■2012年01月

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■Lichtlaerm+Minus.Mensch/Alpinist


Lichtlaerm/Minus.MenschLichtlaerm/Minus.Mensch
(2011/05/23)
Alpinist

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 Masakariとのスプリットでも圧倒的な存在感を見せ付けてくれたドイツの激情系ネオクラストバンドであるAlpinistの09年発表の1stと2010年発表の2ndをコンパイルした2011年発表の編集盤。リリースは最近は更にリリースするバンドの幅を広げている暗黒レーベルとしても御馴染みのSouthern Lordから。全21曲一時間というボリュームを誇る豪華な作品であるが、全編に渡って繰り広げられるのはプリミティブな衝動と、クラストコアを継承しながらも、それを捻り潰す漆黒のエネルギーだ。



 彼等の根底にあるのはやはりD-BEAT主体のクラストサウンドなのだが、単なるオールドスクールなクラストコアに回帰したのとは全然違う。悪の軍隊の様なこれぞクラストというリフは多く登場するし、キメと構成への拘りも確かにクラストコアの美学に基づいた物ではあるけど、彼等はそれを更にビルドアップさせて、よりカオティックな激情へと変貌させたサウンドなのだ。D-BEAT主体の暴走パートで生み出されるエネルギーも膨大だが、彼等はそのハードコアサウンドを複雑かつドラマティックにし、時にはミドルテンポの引き摺るパートを盛り込みつつ、自在に楽曲を変化させつつ、自らの核であるクラストコアに基づいたサウンドは絶対に崩したりはしない。衝動のままに叫び散らすボーカルと時折入る低域グロウルのコーラスの掛け合いはハードコア魂を一気に大炎上させてくれるし、ミドルテンポのパートで際立つドラマティックな旋律は魂の涙腺が大崩壊。カオティックハードコアの手法を持ち込みながらも彼等はそれをプリミティブな衝動を際立たせる為に取り入れ、結果クラストコア以上に極悪で、カオティックハードコアでありながら初期衝動に満ちていて、激情系ハードコアとして全身の血管が全てブチ切れたサウンドとなっている。基本的な路線は1st収録の楽曲も2nd収録の楽曲も変わらないが、前半に収録されている2ndの楽曲はカオティックかつ自在に展開しながらも衝動をドラマティックに鳴らし、後半の1stの楽曲は時に美しいアルペジオのパートなど盛り込みながらもクラスト色強めで、そのストレートなサウンドが全てを焼き尽くし、煉獄の底から闇も光も薙ぎ払うかの様な直球のサウンドが胸を熱くしてくれる。しかし一貫しているのはその漆黒のハードコアの破壊力と奈落すら突き抜けるであろう獰猛さで暴走するサウンドだ。編集盤とはいえ全21曲に渡ってクライマックスしかないサウンドが轟いており、たまに楽曲の冒頭で入る不穏で静謐なパートのみはただクラストコアの先にある邪悪極まりないハードコアサウンドに魂すら無に還されてしまって彼岸すら見えなくなってしまいそうだ。



 ネオクラストというムーブメントは現在欧州で水面下でかなり熱い盛り上がりを見せているが、こいつらの存在はネオクラストの猛威そのものであるし、オールドスクールなハードコアのスタイルを継承しながらも、その先を目指し、更にバンドとしてのパワーを鍛え上げたからこそ生まれるドラマティックな激情なのだ。今作に収録されている1stと2ndは日本では中々入手が難しい作品だったらしいが、Southern Lordがこうした形で編集盤をリリースしたお陰で日本でも彼等の音に触れるのが容易くなった。この様な機会に感謝したいし、Alpinistというバンドとネオクラストというムーブメントが日本でも更に熱い盛り上がりを見せてくれる事を願う。



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■Until We Have Faces/Red


Until We Have FacesUntil We Have Faces
(2011/02/15)
Red

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 アメリカではグラミー賞にノミネートされたりヒットチャートを賑わせている人気バンドであるRedの2011年発表の3rdアルバム。僕は今作で初めてRedの音に触れたが、国内盤が出ていない日本でも多くのリスナーを掴んでいるバンドだ。その音楽性は歌メロ際立つ泣きの旋律と、本当に正当派なモダンへビィネスサウンドという何のギミックも無いストレートなへビィロック。しかしキャッチーでありながらもヘビィネスを継承したそのサウンドは本当に多くの人を虜にするだけの力を持っている。



 彼等のサウンドは正統派ヘビィネスサウンドとMichael Barnesの卓越したボーカル、それを支えるエモーショナルな泣きの旋律と楽曲に深みを与えるストリングスの存在。ただそれだけで勝負出来るだけの馬力を持っている。第1曲「Feed The Machine」は今作で最もヘビィネス色の強いゴリゴリな1曲だが、ギターリフやサウンドプロダクトからはかつてのモダンヘビィネスを継承した王道極まりない物、しかしサビではストリングスとクリーントーンの伸びやかなボーカルが深遠な広がりを見せてくれる。そしてそのヘビィネスサウンドから放たれるメロディアスかつ涙腺を刺激する音は彼等の大きな武器だ。第2曲「Faceless」ではMichaelのボーカルとストリングスとバンドのヘビィネスサウンドが更にメランコリックさを際立たせた1曲であり、痛みの先の救いを歌う様な優しさを感じたのは僕だけでは無い筈だ。彼等はモダンヘビィネスムーブメントが終わった後に生まれるべくして生まれた純粋に歌と旋律で勝負出来るだけの力を持ったオルタナティブへビィロックとも言えるかもしれないが、彼等の魅力は正当派ヘビィネスサウンドのみで勝負出来る楽曲の完成度の高さでもあるけど、それ以上に大きな要素なのは例えへビィなサウンドじゃなくても純粋に聴き手の心を串刺しにする泣きの感情を音にする豊かな表現力であり、それをストレートに体現しているからこそ生まれる説得力は相当の物だ。自らのヘビィネスを封印したバラードである第6曲「Not Alone」と終盤の「Best Is Yet To Come」のメランコリック大爆発具合とと「Hymn For The Missing」のストリングスとピアノのみの楽曲でも全くブレないRedの核は見事だ。作品の中でもそういった泣きの要素の強い歌物の楽曲は多いが、決して中弛みはしてないし、ヘビィネスと歌のバランスも絶妙な配分にもなっているし、結果として多くの人を掴んで離さないエモーショナルへビィロックとも言える作品になった。



 モダンヘビィネスムーブメントは沈静化してはしまったが、それ以降にもこの様な素晴らしいへビィロックを鳴らしてくれる頼もしいバンドが登場していたのだ。彼等は本当に正統派の泣きのヘビィネスを素直に体現し、それを壮大なスケールで豊かな音色で奏でてくれるのだから、心に感受性を刺激しまくるドラマティックなサウンドに本当に惚れ込んでしまった。Redはへビィロック好きは勿論だけど、本当に多くの人に聴かれるべきバンドだと思う。純度の高い美しいヘビィネスを今の時代に鳴らす彼等を支持したい限りだ。



■Iron Balls Of Steel/Loincloth


IRON BALLS OF STEEL (アイアン・ボールズ・オブ・スティール +ボーナス・トラック)IRON BALLS OF STEEL (アイアン・ボールズ・オブ・スティール +ボーナス・トラック)
(2011/11/23)
LOINCLOTH (ロインクロース)

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 ヴァージニア州から新たな才能が登場した。今作は2012年発表の彼等の1stアルバムでありリリースは激重危険レーベルとしてお馴染みのSouthern Lordから。Loincloth(ロインクロース)はギター・ベース・ドラムのみの至ってシンプルな3ピースであり、ボーカルレスで放出する音はただひたすらへビィなリフとビートが織り成す重圧殺の音だ。徹底して何のギミックも無しにただひたすらミドルテンポで鉄槌を下すバンドだ。



 彼等の音楽には本当に自らにとって必要最低限の音しか存在していない。ギターとベースとドラムの3つという最小限極まりない編成で何の装飾も無い、剥き出しであり無慈悲なへビィネスで叩き潰す。ただそれだけに特化したバンドだ。楽曲の尺も1分台2分台が殆どだし、それぞれの楽曲でも方法論は一貫している。どこまでも削ぎ落とした音で生み出す激重のアンサンブル、ただそれだけがあるのみだ。ギターフレーズも全編通してリフのみ、ストイックに」一撃必殺のリフだけで勝負する潔さも漢らしいが、そのギターリフはほぼ必殺の鉄槌リフのみが存在し、本当にそれだけで全てを薙ぎ払う重戦車として君臨している。しかし彼等はただひたすらにへビィな音のみでストイックに戦うだけのパワー馬鹿なバンドでは無い、あくまでもシンプルにリフのみで勝負しながらもそのビートと構成は複雑極まりない変拍子と転調だらけ。同じリフを繰り返すなんて真似は殆どせず、一発一発のリフを巧みに変化させ、それを重厚なビートに乗せながらも、予測不能の展開を見せ、ただでさえ破壊力に満ちた音塊が上から下から右から左から予測不能の方向からブン殴りまくる凶悪な殺人鬼具合が自らのへビィネスを更に強めている。音楽的には楽曲毎に大きな変化は無いにしても持ち前の演奏技術とアンサンブルのみで繰り出すプログレッシブメタルの世界が確かに存在している。



 激重リフ、重戦車のビート、変拍子と転調、ストイックに鍛え上げられたアンサンブル。彼等にあるのは本当にただそれだけだが、武器こそは少ないが所持している武器はどれも一撃必殺であり油断していたら直ぐに殺されてしまうであろうへビィロックを無慈悲に放出している。16曲39分という収録時間も良い塩梅だし飽きずに聴けるのもポイントが高い。1stでありながら徹底してリフに拘ったへビィネスを見せ付けてくれた彼等だが、この激重サウンドがこれからどのように進化していくか見守っていきたい。



今作の前にリリースされたアナログ盤の音源。これだけでも十分にこいつらの鉄槌のへビィロックは体感出来る筈だ。

■Cruel Cross/Suspiria


CRUEL CROSSCRUEL CROSS
(2008/11/26)
SUSPIRIA

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 ハードコアの先を目指す素晴らしいバンドは多いが、大阪が生んだ異形のハードコアバンドであるSuspiriaは日本のバンドの中でもハードコアでありながらそれをブチ壊すバンドとして本当に突き抜けている。今作は08年にリリースされたミニアルバムでリリースは勿論危険音源発信レーベルであるless than TVから。更に今作からはOUTO、RISE FROM THE DEADでも活動していたハードコア界の猛者であるMOTS氏が加入しギターを弾いている。



 先ず彼等をハードコアと言って良いのかと思う。音を聴けば確実にハードコアパンクのそれを感じるのだけれど、彼等はそこに無茶苦茶多くの要素をブチ込みなくっているから、単なるポストハードコアでは片付けられないのだ。プログレ、民族音楽、オペラ等の要素を貪欲に食らい、それをまたハードコアとして鳴らすサウンドも、メンバーにコントラバスがいるというバンド形態も異質極まりないのだから。今作は民族音楽的でありアンビエントな1分未満の小品が収録されており、それを除くと実質3曲入りの音源なのだが、その3曲に詰め込まれた混沌は膨大なエネルギーとして放出される。第2曲「Aphasic Venus」から先ず圧倒的エネルギーが禍々しく雪崩れ込む。ギターフレーズ等はハードコア色を感じさせながらも、時折絶妙な場所に入れてくる自由度の高いフレーズや自在に動き回りながらも直情的なドラム、重みのあるグルーブを生み出しながら、楽曲に怪しさを加えるコントラバス、完全にプログレに入った脳に焼きつくキーボードが時にインプロパートでは不穏に混沌をそれぞれが幾重にも重ね合わせ、その先の暴発するパッションへと雪崩れ込む。クロスオーバーする要素と楽器隊の4人の強烈な演奏は自然と統率されているし、ボーカルの吉田氏の泣き叫ぶかの様なボーカルが乗りハードコアバンドとして激烈な音となるのだ。プログレとハードコアを繰り返す第3曲「Cruel Cross」でも暴走するサウンドを絶妙な匙加減でまとめ上げ近作で最も即効性のある攻撃的な音を展開している。特筆すべきは第5曲「Pathos House」は正にハードコアオペラとも言うべき圧巻のスケールと、古き良きプログレを完全にハードコアに持ち込んで終いにはトライヴァル要素まで付け加えてしまったせいで儀式的で呪術的なサウンドプロダクトとなり壮絶な7分半となってしまったのだ。



 ハードコアの形を守りながらもその先を目指した先にあったのはまるで少数民族の儀式の様でもあり太古の神へと呼びかける様な壮絶なサウンドだった。彼等はその異形のハードコアを僅か5曲で壮大なスケールで体言し一度聴いたら忘れられないだけのインパクトを持った音にしている。驚きと発見に満ちた新世界のハードコアとしてとんでもない熱量を持った作品になっている。



■Planet Of Ice/Minus The Bear


Planet of IcePlanet of Ice
(2007/08/20)
Minus The Bear

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 ギターが伝説的ハードコアバンドであるBotchのメンバーである事でも有名なシアトルの5人組Minus The Bearの07年リリースの3rd。メンバーそれぞれかつてはハードコアバンドに在籍しながらも、その叡智は全く違う方向に生かされ、歌物オルタナティブロックとポストロックを融合させ、エレクトロニカ等の味付けも加えながらもダンサブルかつ爽やかな音色を卓越した演奏技術で展開する作品だ。



 彼等の音はあくまでも自らの歌を最大限に生かしたオルタナティブロックなのだけれど、単なる歌物バンドとして片付けるのは不可能だ。旋律だけでもクリアでありながらも少しずつ熱量を見せる絶妙なエモさが光り煌くピュアネスだけでも彼等は素晴らしいバンドなのだけれども、それだけでは無く爽やかでクリアな楽曲にエレクトロニカの光の煌きを加え更に色彩を豊かにし、変拍子を刻みながらもタイトかつ独自の躍動感を持ったビートは肉体にも確かに訴えてくるし、ポストロックの緻密な構成力とハードコアを通過した猛者達の静かなタフネス、それらの要素を組み込み非常にハイブリットかつ複雑な楽曲になっているのだけれど、そこに難解さは全く無い。それらを取り入れてまた自らの歌物オルタナティブロックとして完結させ、素直に耳に入り込むオーガニックかつ柔らかな歌と旋律は本当に高揚感に満ちている。それをバカテクとしか言えない圧倒的演奏技術とアンサンブルで奏でるのだから恐ろしい。第3曲「Knights」なんか特に完成度の高い楽曲なのだが、純粋な歌物ロックとしての魅力も相当な上に、楽曲のテンションが高まると同時に変拍子駆使の変態ユニゾンを見せ、絶妙に歪んだ音色が脳に快楽と驚きを与える1曲だ。緩やかな時間軸の中で漂う第2曲「Ice Monster」、完全にマスロックの域に到達した雪崩れ込むギターフレーズの嵐が覚醒する第5曲「Dr. L'Ling」も今作の聴き所だ。また2本のギターとキーボードの音の配分も絶妙で、時に宇宙へと繋がるゆらめきを描くキーボと、ハードコア通過型の超絶フレーズを多彩な音色で無限の色彩で奏でるギター、そしてタイトにバンドを支えるリズム隊の鉄壁のアンサンブルは同時に思わず体を揺らしたくなる匙加減を熟知したダンサブルなビートを刻むから恐ろしい。アンビエントからマスロックまで自らの武器を完全解放した第10曲「Lotus」で彼等の魅力を存分に解放している。



 音楽性はハードコアバンドをやってた連中がやってるとは思えない物だが、こいつらは本質的な意味でポストハードコアなバンドだと感じた。確かにハードコアの息吹は感じるし、多次元のアンサンブルでピュアネスを極めた有機的な色彩で描く音の螺旋に身を任せた瞬間にその無限回廊へと静かに連れて行かれる。それらを全てひっくるめても最終的に彼等はエモいバンドであり、単純に歌物としても素晴らしいバンドであるのだ。どこまでもハイブリットな1枚だ。



■DEAR FUTURE/COALTAR OF THE DEEPERS


DEAR FUTUREDEAR FUTURE
(2011/08/31)
coaltar of the deepers、Ringo Deathstarr 他

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 現在では様々な方面での音楽活動で知名度を上げているNARASAKIという男だが、彼のメインの活動であるCOTDの2011年に発表したシングルは2011年を代表するアニメとなった「輪るピングドラム」のエンディングであると同時にそれをURBAN DANCEの成田忍や2011年を代表するバンドとなったRingo DeathstarrやSECRET SHINEの手によるカバー、更にはagraphのリミックス、声優の堀江由衣がボーカルを担当する渋谷慶一郎とWATCHMANのリミックスまで収録した全7曲の豪華面子による豪華な内容のシングルになっている。



 まずCOTD自身の原曲であるが、今まで様々な路線で多彩な作品を多く発表したCOTDが自らの代名詞と言えるシューゲイザーサウンドに回帰した楽曲となっている。甘い旋律が幻惑の中で揺らぎながらも、メリハリのついた音は確かな輪郭を感じさせながらも、決してそれは掴ませないし、COTD特有のシューゲイザー×スラッシュメタルでは無く、純度の高い蜜の様なシューゲイザーであり、自らの原点に回帰すると同時により純度を高めた楽曲をここで放ってきた。決して派手では無いが、COTDの核はアニメからCOTDを知った人にも十分に伝わる良曲となっている。シンプルでありながらもCOTDの持つポップネスを全開にした音は多くの人々を虜にしたに違いない。そして原曲以外のカバーやミックスも負けじと高い完成度になっているのも見逃せない。元の楽曲の核をしっかりと守りながらもそれぞれが好き勝手に自らの音に更新しているのだ。コズミックかつテクノポップの要素を持ち込んだ成田忍、原曲以上にシューゲイザーしまくり轟音が楽曲の旋律と見事なシンクロを見せるRingo Deathstarr、情緒豊かでありながらもタイトなビートを重視し、その中でよりミニマルかつコズミックになった渋谷慶一郎、こちらもシューゲイザーなアレンジになっているが、無機質さの中に静かに息衝く躍動の息吹が妙に耳に残るSECRET SHINE、完全にミニマルになり、深海に沈む様な歌物エレクトロニカへと変貌させたagraph、今作である意味最もキャッチーかつ幾重の電子音が彼方にある未来へと駆け抜けるWATCHMANと本当に多彩なカバーとミックスが並ぶ。全7曲がDEAR FUTUREという一つの楽曲でありながら、それぞれが料理した楽曲は再びCOTDのDEAR FUTUREへと戻る様な輪廻すら感じる。元の楽曲の出来が良いのも、それぞれが自らの音にしながらも原曲の世界を破壊してはいないからというのが大きな要因だと思うけど、7つのDEAR FUTUREはパラレルワールドでありながらも一つの点から7つの線となっている。



 今作はアニメの世界観とも実にリンクした楽曲でもあるが、アニメソングとして以前に未来というテーマを実に見事に体現した作品であるし、本家の原曲もそれを調理したクリエイター達もその未来という幻惑の世界をそれぞれのやり方で表現している。単に同じ楽曲が7つ入ったシングルではなく、それぞれが魅せる未来をテーマにした音の世界は確かな幻想と創造の世界を描いている。今作はタイアップもあってか高いセールスを記録したが、ピングドラムを見てCOTDを知り虜になった人は是非とも他のCOTDの作品にも触れて欲しいし、COTDの新曲として触れた従来のファンはタイアップのアニメの方も見て欲しい(アニメの方とも実に見事にシンクロしている)、たった一つの楽曲が生み出した多元的パラレルワールドがそこにはある。



■Classics/U.G MAN


CLASSICSCLASSICS
(1995/01/01)
U.G MAN

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 90年代半ばに海外にて盛り上がっていたローファイやスカムといったムーブメントの流れを受け日本でも局地的ではありながらも盛り上がりを見せた鹿コアというムーブメントだけど、その最重要バンドとして名高いU.G MANの95年発表の1st。リリースは勿論U.G MANのギターでもあり数多くのバンドに参加している谷口順氏主宰のLess Than TVから。とにかく単純かつ純粋な初期衝動のみが存在する作品だ。



 U.G MANの音楽はとにかく難しい事は抜きにしなくてはいけない。本当に何のギミックも無いし、ストレート極まりないハードコアなんだけど、音質は最強にローファイだし、その全てはガムシャラな癖に殺気も無し、ダークさも無し、ただ単純明快極まりないローファイハードコアであるのだ。その音はポンコツ極まりない癖にポンコツだからこそ生まれる妙な味と中毒性が存在している。殆どの楽曲が約1分のショートカットチューンばかりだし、だからと言って重厚な音圧なんてないし、スピーディでありながらも、暴走してる感じでは無くて妙にヨレヨレの音になっている。ガムシャラな癖に空回りしまくりだし、しまいには今作のミックスは途中で飽きて遊びに来ていた友達に適当にやらせたというどうしようもない適当さ。しかしU.G MANはそういったB級な要素を含めてこそ格好良いバンドだと思う。ハードコアを熟知しているからこそ先天的に生まれる妙にツボを突いて来るギターリフだったりとか絶妙なキメの入れ方とか、単なるポンコツでは無くて、古き良きハードコアを知っているからこそ生まれたローファイなハードコアパンクであるし、徹底して初期衝動のみを貫いた音は聴いてて気持ちが良いし、大人の最高に楽しい悪ふざけというに相応しい音楽だと思う。



 いい歳した大人の最高の悪ふざけという言葉が相応しいU.G MANというバンドだが、そのふざけながらも妙に全力なハードコアは色々な垣根を越えた純粋な初期衝動オンリーのハードコアパンクとして妙に説得力があるし、だからこそ彼等のライブはいつも最高のパーティになるんだろうし、その勢い任せのガムシャラさはやはり純粋に格好良いと思うのだ。



現在のライブ動画、音はローファイじゃないけどやはり格好良い!

■Drugs Complex/Tera Melos


Drugs/ComplexDrugs/Complex
(2010/10/12)
Tera Melos

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 今や日本でも市民権を得たと言えるマスロックというジャンルであるが、こいつらの存在を忘れてはいけない。サクラメント出身の3ピースバンドであるTera Melosはマスロックとエモとハードコアを融合させたカオティックサウンドを展開するバンドだ。今作は「drugs to the dear youth」というEPとBY THE END OF TONIGHTとのスプリット音源をコンパイルした編集盤である。日本国内盤はLITEの伊澤氏主宰のレーベルであるParabolicaから。



 先ずはマスロックらしい卓越した演奏技術の凄まじさを今作から感じるだろう。緊張感に満ちたアンサンブルで転調を繰り返し、目まぐるしく高速回転するサウンドは息をつく暇なんか与えてくれない。しかし彼等はただ演奏技術さけを磨いた凡百のマスロックバンドとは訳が違う。エモもハードコアも取り込み、そこから独創性に満ちた楽曲へと仕立てる彼等のセンスはユニークでありながらも、自らのサウンドをより混沌へと導いている。マスロックサウンドを序盤は展開しながらも、静謐なアンサンブルが大きな比重を持ち、その中で緩やかなBPMで変則的フレーズを展開する第2曲「40 Rods to the Hog's Head」から既に彼等の独創性を体感したし、マスロックとハードコアとエモの融和という彼等の持ち味を最大限に生かし、爆走する超展開だらけの変態テクニカルサウンドを見せる第4曲「A Spoonful of Slurry」の即効性もバンドとしての純粋なアンサンブルの凄まじさを感じる。殺傷力と切れ味を極めたマスロックは油断してたら一瞬で辻斬りされてしまうだろう。しかしスプリットの方の音源はボーカルを導入しており、また違う趣。変態マスロックサウンドには変わりないのだけれども、その混沌と同時によりアンサンブルは研ぎ澄まされスマートになり、更にはキャッチーな歌と旋律がより際立っている。持ち前の高速ハードコアマスロックサウンドをポップさすら感じる歌へと変換しながらもより直情的なフレーズが目立ち、より即効性を高めているのだ。更にはマスロックどこに行ったんだよ!って突っ込みを入れたくなってしまうアンビエントな歌物である第10曲「Melody 9」が存在していたりするから驚きだ。そして最終曲「Last Smile for Jaron」で再びTera Melos節が炸裂という流れもまた良い。どこまでも柔軟な筋力で跳躍する彼等のバンドとしてのフォルムは美しい。



 肉体性と柔軟な独創性を持ち、それを決して難解にせずにハードコアやエモの直情性や野生を取り入れながらも、計算され尽くしたテクニカルなマスロックへと帰結させる彼等のサウンドはTera Melos節という言葉が本当に当て嵌まるし、降り注ぐ無数の音の嵐は瞬く間に身を吹き飛ばされてしまいそうな破壊力を持っている。彼等の音は広大な宇宙であるし、脳と筋肉の神経を覚醒させるパワーが確かに存在する。編集盤ではあるがマスロック好きもハードコア好きもエモ好きも避けては通れない1枚だ。しかしながらこのジャケットのインパクトは一度見たら忘れられないと思うのは僕だけでは無い筈だ。



■Les Voyages De L'Âme/Alcest


LES VOYAGES DE L'ÂME (魂魄の旅路) (直輸入盤・帯・ライナー付き)LES VOYAGES DE L'ÂME (魂魄の旅路) (直輸入盤・帯・ライナー付き)
(2012/01/18)
ALCEST、アルセ 他

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 最早日本でも人気バンドと言っても良いんじゃないかって位の知名度を誇るNeige率いるAlcestの2012年発表の3rd。基本的には前作の延長線上の作風でありながらもより緩やかな時間の流れの中で揺らめく天へと上る至高の音色はより洗練された印象を受けるが、それ以前の作品が持っていた要素も今作では明確に継承していたりもする。相変わらずブラックメタル色はあまり存在しないけれども、Neigeは時折金切声のシャウトなんかも見せ付ける。しかしそれでも揺らがない純白の音色は今作でも極まっている。



 先ず第1曲「Autre Temps」にて寓話の世界へと誘う様な耽美で深遠なアルペジオでもうAlcestの天上の音色が響き渡る。ブラックメタル要素はほぼ皆無とも言えるけれども、それでも純粋さを守り続けるかの様なノスタルジックな旋律だけで真っ向勝負し、センチメンタリズムを静かに加速させる辺りは本当にAlcest節としか言えないし、光が煌く蒼く美しい郷愁の世界へと導いていく。シューゲージングするギターフレーズが胸を熱くさせてくれるし、不変のAlcestの美しさは今作でも健在と言える。第2曲「Là Où Naissent Les Couleurs Nouvelles」では天上のサウンドを相変わらず展開しながらも、中盤からはトレモロリフにブラストビートにNeigeの絶叫とブラックメタル色のある展開を見せるが、それでも破壊的な狂気は微塵も感じさせないし、寧ろAlcestの持っている耽美な世界をより明確にしているし、光も影も鳴らすAlcestのスケール感に満ちた名曲と言えるだろう。今作では郷愁の旋律が今までの作品以上に強くなった印象を受けるし第3曲「Les Voyages De L'Âme」でもノスタルジックでおぼろげな感傷が胸に焼き付いてくる。1stの頃を彷彿とさせながらもより蒼い旋律が轟音とともに押し寄せ女性のコーラスと轟音が瑠璃色の雨を降らせる情景豊かな1曲になっている第4曲「Nous Sommes L'Emeraude」と中盤の目蘭子リックな2曲の流れは鳥肌物だ。しかし第5曲「Beings Of Light」では最初期のAlcestを彷彿とさせる正にシューゲイジングブラックメタルが展開されていたのには驚いた。でも決してダークにはなっていないし、霧で覆われた深い森を走り抜け、その先にある眩いばかりの光を全力で掴み取ろうとしている様な妙に人間味溢れる青臭さと精霊達の優しい至高の歌声が全てを祝福かの様な世界がその先には広がっている。そして再びNeigeの絶唱が響き渡る今作で最もハードな第6曲「Faiseurs De Mondes」へと繋がるが、それも痛みの先にある救いの光を描いている様に見えるし、胸を締め付ける感傷その物だ。そしてAlcest史上最も爽やかで陽性の旋律が際立つ朝焼けの眩しさの様な第8曲「Summer's Glory」で今作は幕を閉じる。



 今作は今までの作品に比べたら決して派手な作品とは言えないかもしれない。しかし今までNeigeが培った物をフルに生かし、Alcest史上最も情景豊かで多方面に広がった作品に仕上がったと僕は思う。「Summer's Glory」は間違い無くAlcestの新境地だと言えるし、最初期のシューゲイジングブラック要素の強い音でも現在進行形のAlcestをしっかりと体現出来ているし、何よりもAlcest史上最も郷愁の香りに満ちた今作が生み出す感傷はやはり聴き手の胸を焦がすのは確かだ。より確かな光を描く様になったAlcestに僕はブラックメタル的な物はぶっちゃけ求めていなかったりするんだけれども、それでも純粋無垢な旋律の美しさと優しさは際立っているし、だからこそAlcestの音に惚れ込んでいるのだ。2012年最初の重要作だと言える。



■...Burn, Piano Island, Burn/The Blood Brothers


Burn Piano Island BurnBurn Piano Island Burn
(2005/05/17)
Blood Brothers

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 シアトル出身の超カオティック変態ハードコアバンドであるThe Blood Brothersの03年リリースの3rdであり彼等の出世作としても名高い作品だ。ハイトーンと中域のツインボーカルが血反吐を吐き散らしながら絶唱しそれの掛け合いが生み出すカタルシス、その瞬間の瞬発力をバネにしたキメとブレイクと変拍子だらけの超変態ハードコアサウンドは彼等の持ち味であり、それがノンストップで繰り出されまくる快作だ。



 のっけから変拍子の不協和音のリフと変則ビートが乱れ、ツインボーカルが超ハイテンションのシャウトを繰り出し、喉がぶっ壊れようがお構いなしに繰り出すシャウトの掛け合いは純粋にハードコアとして物凄く格好良いのだけれども、彼等が単なるハードコアバンドで終わらないのはやはりバンドのアンサンブルだ。拍とかそういった概念を無視しまくった楽曲構成は破綻している様にも見えるが、それでもギリギリのラインで破綻せずに一つの形を保ち、転調だらけの楽曲構成は初見で聴いたら間違い無く予測不能のトンデモ具合だ。ポストハードコア・カオティックハードコア・マスロックを食らい尽くしたまま食い散らかしっぱなしの未整合の音はギリギリのラインで崩壊するかしないかの緊張感が続く。その綱渡りのアンサンブルを乗りこなすツインボーカルの技量も凄いが、そのボーカルがまた混沌を加速させまくっているのも事実だ。時折アルペジオ基調の不穏なパートを織り交ぜたり、不気味なキーボードのフレーズを取り入れる事によってパワーでゴリ押しするだけじゃなく絶妙な引きの展開を見せてそこから怒涛のカオティックサウンドに雪崩れ込む構成力も流石だ。しかも複雑怪奇極まりない楽曲ばかりなのに、どの楽曲も直情的なハードコアとしてのスタイルを絶対に崩さないで突き進んでいるし、ヴァイオレンスかつヒステリックなサウンドだからこそ彼等の暴力性は花開いている。必殺の第2曲「Fucking's Greatest Hits」のカタルシス、不穏なキーボード中心に進行するダークさが際立つ第4曲「Every Breath Is A Bomb」、今作で最もキャッチーでありながらも激カオティックなサウンドは逆により濃密になっている第5曲「Ambulance Vs. Ambulance」、微かに歌物の形を持ちながら静謐さと暴発具合の対比が印象的な第9曲「Salesman, Denver Max」と一発で殺られてしまう楽曲ばかりが並び本当に休まる暇等無いカオティックサウンドが濃密に詰め込まれている。



 NIRVANAやグランジムーブメント等で注目される事が多いシアトルという土地であるが、NIRVANA以降も多くの素晴らしいバンドを輩出しているし、彼等もそんなシアトルから生まれた突然変異のカオティックハードコアを見せ付けてくれる。At The Drive-In辺りが好きな人は間違い無く殺られてしまう事は間違い無しな激スクリームカオティックハードコアは聴く人の脳細胞にダイレクトに危険信号を発信してくる。ド変態激情カオティックハードコアサウンドは一回聴いたら病み付きになるのは間違い無いだろう!



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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