■2012年08月

■揺ラシツヅケル/COWPERS


揺ラシツヅケル揺ラシツヅケル
(2000/07/26)
COWPERS

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 bloodthirsty butchers、eastern youth、fOUL、キウイロールetc、もう本当に数え切れない位に90年代から国内エモ・オルタナティブロックの最重要バンドを排出しまくっている北海道という場所だが、その北海道バンドの中でも最重要中の最重要バンドだと個人的に思うのがこのCOWPERSだ。Drive Like Jehuから始まったポストハードコア・エモの流れを汲み取りながらも、それをDLJの先へと完全に繋げたバンドであり、国内ポストハードコア・エモを語る上で外してはいけないバンドだと思う。そんな彼等のラストアルバムとなった2ndアルバムである今作は紛れも無く日本のエモ・ポストハードコアの最高峰に位置する金字塔だ。



 ツインギターの絡み、不協和音中心のコード進行、スライド・チョーキング多用のギターワークなんかはもう完全にDLJの流れから来てるのに、全く別物であり、エモーショナルロックの血肉を生かしたのがCOWPERSであるが、今作は歌という部分に完全に重きを置いて、DLJが行き着けなかった場所へと行き着いた作品になっている。第1曲「玻璃」がもう本当に必殺の1曲となっており、不協和音のストロークから絡みつくチョーキングとスライド多用のギターワーク、疾走感と破壊衝動を封印し、ミドルテンポでタイトなビート、複雑に絡み合い、不協和音すらメロウに聴かせてしまい、何よりも現動氏の歌が映えに映えて、涙腺を殴りに来るんだもの!!今作は本当に歌という部分に重きを置いた作品であり、前作「Lost Days」の様な爆音がドライブするサウンドを封印しながらも、完全に血肉と化したポストハードコアとしてのサウンドを歌を生かす為の物にしているし、彼等の方法論でUSハードコアとジャパニーズエモのハイブリットとも言うべき音に仕上げてしまったのだ。歌と絶唱が交錯する第2曲「ヤガテソコニ至ル」も魂が震え上がるし、ディスコードの中で燃え上がる哀愁に満ちている第3曲「予感」、どの楽曲も本当に必殺の涙腺破壊激エモポストハードコアになっている。シングルカットされた第5曲「斜陽」は今作の中でも一番疾走感のある1曲ではあるけれども、それでも現動氏の歌を生かすサウンドだし、サビのシンガロングパートと共に現動氏が魂の叫びを聴かせる。そして後半の楽曲は特にミドルテンポさを強調し、楽曲の尺も長めの曲が多くなっている。第7曲「8/1」はシンプルな音数のビートと共に、チョーキング中心のギターワークをやや不規則に鳴らしつつ、その歪さの中で絶対にブレない歌をフューチャーし、タイトな静寂と、その空気を切り裂く不協和音の中で、あくまでもフラットなまま静かに流れる血液の流れみたいなサウンドを聴かせてくれる今作の中でも特に名曲と言える1曲になっているし、その後もメロウさが際立った曲が続き最後の最後での第10曲「錆色の月」にてクライマックスの彼方すら突き抜ける壮絶なエモーショナルポストハードコア絵巻で締めくくる。



 先ず何よりも全曲名曲だって言い切りたいレベルの完成度を誇り、その中でそれぞれの楽曲が「揺ラシツヅケル」という作品のストーリーテラーとなり、一つの物語を全くブレ無く作り上げたのが今作の凄みだと思う。しかしCOWPERSはその後の200mphとのスプリットにて発表した3曲で、今作の更に先を言った名曲を発表するが、3rdアルバムはリリースされずにその音源が最後の音となりバンドは解散してしまう。皮肉にもDLJ同様に残したオリジナルフルアルバムは2枚のみ、しかしその2枚が大きな痕跡となっているし、COWPERSをリスペクトするバンドマンも影響を受けた後続バンドも本当に多い。それだけの影響力と功績を彼等は間違いなく持っていたし、今作は今でもその輝きを失わないマスターピースとして僕たちの心を揺らし続けている。



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■FLAT presents(2012年8月26日)@西荻窪FLAT

 日曜日は西荻窪のライブハウスである西荻窪FLATに足を運んで来ました。目当ては凄い久々なduluduluと友人がお勧めしていたfrom ten to nine。他の2バンドも全く知らないバンドだけど楽しみにしつつ西荻窪へ。今回はFLAT主催のイベントではあったが、また素敵な夜を過ごさせて貰った。以下各バンドのレポ。



・インフォメーションノーネイム

 イベントは約10分押しで1バンド目のインフォメーションノーネイムのアクトからスタート。初見のバンドであったが、印象としては日本語詞に重きを置いた風通しの良いエモ。3ピースでシンプルで旋律を生かす楽曲構成、それでいていぶし銀な渋さを感じさせてくれる歌物エモ。平熱の温度からじわじわと熱量を高めるのは日本人ならではのエモのスタイルで、全体としてクリーンな音を主流にしていたのもまた渋くて好印象。派手なバンドでは無かったけど、じわじわと来る物があって良かった。

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・90cent jokes

 お次はドラムとギターボーカルの2人組である90cent jokesで、こちらも初めましてなバンド。アン直のセッティングから想像出来たが、想像以上にストレートなロック。ギターのフレーズはコードストローク中心で本当にシンプルイズシンプルなロックだったと言える。それをテンション高くガッツリやってた感じだけど、このバンドはドラムがまた良かった。スタンダードなロックのビートをやたら前のめりに力強く手数多目で叩き付ける感じは、余計な装飾の無いサウンドの中で見事に映えていたと思うし、こういったストレートなロックも中々良いなって再認識させてくれるバンドだった。

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・from ten to nine

 そして楽しみにしていたfrom ten to nineのアクトへ。しかし想像以上の音とアクトにブチ抜かれてしまった。Hooverがよりくぐもったかの様なディスコダンスサウンドの尖り具合がとにかく半端じゃ無い。しかし分かり易いアプローチはとにかく封印している様なバンドで、ほぼインストに近いテンションの楽曲もあったり、終わり無くざらついたリフとビートが隙間ばかりを作り出して、不安ばかりを作っていたり、いざその熱量を高めても、くぐもった感覚は変わらないまま。そしてそんな楽曲を乗りこなし、常時緊迫した空気を生み出すライブアクト。ダークサイドポストハードコアの本領を発揮しているバンドだと思ったし、渦巻く螺旋に静かに飲みこまれる様な音をライブで見せてくれた。一つだけ心残りがあるなら物販で音源が売ってなかった事である。

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・duludulu

 そしてトリのduluduluへ。久々に見るからどの様な音になっているか凄い楽しみだったが、結論から言えば、ポストロックである事を否定するポストロックになっていたと思う。ジャズ音階を基調にしたサウンドの中でリズム隊が強度を高めたボトムをブチ込み、クリーントーンのジャズとポストロックが融和したギターフレーズが交錯、そしてサックスが楽曲に彩を与える。更には地味にマスロック成分も強くして、風通しの良いクリーンさとタイトなアンサンブルの中で、踊れるポストロックと言うべきサウンドになっていたと思う。何よりも各メンバーそれぞれのアンサンブルの安定感は渋みと貫禄があったからズルいとも思った。しかしもう一個感じたのは現在の音はあくまでも実験段階の音だという事、良い意味で完成系では無いし、まだまだ進化の途中であるとも思った。これからどう進化していくか楽しみ。

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 そんな感じで日曜の夜を良い物にしてくれるライブだったと思う。4バンドとも音楽性がまた違うイベントになったのも良かったし、新たな発見や収穫があるのもこういったライブの醍醐味でもあるなーって再認識した夜でもあった。ただ西荻窪は本当に遠かったから、今後ライブ観に行く以外ではマジで行きたくない。
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■BULLETONE(2012年8月24日)@恵比寿BATICA

 という訳で最早定期的に足を運んでいるTHE CREATOR OFのライブだったりするけど、今回は実に三ヶ月振りであるし、今回のライブ以降はいよいよ新譜のレコーディングに入り、年末まではライブは無いという事もあって、仕事が終わってから恵比寿に足を運びました。しかし恵比寿BATICAというハコには初めて足を運んだけれども、本当に狭い!!今まで行ったライブハウスの中でダントツの狭さだった。なんつうかもう50人入ればキャパオーバーみたいな感じだったし、ライブハウスっていうか最早半分スタジオとかガレージって感じだったし、ステージめっちゃ狭かったなあ。



・沖に娘あり

 到着が遅れた関係で1バンド目の狂気は見れず2バンド目である沖に娘ありからライブを見る事に。メンバーは大分若いバンドらしいが、その音楽性はジャズとガレージロックの融合というお洒落でいながらザラついたロックといった印象。ライブの方はテンション高くハイボルテージという物。曲によってはジャズやフュージョン成分は高かったりはするけど、最終的な印象はやっぱロックバンドだなっといった感じ。演奏技術を感じさせながらも、それを前面に押したりはしないであくまでもロックのテンションでやっているのは中々好印象でした。終盤にやってた曲が中々良くて、これから地味に面白くなりそうなバンドだと思いました。



・THE CREATOR OF

 そしてTCOのライブ。沖に娘ありの時も思ったけどステージが本当に狭くて古谷さんに至ってはあんまり見えない状態。そしてそんな超狭い中でのアクトはやっぱり爆音。今回のセットは前半は新譜収録予定の静謐で重いポストロック色を前面に出した楽曲をプレイ。しかしながらダイレクトに音は伝わり、繊細な楽曲の中にズ太いボトムとビートをブチ込む事によるハードさを感じさせながらむ複雑に絡む幾重の音が一つの轟音として雪崩れ込む様はいつ見ても圧巻だし、感動的である。中盤に機材トラブルがあったりしたが、それを跳ね除ける後半のセットは特に圧巻だった。最早音源とは全くの別物になってしまっている「Hi On」は正に壮絶であり、前半の静謐な空気を完全に打ち壊し、まるで地獄の様なヘビィネスがプログレッシブに渦巻く悪夢の世界。反復するフレーズのサイケデリックさから終盤の怒涛の刻みのリフがビートとユニゾンするパートが本気で地獄のマグマが噴出する寸前の躍動を音で鳴らしていたとしか思えなかったし、かつての名曲を新たにセットに加え、現在の音としてアップデートする事に成功したのはTCOにとってやはり大きいと思う。ラストは必殺の「AGAIN」で締め。繊細かつヘビィさを全開にしたこの曲はやっぱセットのラストに映える1曲だなって何回TCOを見てても思うのである。暫くライブ日程は未定だけど、しかし新譜のレコーディング経て、更なる進化はもう約束されてるだろうし、新譜も含めてこれからの音に心から期待している。



・KAGERO

 トリはKAGEROというインストジャズバンド。こちらはゆっくりとライブを観ていました。ジャズパンクを名乗っており、ジャズの暴力性を抽出した性急なサウンドは刺激的だった。音数もかなり多く、サックス、ベース、ドラム、ピアノが全力でバトルしてる様はかなりスリリングだし、こうゆう系統の音が好きな人には堪らないバンドだとも思う。僕はこういった系統の音楽に関しては全く明るく無いのだけれども、分かり易いブレイクやキメの乱打だったり、情報量の多い音の嵐はジャズとか聴かない人でも十分魅力的だとも思うし、パワフルでワイルドだとも思う。ゆっくり見てたからアレだけど、こちらも中々良いバンドだと思いました。しかしどこかで名前聞いた事あるなーとは思ったけど、かつて僕の敬愛する激情系HCバンドであるheaven in her armsと2マンライブをやった事があるのか。



 と、そんな感じで仕事終わってから向かったので1バンド目の狂気は観れなかったけど、金曜の夜に普段行かない恵比寿でライブを観るのは中々新鮮でしたね。しかしやっぱTCOは今回の面子の中で大分浮いてた気はするけど、他のバンド目当ての人にも十分インパクトは与えていたと思うし、沖に娘ありやKAGEROのライブも普段こういったバンドをあんまり聴かない自分からしたら新鮮で楽しかったです。
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■MY WAY/AIR


My WayMy Way
(2002/10/17)
AIR

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 BAKU、Spiral Lifeと活動し、現在はLaika Came Backとして活動する車谷浩司という男のソロユニットであるAIRの02年リリースの作品。車谷の音楽活動は本当に多岐に渡り、どのジャンルで語って良いか分からないレベルだが、AIRはラウドロック方面の音を鳴らしていた。しかし今作を機に音楽性は変化しており、ファンク・ジャズをソフトロック・オルタナティブロック・ミクスチャーのフィルターを通した独特の音を鳴らしている。



 まず今作は車谷と渡辺等と佐野康夫のほぼ3ピース編成での作品になっているが、渡辺と佐野のリズム隊がとにかく良い。ジャズ・ファンク・ロックの血を通わせながら重く刺さるグルーブを充満させるこのリズム隊は正に鉄壁である。そして3ピースのシンプルな編成だからこそ攻めぎ合う、3人の音の生々しさがダイレクトに伝わる。ジャズやファンク要素を大きく盛り込んだ作品ではあるが、難解さや説教臭さは無く、ラウドロックを通過しているからこそのオルタナティブ・ミクスチャー感覚で鳴らされている点も大きい。緩やかさの中で切れ味鋭い音が斬り付ける第1曲「Happy Birthday To Shining Star」から車谷独特の歌物に対するセンスとミクスチャー感覚が炸裂し、第2曲「funk Core」ではファンク要素を前面に出し、研ぎ澄まされたグルーブをよりダイレクトに発信し、その熱量を高めて徐々にラウドさを加速させる方法論は流石の一言。しかしそんなグルーブ感満点の楽曲だけが今作の魅力ではない。今作は優秀な歌物作品でもあり、完全に歌物にシフトした作品はその旋律の緩やかさと優しさも大きな魅力として存在している。第4曲「Good To See You」や、第9曲「凪」はそんな楽曲になっている。また歌とグルーブを融和させ、深みを見せる第5曲「My Favorite Things」なんかも今作の重要な1曲だと言えるだろう。しかし今作は終盤の2曲が特に素晴らしい。本当にシンプルなギターロック要素を前面に出し、郷愁の世界が目の前に広がる名バラッドである第10曲「泡沫の虹」、そして今作を最後の最後で総括するラストの「Last Dance」は本当に名曲だと思う。特に「Last Dance」は3人の卓越した演奏技術によるアンサンブルを極限まで削ぎ落とし、数少ない音で楽曲を構成し、その少ない音を聴かせ、それでいた原始的な意味で楽曲の完成度が高い。素朴でありながら今作の全てを総括する名曲であると言える。



 本当に様々な形で様々な音を鳴らしてきた車谷だからこそ今作の境地に辿り着けた気もするし、何よりも、車谷自身もそうだが、渡辺・佐野のリズム隊が今作の肝になっているし、この二人が生み出す深くて重厚なグルーブとアンサンブルが車谷の音をより深くしているのだ。単純に歌物ソフトロックとして見ても完成度が高いし、末永く聴ける1枚だと思う。



■NoLA presents DISORDERLY~癸~(2012年8月19日)@新宿ANTIKNOCK

 若き獰猛なる獣であるNoLA。今年リリースされた処女作である「DISORDERLY」にて多くのエクストリームミュージックフリークスを虜にしたが、彼等の魅力は音源以上に極悪なライブである!そう断言してしまいたい。そんなNoLAの自主企画が敢行されると聞き、まだNoLAのライブを未体験であった僕は是非ともその音を生の爆音で体感したいと思い、今回の企画に足を運ばせて頂いた。NoLAだけじゃなく他の出演者も多種多様でありながら、それぞれが個性豊かな音を鳴らす猛者が揃い、アンチノックは暴虐の宴と化したのであった。正に漆黒の日曜日とも言うべき一夜であった。



・hollywood mammoth

 企画は約10分押しで一番手のhollywood mammothのアクトからスタート。完全に初見であるが、3ピースの超正統派メタルバンドであり、ズクズクとスラッシュなリフを刻み倒し、しかし極悪系かといったら全然違うし、サビでしかkりシンガロングしちゃうパートもあったりと非常にキャッチーなスラッシュメタルをやっているバンドといった印象。しかしそのアクトはパワフルかつ粗暴で、尚且つ非常に男臭い暑苦しいナイスなメタルを鳴らし、MCでは一々笑いを誘うというナイスガイっぷり(個人的に「物販で壷を60万で売ってます」ってネタがツボだった)、そんなメタルキッズらしさ全開の彼等は一発目からアンチノックのフロアを温めてくれた。それとそんな空気は全く感じさせないカラッとしたライブではあったが、残念ながらhollywood mammothはこのライブがラストライブだったらしい。最後の最後のライブを見れて良かった。お疲れ様でした。



・ZENANDS GOTS

 二番手はこちらも初見のZENANDS GOTSだが、hollywood mammothの男臭くアットホームな空気をガラリと変えて一気に暗黒世界にしてしまった。ギターボーカルとドラムの2ピースであるが、その音は完全なるエクストリーム仕様。冒頭でクリーントーンで不穏なドゥーム音階を鳴らし、アンビエントな空気を作ったと思えば一転、ドラムが超高速かつ超カオティックなファストコアなビートを叩き出し、ギターは重く歪みまくった野蛮な音をこちらも光速で弾き倒し、そして叫ぶ叫ぶ!!ファストコアとドゥームが混ざり合い、ハードコアとメタルが正面衝突しまくった末に、それを爆音光速サウンドで放出しているからもう何をやっているのか分からない状態。ショートな楽曲の中でアンビエントやファストコアを織り交ぜまくってるせいで生まれたカオティックさ、そして憎悪を前面に押し出し、狂気を限界まで振り切るに振り切った音にはもう気持ち悪い顔して頭を振りまくってましたよ!!エクストリームな要素を無尽蔵に掛け合わせて、更なる混沌へと誘う正に狂気の2ピースカオティックファストドゥームであり、とんでもないインパクトを持っていた。



・小手

 続いては小手。以前から彼等の音に触れてはいたが、ライブは初めて。メンバー全員作務衣姿で、楽器隊は狐のお面を着用という佇まいから既に異様だが、本当に異様なのは彼等の音だ。クリーントーン主体のポストロックであるが、高い演奏技術が生み出す緊張感を見る者に突きつけて、それでいて決して難解では無く、静寂さの中で少しずつ燃え広がるドラマティックさ。ほぼポエトリーの域に入ってるボーカルと本当に異様。それでいて小手の音楽には本当に強いメッセージ性があり、聴き手に説教する様でもあり、自分自身に言い聞かせる様な言葉の数々、絶望感や悲壮感を持ちつつも、そこに甘えるのではなく、その先にある物を力づくでも掴んでやろうという気迫、そんな言葉をより際立たせるドラマティックなポストロックサウンド。轟音パートは全く無く、シンプルなフレーズが絡み合い、クリーンなまま熱量を高めてドラマティックな感動を生み出す。そして突き刺す言葉と音は聞き流せる物じゃないし、小手というバンドとは全身で向き合わないといけないという感覚。そしてその緊張感から開放された瞬間にどこか救われる気持ちにすらなる。本当に厳しくも心を豊かにしてくれるバンドだった。



・一寸笑劇

 転換が終わっていざ一寸笑劇の出番って所で、急に腹痛に襲われてトイレに篭っていたので序盤は見れてなくて申し訳ないが次は一寸笑劇のアクト。小手の修行僧の様な緊張感をまた変えてしまった彼等は歌謡曲要素とロックとエモの融合とも言うべき胸が熱くなる音を鳴らすバンドだ。シンプルなフレーズと日本人らしい侘寂に満ちた旋律が織り成す歌謡性、エレファントカシマシやフラワーカンパニーズの様なバンドを思い浮かぶ人も多そうだけど、熱量は全然負けていないし、よりブルージーであるからこその魂の歌謡ロックに仕上がってる。そしてとにかくライブが熱い!ボーカルの方は身をステージから乗り出しながら汗だくになりつつ魂の絶唱を素直に吐き出すし、ボーカリストとしてのポテンシャルが本当に高い。今回の企画の中ではかなり浮いた存在であったかもしれないけど、それでもアンチノックを熱い魂で焼き尽くしてくれた彼等は本当に頼もしい存在だったと思う。



・おまわりさん

 そんな一寸笑劇の感動的なアクトの後におまわりさんである。地獄のハードコアで各地で話題を呼びまくっているおまわりさんである。東京BOREDOMでその存在を知りファンになった僕だが、とにかく楽しみで仕方なかった。1曲目の「膨張」からおまわりさんはもう既におまわりさんでしかないという最早訳が分からないであろう暴論が彼等の前では普通に成立してしまうから恐ろしい。2台のアンプを繋いだギターは既に音階すら把握出来ないレベルの音量で邪悪なノイズを垂れ流し、それに加えてエフェクターノイズパートの音が更にノイズを特盛にするという暗黒ハーシュノイズにドゥームとハードコアとアンビエントをマシマシにするという極限を極めた方法論で楽曲を作り、ボーカルの方はマイクで何度も頭を殴るわ、客席に突っ込むわととにかくやりたい放題だ。彼等のライブは本当に安易な言葉になってしまうけれども地獄みてえな音を繰り出し、その地獄の中の数多くの煉獄で聴き手を焼き尽くし、ノイズの拷問で痛めつけまくるのに、それが最高に気持ちよくて、気持ち悪い顔を全力でしてしまう、最高のドM向けバンドだと言えるだろう。最高に涎垂れ流しでアへれる楽曲で、変幻自在に狂気を放つボーカルと、ノイズの悪夢とドゥームの悪夢とハードコアの暴力の酒池肉林。正にそれに尽きる!!いやいや今回のアクトも凄すぎたよ。



・NoLA

 ラストは今夜の主役であるNoLA。もうその佇まいから若手バンドとは到底思えない貫禄があって格好良い。不穏でクリーンなインストである「Disorderly」から始まり、その神秘性を高めたかと思ったら、2曲目の「K.G.B」からは完全なる地獄の始まり、7弦ギターで激重のサウンドをスラッシュメタルもハードコアも飲み込む悪魔のリフで攻め立て、グラインドもカオティックの食らい尽くすドラムの重戦車がアンチノックに激突したユンボの如く大惨事を演出!なによりもボーカルのタケル氏は最早カリスマの貫禄すら僕は感じてしまった、ステージ上では物足りないのか客席まで飛び出し、暴れ狂いながら狂気に満ちた暗黒ボーカルを聴かせ、キャッチーさとは完全無縁なブルータル絵巻を目の前で繰り出す。ボーカル、ギター、ドラムのみとはとてもじゃないけど思えない音圧もそうだし、殺戮デスマシーンNoLAが聴き手に恐怖と快楽をもたらす。中盤にプレイした「燈」ではドゥーム音階の反復と極端に音数がへったドラムが空白すら恐怖に変え、読経めいたボーカルが不穏さを生み出し、中盤で完全なるドゥームへと変貌した瞬間のカタルシスは音源を軽々しく超えてしまっていた。何よりもラストにプレイした暗黒ドゥーム絵巻である「Mist」は暗黒と狂気と憎悪ですら闇の美しさに変えてしまうレベルだったし、シンプルな編成であるにも関わらず、超音圧で攻める黒い波動が、全身を凍りつかせ、ただ立ち尽くし、目の前に広がる漆黒の美しさに僕はただ飲まれてしたし、それを半永久的に味わっていたい気持ちで一杯になった。残念ながらアンコールは無かったが、それでもその貫禄に満ちた暗黒を放つNoLAの凄みを生で味わい、音源を平然と超える漆黒世界にはただ脱帽するだけだったのだ。



 多種多様なバンドが集結した異種格闘技戦であったが、トリ前のおまわりさんとトリのNoLAが完全にアンチノックを地獄へと変貌させていたし、新宿は正に血塗られた日曜日になったのではないか。ずっと楽しみにしていたNoLAのアクトを今回初めて味わったが、とにかく若手とかそうゆうのを抜きにした貫禄と暗黒を見せ付けてくれた。勿論他の出演バンドもそれぞれが芯の通った音を鳴らす猛者であったし、本当に素晴らしい闇ぬ宴だった。
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■Ill Dance My Dance/Rise And Fall

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 地元である仙台では多大な影響を持っているメロディックハードコアバンドであるRise And Fall。そんな長年戦い続ける猛者の1stアルバムが今作である。リリースは国内ハードコアの超名門レーベルであるHG FACTから。とにかく男!男!!男!!!男臭さ全開の超タフガイメロディックエモーショナルハードコアであるのだ。魂を燃え上がらせる音は正にこれだ!!



 彼等の音はハードコアであるが、まず非常にメロディック。タイトでタフでありながらも常にメロディアスである事を忘れない。しかもそのメロディアスさが非常に男臭い泣きと激情を打ち鳴らしている。しかしナヨさは全く無く、力強くストレートなサウンドに魂を込め、その魂が涙腺と肉体と魂を同時に震えさせるサウンドとして響いてくる。彼等のサウンドの核にはDag Nastyの様な80年代のDCハードコアの影響が見られるし、ハードコアとしてではなくメロディックパンクの要素も盛り込んでいるから非常に間口も広くなっている点も大きい。それでいて日本人ではの哀愁と男臭さをメロディに託している。Dag Nastyといった古き良きメロディックハードコアの猛者の持つメロディアスさとタフさを継承し、それをよりタイトに鍛え上げて、ハードコアやメロディックパンクとして以上に和製エモの香りを出し、それを正統派DCスタイルと融合させたのは王道のやり方かもしれないが、その王道を堂々と突っ走っている。またストレートなリフとビート中心のサウンドではあるが、その中でギターワークがとにかく光る!!コーラス等を随所に盛り込む小技もそうだけど、シンプルなサウンドでありつつも、随所随所のキメの細かさや、サウンドの気配り、聴いてて肉体に訴えつつも自らのメロディアスさをより明確にするアレンジなんかも彼等の魅力だと思う。何よりもボーカルが本当に良い!日本人らしかぬメロウなヨーロッパの激情系とかにも通じる哀愁を声で生み出しながら、その声がとにかく力強く、それこそ彼等の泣ける男らしさというハードコアの核であり、それは本当に作品全体で徹底している。



 泣き、力強さ、ソリッドなタイトさ、メロディアスさという王道の要素を鍛え上げたからこそハードコア・メロディックパンクの覇道を突き進む彼等の音は本当に熱くて堪らない。これぞ男のハードコア!といった名盤に仕上がっている。80年代DCハードコア好き、エモ好き、メロディックパンク好きには是非聴いて欲しい1枚だ。



■絶塔/Z


絶塔(ゼットウ)絶塔(ゼットウ)
(2012/08/15)
Z(ゼット)

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 国内激情系ハードコアの最果ての最果てはこの音だった。There Is A Light Never Goes Outで国内激情の礎を作り上げ、Zになってからは形に全く囚われない異質のハードコアを鳴らし続けて来た猛者、解散宣言によって最終作となった2012年リリースの今作は正に根本潤と魚頭圭が作り出した最後の音でありながら、極限という極限に至った作品であると言える、ドラムが根本歩からskillkills、cryptcityの弘中聡になり、LOSTAGEの五味拓人、cryptcityのセブ・ロバーツ、ex.灰汁のセノオGEEがゲストとして参加し、鬼才と猛者が全てを出し切った作品になった。



 まずドラムが変わった事によってビートが本当に強靭になった。歩氏はパーカシッブなドラムでフリーキーさを放出していたが、弘中氏のドラムはタイトかつ重い、そして魚頭氏のギターはリズム面を変わらず引率しながらも、練り込まれた音作りの深みと、切れ味を極限まで高め、ソリッドで重いフレーズを繰り出している。そして潤氏のサックスはZ史上最も解き放たれ、フリーキーに予測不能の不協和音を奏で、ボーカルもこれまでに無い位に狂気が高まっている。第1曲「ベロ」はそんなZの変貌が本当に色濃く出ている。ざらつきヘビィなギターリフが安定感と同時に斬る感触と叩き付ける感触を同時に発揮し、弘中氏のドラムと絶妙にシンクロし、複雑なビートを、よりダイナミックに拡散している。1stのドープさとも、2ndの音楽的レンジの広さとも違う、ダイナミックなハードコアの暴力を、誰も体現しなかった形で生み出し、Zの持っていた難解さの中の自由度の高さが分かり易い形で表に出ているし、カオティックハードコアの理論を無視した、独自のカオティックハードコアを展開し、極端に変わる展開や、幾重に重ねられ研ぎ澄まされた音が迫ってくる。潤氏のボーカルがとにかくキレまくっており、終盤では言語化不可能な叫びがカオティックな展開と共に雪崩れ込み、行き先不明の狂気が耳を貫き、脳髄の奥の奥まで覚醒させていく。第2曲「ほっくメキ」は1stの様なフリージャズ要素の強い楽曲になっているが、完全にグルーブ面の進化が目に見えるし、ドープさを出しつつも、ダイレクトなビートの暴力を感じるし、反復する魚頭氏のカオティックなギターフレーズと、怒涛のドラムを叩く弘中氏の共存具合もそうだし、終盤でガラリとテンションを変え、ポリリズムを更に分解したギターフレーズが狂気乱舞しているではないか!第3曲「NEWわけを煮る」は長尺の楽曲が多いZではかなり異質な3分未満の楽曲であり、ポストパンクの独自解釈と反復と分解と構築を繰り返す様はまるでBossston Cruizing Maniaの様でもあるが、それに加えて、その反復すらブッた切るし、その濃密さは何も変わらない。第4曲「DONUTSの罠」はソリッドなギターリフが狂騒の行進をストイックに繰り出し、ゲストとして参加している五味拓人氏のギターが、魚頭氏のギターのソリッドさを生かしながらも、難解なZの楽曲にダイレクトなポストハードコアを感じさせるフレーズをブチ込んでいる。今作で最も分かり易く、かつタイトさを攻撃性として発揮している。第5曲「全員OUT」ではcryptcityのセブ・ロバーツがゲストで参加しているが、セブと魚頭氏の2本のギターがアンビエント色の強いフレーズを調和させ、不穏であり、沈み行く感覚を生み出し、そこに潤氏のサックスが入り、ドープな紫色の世界を展開、その音を広げ膨張させ、混沌をエネルギーにした殺意と憎悪渦巻く暗黒の精神世界へ道連れになり、最後に潤氏が「全員OUT」と無慈悲な死刑宣告をする。第6曲「霊吹」はなんと2分13秒のZ史上最短であり、潤氏のサックスがメインの1曲、フリーキーなプレイを見せ、反復するサックスの音がただ無造作に響くという根本潤流の阿部薫的な1曲。第7曲「まぁなんて新しい 今があったはずなのに 怠惰な日々」は完全にZの新境地だ、セノオGEEのラップを前面的にフューチャーし、人力でドープなトラックを作り出し、THA BLUE HARBを愛聴している魚頭氏がここまでヒップホップに接近しているのも驚きだが、リズムとビートに対してどこまでもストイックである魚頭氏ならではの物だし、今作で一番ビートの強靭さが出ている。そして不意に入ってくる潤氏のサックスと共にセノオGEEのラップはテンションを上げ、中盤になると完全にヒップホップになり、ブレイクで叩き付ける魚頭氏のギターが大胆に人体を真っ二つにし、終盤になると潤氏のボーカルも入り込み混沌としたツインボーカルを見せ、それまでタイトだった魚頭氏のギターと弘中氏のドラムは、それをズタズタに切り刻みながらも冷徹なギロチンとして既に細切れ所じゃない聴き手をこれでもかと切り刻み、粒にしてしまう。そんな混沌と狂騒が終わり無く続いた果てにある最終曲「蛇鉄」は2ndにも収録されている1曲であるが、ポリリズムの反復を極めたこの楽曲を再録した意味は大きい。ビートに対してストイックさを極める魚頭氏が弘中氏と新たにこの曲をプレイした事によって、Z史上最も強靭かつ複雑なビートを残酷に鳴らす。極限状態を極め、そしてZの最終作は幕を閉じる。



 よりダイナミックに、よりフリーキーに、よりドープに、より強靭に、Zの持っているありとあらゆる武器を最強クラスにまで鍛え上げたからこそ生まれた最後の塔が今作であり、スカイツリーなんかよりも圧倒的な存在感を放つ終末と極限の世界の象徴として聳え立つ悪夢の塔を彼等を長い時間をかけて築いたのだ。長年に渡る根本潤と魚頭圭のどこにも属さない孤高の激情系ハードコアは、こうして最終進化系を形にした。だからこそZは完全なる終わりを迎えるのだろう。SWIPEというバンドから始まった一つのハードコアはThere Is A Light That Never Goes Outで伝説を作り、そしてZで前人未到の世界へと足を踏み入れ、そしてその最果てに立ち尽くし君臨したのだ。ここまでの作品が生まれた事も驚きだが、今作は間違い無く国内ハードコア史のに名を残すべき異形の果てを見てしまった男たちが作り出した激情の一つの到達点だ。是非聴いて欲しい、そして活動を完全に終了するその前にZのライブに足を運んで欲しい。2012年に生まれるべくして生まれた超絶名盤だZ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



■FREEDOMMUNE 0<ZERO> A NEW ZERO 2012(2012年8月11日)@幕張メッセ

 宇川直宏によるライブストリーミングメディアであるDOMMUNEが2011年3月11日の東日本大震災の復興イベントとして立ち上げたFREEDOMMUNE。数多くのアーティストの競演と、それを全世界に向けての配信での中継という画期的なフェスとして産声を上げた。しかし昨年開催のFREEDOMMUNEは当日に会場の川崎市が悪天候に見舞われ、当日にまさかの中止という結末に終わってしまった。そして今回はそのリベンジとして会場を幕張メッセに移し、より大規模な巨大なフェスとして開催される運びになった。自分も昨年のFREEDOMMUNEに参加する予定だったが、開催中止により涙を飲む結果となってしまったので、今回はるばる幕張まで足を運んだ。17時過ぎには会場の幕張メッセに到着し、18時に開場。開場と同時に既にDJ郡のアクトは開始されていたので急いで最初の目当てであるやけのはらのステージへと足を運んだ。



・やけのはら

 DJ、ラッパー、トラックメイカーとして多岐に渡って活動し、高い人気を誇るやけのはらから僕のFREEDOMMUNEはスタート。今回はDJでのセットで、ライブアクトの前にバッチリ体を温めておきたかった。しかしながら序盤は夏らしい緩やかでゆらゆらとした楽曲を中心に流し、屋内にも関わらず爽やかに体を揺らす清涼剤としてのDJプレイが展開。僕自身はクラブミュージックに関しては本当に無知であるのだが、自分が知ってる知らないとか関係無しに、音楽で空気を確かに作れる彼の力量は流石の一言だと思う。そしてトラックの熱量は徐々にテンションを上げて、よりバキバキになる踊れる方向へとシフト。緩やかな空気からのダンスホールへの転換の流れは自然でありながら確かな流れを作り出し、体を動かさずにはいれなかった。凄く楽しいDJだったがライブステージの方の開場が近づいていたので40分程楽しんで離脱。しかし最初から熱いDJだったなあ。



・やくしまるえつこ

 ライブステージであるMAKUHARI BUDOKANの開場待ちの列に並ぶと、聴こえてくるのはドープでドローンなアンビエントなノイズに乗せられる、相対性理論のやくしまるえつこの朗読。そして開場しフロアに入場したら再びやくしまるえつこの朗読が中継されているではないか。今回は夏名漱石作品の朗読と共に、自らの生体データをリアルタイム中継で参加という試みで、やくしまるの心拍数や脈拍を元にアンビエントなトラックを生み出し、それに乗せてまた朗読。確かに試み自体は面白いとは思うけど、ぶっちゃけ変に気取った事やってる様に見えてしまって少し退屈だったと正直に言っておく。どうせなら相対性理論なりソロなりのライブセットで出演して欲しかったなあというのが正直な感想。でもイベントのコンセプト的にはありなのかもしれない。



・タコ

 そして間髪入れずにタコのアクトへ。謎の寸劇からタコの首謀者である山崎春美が登場し、ロリータ順子役として今回参加している女性ボーカリスト鎖帷子レイコ、そして「すみませんでした。」の一言から1曲目はまさかまさかの1stの名曲である「赤い旅団」!!!!!本来ズタズタに切り刻まれたこの楽曲を完全にバンドサウンドにアップデートして演奏し、一気にテンションは最高潮へ。80年代の不定形音楽ユニットとして伝説になっていたタコが、完全なるバンドサウンドで蘇り、統率感皆無だった楽曲郡を現代の形にして蘇らせる。言うならば僕たちが体験出来なかった80年代のアンダーグラウンド・サブカルチャーの狂騒を懐古主義では無く、2012年の物として完全に蘇らせていたのだ。ファンキーさとハードコアパンクさを前面に出し、アングラとかそうゆう物すら抜きにした分かり易い最高の形でのタコの組蘇生は最高の形で成し遂げられていたと思う。佐藤薫を加えての「な・い・しょ・のエンペラーマジック」でのピアノ代わりの音階無視のギターソロにも上がったし、ラストはJOJO広重を加えての狂乱とノイズと奇声が木霊するセッションから「宇宙人の春」という素晴らしい終わり方。確かにタコは80年代の伝説ではあるが、それ抜きにして2012年の新型パンクとして間違いなくタコは存在していた。圧巻の一言。数多くの名曲を2012年の物として蘇生させる40分であった。



・非常階段

 そしてはノイズ界の帝王であるJOJO広重率いる非常階段へ!早速インプロ的に乱打されるドラムと共に突き抜けるノイズの洪水が全てを焼き尽くす。しかしそのノイズはやたらクリアだし、非常に聞き易い物になっていたのは印象的であった。本来なら不快にしかならないノイズを、不快さを残しつつも分かり易いロック色のある物として放出してる事もそうだが、それ以上にJOJO広重氏の一挙一動の湧き上がる歓声。JOJO広重はある種のロックスターなのだろう。アングラのカリスマであるからこそ魅せる貫禄のノイズ絵巻に心が高ぶってしまう。そしてその何をするか分からないという要素を一つのエンターテイメントにしているのも非常階段の魅力であり、JOJO氏は早々にギターを破壊、そして普通にSGに交換していたりというお約束から、終盤にもんじゅ君のキグルミがステージに登場しまさかの「もんじゅ階段」へ!!ノイズギターを放出しながらもんじゅ君と戯れるJOJO氏という異次元の後継にテンションはクライマックス。アクト自体は長くは無かったが、あっという間に突き抜ける非常階段はまさにキングオブノイズの名に相応しいと改めて思った。



・salyu x salyu with 小山田圭吾+鈴木正人+あらきゆうこ

 そして引き続きMAKUHARI BUDOKNAにてsalyu x salyuのアクト。salyuとsalyuと同じ髪型で同じ衣装の3人のコーラスのメンバーが4人並び、まるでsalyuが4人いるかの様な佇まいのニクさ。そして不規則な輪唱から始まる「ただのともだち」からアクトはスタート。予想以上に最小限にまだ抑えた音数はsalyuのボーカルを最大限に生かす為の楽曲構成であり、あらきゆうこのドラムが静かにボトムを作り上げる。ファンクやポップスを飲み込んだ音は正に小山田圭吾ならでは。クリアな音と共に導くsalyuの歌声がとにかく澄み切っていて、声の力で会場をクリアな空気にするという別格な時間を作り出していた。同じステージでタコや非常階段という狂騒の時間が繰り広げられていたが、それを完全に打ち消し、純粋なポップネスが至福の音と歌を届ける。ファンキーな楽曲で踊らせながらも、ソウルフルで透明度に満ちた一時間は本当に心が豊かになる瞬間であった。



・不失者

 そしてそろそろ日付が変わろうとする時間に不失者のアクト。これだけ大きいステージで不失者が見れるというのも驚きだが、ベースが元ゆらゆら帝国の亀川千代氏!!!!!そして始まった不失者のアクトだが、ベースとドラムとギターボーカルという編成の限界の限界に挑み、ギリギリでロックのフォーマットを保ちながらズタズタになったサウンドフォーマットで繰り出される極北の音。灰野氏はアンプ3台でヒステリックなノイズを繰り出し、そして叫ぶ。時間軸は歪み、全てを切り裂くギターとボーカルの悲壮感と緊張感にただ立ち尽くし静かにそれを見守るしかなかった。ギターを使用しない、ベースとドラムのみの楽曲では、ただ灰野氏の狂気の叫びが木霊する。難解ではあるが、それでもどこかに掴み所を用意してはいるし、何よりも空気を凍りつかせる冷徹さの規格がどこまでも徹底していた。流石に一時間は少し疲れてしまったが、それでも極限世界には圧倒された。



・小室哲哉

 そして一時代を築いたTKのアクトへ、フロアはこの日最大の超満員でステージに並べられたシンセのよる要塞セットだけで否応無しに期待は高まる。そして始まった瞬間のギラギラした極彩色のシンセの音色の洪水と、猿でも乗れるバキバキのビートの音圧が攻めてくる。一気にフロアは最高潮に陥り、ダンス天国へ!!時代を築いた人間だからこそ、多くの人々を楽しませるという点に関しては本当にストイックだと思うし、徹底しているからこそのTKサウンドの真髄が全開になっていた。そしてTM時代の代表曲である「Get Wild」でフロアのボルテージはMAXに!!僕自身も飛び跳ねたりしながら踊り狂ったし、TKサウンドにキヨシローの名曲「JUMP」をマッシュアップしたり、浜ちゃんだったりと伝家の宝刀をこれでもかと繰り出しまくるサービス精神には本当に感服であった。間違いなく今回のベストアクトであったし、ここで大分体力を使ってしまった。



・七尾旅人

 いよいよ終盤に差し掛かったという時間で七尾旅人のアクト。序盤は同じステージでアクトを繰り広げたTK作曲の華原朋美の代表曲である「I'm proud」と鈴木あみの代表曲である「Be Together]を弾き語りするという謎な離れ業を繰り出す。TKリスペクトなのか煽りなのか分からない謎のスタート、その後は電気グルーヴの名曲「虹」を弾き語りし、名曲をより心に染み渡る物へとしていた。どこまでも掴めない歌うたいは、その後も緩くマイペースに自分の楽曲をただ淡々と弾き語っていく。シンプルだからこそ響く優しい歌に、長丁場のイベントで疲れを見せていた人もほっこりしていただろうし、優しさだけでなく、確かな強さも旅人の歌には存在していたとも思う。そしてラストはやけのはらが参加し「Rollin' Rollin'」を披露。終わりに近づくイベントの中でこのアンセムオブアンセムは卑怯過ぎるけど、終わり行く夜にそれぞれが想いを馳せたのではないだろうか。



・Manuel Göttsching

 そして大トリはクラウトロック・テクノのゴッドファーザーであるManuel Göttsching。永遠のマスターピースである「E2-E4」を再現する「E3-E11」のセット。爽やかで瑞々しい音色が終わり無くループし、世界を浄化する音色の反復の美学を徹底して突き詰めたから生まれた大作の完全再現。本当に音が気持ちよすぎて堪らなかったけれど、流石にオールナイトのイベントのトリだったので体力的に完全に限界を迎えていたので30分程観て、始発に合わせて会場を後にする事に。もっと早い時間に出てくれたらもっと楽しめたのにっていうのが正直な感想ではあったけれども、たった30分の「E3-E11]でも、Manuel Göttschingの生み出した名曲を味わえたのは幸福だと思う。そして帰りの電車でやっぱ無理してでも最後まで観れば良かったと思ったのは言うまでも無い。



 そんな感じで約12時間に渡るイベントをマイペースながらに満喫させて頂きました。無料フェスっていうのもあってか、一部の客のマナーの悪さには少しうんざりだったが(禁煙のフロアで煙草吸ってるアホがいたのは流石に愕然とした)、それでも素晴らしい音を楽しむ濃密な夏を過ごさせて頂きました。少しでも足しになればと復興の募金の方にも寄付をさせて頂き(幼女が持っていた募金箱に迷わずお金を入れたのは言うまでもない)、楽しい夏の一大イベントになったと思います。ただオールナイトのイベントに慣れてないのもありまして、後半は結構体調悪くなってしまったのだけが惜しい。一先ず宇川さん本当にお疲れ様です!!
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■Weighing Souls With Sand/The Angelic Process


Weighing Souls With SandWeighing Souls With Sand
(2007/05/15)
Angelic Process

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 轟音という言葉は様々な音楽に対して使われる言葉であるし、その轟音を持ち味にしているバンドやクリエイターは本当に数多く存在する。その中でキャッチーさを放棄し、SUNN O)))やNADJAの様な極限のエクスペリメンタルへと到達した猛者もいるが、その極限の超轟音をどこまでもキャッチーかつポップに、それでいて重く壮大に鳴らすユニットが存在する。ジュージア州の夫婦デュオであるThe Angelic Processは簡単に言ってしまえば本当にそんな音を鳴らす完全にオリジナルな轟音を鳴らしている。今作は彼等の07年発表の作品であり、圧倒的音圧から別の世界が見える1枚となっている。



 言うならば彼等の音は少し強引だがNadjaに近い物であると言える。しかしNadjaとは全く違う。長尺の楽曲こそ多目だが、それでも10分未満だし、5分台6分台の楽曲も平気で存在する。ドローンとかアンビエントの要素がありながらも明確な展開とストーリーも存在する。それでいて非常に神秘的で美しい旋律が轟音としてシューゲイジングしており、それらを圧倒的な重みと音圧で鳴らすのがこのユニットの凄い所だ。ビートはギターの超轟音は重苦しく鳴らされてるのに明確な旋律を強く体感させられるし、重いのに浮遊する音色と共に神秘的なボーカルがしっかり乗り、エクスペリメンタルの中で極限のキャッチーさと極限の重さを両立するという誰かやってそうで誰もやってなかった事を体現したというだけでこのユニットの凄みが分かると思う。今作で最長の第1曲「The Promise of Snakes」の時点で彼等ぼ凄さの深淵を嫌でも体感させられるし、美しい浮遊するアルペジオから重いビートが入り込み、気がついたら超絶轟音がスラッジさと揺らぎを同居させながら五感を更新し、それどころか持ってるかどうか怪しい第6感を余裕で覚醒させる別世界へと連れていかれる。そして特筆すべきは奈落の底の様な重苦しさを感じさせるのに、その深い闇を超えた先には眩い光が待ち構えている事だ。闇も光も受け入れ、超えた先にあるのは正に天上の美しい桃源郷であるし、地獄の堂々巡りの先にある救いだ。第2曲「Million Year Summer」も名曲で僅か4分足らずの短めの尺の中で眩いシューゲイジングする轟音から幕を開け、ドッシリしたリフとビートが緩やかに楽曲を引っ張りつつ、最後はあらゆる音という音が絶唱するという魂を燃やしつくす轟音の塊が全身を焼き尽くしている錯覚にすら陥ってしまう。それぞれの楽曲が確かな意味を持ち、作品全体で中弛みする要素は全く無い上に、それぞれの楽曲がメインを張れる勢いで完成度の高さを誇る。そしてメランコリックさ、浮遊感、重み、神秘性、闇、光、混沌、極限、轟音、超音圧、独自性、キャッチーさ、音楽のあらゆるプラスになる要因を詰め込むに詰め込みまくりながらも、出来上がったのはThe Angelic Processにしか生み出せない轟音世界。もうこれはNadja、Godspeed You! Black Emperor、This Will Destroy Youの様に孤高のオリジネイターの領域に辿り着いた表現だと断言する。



 ユニットは夫であるK.Angylusの右腕の病気により活動停止を余儀無くされ、彼は08年にこの世の人ではなくなってしまっている。そんな悲劇によって幕を閉じてしまったユニットではあるが、それでも彼等が残した音は絶対に不変だし、ここまでの表現を残したという意味で彼等の音は絶対に死ぬ事なんてない。今作に残された音は間違いなくエクスペリメンタルの究極系の一つだと思う。



■EP †/†††(Crosses)

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 世界的モダンヘビィネスの帝王として君臨するカリスマであるDeftonesのチノだが、彼はDeftones以外にも本当に数え切れない位の別プロジェクトで活動していたりもする、どう考えてもウィッチハウスのそれなユニット名である†††(Crosses)もその一つであり、Fraのギタリストであるショーン・ロペスとタッグを組んだユニットだ。今作はそんな彼等の処女作であり、5曲入のEPとなっている。



 このユニットはトリップホップやエレクトロニカやミニマムといった要素の強いトラックにチノのセクシーな歌声が乗ると言った物。しかしそのメロウさや耽美さはウィッチハウスのそれに近い物もあったりする。ミニマムな音の反復を基調にしながらも、トラック自体が明確な構成を持っており、チノのボーカルはかなり前面に押し出され完全に歌物の作品になっている。それでいてトラックだけで無く、所々に挿入されているギターも絶妙な効果を生み出している。トラックもDeftonesの耽美なダークさを継承しており、エレクトロニカとかトリップホップの要素を持ちつつももっとオルタナティブロックのカラーが本当に色濃く、チノのボーカルと完全に嵌りきった物だ。トリップホップ等の新たな試みを取り入れつつも、それを自らの物にしるチノのボーカリストとしてのポテンシャルの高さは最早言うまでも無いけれど、シャウトを完全に封印して、全編クリーントーンで歌った今作ではそのポテンシャルの高さを再認識させるだけでなく、どんな楽曲も歌いこなすチノと、オルタナティブでありながら絶妙に重苦しいトラックの完成度の高さが最高の形で結びついていると言えるだろう。特に第2曲「Op†ion」はバンドアレンジにしたらDeftonesの新曲としても全然行ける歌心とヘビィさを持ちながらも、Deftonesのエレクトロバージョンといった安易さではなく、それをあくまでも†††の音として作り上げている所もポイントが高い。第4曲「†hholyghs†」ではかなりバンドサウンドに接近したサウンドを鳴らしながらも、より間口の広い歌物の楽曲になっており、エモーショナルな轟音と共にチノの歌声が咲き乱れ、ダークさの中から光を生み出し照らし出すドラマティックさも持っている感動的な1曲だし、非常に壮大なバラッドに仕上がっている。そして最終曲「†」はウィッチハウス的なゴスでメロウな旋律がダークに締めくくる。



 新たな試みを取り入れながらも、あくまでそれを取り入れたサイドプロジェクトではなく、本隊であるDeftonesやFraに負けない完成度を持っているどころか、マニアックさの中に間口の広さをしっかり用意し、一つの歌物作品としてもウィッチハウスやエレクトロニカの作品としても高水準の完成度を持った1枚であると言えるだろう。チノという男の才能はやはり底無しだ。また今作は下記リンクのオフィシャルサイトからフリーダウンロードで配信されている。



††† オフィシャルサイト



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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