■2012年05月

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■Apokalypsis/Chelsea Wolfe


Ἀποκάλυψις (APOKALYPSIS / アポカリプシス)Ἀποκάλυψις (APOKALYPSIS / アポカリプシス)
(2012/04/11)
CHELSEA WOLFE (チェルシー・ウルフ)

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 アメリカはロサンゼルスを拠点に活動する美しき才女。それがChelsea Wolfeだ。日本でも各所で話題を呼んでいたがCD音源の方が全く日本に入ってこない状態だったが、2012年に彼女の1stと2ndをDaymare RecordingsがCDにてリリース。その話題性や評価に反して日本に音源が入ってこない捩れがやっと解消されたと言える。今作は彼女の2011年リリースの2ndであり、白目を向いてる彼女のジャケのインパクトが中々凄まじい。



 彼女の音楽性は決して難解では無いし、下手したら凄い取っ付き易い部類の物ではあるけれど、その中に言い知れぬ女性特有のメンがヘラった感じのドロっとしたダークさが全面的に出ている。フォークを基調としたサウンドにバンド編成での録音。メランコリックでありながらも、どこか冷徹な旋律。淡々と歌うChelsea Wolfe。ゴシック的な歎美さを前面的に出し、シンプルな音楽性だからこそ、その音と声が深く染み渡る。第2曲「Mer」から完全にChelsea Wolfeの世界は展開。アコースティックギターでドゥーミーな旋律を淡々と掻き鳴らし、少しローファイなサウンドプロダクトが彼女の神秘性を良い感じに演出し、その美しい黒を魅せる。第4曲「Demons」ではかなりバンドサウンドに接近し、少し荒く重いエレキギターのフレーズと共に、他の楽曲よりも少しBPM早めでロックテイストを前面に出しながらも全くブレないメンヘラ系ゴシックフォークの世界には陶酔という言葉が本当に似合うと思う。それに対して第5曲「Movie Screen」では揺らぎの音作りが施され、ドロドロとした情念の渦に飲み込まれる感覚が味わえる。ゴシックだとかそういった要素は全体的に確かに存在しているが、想像以上に楽曲のレンジは広いし、それを難解に片付けたりはしないで一つの分かり易い形に落とし込んでいるのは本当にポイントが高い。その中でも特に第9曲「Pale On Pale」はお気に入りの1曲。今作で最もドゥーミーな1曲で、這いずり回るギターリフと後ろで鳴るコールタールの様なサウンドコラージュ。その密室的なアンサンブルが徐々に膨張し、漆黒の闇に変貌していく様の美しさは堪らない物がある。それでもChelsea Wolfeの歌声は終始淡々としているし、そして最後にヒステリックな叫びを聴かせる。



 ゴシックやダークといった単語で語られたりする事が多いが、個人的にはそれ以上にフォーク基調だからこそ生まれた旋律を生かす楽曲の作り方であったり、女性ならではのヒステリックさと冷徹さの共存といった部分に凄く惹かれたりした。その音楽性や美貌もあって彼女は日本でも高い人気で出る気がしなくもないが、何よりもダークやゴシックやドゥーミーといった要素をすら越えて、本当に幅広い層にアピール出来る取っ付き易さと音楽性の広さこそ彼女の魅力だと思う。



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■DAY OF THE DEAD(2012年5月21日)@渋谷CLUB QUATTRO

 昨年末にメンバーの脱退により木下氏と戸高氏の2人組になったART-SCHOOL。これまでの10年以上の活動期間の中で多くのピンチを迎えながらも乗り越えてきたが、今回も見事に新たな形でアートは戻ってきた。6月2日・3日の新生アート再始動イベントである「KINOSHITA NIGHT」のチケットが完売した事を受けて、急遽今回フリーライブとして一足早く新生アートのお披露目イベントとして開催が決まったことを受け、中学の頃からアートを聴いていた僕は実に6年半振りにART-SCHOOLのライブに足を運ぶ事となった。とは言っても、08年頃からアートを熱心に追いかけなくなってしまい、結構距離が広がった状態になっており、本当に久々に彼等の音に触れる事にはなってしまったのだけれども、ある種の懐かしさや感傷を持ちながらも、それでも生まれ変わった彼等の姿をしっかりと目に焼き付ける事が出来た。今回はサポートメンバーとして、ベースはex.NUMBER GIRLの中尾憲太郎氏、ドラムはMO'SOME TONEBENDERの藤田氏と二人の猛者を迎えてのライブであり、その二人の生み出す屈曲なグルーブがアートの繊細な世界観にどの様な変化を与えるかも個人的に楽しみだったりもした。整理券を無事にゲットし、スタート前にクアトロに入ったが、クアトロは満員の大盛況。本当に多くの人が新生アートの姿を目に焼き付けるために集結したと思うし、それだけこのバンドを愛する人が多かったんだなと改めて実感した。



 19時半、時間通りにライブはスタート。前半は夏にリリースがアナウンスされた新作からの新曲を連続で披露していたが、新曲郡は、今までのアートを通過して再びオルタナティブに回帰したって印象がかなり強く受ける物ばかりだ。加えて中尾氏と藤田氏の超肉食系のリズム隊が本当に良い仕事をしていたと思う。中尾氏のズ太いベースラインが繊細でメロディアスなアートの楽曲に喝を入れまくり、藤田氏の手数多目で前のめりなドラムがタイトかつ躍動感を与えている。共に福岡出身という事もあってか、オルタナティブロックのグルーブとしては本当に最高の物になっていたし、太く生々しいリズム隊の存在は新曲郡に大きな輝きを間違いなく与えていた。肝心の新曲の方はと言うと、戸高氏お得意の空間系エフェクターを中心にしたギターフレーズなんかも登場しながらも、ザラついた硬質なオルタナティブロックといった印象。しかしキャッチーさよりもその冷ややかな緊張感が前面に出ていたし、アップテンポの曲はあまり無かったと思う。オルタナティブバンドとしての原点に回帰しつつも、今まで積み上げた経験を生かし、退廃的なダウナーさをしっかり持ち込んだ楽曲の数々はパッと聴いただけではインパクトは正直強いとは思えないけど、それでも聴き込む程にその魅力が伝わってくる楽曲だと思った。
 そして木下氏の「ただいま」の一声に湧き上がるフロア、後半は一期アートの名曲を惜しみなく披露。「車輪の下」のイントロのベースラインを中尾氏が弾き倒した瞬間に、フロアの温度は一気に上がったと思う。新曲ラッシュの時は静かに見守ってるといった感じだったフロアも一気にテンションが高くなり、やはり初期の青臭い疾走感に満ちた楽曲はファンの間でも未だに高い人気を誇っているし、僕が青春時代に愛聴した楽曲にこうして改めて触れたら何ともいえない感傷に襲われてしまった。「水の中のナイフ」なんてイントロのまんまNIRVANAなリフが鳴った瞬間に本当に色々な感情を越えた熱い何かが自分の中で湧き上がったし、「プール」の感傷的なギターフレーズも、「UNDER MY SKIN」の絶望的な美しさも、「ロリータキルズミー」の青い疾走も数多くの思い出と共に耳に入って来て、心の青い部分に確かに響いてきたし、グランジ・オルタナ路線に回帰した新曲と一期の青臭い少年の叫びとも言える初期衝動に満ちた楽曲郡は確かにリンクしていた。二期以降様々な方向性に良い意味でも悪い意味でも走ったアートではあるけれども、やはり彼等はオルタナティブロックバンドである事を再認識させられた。最後に披露した新曲は、ミドルテンポの儚く美しい一曲。この絶望的な輝きはやはりアート特有の物であるし、その核は何も変わってはいなかった。
 アンコールでは初期の名曲「MISS WORLD」を披露。ブリッジミュートのシンプルな刻みのイントロからサビで爆音になり、木下氏の儚く痛々しい声が響き渡る。アートはその痛々しさと儚さが持ち味であり、初期の名曲を今回のライブで多く披露していたが、その揺ぎ無い思春期の絶望と救いを求める痛々しい声と共に新生アートは確かな輝きを放っていた。



セットリスト

1.新曲
2.新曲
3.新曲
4.新曲
5.新曲
6.新曲
7.新曲
8.車輪の下
9.水の中のナイフ
10.あと10秒で
11.プール
12.UNDER MY SKIN
13.ロリータキルズミー
14.新曲

en.MISS WORLD



 今回のフリーライブは一時間弱のセットではあったが、新曲も初期の楽曲も含めてオルタナティブバンドとしてアートは帰って来た事を実感したし、中尾氏&藤田氏のリズム隊の屈強さは本当にオルタナティブバンドとしてのアートに新たな刺激を与えていた。そして僕も含めて初期からアートを聴いている人も、そうでない人も含め、本当に多くの人々が新生アートの誕生を心から待ち望んでいたという事実こそ、彼等が多くの人に必要とされるバンドである事の証明になったと思う。キューンレコードへの移籍と、夏に新作の発表がアナウンスされ、いよいよアートが前線に帰ってくるが、10年以上に渡っても本当に変わらない青い絶望と光の音楽は、まだまだ多くの人が待ち望んでいる。それを再確認出来ただけでも今回のフリーライブに足を運んで良かったと思う。
タグ : ライブレポ

■Tagad/Tesa

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 バルト三国の一つであるラトビアから届けられた美しい激重狂騒曲、Tesaはトリオ編成とは思えない重厚なアンサンブルを美しく鳴らしながらも、それを激情・ポストメタルを通し、振り注ぐ激重の轟きとして鳴らすバンドだ。今作はTesaの06年発表の1stアルバムであり、遠い異国から美と激重を高めたポストメタル作品となっている。Part17からPart77まで組曲の様な7曲が織り成す壮大な物語。



 楽曲自体はポストメタル系のバンドでは非常に珍しくコンパクトな楽曲が多く、必要な音のみを絞り出し、それで楽曲は構成されているが、その無駄の全く無い洗練されたフォルムの中で、嵐の様な音が吹き荒れているのが彼等のサウンドだ。序盤ではアルペジオのフレーズを巧みに盛り込みつつもいきなり美轟音吹き荒れる展開がクライマックスへと爆走しドラマティックな旋律と共に胸を打ち抜きながらも、ポストメタルらしい振り落とす激重リフの重みを全く忘れず、旋律の持つ美とアンサンブルの持つ重厚さとリフとビートの重みが三位一体で攻めてくるから本当に堪らない。そして美轟音からスラッジ・激情の禍々しさまで雪崩れ込みながら、不穏のフレーズのメロウさを際立たせ焦燥感を掻き立て、暴発のパートでその膨張させたエネルギーを全放出するというスタイルは王道の轟音系ポストロックやポストメタルならではの構成ではあるが、ハードコアとポストメタルを行き来しながら、その点と点は確かな一つの線になる。また随所に盛り込まれている空間系エフェクターによるハウリング音の膨張がそのドラマティックさの中に混沌を落とし込んでいる点も見逃せない。作品も後半に入ると美しい旋律をより前面に押し出しポストロック要素の強くなったパートも出てくるが、そこに説教臭さは微塵も無く、反復するフレーズが音圧を強め、そして混沌へと雪崩れ込む。反復するフレーズの高揚と共に増す破壊力を生かし、ポストメタルから宇宙へと雪崩れ込む第5曲「Part 57」は本当に今作の中でも格別の1曲に仕上がっていると言えるだろう。そして終盤は激情の色をより高めた第6曲「Part 67」でその美しい余韻すら吹き飛ばす暴力性と、マス要素を盛り込んだギターフレーズが焦らしつつも、突き抜ける音と共に宇宙へと飛び出したその音を爆発させ、最終曲「Part 77」では静謐さを前面に押し出し、そこから轟音系ポストへと繋がり、飛び散る音の破片が美しい光を生み出すという何ともニクい結末を迎える。



 贅肉を削ぎ落とし、シャープな楽曲構成の方法論を取りながらも、随所に盛り込んだ激情やポストロックのエッセンスを巧みに生かし、エネルギーを膨張させては爆発させるを繰り返すTesaのポストメタルサウンドは大きな感動と破壊力を美しく鳴らし、それが聴き手の心臓を確実に貫いてくる。旧ソ連のポストメタル・激情はRekaをはじめとして本当に良質なバンドが多いが、彼等もまたそんな猛者達に負けず劣らず魅力的な音を鳴らしている。また今作を含む今までにリリースした作品はは下記リンクのオフィシャルサイトで試聴&フリーダウンロードが可能になっている。



Tesaオフィシャルサイト



■『はじまり』のおわり(2012年5月17日)@渋谷O-Creast

 toitoitoiとThreeQuestionsのスプリット作品である「はじまり」のリリースに伴うツアーファイナルだから『はじまり』のおわりというタイトルが付けらたらしいが、今回機会があって全く知らないtoitoitoiのライブに見に行ってきた。ThreeQuestionsの方がしっかり見れなかったので見たのは実質4バンドなんだけど、普段僕が行くようなライブや企画とまた違う温かくアットホームなイベントであったが、少し心が浄化される感じのするイベントだった。



・パンパンの塔

 RO69JACKで優勝し、去年のCOUNTDOWN JAPANにも出演したギターボーカルとドラムの二人組であるパンパンの塔からライブはスタート。僕は名前も音も今回初めて知ったが、セットの序盤にやっていた曲は地味にありがちな童話的なアコースティックユニットといった印象を受けたけど、セットが進むに連れて、イノセンスを前面に押し出した楽曲に毒が混ざり、その形を徐々に崩壊させ、内側と外側を行き来する音の世界を展開し始めてハッとさせられた。ポエトリーでまくし立てるボーカルと、アコースティックでスタンダードなギターフレーズに力強いドラムという普遍的なサウンドから徐々に形が崩れる様は幻想の崩壊を見せ付ける様でもあった。最後のプレイしていた「骨」という曲がこのユニットの本質が詰まった曲である詩的で圧倒的情報量の歌と語りが誇大妄想の幻想を生み出し、時にインプロ的にもなりグチャグチャに形を崩しながらも最後はメロディアスかつ力強くその歌を聴かせてくれた。詩的でありながらもしなやかなサウンドはアコースティックユニットとして大きな強みだと思うし、もっと最後にプレイした「骨」の様な毒と幻想に満ちた楽曲を聴いてみたいと感じた。こういった音楽は正直明るく無いのだけれども、そんな僕を引き込んだ歌の力にはただ感服。



・Menoz

 二番手は女性ボーカルの5人組バンドのMenoz。ギターポップと多元的なキラキラとしたサウンドが特徴的なバンドで、シンセのフレーズと空間系エフェクターを使用したギターフレーズが豊かな色彩を生み出しており、それにポップで可愛らしい女性ボーカルが乗る。そしてリズム隊の演奏力が卓越しており(特にベースが良かった)、安定感のある演奏力と職人気質を持ったバンドのサウンド。そしてダンサブルなビートと共にポップで踊れる伸びやかな世界が目の前に広がっていた。ファンクの要素等を持ちつつもピースフルでポップな極彩色のサウンドは多くの人を引き込むには十分過ぎる魅力を持っていたと思う。観ていて楽しいし心が跳ねるライブだったと思う。



・THE CREATOR OF

 3番手はTCO。ここまで歌物のバンドが続いていたけど一気に空気がガラりと変わった。1曲目の「Hi On」はいきなり15分にも及ぶ大曲で、トライヴァルかつドゥーミーなビートとギターフレーズが終わり無く螺旋を描く。しかもドスの効いたサウンドを突き抜ける様に鳴らすから余計に破壊力は増していたし、完全にハードコアの空気にフロアを変えてしまっていた。13年前の曲なのに全く古臭くなく、新たなアレンジでより精神の坩堝へと迷い込み、涅槃に連れて行かれる様なそんな感覚すら味わえる。ラストのギターソロなんか爆音の中で殺気がサイケデリックさへと繋がり、五感を強制的に塗りつぶされそうになった。第2曲「AGAIN」はやはり安定のヘビィネスサウンドで、空間的な奥行きの広さを出しながらも、やはりいきり立つ殺気が全開で、重くドスの効いたビートが頭と胸に殴りにかかってきていたし、ヘビィなリフで進行しながらも各楽器が絡み合う機能美がより深淵へと導く。後半の「LIGHT」と「Acoustic」は最早定番になったと言えるし、特に「LIGHT」はこれからのTCOの代名詞的な楽曲としてバンドに馴染み、貫禄すら見せ始めていた。ヘビィネス・プログレッシブ・ポストロックと自在に行き来しながらも、ハードコア・ヘビィロックの揺ぎ無い核は、久々のライブとなった今回のアクトでも余裕で健在だったし、よりパワフルに鍛え上げられたバンドサウンドは本当にたくましくなったと思う。しかしながらのっけから「Hi On」という大作をプレイして、ヘビィネスの深淵へとフロアを導いてしまってたし、今回出演しているバンドの中では結構毛色が違ったとは思いつつも、その馬力に持っていかれた人は本当に多かった筈だ。



・toitoitoi

 トリは今回の企画者であるtoitoitoi。バンド編成とアコースティック編成を使い分けているらしいが、今回はバンド編成でのライブで、ステージの両サイドには巨大なキャンパスが設置され、二人の画家がライブ中に絵を描き続けるなんて何とも粋な演出があったり、ステージ裏には巨大な絵が飾られていたりと、中々にアーティスティックな事をしていたりした。肝心の音の方であるが、ギターロッを基調にしつつも、パーカッション等も参加し、多くの音が花火の様に弾けるサウンド。福音の音色が多幸感と共に炸裂し、自在に動き回る音色が同時進行で描かれる絵画同様に多くの色彩を重ね、それが膨張し破裂するポップネスのビッグバン。やはり安定感のあるバンドサウンドの確かな強さをしっかりと屋台骨にしていたし、全力でそのポップさを幻想へと変える力とパフォーマンスには満員になったフロアの人々が曲が終わる度に本当に大きな拍手でそれを称えていた。僕個人としてはこういった音楽をあまり聴かない人間であったりもするけど、それでもそのポップの魔法とも言うべきサウンドには確かに引き込まれる物があった。



 今回のライブは僕が普段行かない感じの企画ではあったが、本当に会場全体が温かな空気に満ちていたと思うし、音楽が持つ歌とポップネスの魅力が詰め込まれたイベントになったと思う。でも今回殆どのバンドが初めて観た感じだったけど、一番手のパンパンの塔は僕個人として中々の大ヒットだったし(それだけラストの「骨」という曲が名曲だった)、そんな雰囲気も関係無しにハードコアをかましたTCoの爆音サウンドの安定感も良かった。次はいつになるかは分からないけど、またこういったアットホームにイベントにも足を運びたいと思った夜でした。

■ハローフーラ/ちゅうぶらんこ

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 本当に極短期間活動し消滅してしまったバンドではあるが、ちゅうぶらんこは本当に伝説的なロックバンドである。90年代初頭の時代に地元福岡でカリスマ的ロックバンドになり、メジャーデビュー直前の解散という形で伝説になってしまったちゅうぶらんこが唯一残したスタジオ作品である今作、やっている事自体は本当にシンプルなロックである筈なのにちゅうぶらんこにしかない気だるさが生み出すグルーブ、彼等は本当にロックに真っ向から向かいながら自らを確立したバンドだった。



 ガレージロックでありキャッチーなロック。少しばかりサイケデリックであり、時折歪んだギターサウンド。シンプルなビートでありながらもめんたいロックらしい腰の強いリズム隊。ロックの形式を全く崩さないで正統派のサウンドを築いている筈なのに、全くどこにも無い感しかこのバンドから溢れ出てしまっている。コード進行も普遍的なブルースコードで進行していたりと、ルーツロックに本当に忠実であるし、極端に歪んでいる訳でも無いし、極端にダークでもない。少しばかりミドルなBPMで進む楽曲の何処かドロッとした感触、そのシンプルな酩酊に気付いたら飲み込まれるし、バンド名通りのちゅうぶらんこな感覚と居場所の無さがこのバンドの本当に大きな魅力になっていると思う。キャンディポップとガレージロックを融和させつつも、榎本氏のボーカルの存在感が本当に凄い。甘ったるく、ドラッギーなその歌声は一発で持っていく力とカリスマ性が確かに存在しているし、ロックの格好良さをどこまでも忠実に出し切っている。第2曲「まほうのじゅうたん」はコード進行自体はブルースその物だったりするのに歪んだディストーションギターが視界を徐々に歪ませ、土臭さの中にいながらも、堕落していくロックの魅力を生み出し、ふわりと落っこちる感覚を味わえるし、第5曲「つまんない」は湿っぽさと乾いたドライさを共存させた上に密室にいながら、その個人的世界にロックの光が差し込む屈指の名曲だ!第7曲「パトリシア」は今作で最も歪んだ重苦しさがあるけど、その歪んだ音を切り裂く榎本氏のボーカル、ガレージサイケのサウンドと共に聴き手はまさに重くもふわついた世界へと逃避行させられてしまうだろう。



 シンプルなロック・ガレージ・キャンディポップサウンドの中に、ドラッグとサイケデリックの感触を盛り込み、居心地の悪さを自らの表現へと昇華させ、揺らぎと歪みのロックを生み出したちゅうぶらんこは正にロックに選ばれたバンドだと思うし、日本のロック史の中で絶対に外す事の出来ないバンドだと思う。榎本氏はちゅうぶらんこを解散後に三重人格の犬を結成し、そちらでは痛烈なドゥームサウンドを展開し、現在活動中のFUN★ANAではサイケデリックの異次元を生み出しているが、今作の様にシンプルなロックからその酩酊と揺らぎを生み出していたのも驚きだ。日本語ロック好きは絶対に外してはいけない作品だと思うし、今作が時系列の彼方で葬られるのはあまりにもったいないと思う。



■Habitat 67/Seven Nines And Tens

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 Fluttery Records関連の作品は今まで色々とこのブログで紹介してきたがカナダのインストポストメタルトリオであるSeven Nines And Tensはその中でも最もシャープで尖った音を鳴らすバンドなんじゃないかと思う。今作はFluttery Recordsから2012年にリリースされた作品であるが、ポストメタルの重厚さから、ポストロックの静謐で流れる音を行き来しながらも、冗長にはせずにシンプルかつタイトなアンサンブルを重視し、それを機軸にしながら展開するポストメタル作品だ。



 彼等は王道のポストメタル・ポストロックを踏まえたサウンドのアプローチをしているバンドではあるけれど、楽曲の尺は決して長く無いし、あくまでも贅肉を絞りに絞り、タイトな筋力で突き進むアンサンブルを軸に楽曲は展開していく。彼等にあるのはポストメタルらしい壮大さと言うよりも、ヘビィネスと静謐なポストロックの核の部分だけをただひたすら鍛え上げたかの様な展開と音であり、それは決して小難しさは感じさせない。しかし一つ一つのフレーズの攻撃性を生かしたアレンジなんかは、その音の破壊力を生かしているからこそ重々しさがあるし、その重厚なポストメタルパートからクリーンなパートへと違和感無く移行し、あくまでもタイトなアンサンブルの美しさを最大限に生かしているからこそ、流れる旋律の美しさは楽曲全体に常に存在し、それがオーガニックなクリーンさを見せ、スラッジなヘビィさを見せ、といった感じでプリズムの変化の様に輝きを変えていく。また注目したいのは彼等のサウンドはどこかマスロックな要素も多く含んでいる所だ。タイトなフレーズは複雑な変拍子と転調が多く、特にポストメタル色の色濃いパートではそのマスロック色が大きく出ている。それを生かしたアンサンブルの組み立て方をしているからこそ、リフを前面に押し出したパートは特に良い具合の緊張感が生れているし、聴いていてわくわくしてくる。静謐さから壮大な世界へと飛び込むのでも無いし、また焦らす様な展開を見せる訳でも無い。あくまでもリフやタイトなビートを所々破壊・構築をしているからこそ、崩壊と再生を終わり無く繰り返し、細胞分裂を繰り返す様なサウンドを生み出している。時にはポストロック一色、時にはストーナーなフレーズを盛り込んだりと楽曲毎に変化をしっかりとつけつつも、あくまでも変化を際限無く繰り返しつつ、最終的にはタイトなアンサンブルに行き着くある種の分かりやすさも魅力だし、その中で様々な爆発を起こしているのだ。終盤では轟音系ポストロック色の強い楽曲も登場するが、それでもその引き締まったタイトさは全くブレてはいない。



 今となっては本当に多くのバンドが登場しているポストメタル・ポストロックのシーンであるが、スラッジさにも美しい旋律にもストイックであり、それを鍛え上げたアンサンブルで見せる彼等は、それらの音楽が持つアンサンブルの緊張感とカタルシスをダイレクトに表現したバンドでは無いかと思うし、Pelican辺りが好きな人には凄い魅力的に感じるバンドだと思う。タイトさを極め必要な音のみを鳴らすからこそダイレクトな破壊力が確かにあるのだ。今作は下記Bandcampで試聴&購入が可能だ。



Seven Nines And Tens Bandcamp

■デモ/おまわりさん

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 おまわりさんとはどこまでもふざけているとしか思えないバンド名だ。高円寺や新大久保を中心に活動する5人組であるおまわりさんの1stデモ音源が今作だが、そのふざけたバンド名を裏切りまくる暗黒のハードコアが6曲詰まっている。メンバーにエフェクターを駆使しノイズを放出するパートまでいるし、ダークな旋律をスラッジからアンビエントからハードコアまで混ぜまくり、漆黒のカタルシスとして鳴らしている。本当に何処にも属さないハードコアだ。



 渦巻くノイズの濁流からスラッジリフの煉獄、アンビエントなギターのアルペジオの不穏さから一気に暴発しハードコアパートへ。高域シャウトと低域デスを使い分け怒りや憎しみと言った負の感情を放出し、悲しみと憎しみのドス黒い音を叩き付ける。安易な救いなんか無いし徹底してダークサイドに堕ちきってしまったハードコアを彼等は鳴らしている。第1曲「膨張」からその破滅的ハードコアは展開、ノイズの黒煙からギターのハウリング音が鳴り響き、引き摺るドゥーミーなリフ、そのダークさを保ちながらクラストと激情が正面衝突するかの様なハードコアパートへ、そしてギターのアルペジオのみになるアンビエントパートから激重スラッジへ移行し、その殺気が曲名通りに膨張し爆発して終わる。4分45秒の中でここまで目まぐるしく先が全く読めない滅茶苦茶な楽曲構成を持っているだけで無く、異常な緊張感を常に保ち、喉元にダイナマイトを縛り付けられて、その導火線の火が自らの近づいてくるのを何も出来ず見てるだけみたいな感覚、冷や汗でダラダラになり、目ん玉はむき出しになって殺されてしまう感覚をこのバンドを聴いてると本当に味わえるのだ。ポストロック的アプローチからスラッジ地獄へと雪崩れ込む第2曲「スカラー波」の悲しき殺意の音色、第4曲「バカ社長」のカオティックかつハードコア色を強めた瞬発力に満ちた激情の事故現場とも言うべきサウンド。楽曲毎のアプローチも幅広くなっているが確かな統率感がある。徹底して赤黒く生々しいダークサイドハードコアを鳴らしつつ、それをより独自の解釈で打ち鳴らす。ZENI GEVA辺りのオリジナリティが彼等には確かに存在するし、ノイズを放出するパートが存在するからこそ、自らのサウンドを更に黒く塗り潰す。アンビエント×スラッジな大作である第5曲「ツギノシン」のいつ暴発するか分からない静謐さに焦らされた末に悪夢のスラッジコアに叩き潰される瞬間のカタルシスはただ単にダークサイドの音楽を食っただけでは絶対に生れない。それを生々しく放出しているからこそ生れる緊迫感。彼等の音を聴いているとそれに押し潰されそうになるし、否応無しに聴き手を自らの音と対峙させるだけの力があるからこそ、その緊張感を生み出せるのだ。本当にジャンクなサウンドだし、洗練なんか全くされていないからこそ彼等の音の破壊力は奈落の一番奥の奥まで見えてくる。



 暴発のカタルシスとしてのドキュメントであると同時に、闇を闇で塗りつぶす濁流のサウンドスケープ、ハードコアから漆黒を描くダークサイドの絶望。危険指数のボーダーを本当に軽々しく越えたサウンドは本当にオリジナリティ溢れているし、誰にも真似出来ない音をデモ音源の時点で既に完成させてしまっているのが本当に恐ろしい。心臓をピアノ線でギリギリ締め付けられた末に捻り潰される様なハードコア。その音は孤高を極めているからこそ必然として生まれたのだ。おまわりさん、このバンドはこれからも追いかけていくつもりだ。



■Portal of Sorrow/Xasthur


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(2010/05/15)
XASTHUR(ザスター)

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 ブラックメタル界で絶大な人気を誇っていた独りブラックメタルユニットであるXasthurだが、2010年にリリースされた今作はMaleficの設立したレーベルの初リリース作品であると同時にXasthurの最終作品となった。今作を最後にXasthurは完全に活動を終了している。そして陰鬱さを極めた自殺系ブラックでありながら、今作はアンビエントカラーを取り入れXasthur史上最も美しい作品でもある。



 まず第1曲「Portal of Sorrow」に驚かされた。アシッドフォークの女性シンガーソングライターであるMarissa Nadlerを迎え、フォークを基調にしたサウンドを聴かせている。しかしそこはXasthurだ。その旋律は重々しく禍々しくドロドロ、アンビエントな音が効果的に聴き手の絶望を煽ってくる。際限なく繰り出される美しい音色は終末へと繋がり、言い知れぬ美しさの中で「死んでも良い。」と錯覚してしまいそうになる。そして他の楽曲もここ最近の実験性の強い作風を極め非常に幅広くなっていると同時に確実にブラックメタルからは離れているのが伺える。第3曲「Shrine of Failure」ではまさかのギターソロまで飛び出してしまう始末。しかし徹底した暗黒の音色は健在であるし、そこは全く変わらないのだけれど、Marissaボーカルの曲は陰鬱さの中にゴシックな耽美さや、退廃的な儚さを強く感じさせるし、後ろで鳴る音こそ陰鬱でもシンセの音色はどこか美しく、絶望の先の安らかな死なのか、それとも微かな救いなのか、それは聴き手がそれぞれ勝手に決めれば良い話だけれども、でもゆるやかに死に行く人の安らぎが今作の美しさへと繋がっている気も僕はする。Xasthur最終作として作られたからこそ、そんな気がするのだ。そして楽曲の尺も今までに比べて短くなったのもあってかXasthurはどの作品よりも今作は聴きやすい作品だとも言える。そして一番の変化は旋律がよりメランコリックな物になった事だろう。手法こそ多岐に渡ってはいるけど、どの楽曲にもそのメランコリックさが存在し、聴き手の感情により訴えやすくなった。Marissaボーカルのクラシカルでゴシックな楽曲でも、Malefic独りで作られた楽曲でもそれが存在しているからこそ作品全体で確かな統一感があるし、その音楽性のレンジの広さがあるからこそ作品全体を一つの物語の様に聴く事が出来る。そして寒々しいギターリフはあまり登場せずにキーボード中心に進行する楽曲が多いのも。ブラックメタルの形をまだ残した楽曲でもブラックメタルからは確実に離れている事も分かるし、だからこそXasthurは終わりを迎えたのだと思う。



 今作でXasthurの一つの到達点を迎えたと同時に「もうメタルの名が入った音楽はやらない。」というMaleficの言葉通り、ブラックメタルから離れ、別の暗黒を今作で描いたのだと思う。だからこそ今までで一番優しく安らかな眠りの様な作品を作ったのだろうし、その美しさこそが今作の大きな価値だと思う。自殺系ブラックの代表格はこうやって死を迎えてしまったが、その死はどこまでも美しいと思わせてくれる傑作。



■Koiwa Death Fest.vol.55(2012年5月3日)@小岩bushbash

 Bloodbath Record主催のかれこれ10年以上も続いているKoiwa Death Festというイベントだが第55回である今回は日本が世界に誇るグラインドコアバンドである京都のMORTALIZEDと長野のZAGIO EVHA DILEGJのスプリットのリリースパーティという事で開催された。加えて同じグラインドコアの猛者であるRED RAN AMBERと神奈川のグラインドコアハードコアを行き来するREALIZEDも参戦!5/3はグラインドコア記念日!!と叫びたくなる超絶グラインドコア大会と言える3バンドの集結だけでも凄いが、おまけにブラックメタルから激情系ハードコアまで飲み込む暗黒3ピースCoholも参戦と究極にエクストリームなイベントになった。
 しかし僕はこの日まさかの寝坊により遅刻という失態を犯してしまい、ブッシュバッシュに着いたのがイベントがスタートした15分後。1バンド目のCoholを半分しか見る事が出来なかった。特に楽しみにしたいたバンドだけにそれだけが今回心残りである。



・Cohol

 1バンド目はCohol。先述した通り今回のイベントは遅刻と言う失態を犯してしまってCoholはセットの半分しか見る事が出来なかった。しかしたった15分しか観ていないにも関わらずCoholは暗黒のハードコア地獄へと僕を叩き落してくれた。高速のブラストビートの乱打、そしてギターリフとベースリフも高速。しかし彼等はブラックメタルから激情を鳴らすバンドであり、楽曲の中でブレイクダウンしてから多数の空間系エフェクターを使用したアンビエントなカラーの持つ音色が更なる暗黒へと突き落とす。ITARU氏時にグロウルをかまし、時に謎の踊りみたいな舞踊みたいな謎ダンスで妖しさ全開。そしてHIROMASA氏のベースボーカルでありながら全身全霊で放出する激情の嵐。それを加速させるKYOSUKE氏の正確無比な高速ブラストビート。それらが三位一体となって絶望の淵へとフロアを叩き落す。今回のイベントの中では音楽性敵に言えばかなり浮いていたとは思うけど、それでもそのエクストリームさは今回参戦したグラインド勢に全く負けていなかったし、1バンド目から漆黒の闇に小岩が堕ちていた。しかし遅刻で半分しか観れなかったのは本当に悔しいなあ。



・REALIZED

 2バンド目は神奈川のグラインドコアバンドであるREALIZED。メンバーチェンジを経て、音楽性も大きく変わったらしいが、彼等の音はグラインドコアが核にありながらももっとシンプルはハードコア・ロックのテイストもかなり色濃い物になっており、本当にストレート極まりない物。時にストーナーなフレーズを絶妙に取り入れながらも、グラインドコアをもっとシンプルなハードコアへと帰結させるビートは聴いてて本当に気持ちが良いし、男臭さ全開なボーカルのタフガイっぷりにはやっぱりやられてしまった。Coholが生み出した暗黒絵巻を薙ぎ払うかの如く、陽性でカラッとしたハードコアサウンドを見せていたし、速くてロックでキャッチーで格好良い!!というシンプルさを持っているからこそREALIZEDのアクトは観ていて楽しくなれるのだ。その男気にKOされた人も多かったに違いない。



・RED RAN AMBER

 そしてここからの3バンドは全部ベースレスの3ピースであり、完全にグラインドコア大会へとなった。RED RAN AMBERはとにかくヘビィ!そしてブルータル!!速度を間違えたらスラッジの域に達してしまうんじゃないかって思えるヘビィなギターリフを高速で叩きつける事によるブルータルグラインドコア。ボーカルもとにかくドスの効きまくったシャウトを聴かせ、グラインドコアの持つ極悪面を容赦無く叩き付ける。怒りをそのヘビィさと高速のビートへと昇華させ、それを純度100%のグラインドコアの鬼とも言うべきサウンドに仕上げていた。音圧も圧倒的だったし、高速ブルータルチューンをただ容赦無く叩き付けていただけで血生臭いグラインド地獄がこの小岩で生れたのだ。



・ZAGIO EVHA DILEGJ

 そして今回の主役の一つであるZAGIOのアクトへ。こちらもベースレスの3ピースだが、今回参戦したバンドの中でも一番ファストでショートカットなバンド。1曲1曲が本当に短く約15分と言う本当に短いアクトだったが凄まじい速さで繰り出されるビートとリフを極め、超エクストリーム世界へ突入。正統派のグラインドコアバンドであるが一切無駄の無い構成とフックの効いた音の瞬発力と爆発力が観る物の肉体に本当にダイレクトに訴えてきていたし、フロアはあっという間にモッシュの嵐へと雪崩れ込む!余計なギミック無しに超速グラインドコアをキャッチーさを残しつつも容赦無い速さで叩きつける極悪っぷりも見事だったし、何よりも肉体を一気にバーストさせるグラインドコアの力にどこまでも真摯だからこそ彼等の音の破壊力は相当な物になっていたのだ。たった15分のアクトだけど、その瞬間に生まれるカタルシスが大挙して押し寄せ、それに飲み込まれていく。本当に凄まじいだけで無く格好良いグラインドコアを見せてくれた。



・MORTALIZED

 そして大トリは京都から生まれ日本が世界に誇るグラインドコアバンドであるMORTALIZED!!超ショートカットかつ速さを極めた末のカオティックさとサタニックな暗黒さが彼等の売りだが、その音楽性は大きく変わり、楽曲のスケールも格段に上がり、よりメロディアスになったギターフレーズの数々はかなり激情系ハードコアに接近した物になっていた。しかしメロウなギターフレーズの哀愁から一変して速さを極めた高速&カオティックグラインドサウンドへ移行する瞬間はもうとんでもないカタルシスに飲み込まれるの必至だったし、その落差を巧みに使いこなし、よりカオティックなバンドへと変貌したと思う。低域デスと高域シャウトを巧みに使い分けるボーカルワークはライブでの余裕で健在だし、今回参戦したどのバンドよりも全身全霊という言葉が似合うドラムのカオティックブラストの鬼気迫る散弾銃のビート、そしてグラインドコアとかハードコアとかそういった枠組みから完全に開放されてしまったギターワークが未知の混沌へとフロアを導き、グラインドコアでありながらも、誰も到達していない新たな領域へと彼等は間違いなく到達していたし、日本が誇るグラインドコアの英雄は、自らの手でグラインドの新たな歴史を更新し、その先へと飛び立っていた。貫禄と気迫のアクトは超音圧エクストリームミュージックとしてブッシュバッシュに渦巻いていた。とにかく圧倒的ッ!!その一言に尽きる!!



 そんなこんなで小岩グラインドコア大会は圧倒的な速さであっという間に終わりを告げた。しかしながら大好きなバンドにも関わらずMORTALIZEDを観るのは初めてだったのだが、日本のグラインドコアの大正義とも言うべき彼等のアクトはもう貫禄とかカリスマとかを超えた別の何かを感じたし、他のアクトも素晴らしい物だった。僕が住んでる場所から小岩は正直結構遠かったが(電車で約1時間かかる)、遠路はるばる足を運んだ甲斐が間違いなくあった。そしてなによりもSxOxBを生んだ国である我が日本のグラインドコアは本当に世界に誇れる素晴らしいバンドが数多く存在している事を改めて実感させられたのであった。
タグ : ライブレポ

■john's LP/Black Film Dance

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 Next Styleのボーカリストでもあり現在はtheSunのボーカリストとして活動している北海道エモ・ハードコアシーンの重要人物の一人であるヒグチ氏がBONESCRATCHのカンノ氏、moonwalkのバンドウ嬢とこれまた北海道のシーンの猛者と共に結成したBlack Film Danceの唯一の単独音源が今作だ。たった6曲入りの音源ではあるがどこまでも澄み切ったエモーショナルさの中で混沌と狂気が渦巻く1枚に仕上がっている。



 ヒグチ氏やカンノ氏のキャリアの中ではBlack Film Danceというバンドは最も取っ付きやすいバンドであると同時に本当に多方面に伸びる音楽的要素を持ったバンドでもある。エレクトロやダンスミュージックのエッセンスを持ち合わせ、核になってるポストハードコアサウンドには全くブレは存在しないし、それに加えバンドウ嬢のmoonwalkにも連なるUSエモの流れを受け継いだクリアでエモーショナルな郷愁の旋律という大きな武器をいくつも持ったバンドだ。第1曲「Nature」から哀愁を激走させるギターストロークのイントロが鳴り響き、感情を揺さぶられる。それにヒグチ氏のハイトーンボーカルもいつに無く歌に接近している印象も受ける。美しい旋律が疾走するパートから美アルペジオがたおやかに流れるパートへと滑らかに移行していく辺りもニクい。しかし北海道カオティックシーンの猛者が集結したこのバンドが単に洗練された美しいエモーショナルサウンドを奏でるだけのバンドでは終わる訳が無い。メロディを基調に構成されている楽曲だから前面的に出している訳では無いけれども、クリアでありながらも妙に癖のある旋律や様々な音楽的要素を食った末に、エモ・ポストハードコアに帰結させる手法なんかはやはり一筋縄じゃないし、カオティックの要素はやはり健在だと言える。第3曲「Draw」ではよりカオティック度が高くなっており、風通しの良い旋律を機軸にしながらも転調とキメの乱打による混沌。幾重の旋律の持つ輝きが乱反射を起こして別の次元に飛んでいく感覚。まるで下に浮いている様でもあるし、上に堕ちている様でもある。さり気無く取り入れられたシンセのシンセのどこか無機質な音色であったりとか中盤のトラッドでダンサブルなグルーブと共にファンク要素の色濃く出た展開を見せたり、終盤ではその美しいシンセの旋律が別の宇宙へと導くという楽曲構成。この曲にBlack Film Danceの核が確かに存在しており、徹底的に拘った音の配置の仕方、情報量が多い筈なのにそれを綺麗な楽曲に仕上げるアレンジセンス、そしてそのクリアさがまた新たな混沌の引き金にもなっているし、どこまでも底が知れない。序盤のハードコアな2曲から中盤に入るとよりダンサブルな楽曲が並び、最終曲「I'm Waltz」ではシンセのフレーズと硬質のビートの反復が宇宙と見せかけて別の場所へと連れていく感覚。このバンドの音はダークさの中にもいないし、光の中にもいない。平熱の世界で起きる一瞬の眩暈であり、日常の狂気であり、そして行き先の見えない混沌だ。



 北海道のエモ・ハードコアシーンの猛者が集まっただけあって、楽曲の完成度の高さもそうだけれど、本当にオリジナリティ溢れる1枚になっていると思う。短命で終わってしまったのは残念でならないが、今作のクリアな混沌が見せる輝きは唯一無二だ。

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メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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