■2012年02月

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■辺境のサーカス/マヒルノ


辺境のサーカス辺境のサーカス
(2008/11/19)
マヒルノ

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 多くのロックファンを虜にしながらも残念ながら2010年に解散してしまったマヒルノの08年発表の1stアルバム。マヒルノというバンド名に恥じない白昼夢の様なサイケデリックロックが展開されている作品であり、本当にスタンダードなロックバンドとしてのフォーマットと方法論を展開しながらも、ねっとりと絡みつく旋律と、プリミティブでありながらもズブズブと深海へと沈没するかの様なグルーブが生み出す白昼夢のロック作品だ。



 まるで鐘の音が鳴り響いているかの様なコードストロークから今作は始まり、そこからミドルテンポのグルーブとメロウな旋律を分解したギターフレーズが鳴り響いて第1曲「ダス・ルネッサンス、ダス・デケイド」が始まる。コード進行なんかはスタンダードなロックな物であったりはするけど、それを複雑にしたギターフレーズと起承転結を明確にしながらも複雑な楽曲の構成、淡々とバッキングを弾くギターと空間系エフェクターを使用したギターが織り成す蛇同士が絡み合って解けなくなってしまった様なフレーズの絡み、躍動感のあるラインを時折入れグルーブをより明確にするベースとタイトなドラムが悪夢の始まりを告げてくる。当たり前の様に転調を繰り返した末にあるある種開放的なエンディング。即興音楽の要素を感じさせたりもするが決して難解では無いし、それらを全てロックに落とし込み、変態性とプログレッシブさを持ち、それをしっかり楽曲の中で体現する演奏技術を彼等は持っているし、繰り返す悪夢すらドラマティックにしてしまう展開の美学と楽曲の中で息づくメロウさ、マヒルノの魅力を全てブチ込んだ1曲になっており、この曲だけでも彼等のサウンドを核を思い知らされる筈。対してアッパーな第2曲「サーカス」はフリージャズやマスロック的リズムセクションを巧みに盛り込んだアッパーば楽曲になっており、分断されたビートがそれぞれ作用しより精神の坩堝へと誘い、終盤は完全にインプロとなりサイケデリックの底へと突き落とされる。どの楽曲も当たり前の様に変拍子と転調だらけだし、ロックのフォーマットにありながらかなりのプログレッシブではあるが、彼等はあくまでも負の方向に堕ちるロックをよりプログレッシブにしただけであり、楽曲の骨組みはメロウな物である。第4曲「橋」ではそのプログレッシブな手法を封印し、持ち前のメロウさを全開にし、その中で歌心を感じさせる旋律と共に詩的な世界を展開しているし、純粋に優れた旋律と世界観を持ちながらも、それを分解し再構築して白昼夢をより明確にしている。そして最終曲「チェチェンに昇る月」で再び壮大なサイケデリックプログレ絵巻を展開、持ち前の情緒豊かな旋律のベクトルを儚さと文学的世界観へと向かわせ、ラストは壮絶なプログレパートを展開。圧巻の一言。



 変幻自在のフレーズとミドルテンポのグルーブが生み出すダークサイドとサイケデリックさに特化したロックであり、その世界観や歌は多くの先人に全くひけを取らない。そしてそれをよりプログレッシブにしたからこそ生まれた白昼夢を見せ付けろロック。マヒルノの世界は本当に独創的だ。現在はLOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTS、sajjanu、MUSIC FROM THE MARS、LAGITAGIDAでメンバーそれぞれ活動し、その才能を発揮している。



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■Loveless/My Bloody Valentine


LovelessLoveless
(1991/11/05)
My Bloody Valentine

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 最早ここでレビューを書く必要なんか無いんじゃないかって位の作品であるし、伝説的バンドの代表作として名高い作品。マイブラという90年代初頭のギターロックムーブメントの帝王であり、シューゲイザーシーンの最重要作品としても名高い91年発表の2nd。今作の製作で所属レーベルであるクリエイションが倒産寸前になったという逸話もあるが(制作費は当時の日本円にして約4500万円)、そんな伝説以上に今なお輝く轟音作品だ。



 今作の一つの特徴はとにかく空間を埋め尽くすフィードバックノイズの嵐だ。それまでの彼等の作品はサイケデリックな要素を強く感じさせる物もあったが、今作ではとにかく甘い旋律と揺らめく霧の様な轟音が視界と聴覚を全て覆ってしまうサウンドスケープはマイブラならではの物であり、それらの方法論は本当に多くの後続のバンドに影響を与えた。第1曲「Only Shallow」から全てを覆い尽くすホワイトノイズの嵐が吹き荒れる。基本的な旋律は本当に甘く耽美であり、そのシンプルなコードストロークのギターの進行とビリンダ嬢のウィスパーで浮遊感のあるボーカルが甘い陶酔の世界を生み出したと思えば一気に襲い来る轟音に気付いたら脳髄が甘く溶かされてしまっている。第2曲「Loomer」の様に疾走感に満ちたギターロックの形を持った楽曲ではあるけれど、それでもフィードバックノイズは随所に挿入されているし、楽曲の骨組み自体は本当にシンプルでありながらも、それを歪ませまくった末に行き着く轟音を極めたからこそのふらつく音像はやはり別格。第3曲「Touched」みたいにサイケデリックな小品を盛り込みつつも、第5曲「When You Sleep」や第7曲「Come In Alone」といった楽曲はシューゲイザーとしてだけでなく、ギターロック・ギターポップとしても本当に素晴らしい出来となっているし、醒めないで欲しい夢の世界が終わり無く繰り広げられているかの様である。マイブラはシューゲイザーのシーンの中で独自の方法論を確立し、今作はシーンの金字塔であるのだが、今作の魅力はシューゲイザーという観点を抜きにしてもギターロックの視点で見て本当に名曲ばかり揃っているという点と、徹底して作りこまれた甘い旋律の波がホワイトノイズとなり幸福な旋律を奏でていると同時に、抜け出せない幻想が徹底して繰り広げられている事だ。そして最終曲の「soon」が本当にマイブラ屈指の名曲になっている。シンプルなコードのストロークから轟音へと雪崩れ込み終わり無く反復されるフレーズが浮世を漂う感覚へと繋がり、そして静かにフェードアウトして終わる。幻想のサイケデリックかつドリーミーな世界からまた現実世界に引き戻されてしまうかの様だ。



 個人的には1stである「Isn't Anything」の方が好きだったりするのだけれども、今作も屈指の名盤だと思うし、シューゲイザーの一つの到達点になった作品としてはやはり絶対に外す事の出来ない作品だ。徹底してドリーミーな幻想世界を繰り出す今作は別次元の旅路であるし、その甘美な世界を知ったら二度と抜け出せなくなる。



■Fresh Wind In The Valley Of Dreams/Astrowind

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 2月に入ってからリリースラッシュに入っているFluttery Records、エレクトロニカ、ポストロックと来たがこちらはミニマルなアンビエント作品。バルト三国の一つであるラトビアのAstrowindの2012年発表の作品が今作だ。ラトビアという日本ではあまり馴染みの無い国から届けられたのはミニマルな電子音の反復と持続音が生み出す天上の音であり、静寂の中で時間軸を歪ませる1枚になっている。



 作品としては電子音の持続音を中心に楽曲は構成されており、展開はその持続音の微かな変化と聴き手の中で膨張する音色が生み出す非常にミニマルな物に仕上がっている。反復する若干ノイジーな電子音に不穏さを加速させる音を重ね合わせてオーガニックでありながら、少しずつ堕ちていく様な感覚にも陥りかねない。それらの要素がやがて混ざり合った末に天上の音へと回帰するミニマルドローンな作品だ。第3曲「Lost and Found on the Moon」では不安を煽りに煽る通信機器での音声をサンプリングしており、その音声が淡々と続く中で揺らめくアンビエントノイズの反復が鳴り響き、それがより不安定ながらも奇妙な高揚感を生み出している。この感覚は初期のGrowingを彷彿とさせる物があるし、本当に持続する電子音のノイズのみで構成されているにも関わらず、その電子音の奥深い美しさであったりとか、不意にサンプリングされている音声の不気味さ。そして極限まで削ぎ落とした音のみが存在するからこその虚無感に増幅。こうして書いているとダークな作品を想像してしまうかもしれないが、決してそんな事は無いし、その虚構の長いトンネルを抜けた先に見えるのは天国とも地獄ともまた違う新たな世界なのだ。そこは決して桃源郷なんかでは無いけれども、そこに行き着いた時にはもう脳内は反復と持続のアンビエントノイズに脳細胞は溶かされてしまっているし、その虚構すら美しくそして甘美に思えてしまう。っそれこそ今作に存在する快楽的要素であるし魅力だと思う。



 ラトビアという旧ソ連の一国から届けられた不穏のアンビエント作品、極限まで削ぎ落とした音は荒涼としているのにも関わらず無限の美しさと眩暈を起こしそうな揺らぎに満ちている。空洞や虚構を突き詰めた先の静謐な美しさはやはり甘美であるのだ。今作も下記リンクのbandcampにて視聴と購入が可能になっている。



Astrowind bandcamp

■SHY, LOW/SHY, LOW

ShyLow1-300.jpg



 バージニア州のポストロックバンドであるSHY, LOWの2012年発表のデビューアルバム。リリースはFluttery Recordsからで、Fluttery Recordsらしいクラシカルさを持ったポストロック作品となっている。ジャケット通りの郷愁の風景を想起させるポストロックになっており、それでいて力強さを感じさせてくれる作品だ。



 彼等の芸風は言ってしまえば俗に言う轟音系ポストロックであり、静謐さの中でゆるやかに進行する美しい旋律から、マーチングの様な力強いドラムのビートが入った瞬間に轟音へと変貌し、そのリリカルな旋律を加速させるといった物。GY!BEやmonoの登場以降、こういった轟音系ポストロックバンドは国内外問わずに本当に増えてきたと思うし、彼等はその中で敢えて王道のスタイルで勝負を挑んでいる印象を受ける。正直に言ってしまえば音楽的な方向性で言ったら先人の影は見え隠れはするし、特に目新しい音を奏でている訳でも無いと思う。しかし彼等の持ち味は全力で叩き付ける音塊のパワーだと個人的に思っている。リリカルさを極めた旋律の美しさも魅力的だが、タイトかつエモーショナルに叩きつけるドラムのビートが楽曲を引っ張り、その躍動感と共に自らの轟音サウンドに説得力を持たせていると思う。それでいて王道のアプローチでありながら彼等の徹底して作りこまれた郷愁の世界の強度には目を見張る物があると思うし、クラシカルな音色で残響音を反復させる様な静寂のパートは思わず古びた町並みをただ歩くロードムービーの様であり、流れる情景から雷鳴と共に降り注ぐ轟音の雨嵐はと雪崩れ込む。第5曲「The Golden Hour」で、第4曲のクラシカルな静寂から一変してモノクロームの情景が淡々と流れてからクリアな旋律へと移り変わり、中盤では感動的な轟音ギターの嵐に飲み込まれる。そして再び静寂の中で淡々と時間が過ぎるのを眺めているかの様なパートに入り、そこから柔らかなシンセの音色と残響する音色の融和に飲み込まれて眠りにつく様な1曲。特に気に入っているのは第6曲「Heavy Hands」、タイトル通り今作で最もへビィな1曲になっており、それまでの柔らかな轟音ポストロックとは打って変わって、バキバキに歪んだベースのリフとクラシカルな残響と共に今作で最もヘビィかつパワフルな轟音へと雪崩れ込むポストメタル色の強い1曲。後半からはスラッジリフまで繰り出し、ポストロックバンドでありなから自らの内に秘めた暴虐さを開放したこの曲はTotorRoにも通じる物を感じたし、彼等の可能性に期待してみたくなった。



 デビュー作という事もあるし、まだまだ先人の影響を強く感じさせるサウンドではあるが、郷愁の中から生み出した純度を高めた旋律の煌きと共に、パワフルなサウンドを美しさの中から見せ付ける彼等のサウンドスケープはやはり無視出来ない物がある。個人的にはTotorRoの様に次回作で大化けする可能性を秘めていると思うし、彼等の進化に期待したい所だ。また今作は下記リンクのbandcampページで視聴と購入が可能だ。



SHY, LOW bandcampページ

■AL_X/AL_X

al-x300.jpg



 2012年に突入してからもコンスタントに作品をリリースし続けるFluttery Recordsだが、ポストロックだけで無くアンビエントやエレクトロニカの良質な作品をリリースし続けるレーベルなだけあってまたナイスな1枚を届けてくれた。プロデューサーやアレンジャーとして活動するAlex Dunfordがコンポーザーを務めるユニットであるAL_Xの2012年発表作品である今作も、またナイスなエレクトロニカ作品になっている。



 今作はビンテージリズムマシーン等を駆使し、エレクトロニカでありながら妙にアナログで懐かしさを感じさせる音作りが施されており、それに加えて非常にキャッチーであるし、聴き手が童心に帰れる様な作品になっている、それでいてクラシカルな幽玄さを同時に見せているし、ポップでありながらも不思議の国に迷い込む様なエレクトロニカ作品になった。第2曲「Here Before」はその飛び跳ねる電子音がポップな感触と共に魔法の世界へと誘う。たおやかな主旋律と共にウィスパーの女性ボーカルが幻想世界へと手招きし、御伽噺の様な電子音に気付いたら取り込まれている。ストリングスの幽玄さとキャッチーな電子音が融和し、魔法の時間を提供してくれる。続く第3曲「Bloom」では打って変わって柔らかな電子音が音色を膨らませ、クラシカルな要素をかなり強めているし、後半からその音色の音圧を強めてエモーショナルな感動をもたらす。第4曲「Lose You」では再びキャッチーな旋律が登場するが、女性ボーカルの伸びやかさとコズミックな音色が混ざり合い、小宇宙の音色が聴き手を優しく包み込む。今作はエレクトロニカの中でもかなり歌物に近い仕上がりになっているし、ボーカルをフューチャーした楽曲ではその要素は本当に強い。それでいてクラシカルなストリングスの音色を巧みに取り入れてくるから、そのキャッチーさと共に音に良い塩梅で深みも加わっているし、それが揺らめきの世界観を加速させているのだ。殆どの曲がボーカリストをフューチャーしており、その歌い手のボーカルを生かした音作りを施されているから女性らしいポップさにクラシカルさを感じさせる楽曲もあれば、第8曲「Failed」の様にアコースティックギターの旋律と共に進行し、緊張感のあるアンサンブルが印象に残る楽曲もあったりと、作品全体での単調さは全く無く、次第に色彩を変化する音色と共に電子の小波を感じる事が出来る筈だ。第11曲「Honey Trap」の幽玄なストリングスと共に青い色彩が徐々に広まり波打つ色彩の世界も個人的にはお気に入り、エレクトロニカではあるが作品全体の色彩は本当にキラキラしているし、説教臭い要素は全く無い。歌と共に広がる電子音は聴き手の耳に優しく入り込み、聴き手の心を優しく包んでくれる。



 幽玄でありながらもふわりとした魔法の世界の様なエレクトロニカであり、白昼夢の様な世界が次々に繰り広げられている。また歌物エレクトロニカとしても優秀な作品になっていると言えるし、聴き手を選ばない懐の大きさを今作から感じ取れる筈だ。また今作の視聴&購入は下記リンクのbandcampから可能。



AL_X bandcamp

■Transfer Trachea Reverberations from Point: False Omniscient/the end

The End



 カナダのポストメタルバンドであるMareのメンバーがMare結成前に在籍していた事でも名高いthe end、彼等が01年にリリースした作品。こちらはThe Dillinger Escape Plan等に通じるカオティックハードコアとなっており、彼等もカオティックハードコア黎明期のバンドであると同時に今作はカオティックハードコアの名盤の一つとなっている。



 7曲22分という潔い構成の作品になっているが、全編通して存在するのは予測不能な混沌、Dillinger同様に不協和音を駆使し、超テクニカルなフレーズが咲き乱れる破綻寸前でありながらも計算され尽くされたフレーズの嵐。第1曲は冒頭から血管ブチ切れなボーカルと共にスラッジな要素を持ちながらも転調に次ぐ転調を繰り返し激情とダークサイドに落ちる感覚の漆黒のカオティックハードコア。しかし彼等は後のMareにも生かされてるであろうポストメタルの叡智も作品に持ち込んでいる。第2曲では冒頭から不協和音のアルペジオが響き、そこからエネルギーを強めてヘビィな轟音へと雪崩れ込む不穏の漆黒を美しく鳴らす術も持っているのだ。そこから再びピロピロフレーズとスラッジフレーズを織り混ぜたギターフレーズが高速で入れ替わるDillingerのカオティックハードコアの叡知とそれをより漆黒へと変換させたハードコアに雪崩れ込むのだからタチが悪い。少し歪んだクリーントーンで美しさを放棄した静寂の不穏さを描くパートへと繋がり、それを放棄したまま前触れなしにカオティックパートへと雪崩れ込み、そのカオティックパートですらフレーズを分断しまくり、混沌を残したまま新たな混沌をお届けに参るから聴き手はその混沌の螺旋が無数に渦巻く世界で取り残されたままになってしまうだろう。本当に22分通して、様々なフレーズがワープゾーンだらけで繰り出される、気付いたら轟音の美しさに、気付いたら激烈なハードコアに、気付いたら不穏な静寂の中にいるのだ。そして第7曲はその叡知が暴発するスケールのある楽曲、その中でのスラッジかつカオティックなハードコアの暴力すら美しく見えてしまう。



 カオティックハードコア黎明期に登場するべくして登場したthe endだが、カオティックハードコアの隠れた名バンドであると思うし、Mare同様にこちらも独自の方法論のハードコアを展開している。負の感情とパラノった感覚をカオティックハードコアとして確かな形にしているthe endもMare同様にフリークス共を虜にするバンドだ。



■Psychedelic Underground/Amon Düül


サイケデリック・アンダーグラウンド(紙ジャケット仕様)サイケデリック・アンダーグラウンド(紙ジャケット仕様)
(2003/08/25)
アモン・デュール

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 Amon Düülは60年代後半に当時の西ドイツで生まれた芸術・政治コミューンであり、自由を求めて活動していた。後にAmon Düül が派生し、そちらと協力したり交流したりするが、今作は本家Amon Düülの68年のセッションを音源かし69年に発表された1stであり、クラウトロック・サイケの名盤として名高い作品である。ベルリンの左翼グループのメンバーが参加しており、当時はかなり話題になったらしい。



 今作は一言で言うなら狂騒の音楽だ、彼等は技術は二の次でとにかく自由な音を追い求めていたし、その自由極まりない演奏は破綻するギリギリのラインを綱渡りしている。だからこそ今作の狂騒は緊迫した物になっているのだ。特に17分にも及ぶ第1曲にそれは現れている、ノイズのコラージュが生み出す不穏さ、ひたすら乱打されるパーカッションのドラッギーなビート、ひたすら同じフレーズを繰り返したりしながらその狂騒とはどこか無縁に進行するギター、不意に挟まれるピアノ、そして多くの人の叫びや怒号、音楽的に見てしまうと本当に滅茶苦茶だし、下手したらただの雑音で片付けられてしまう可能性すらあるのだが、その音は奇跡的に一つの形を保ち、その行き先の分からない不穏のトリップを続けているからこそ彼岸の音としての威力を発揮しているのだ。残響音は永遠と耳に残り続け、狂気を加速させながら意識を溶かしていく、そして永遠と続く破滅的な音塊に気付いたら飲み込まれて行き先を無くす。今作を象徴する名曲であり、今作屈指の狂気を見せるセッションとなっている。The Velvet Undergroundの持っていた狂気をより加速させた感覚が存在しているし、それこそが今作に存在するサイケデリックの源になっているのだ。第4曲でもその狂騒は凄まじく、あからさまに音量や左右のスピーカーから流れる音の変化や、暴走するノイジーさや宗教的な旋律と共に怒号と雑音は加速し、そのまま破滅的なエンディングを迎える。第6曲も断片的な音を滅茶苦茶にカットアップしており、狂騒の一部分だけを切り取って貼り付けたみたいな楽曲、そんな楽曲が生み出す行き先の見え無さで今作は終わるのだ。気だるいアコースティクナンバーである第2曲や、今作の中でもかなりしっかりと演奏され、それが逆にいつ破綻に陥るかという不穏さを残したままプツリと切れてしまう第5曲なんかの存在が作品の中で奇跡的に崩壊しないバランスを生み出しているのだが、それでも好き勝手な狂騒がやはり今作の核になっているのだ。



 クラウトロックの中でもかなり異質の作品であるし、コミューンの中の生活や狂騒をそのまま録音したみたいな作品になっているが、ただの酔狂な人間たちの好き勝手な作品では片付けられないし、ギリギリのラインを越えずに音楽として存在している。そのギリギリのラインを越えるか越えないかこそが今作のサイケデリックさであり、偶然が重なりあった末に生まれた名盤なのだ。



■bareskin/Hellchild


BARESKINBARESKIN
(1999/06/05)
HELLCHILD

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 90年代から00年代にかけて活動し、海外での精力的なライブ活動などを行い日本のアンダーグラウンドシーンの英雄的存在として名高いHellchildの99年発表の3rdアルバム。ボーカルのツカサ氏はFrom Hellや現在在籍するSwarrrmでの活動も名高いがHellchildの方でもその狂気に満ちたボーカルを披露しており、何より今作はHellchildがデスメタルもハードコアも越えた孤高のバンドであった事を証明している傑作になっている。



 先ず彼等のサウンドはデスメタルの枠ではとてもじゃないけど語る事の出来ない物になっている。デスの要素を感じさせながらもそこにハードコアをブチ込み、デスとハードコアそれぞれの粗暴さを最大限に活かした物になっている。2バスなんかを盛り込みながらも今作の楽曲はミドルテンポのBPMの楽曲ばかりであるし、ギターリフはメタルとスラッジコアがクロスオーバーした激烈かつヘビィな物になっている。叩き付けるビートとリフの重みは痛烈だが、決してヘビィなだけでは無いし、ある種のシンプルさを感じさせる粗暴さを剥き出しにしたヘビィネスは取っつきやすくもあり、だからこそ獣が獲物の首を噛み千切る暴力的なサウンドになっている。単なるメタルとハードコアのクロスオーバーではなく、それを自然に融和させた結果生まれたのがHellchild節としか言えない独自のヘビィロックサウンドなのだ。徹底して暴力的であり、生々しい緊張感と共に悲壮感と殺気が際立ち、殺伐とした荒涼さは作品の中で統率され徹頭徹尾存在する。そのバンドサウンドの破壊力もかなり魅力的であるが、何よりもツカサ氏のボーカルが魅せる狂気がそのバンドサウンドと最高の相性を誇り、低域のガテラルを繰り出し、時折ポエトリーさを感じさせるボーカルも盛り込みそのパラノった殺意と悲しみをひたすら放出、それでいて何処か歌心も感じられるし、それが余計に哀愁と悲壮感をブーストさせているのだ。今作は楽曲毎に大きな変化や違いこそは少ないけれど、それでも悲壮感と狂気が際立つスラッジかつメタリックなハードコアサウンドの殺傷力に叩き潰されるし、粗暴でありながらも美しくあり、しかも聴いてて涙腺を刺激されまくりな哀愁まであるから本当に負の感情が暴発するヘビィロックとして高純度の物だ。因みに今作の初回版は2枚組になっており、disc2はカバー集になっている。個人的に本家以上の破壊力なG.I.S.M.のカバーや本家の楽曲の魅力はそのままにSlayerやMetallicaをカバーしているスラッシュメタルメドレーや、意外過ぎるU2のカバーとこちらも本編に負けじと聴き所満載なグレイトな内容となっている。



 デスメタルすら越えスラッジを飲み込み、圧巻の音圧でヘビィさを極めたサウンドを鳴らすHellchildは日本が生み出した孤高の存在であり替えの効かないヘビィロックを鳴らしている。狂気とに満ちたヴァイオレンスな音塊は全てを叩き潰すハードコアとデスメタルの正面衝突だ。発売から10年以上が過ぎた現在でもその猛威は不変である。



ライブ動画

■From The Stairwell/The Kilimanjaro Darkjazz Ensemble


From the StairwellFrom the Stairwell
(2011/04/05)
Kilimanjaro Darkjazz

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 元々はブレイクコアで活動していたbong-raという人物によって結成されたダークジャズ集団であるThe Kilimanjaro Darkjazz Ensembleの2011年発表の作品。リリースはドイツの暗黒音楽発信源であるdenovaliから。あのNine Inch Nailsのトレント・レズナーから賛辞の声すら上がるユニットだが、今作はダークジャズにふさわしい漆黒の世界を最大限に活かした作品であり、ジャズ要素は決して強くは無いのだけれども、夜の世界を彩る精神的ヘビィさと微かな鼓動に満ちた傑作になっている。



 彼等のサウンドはジャジーな要素を確かに孕んでいるが、それ以上にアンビエントやドローンといった要素の比重がかなり強い物になっており、それが言葉通り漆黒の音へと導いていく。極端に各楽器の音を減らしながらも、管楽器やストリングスの残響を巧みに生かし、静かに隙間を埋める音、鳴っている音から思い浮かべる音は確実に混じり気の無い黒に間違いは無いが、その黒があるからこそ微かに見える黒と共存しながらも混ざる他の色の存在が際立ち、まるで闇夜の中で微かに視界に入ってくる青白い光の様でもあるのだ。第1曲から重々しいバイオリンの音色の残響が引きずる様に鳴り響き、そこから静かに紡がれるピアノと耽美に夜を彩る女性ボーカルと後ろで鳴る打ち込みの不穏の効果音が織り成すダークジャズの世界に飲み込まれていく。暗闇の中で幽玄の色彩を見せるピアノの音色とボーカルの歌声と、漆黒を加速させる管楽器やストリングスの音色、夜の時間軸を司るリズム隊の極端に音数を減らし、揺らぎの中で進行するビートが幾重にも重なりあった先にある夜の悪夢であり、全てを飲み込む終末的情景が目に見える音像の中でただ立ち尽くしてしまうだけ。よりアンビエントな色を感じさせるギターの音色と、アブストラクトな打ち込みのビートが抗えない奈落へと導く第2曲になると彼等の闇はさらに手を伸ばし聴き手を追い詰める。まるでThe Third Eye Foundationの様な絶望が巨大な鎌を持って背後に忍より首を落とすかの様な、漆黒の中で僅かに見える赤黒さと生暖かい感触が、神経を絶対零度で震え上がらせるそんな恐怖すら存在するのに、その死神に優しく抱擁されたまま昏睡する悪夢の先の甘い蜜であり、全編徹底してその耽美な闇が広がっている。特に第4曲はその無機質な不穏が今作で最も強い楽曲で今作でも随一のアンビエントパートが終わり無く続き、無限廻廊を緩やかに下る感覚を与えられ続けた先に待つ厳かに響く管楽器の音色の生み出すドローンサウンドの空気が本当に一抹の救いにすら見えてしまう位の楽曲だし、しかしそのアンビエントパートですら流れる静かな狂気に惚れ惚れしてしまうのだから恐ろしいのである。それに続く第5曲ではポストロックとジャズの融和とも言えるアプローチを見せつけ、終盤では楽器隊のテンションを高め、その空気を保ったまま今作で一番の高揚感あるパートへと雪崩れ込み、暗闇を少し晴らしてくれる。第7曲ではコーラスのかかったギターが美しい旋律を奏で、儚い女性ボーカルと共にゴスな耽美さが咲き乱れるという統率された暗闇の中で見せるレンジの広さの今作の大きな魅力と言えるだろう。そして最終曲は長尺のドローンダークジャズ、再び終わらない夜に回帰する。



 ここまで徹底して闇夜の音色に拘り、その黒の中で見せる色彩の美しさを感じさせる作品は本当に少ないと思う。最高にセンスの良いユニット名だったりするが、そのユニット名以上に彼等の音楽は不変の闇夜の中で静かに息づき輝く甘い美しさと狂気を感じさせてくれる。ここまで夜に合う音楽は無い、今作での音はこれからも僕の夜を彩っていく筈だ。2011年の闇夜の大傑作。



■AS MEIAS/AS MEIAS


ASMEIASASMEIAS
(2004/11/25)
ASMEIAS

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 日本の激情系ハードコア黎明期にその礎を作ったBluebeardとThere Is A Light That Never Goes OutとKularaのメンバーが集結し結成されたスーパーバンドと言うべきAS MEIASの04年発表の5曲入の1st。Bluebeardの持っていた蒼くクリアなエモーションはそのままによりプログレッシブになったサウンドスケープが生み出す音の結晶の輝きが幾重にも重なり合う作品になっている。高い演奏技術と磨きあげた旋律が結び付く純度の高い快作だ。



 第1曲からアスメ節は炸裂、エモ・オルタナの流れにある刻みのリフから始まり軽やかに旋律と歌が広がり、スタンダードな90年代エモの流れにあるサウンドをプログレッシブに分解し再び再構築した緻密かつアグレッシブな息づかいを感じるアンサンブルの緊張感は不思議と陽性の旋律と融和し、力強く飛翔して行く。複雑でありながらも難解さを全く感じさせないで、素直に入り込む旋律は妙に捻れたビートと共に不思議な高揚を与える。続く第2曲はインストだが、2本のギターが変則的でありながらも美しい旋律を描き熱量を高め、変拍子のビートの独特のビートがうねり、各楽器が躍動し呼吸する繊細でありながらも肉感的な形を作り出し、その中で魅せる輝きと緊張感は聴いてて息を飲むし、そのフォルムの美しさには溜め息がこぼれそうにもなる。第3曲と第4曲に至ってはポストロックの域にまで到達したアンサンブルを奏で、静けさの中で燃え続ける熱情を肌で感じさせ、儚くも力強く紡がれるボーカルがそのメランコリーを更に高めていく。クリーントーンとクランチのギターフレーズの魅せる流れる大河の流れの様な清やかさも、一歩一歩大地を踏みしめながら進行するリズム隊のビートもメロウで感傷的なエモさを持った楽曲の中に肉体的にも精神的にも屈強さを見せつけてくれるし。このアンサンブルの鉄壁の強度はアスメの核になっている。ラストの第5曲では美しく歪んだ魚頭氏のギターが印象的であるし、今作で一番の哀愁とメロウさを誇りながらもざらつきと無垢さが共存し、その朝焼けの様な新たな始まりを見せてくれるし、伸びやかさから今作屈指の激情を見せつける変態的なアンサンブルを完全に解放し、最後は静かに息を吐く。一つの物語を描きながらも、その先の風景すら感じさせる余韻もニクい名曲だ。



 90年代末期から00年代初頭のシーンを築いた猛者達が集結し生み出したのは、どこまでも伸びやかな感情の広がりを緻密かつ大胆に奏でるドラマティックな音の躍動だった。熱情も叡智も兼ね揃えた作品であるし、どんなにプログレッシブかつ変態性に満ちたアンサンブルを奏でても全ての音が自然に共存している。それこそがアスメにしか出せないアスメ節だ。



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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