヒミ・カリィのポエトリーリーディングから始まるのだ。カヒミの柔らかな声で紡がれる言葉の数々はとてもじゃ無いけどハードコアのバンドの音源とは思えなかったりするのだが、そのカヒミの声に酔っているリスナーを嘲笑うかの如くフィードインしていくノイズ、そしてカヒミのポエトリーが終わると同時に超強烈なハーシュノイズと極端に小さくした今里の叫びに雪崩れ込むのだから恐ろしい。それに繋がる形で第2曲「BLOCKLPAIN」でMSCの漢と麻暴の粗暴なラップが乗ってしまうのだから驚きだ。SFP自身も正当派のクラスとサウンドを極端にギターの音量を大きくした上でのエクストリームなノイズコアを展開し、その粗暴な音圧は一撃必殺だろう。それに加えて今作での録音もかなりグレイトになっている。デトロイトでマスタリングを行ったらしいのだが、ハーシュノイズの音が本当にクリアなのだ。耳を突き刺すノイズでありながら、細かい粒まで聞き取れるノイズサウンドの突き抜ける様はSFPの粗暴さを見事なまでに体現している。その裏で聞こえるドラムとボーカルもまた妙なカタルシスを生み出しているし、圧倒的ハードコアノイズに気付いたら飲み込まれてしまう。そして第6曲ではジャパニーズクラストの英雄ABRAHAM CROSSのカバーである「FEELING IN SOIL」まで繰り出してくる。アブラハムの最強のクラストサウンドをノイズ塗れにし更にプリミティブにしてしまったカバーにも痺れるしか無いのだけれど、それに続く第7曲「SUMMER NEVER ENDS」にてSFPに暴力性と、その先にある終わらないパーティの狂騒8感に満ちたアンセムは拳を突き上げてモッシュしたくなるの必至の超必殺の1曲だ。第8曲「MOBS」は何故か完全なる無音だし、第9曲「YOU BARK, WE BITE」で電話の声を収録し、それが終わった瞬間に1分間のノイズコア天国にブチ込まれて終わる。徹底して狂騒の中で渦巻くノイズコアのパワーには本当に圧倒されてしまうだけ。



 ジャンルを超えたゲストの存在からも分かると思うが、音楽のジャンル等はSFPの前では無意味だし、多くのリスナーと多岐に渡る音楽ジャンルの愛好家を巻き込むだけの音圧とパワーに満ちたハードコアサウンドはライブハウスもクラブに最高にアガれて最高に暴れられるモッシュピットにしてしまうだけのパワーとカリスマ性に満ちている。SFPが何故東京のアングラシーンの英雄として君臨してるかは今作を聴けば分かるが、彼等のライブパフォーマンスは音源を凌駕する圧倒的ノイズと粗暴さで全てを捻じ伏せるだけの物がある。だからこそSFPはカリスマとしてシーンを越えた英雄として存在しているのだ。

■Split/Alpinist × Masakari

Masakari Alpinist Split LP



 これは本当に激アツだ!!ドイツのAlpinistとクリーブランドのMasakariという今海外で盛り上がりまくってるネオクラストのシーンの猛者がぶつかり合う激情かつ激必聴な2011年発表のスプリット!今作で初めて両バンドの音に触れたが、ハードコアの粗暴さを極めながらも、芸術性やストーリー性といった緻密さを見せ付け、それを膨大なエネルギーと共に激情として暴発させる両者の音は軽い気持ちで触れたら大怪我間違い無し!Alerta Antifascista RecordsとHalo Of Fliesというネオクラストの重要レーベル2つによる共同リリースによる全14曲のハードコアの猛威!



 先ずはAlpinistだが、ダークさの際立つリフとドラマティックなギターフレーズが一気に胸を熱くしてくれるが、悪の軍隊の行進の様なクラストらしいリフが登場しながらも圧倒的激情と音圧で全てを叩き潰すハードコアの肉体的パワーには聴いてるだけで体温が一気に沸点まで持っていかれてしまう。ストイックな肉体性も素晴らしいが、こいつらの楽曲はどれもドラマティックであり、楽曲の中でしっかりと起承転結が存在し、楽曲が進む毎にそのダークさの中にある確かなメロウさが感情を刺激し、クライマックスへと暴走していくだけだ。しかし静謐なパートを導入したりという緩急の付け方では無く、常時ハードコアの暴力性を開放させたままで突っ走り、その中で変化して行く旋律と巧みに入るブレイクが楽曲に変化を与え、常にメーターを振り切ったままでドラマティックに突き進む。今作に提供した6曲全てが圧倒的にパワフルであり、尚且つダークな感傷が渦巻いている。暴音で突き進みなくった末に待ち構える第6曲「Quelle Valeur Reste」でようやく厳かなパートを入れてきたりもするが、それが圧倒的なクライマックスとして存在し、赤黒いハードコアの炎が全てを焼き尽くす様は圧巻!
 後攻はMasakariだが、Alpinistとは全く違う音を彼等は鳴らす。His hero Is Gone直系でありながら、ポストメタルやスラッジの粗暴さと緻密さも持っているし、しかしそれをストレートな激情系ハードコアとして鳴らす彼等の音もまたドラマティックであり極悪。スラッジの毒素を吸収し尽くした上で、それを再びハードコアへと帰結させる手法によって殺人的激情がよりストレートに伝わってくるのだ。超高速で突き進む音はHis hero Is Goneの英知を感じるが、それにスラッジの殺意と、その中から滲み出るメロディアスさが自らの音に更に破壊力を加えているし、それはまるで雷鳴が常時降り注ぐかの様なカタルシスが存在している。余りにも激しすぎる音は強烈な音圧によって輪郭すら崩壊したハードコアサウンドになっているが、Alpinistのタイトさとはまた違ったサウンドでありながらも、シュートカットチューンの中で轟く旋律はやはり感情を刺激し、肉体と心をハードコアの暴力で粉砕するだけで無くドラマティックさもしっかりと感じさせてくれるから頼もしい。今作に提供した8曲は嵐の様に吹き荒れ、聴き手の全てを奪い去っていく。



 ネオクラストシーンの猛者がぶつかり合った今作は両者共に気合いと破壊力に満ちた音を提供しているし、それがぶつかり合って制御不能の超破壊的激情スプリットに仕上がったと言えるだろう。ネオクラストのシーンの重要な一枚になるのは間違い無いだろうが、ハードコアが好きな奴は絶対に聴くべき破壊的作品!!今作は下記リンクのAlpinistのBandcampにてフリーダウンロードで配布されているのでハードコアフリークは見逃すな!!



Alpinist Bandcamp

■Presences of Absences/Asva


Presences of AbsencesPresences of Absences
(2011/05/24)
Asva

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 SUNN O)))のオマーリーが参加していた事でもお馴染みのドゥームバンドであるBurning Witchのメンバーによって結成されたAsvaの2011年発表の3rdアルバム。前作ではSUNN O)))直径の重圧殺ドローンに民族音楽等のテイストを加えた作品だったが、今作ではドゥーミーなテイストは後退し、不穏でありながらも美しいドローンサウンドのくぐもった感覚と音響的なアレンジを施した事により少しだけ開放的にもなっている。ドゥーム系ドローンからはかなり脱却した作品であり、Asvaの新しい次元の到達も告げる作品だ。そしてKayo DotのToby Driverがメンバーとして参加した事も見逃せない。



 今作では前作以上にオルガンの不穏な音色の持続音がかなり前面に出ているし、へビィなドローンサウンドも健在ではあるが、それには全く頼ってはいないし、自らの持っていた深遠さを前面に押し出す方向に完全にシフトしたと言えるだろう。中心人物であるG. Stuart Dahlquistは今作製作に於いて、メンバーを一新したらしいが、今までの重圧殺サウンドを封印してまで作られたドローンサウンドは良い意味で今までのAsvaのイメージを覆しているし、SUNN O)))系ユニットを完全に脱却している。第1曲「A Bomb in That Suitcase」は後半こそドゥーミーな音も加わるが、全編通してオルガンの持続音をフューチャーしているし、賛美歌の様なボーカルを前面に押し出していたりと作風の変化が人目で分かる筈。重圧殺ドローンに頼らない、よりアート感覚を研ぎ澄ました上でのヘビィさがそこにはあり、殺人的音圧こそ無いけど、その精神的ヘビィさは存在しているし、そのコールタールの海に溺れる様な閉塞感から少しずつ開放されていく様なサウンドスケープは妙な開放感を感じるし、同時に閉塞感も付きまとうタチの悪さも存在しているのだ。第2曲「Birds」ではクリーンな深遠さを持つボーカルを前面に押し出した上での静謐な美しさを持つ浮遊するドローンを展開、そのアンビエントな美しさが波紋の様に静かに広まる様は今までのAsvaには絶対に無かった物だ。Kayo DotのToby Driverがボーカルギターとして参加している事が今作の変化へと紛れも無く繋がっている事は大きいし、TobyのクリーンなボーカルはAsvaの音にどこか開放的な感覚を与えているし、G. Stuart DahlquistとTobyのセンスが最高の形で結びついたからこその変化であるのだ。第3曲「Presences of Absences」は完全にKayo Dot系エクスペリメンタルとAsvaのドローンサウンドが神経レベルで繋がった楽曲でもあるし、24分にも及ぶ長尺の中であらゆる音がその音圧を高めて開放へと向かい、美しいオルガンの音色に導かれながら精神の開放へと向かうカタルシスは脳髄を溶かしていく。第4曲「New World Order Rising」での粗暴さと暗黒色の色が交じり合う暴力的エクスペリメンタルドローンの世界も新機軸だし、徹底して今までのAsvaを破壊し、漆黒の開放へと向かっている。その重厚かつ壮絶なサウンドは極上のカタルシスを感じさせてくれるだろう。



 重圧殺ドローンを封印してまで作り上げられた今作だが、その研ぎ澄まされた感覚が作り上げた美しく重厚なエクスペリメンタルドローンの世界は魂を開放させると同時に新たな閉塞へと導いてくれる。重厚かつ緻密なサウンドスケープが描く闇の世界に光を差し込ませ、微かな光がおぼろげに輝く瞬間に芸術的さ彼等の音の核が存在している様にも見える。ここ最近のSUNN O)))の音に惹かれる人は勿論、Kayo DotやNadja辺りのファンにも是非聴いて欲しい作品だ。



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AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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