■2013年02月
■La Lluvia No Cesará/okban

スペインのネオクラストバンドであるokbanの04年リリースの1stアルバム。バンド自体は95年結成というかなりキャリアがあったりするバンドなんだけれども、この1stアルバムが本当にokbanにしか出せない独自のサウンドを展開した作品になっており、単なるネオクラストではとてもじゃないけど片付けられない作品になっている、キャリアあるバンドというのもあるかもしれないけど、ネオクラストのバンドの中でもかなり郡を抜いて素晴らしいバンドの素晴らしい名盤になっている。
彼等のサウンドはネオクラストに分類されていたりするのだけれども、ネオクラストでは片付けられない位に雑多さと独自性を持ったバンドだと言える。ポストハードコアの領域まで到達したギターワークだったり、フレンチ激情のバンドに通じる哀愁の要素があったり、時にはオールドスクールな匂いも感じさせたりもするし、楽曲によってアプローチが絶妙に違ったりもしている。サウンドはどの楽曲もロウな感触に仕上げているのもオールドスクールな感触を生み出すのに一役買っている。第1曲「Desconfianza」から哀愁漂うアルペジオで始まり、そこからクラスト色の強いハードコアパートへと雪崩れ込み、哀愁の旋律はそのままにツインボーカルの掛け合いやクラスト色の強いリフやビートを叩き出しながらも、ポストハードコアのカラーを感じさせる独自のサウンドを展開。不協和音を駆使しながら哀愁のアルペジオを弾きつつも、もう一本のギターはリフで攻め、しまいにはブラストビートも盛り込み、ツインボーカルで絶唱というエンディングを迎え、とんでもなく格好良い!第2曲「Luces Y Sombras」は更にポストハードコア要素を高めながらも、より粗暴なハードコアにも接近している。変則的なビートや展開だったり、徹底して鳴らされる男臭い哀愁の泣きメロだったり、ロウな中で叩き出すオールドスクールなハードコア要素だったりが一つのサウンドの中で絶妙に統率されているし、非常にドラマティックな展開を見せるし、個人的にはかなり気に入ってる楽曲。
今作は特に中盤の楽曲が素晴らしく、タイトル曲でもある第5曲「La Lluvia No Cesará」は今作屈指の哀愁の旋律が炸裂し、前のめりなビートと共にツインギターの絡みが炸裂!刻みのフレーズとポストハードコア的なドライブする哀愁のリフが同時に襲い掛かり、ビートが粗暴さを加速させる瞬間にギターワークとツインボーカルの激情が楽曲を盛り上げ、正に瞬間のドキュメントとも言うべき感情の暴走を見事に表現しているのだ!更に第6曲「Odio Tu Ego」なんかは北海道のポストハードコアバンド辺りのセンスを個人的には感じるディスコードと泣きメロの融和と、それをストレートな激情として鳴らしながらも、キメの入れ方なんかにokbanのセンスの高さを感じさせる名曲になっているし、この2曲は今作を象徴する名曲だと思う。勿論、他の楽曲も見事な完成度の高さを誇っており、ネオクラスト云々抜きにしてハードコアの名盤として最高だ!!
今作を僕はネオクラスト・激情の音源を扱う素晴らしいディストロLong Legs Long Arms(通称3LA)さんにて購入させて頂いたが、その3LAでも人気商品になっているのも頷ける作品だし、ネオクラスト好きは勿論ではあるけれど、フレンチ激情好き、ポストハードコア好き、北海道周辺のシーンを愛する人にも是非聴いて欲しい屈指の名盤だと思う。彼等にしか生み出せなかったハードコアがそこにはあるし、本当に一言、素晴らしいって言葉があれば良い。必聴!!
■Limitasolation/isolate
![]() | Limitasolation (2012/09/19) isolate 商品詳細を見る |
東京の5人組激情系ハードコアバンドであるisolateの2010年リリースの6曲入り1stEP。ここ最近ではDEAFHEAVENの来日公演の前座をheaven in her armsと共に務めたりもした彼等だが、現在、新たな盛り上がりを見せる国内激情のシーンの中でもかなりの完成度の楽曲と、ダークサイド側の激情としてかなり振り切ったバンドであるし、今作も屈指の出来を誇っている。
DEAFHEAVENの来日公演の前座を務めるだけはあって、彼等の音楽性は激情系ハードコアをベースに、ポストブラックの要素を色濃く出した物。DEAFHEAVENが激情の中で美しさを見せるなら、彼等は美しくありながらも、より熾烈で粗暴なハードコアを叩きつける。そして静謐さや美しさを感じさせるパートを盛り込み、複雑でドラマティックな展開を持つ練り込まれた楽曲と、胸に刺さる叙情性といった部分での魅力も強い。しかしそれらの要素を持ちながらも、楽曲の中で大きな比重を占めるのは負の感情を熾烈に叩きつけるハードコアパートの破壊力だ。静から動というアプローチは本当に多くのバンドがやっていたりするアプローチだけど、彼等はそれを冗長にせずに、絶妙なバランスで盛り込み、その動のパートへと突入した瞬間の破壊力が正に激情系ハードコアの大きな魅力である瞬間のカタルシスその物なのだ。特に第2曲「Tragedy Of The Ruin」なんて最初っから全力で暴走するブラストビートの乱打とトレモロリフの残酷な殺戮ショーが繰り広げられ、悲壮感漂うボーカルが繰り出す約2分の暴虐その物となっている。今作は前半の楽曲これぞ激情とも言うべき破滅的なサウンドが繰り出されているが、絶妙なタイミングで入るキメやブレイク、ハードコア要素を殺さずに複雑かつドラマティックの展開していく楽曲といった点でも非常に魅力的であるし、何よりもツインギターでアルペジオとトレモロリフを巧みに組み合わせ、時に美しい旋律を重ね、時に粗暴なハードコアサウンドを共に放出するスタイルは楽曲の魅力をより増幅させていると思う。終盤の2曲は今作の中でも屈指の完成度を誇っており、序盤の美しいアルペジオが熱量を高める導入から、一気にブラストビートとトレモロリフが降り注ぎ、ポストブラック色をより強めながらも、持ち前の激情は全くブレていない第5曲「Anxiety To Return」、今作で最もドラマティックで力強く鳴らされるビートと、数多くのポストブラックの猛者に迫る壮大なスケールと美轟音が魅せる美しい情景から、heaven in her arms辺りの壮絶な情景を激情として鳴らす終盤へと雪崩れ込む第6曲「Limitasolation」は本当に素晴らしい名曲に仕上がっている。
彼等はライブも本当に凄まじく、つい先日観に行ったライブで彼等を知り、その音に一発でやられてしまって物販でこの音源を購入したのだが、DEAFHEAVENの前座を務めた実力はやはり凄いと思うし、盛り上がりを見せる国内激情のシーンを引っ張っていく存在にこれからなっていくと思うのだ。単なる激情とブラックの融合では終わらずに、美しくも熾烈なハードコアとして激情を鳴らすisolate、これから追いかけていきたい所存だ。
■isolate/INFOREST split album “壁画”リリースツアーファイナル(2013年2月24日)@渋谷O-nest
・heaven in her arms
一発目はHIHAから。去年は何回も彼等のライブに足を運び、その凄まじいライブに何度も感動を覚えたのだけれども、2013年初のHIHAは披露された新曲を含めて更なる進化を見せてくれた。1曲目の「縫合不全」からドス黒い空気を漂わせながら鳴る美しいアルペジオからして、今日のライブも凄まじい事になる予感しかしなくて、HIHAお得意の爆音でシューゲイジングする轟音トリプルギターの壮絶なるオーケストラとも言える黒の塊が降り注ぐ瞬間はやはり感動的である。「痣で埋まる」の様なハードコアな曲でも健在なトリプルギターの壮絶な音圧のアンサンブルだけど、今回のライブではそれがよりクリアに突き刺さってくる印象が大きかったし、新曲はポストロック的なアプローチを取り入れながらも、ハードコアをドラマティックかつ悲壮感をバーストさせる物で、現在レコーディング中らしい新作に対する期待を更に高めさせてくれる物だったし、最早御馴染みになっているラストの「赤い夢」の感動的な音像も素晴らしかった。長尺の曲が多いにも関わらず持ち時間が多かったのか40分程はライブをやってくれたと思うし、最初から一気にクライマックスへと雪崩れ込む悲しみを激情として鳴らすバンドとしてHIHAはやはり凄いと改めて痛感させられた。何度もライブを観ても、HIHAのライブは非常に感動的であるし、熾烈な悲しみの奥底から一抹の優しさすら僕は感じるのだ。来月はロシアでのライブが控えているし、国外でもHIHAは圧巻のライブをしてくれるに違いない。
・INFOREST
続いては本日の主役の一つである沖縄のINFORESTのライブ。シンセを前面に押し出したポストメタルと言ったバンドで、序盤にやたらとクラウトロック的な打ち込みのビートが流れた時は、どんなバンドなんだ!・と思ったりもしたが、気付いたらギターボーカルの人がヘビィでありながらも、美しい旋律を生かしたサウンドの中でポジティブさを感じさせる魂の叫びを聴かせて、それが胸を熱くさせる。ポストメタル的な音楽性でありながらも、彼等の音は非常に雑多だと思うし、ダンサブルなビートや、シンセの旋律を生かし、ハードコアやポストロック等の要素と見事な融和を果たしていた。長尺の曲が多かったから全4曲のアクトではあったけれども、ポストメタルの中でダンサブルさも取り入れ、それをプログレッシブかつ、ポジティブなエネルギーを全身全霊で放出する激情として鳴らす彼等は緻密さや多彩なアイデアを取り入れ、独自の音楽性を確立したバンドであると同時に、人間の衝動に対しても素直で、それを激しいパフォーマンスと共に鳴らしていた。何よりも美しい轟音のアンサンブルは一つの光の様でもあったし、それはこの夜にこの場にいた人々の胸を貫いた筈だ。全くの予備知識無しで観たバンドだったけれども、沖縄にこんなに良いバンドがいたのか!!
・PALM
トリ前は今、本当に熱い事になっている大阪のヴァイオレンスカオティックハードコアことPALMのアクト。今回の企画で一番肉体へと訴える暴力的なハードコアを鳴らすバンドであり、昨年リリースされた2ndが素晴らしかったのもあり、ライブを観るのが非常に楽しみであったが、これがもう想像以上のヴァイオレンスさで凄かった。音源よりも暴力的でありながらも、安定感もしっかりあるバンドのアンサンブルは一つの秩序を作り出しながらも、その秩序を崩壊させる物であり、えげつないギターとベースの音は早々にフロアの理性を崩壊させてモッシュ&ダイブの嵐!!彼等の音はカオティックであると同時に、極悪な刻みのリフの応酬と、怒涛のビートと、どこまでも暴力的に怒りを叫ぶボーカルがブルータルに暴走しまくり、その赤信号完全無視で、アクセル踏みっぱなしハードコアは、もう単純に格好良すぎる!!約10曲程を合間の短いMCを除けばほぼノンストップで繰り出し、多方面のエクストリームな要素を極限まで鍛えたヴァイオレンスなサウンドでブン殴りに殴りまくるPALMの狂騒と熱狂のハードコアは本当に最高の一言しか出てこなかった!!正に阿鼻叫喚のサウンドが繰り出す血の匂いのするハードコア!!
・isolate
トリは東京の激情系ハードコアバンドであり、本日のもう一つの主役であるisolate。DEAFHEAVENの来日公演でHIHAと共に出演したバンドでもあるけど、このバンドも本当に予備知識無しで観る事に。しかし彼等の持ち曲を全部演奏した今回のライブは本当に凄まじく感動的であり、数多くいる激情系のバンドの中でも彼等が本当に選ばれしバンドであると初見で体感させられる事になった。音楽性は激情系ハードコアとポストブラックメタルを融和させた物であり、簡単に言うとDEAFHEAVENの持つ美しさと、それをよりブラックやハードコアの要素を高めた物。ツインギターで繰り出される轟音系激情なトレモロリフの洪水、怒涛のビートが繰り出され肉体的なアンサンブルを体現すると同時に、振り落とされるサウンドの先にある、ダークで絶望的な感情が渦巻く美しさ。最早音塊と化しているサウンドの奥には一つの美しさを感じさせる旋律が確かに存在し、更には変則的に展開していくし、それらが本当にドラマティックだと思う。特に合間合間に挟まれる静謐なパートから、一気にブラストビートとトレモロリフと負の感情を全身から放出する瞬間は本当にカタルシスを感じた。静→動のアプローチは本当にあらゆるバンドが取り入れてる王道中の王道な手法ではあるけれども、その動にシフトした瞬間の爆発的な感覚が凄くて、ライブでそれが目の前で繰り広げられたら、本当に感情が叩き潰されるのだ。今回の企画は全バンドが猛者とも言えるレベルの企画だったけど、その締めくくりを彼等は全てを業火で焼き尽くし全身全霊のライブで締めくくってくれた!!今まで何でisolateを知らなかったのかと自分に対して怒りすら感じたよ。
本当に4バンド共、それぞれ自らの信じる音を全身全霊で放出し、もはやジャンルとしてとかそうゆう意味では無く、本当の意味での激情をそれぞれのやり方で見せ付けてくれたと思うし、日本の激情・ハードコアが今本当に凄い事になっていると肌で痛感させられた夜だった。主役である筈のisolateとINFORESTは全然知らない状態でライブに臨んだ形ではあったが、HIHAは更なる進化を、観るのが楽しみだったPALMは貫禄のヴァイオレンスなハードコアを、そしてINFORESTの沖縄から突然変異で生まれた新たなポストメタルの形を、isolateの激情とポストブラックの融合ではとてもじゃないけど片付けられない痛みとしての激情を、それぞれ体感出来た特別な夜になったと思う。
■The World Friendship Day(2013年2月22日)@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
・VELVET WORM
そんなわけで、途中からだが先ずはVELVET WORMのアクトを拝見。女性三人組の3ピースバンドなんだが、これがもう正統派暴走ブギー系ハードロックなバンドで、簡単に言うと、女性版Motörheadと言った所。吐き捨てる様ながなり声のボーカルと、女性バンドながら男らしくリフで攻めに攻めるスタイルは、古き良き暴走ハードロックといった印象、無骨ながらも中々格好良いバンドだったと思うし、見るからにファッキンビッチって感じのメンバーのルックスも含めてバンドに華があるのがまた良かった。後半半分位しか観てはいないけれども、それでも十分なインパクトはあったし、こういった正統派サウンドを、ストレートなリフとグルーブで放出するスタイルはかなり格好良いと思った。
・Razhead Modic
そしてこちらも初見なRazhead Modicのアクトへ。生のバンドサウンドと打ち込みやサンプラーの融和を果たしたデジタルロックな音楽性のバンドであり、それでいてスクリーモ辺りの要素を取り込んでいるバンドだ。要所要所で細かい仕掛けなんかを盛り込みつつも、メインになっているのはシンプル極まりないバンドのサウンドだと僕は思ったりもしたし、良い意味で非常にキャッチーなバンドだし、アプローチが非常に明確になっているからこそダイレクトに自らの魅力を伝える事に成功しているし、打ち込み導入のサウンド云々抜きにして、正々堂々とキャッチーなサウンドで勝負している点がかなり好印象を受けた。
・ampcharwar
トリ前は1年振りに見るampcharwar。久々に観たけど、キャッチーなパンキッシュさを持ちながらも、重心の効いたヘビィなリフとグルーブの応酬は更に高まっており、特にギターの音なんか直接的に肉体に訴える破壊力が増幅していたと思う。打ち込みのトラックを流しながら、生のバンドサウンドと見事な融和を果たしていた。リフの殺傷力だけでなく、躍動感とドッシリした重みとダンサブルさを備えたリズム隊が本当にこのバンドの持ち味だと思うし(ドラムが女性とは思えない位パワフルでドスの効いたビートを叩きつけてるのは本当に凄いと思う)。ヘビィネスから肉体に訴えるダンスミュージックはやはり凄みしか感じなかった。個人的にもっと評価されるべきバンドだと本当に思う。
・The Creator Of
トリは少し久々のライブであるTCO。今回は再始動後の新曲のみのセットだったのだが、これまでのライブでプレイし続けた新曲達は勿論だけど、ここ最近になって作られた新曲達も含めて更にライブで様になり、新たなヘビィネスとしてのTCOをこれまでのライブで一番放出していたと思う。凄まじい爆音で鳴らされる轟音の洪水だが、それは幾重にも鳴らされる楽器の音が見事に調和を果たし、新たな創造の瞬間としてのヘビィネスをオーガニックな感覚さえ携えて鳴らすのだ。最早定番になっている「Light」の静謐さからバーストする轟音のドラマティックさと、揺るがないダウンテンポのビートの屈強さも更にレベルアップしているし、「Wash Over」や「Resonance」の様なインストの新曲は、そのアンサンブルの神々しさに更に磨きをかけながらも、現在アップしている音源よりも更にダイレクトに迫ってくる重心の効いたアンサンブルの屈強さに更にビルドアップされているし、単なるポストロック的アプローチをしているってのではなく、ヘビィネスバンドらしいアンサンブルとグルーブの重さと、そんな重さを持ちながらも単なるヘビィネス的手法に頼るのではなくて、よりクリアでオーガニックなメロディを最大限に生かし、最果てのヘビィネスをして鳴らしてるから今のTCOは凄いのだ。特に歌物要素のある「Wind Up」は雷鳴の様なギターとビートのアンサンブルを生かしながら、よりメロウな余韻を感じさせる名曲だと思うし、「Light」に並んでこれからのTCOを担う重要な曲になると思うし、再始動以降のTCOを象徴する名曲だと思う。しかし今回のライブでは新曲中心のセットだったし、いよいよ再始動後初の音源のリリースも目の前に迫ってきてる証拠だと思う。いざ音源として新たなTCoが世に出て、それらの楽曲がライブでどう新たな世界を見せるのか、今から楽しみで仕方ない。
今回も楽しい夜を過ごさせて頂いたのですけど、他のバンドも十分良かったけど、やはり全てTCOが持っていってしまった感じはあったりする。本当に日に日に進化を目の当たりにしているが、それが一つの形になるのが、何度も言うけど楽しみで仕方ないのだ。そしてHEAVEN'S DOORは良いハコだなあと改めて思った夜でした。
■割礼 結成30周年・「ネイルフラン」「ゆれつづける」 リイシュー盤発売記念ライブ(2013年2月20日)@高円寺HIGH
・Boris
一発目はBorisからスタート。2011年の年末のワンマン以来のBorisであり、その間にも新たな音を生み出してきたBorisがどの様なセットで今回のライブに挑むのか非常に楽しみだったが、今回はここ最近のBorisの多岐に渡る音楽性の中からサイケデリックなborisとヘビィなBORISの両方を兼ね備えたセットでのプレイ。毎度御馴染みの栗原ミチオ氏は今回は参加せずに3人でのライブだったが、1曲目「Cosmos pt.2」から揺らぎの中で拡散するヘビィネスが炸裂!!徹底してダウンテンポのビート、2本のギターの激重リフの轟音、そして大量のスモークがステージを覆い、完全に神秘的な音像が目の前で繰り広げられる。ここ最近のポップな方向に振り切ったBorisも勿論最高だけど、やはりサイケデリックさから生み出される意識を覚醒させ揺らがせるヘビィロックとしてのBorisは本当に鉄壁だし、Atsuo氏のドラムが楽曲を引率し、wata嬢とTakeshi氏の音が粗暴でありながらも美し過ぎる旋律を轟音の彼方から奏で、そして最果てへと誘う。続く「Angel」では更にアンビエントやサイケデリックといった要素を高めて静謐で不穏なwata嬢のギターのアルペジオの反復、そして長いアンビエントなパートを越えた先に美しい轟音が花開き、最終的にはスラッジと美轟音が融合した最果てのアンサンブルで美しい彼方へと導かれてしまった。そしてラストはもう必殺の「決別」にて、光の彼方にある新世界を目の前で繰り広げ、照明やスモークの効果もあるが、目の前で放出される轟音の音塊が描く未知の世界への誘いとしてのヘビィロックにはやはり圧倒されるしか無かった。珍しくAtsuo氏がMCをしたりなんかもしてたのも印象的だったが、たった3曲で約40分のセットで、持ち前のサイケデリックヘビィロックをフルで発揮した今回のBorisのアクトはやはり圧倒的世界だったし、全てを置き去りにするバンドとしての貫禄は相変わらず健在だ。これからリリースされる音源もそうだが、今年のBorisは本当に大きく動いていくだろうし、本当に楽しみだ。

・下山(GEZAN)
続いては最近何かと話題になっている気がするバンドである大阪の下山のアクト。ライブ動画とかを観た限りは正直ピンと来なくて、今回のライブを観てみれば何か印象変わるかなと思って後ろの方でゆっくりと観ていたが、音楽性的には爆音ロックって感じだけど、どうしても僕個人としては村八分とかDMBQ聴けば良いやって感じになってしまったし、ベースの人が無駄に全裸だったりとかっていうパフォーマンスも個人的には少し滑ってる様にも見えてしまった。ただその爆音サウンドと、他の若手にあんまいない感じのロックロックしてる感じが評価されるのは何か分かるけどね。でも僕個人はそうゆう部分が逆に受け付けなかったりもしたのは残念ながら事実。ライブ観て特に何も感じなかったです。すみません。
・割礼
そして本日の主役の割礼のアクト。昨年末のワンマンでも、長年鍛えに鍛えまくったスロウ極まりない陶酔のグルーブに圧倒されたが、今回のライブに関してははっきり言ってしまうとBorisすら食ってしまってたよ。1曲目の「INスト」から甘く不穏の旋律と共に生み出される推進力を放棄したBPMのグルーブと、揺らめく炎の様な2本のギターが絡み、生まれる歪みに圧倒されてしまう。鎌田氏の音数を削りに削った淡々としたベースラインが生み出す余韻と、対照的にスロウで精神的なヘビィさと閉塞感に満ちたアンサンブルの中で躍動感に満ちたドラムを繰り出す松橋氏、そして山際氏と宍戸氏のギターが織り成す、何処までも奈落の底に落ちていく様なギターのアンサンブル、宍戸氏の陶酔の歌、それらを進化させ続けているからこそ割礼にしか生み出せなかったロックとなるのだし、それはある種のエクストリームミュージックであり、楽曲そのものはスタンダードなロックであるにも関わらず、それを甘く精神的に重く、そして極限までスロウにしたからこそ生まれた断層。それが更に剥き出しになり轟くライブは30年に渡って戦い続ける猛者の貫禄に満ちているし、絶対的な領域に到達してしまった割礼にしか生み出せない唯一無二のサイケデリックロックなのだ。「星を見る」の山際氏のゆらめくギターフレーズと、宍戸氏の独特の湿度のギターストロークと歌が生み出す更に甘く絶望的なロマンティックさも更に際立っていたし、「ゆれつづける」から披露された「散歩」は、更に空白の余韻の残響が際立ち、漆黒の炎が揺らめき、それが体の内側に入り込み、心を静かに焼き尽くす感覚すら味わってしまったよ。
何よりも圧巻だったのは本編ラストに披露された「リボンの騎士(B song judge)」である。15分以上にも及ぶ極限のサイケデリックロックであり、イントロの神々しい鐘の音色の様なギターストロークから既に精神が此方から彼方へと持っていかれるし、中盤から終盤の長ロングギターソロは本当に圧巻であり、どうやったらこんなディストーションの音を生み出せるのか分からないってレベルで、蛇の様に這い回り、まとわりつく2本のギター、それに反して淡々と反復する鎌田氏のベース、とてつもないテンションで躍動としての激情を全身全霊で叩きつける松橋氏のドラムが生み出す圧巻のサイケデリックオーケストラ!!もう言葉すら出ないよ!!!!アンコールでは名曲「崖っぷちのモーテル」を披露し、一転して割礼の甘いロマンティックさを素直に伝える優しいアンサンブルとメロディにまた昇天。
再発記念のライブにも関わらず、再発音源からは「散歩」しか披露してないセットだったが、アンコール含めて全6曲約一時間の陶酔のオーケストラは圧倒的過ぎたし、今回割礼を初めて観た人も一気に虜になったと思うし(現にライブ終了後、MCでの松橋コーナーの効果もあるのかは知らないけど、音源を購入してる人も多かった。)、30年活動し、今こそが最高峰であり続ける割礼は僕からしたら絶対的であり、唯一無二のロックバンドなのだ。

もう何というかBorisのライブも言うまでも無く素晴らしかったが、それすらも霞んでしまうレベルで割礼というバンドの凄みを改めて知らされてしまったライブになってしまった。前日にOld Man GloomとConvergeが圧巻のハードコアを見せ付けてたのもあって、今日のライブに対する自分の中のハードルは相当高くなっていたけど(まあ音楽性は全然違うけど。)、それでも割礼の凄まじいサイケデリックロックは全てを塗り潰してしまったし、本当に何でこんな凄いバンドなのっていうレベルで凄まじいライブを体感させられてしまった。長年に渡って活動しているからとかそういった理由じゃ片付けられないサイケデリックロックの絶対神、それが割礼なんだ。
本当に割礼のライブを観た事が無い人は、一度でいいからライブに足を運んで欲しい。奈落と彼方の断層が生み出すサイケデリックオーケストラには全てを塗り潰されてしまうから。
■CONVERGE(2013年2月19日)@渋谷CLUB QUATTRO
・Old Man Gloom
スタートの時間から約10分程押して先ずは前座であるOld Man Gloomのアクトがスタート。俺たちのアーロン大先生に加えてCave InのCalebにConvergeのKartというスペシャル過ぎるメンバーが集結し、昨年復活&傑作「NO」のリリースに加えて今回の来日と狂喜乱舞したフリークスも多かったと思うが、結論からいうと、のっけから激重の圧巻のスラッジ&ハードコアサウンドがクアトロで炸裂した。2010年のISISの日本での最後のライブ以来、実に3年振りのアーロン大先生は髪が伸びて、更に貫禄が増していたが、その音は本当に熾烈極まりない物になっていたし、音源を軽々しく超える突き抜ける激重の轟音のリフの応酬と岩石ぶん投げまくりなビートの行進に、早々から菜脳髄は完全に粉砕。音源でのエレクトロニックな要素よりも、よりダイナミックなバンドサウンドが前面に出まくったサウンドは更に殺気立っていたし、鉄壁のアンサンブルの中で音源よりもダイレクトにハードコアとしての格好良さを出しながらも、トリプルボーカルのシャウトの応酬と激重サウンドの奥にある微かなメロウさと、屈指の鉄槌ヘビィネスサウンドが出まくった1曲目「Gift」からOMGの完全勝利は確定だったし、新作「NO」からの「Common Species」から「Regain/Rejoin」の流れはアーロンがかつてやっていたISISの迫るだけの感動的であり、より殺意に満ちた激重ハードコアに肉体と精神がネクストレベルに持っていかれてしまった。セットの方も、Daymareから過去音源の再発っていう状況が関係しているかどうかは知らないけど、過去の音源からも結構やってくれたし、45分程のセットだったが、前座とは思えない圧巻のハードコアにメインディッシュ前に燃え尽きそうになってしまった。ボストンハードコアオールスターの凄みと貫禄に会場の熱気は既にクライマックスになってしまったし。本当に心を砕かれる悲痛で熾烈な激重オーケストラ、破壊の美学としてのハードコアが炸裂していた。

セットリスト
1.Gift
2.Flood I
3.Branch Breaker
4.Common Species
5.Regain/Rejoin
6.Hot Salvation
7.Jaws of the lion
8.Skullstorm
9.Sleeping With Snakes
10.Rape Athena
11.To Carry the Flame
12.Zozobra
13.Afraid Of
14.Bells Dark Above Our Heads
・Converge
そしてOMGのアクトが終わってから実にスムーズな転換で20分もしない内にメインアクトであるConvergeのアクトへ!もう一言で言うなら圧巻のカオスが目の前に広がっていた。1曲目「Heartache」からもうメンバーは全力疾走で混沌を繰り出し、フロアは完全に危険極まりないモッシュの嵐へ!!しかもフロア後方ですらモッシュが起きまくっていたし、最前は酸欠状態になりながらも皆が拳を突き上げて暴れ叫ぶ!!音源ではハードコアの粗暴さと、緻密なカオティックサウンドが炸裂するConvergeであるが、ライブではハードコアバンドとしての馬力が更に凄まじいものになってしまっている、楽器隊が暴走しまくるアンサンブルは一歩間違えてしまえば簡単に崩壊してグダグダになってしまってもおかしくないのに、その崩壊寸前のバランスを絶妙に保ち、確かなアンサンブルを、粗暴さを倍プッシュにして放出し、崩壊しそうでしないギリギリのラインを暴走し、それが彼等のカオティックハードコアを更に混沌へと導いているのだ。混沌の中で原始的なハードコアの強靭さとシンガロングパートまで盛り込んでいる「Dark Horse」も暴走する音塊が暴力的に降り注ぎ、フロアを狂わせる。最新作のリードトラックであり、彼等のカオティックハードコアの更なる進化形態である屈指の名曲「Aimless Arrow」も、音源の計算された混沌とは全く違う、テクニカルなサウンドが熾烈で歪みまくった暴走する猛獣と化したハードコアとして放出される様は、もう人間の本能の外してはいけないリミッターを軽々しく粉砕し、狂騒へとダイブさせてしまう。
ライブレポでこんな事を言うのはアレなのは十分承知してはいるけど、本当にConvergeを前にしたら「凄い。」とか「格好良い!」とかそう言った単純な言葉しか出なくなってしまうのだ。もう音源よりも熾烈さとヴァイオレンスさを極限まで高めて、崩壊しかねない瞬間のカタルシスと、獰猛な猛獣と対峙し、喰うか喰われるかの領域まで到達したサウンドは、人間の理性という理性を叩き折りまくり、ただ混沌の中で暴れる事しか出来なくなってしまう。セットは過去作の名曲も満遍なくプレイしてくれたし、それらも音源とは全く違うConvergeのハードコアバンドとしてのパワーの凄まじさに圧倒されたし、何よりも非情で暴力的なサウンドであるにも関わらず、破滅的な神々しさすらConvergeから感じたし、Convergeは間違いなく00年代の俺たちのハードコアヒーローであると同時に、彼等の登場以降、彼等の上辺をなぞっただけの幾多のフォロワーには死んでも到達出来ないであろう、原子的な混沌を生み出しているし、徹底して自らのサウンドを鍛えに鍛えまくったからこそ生み出せる狂騒であり、熾烈さとヴァイオレンスさが咲き乱れるカオティックハードコアは唯一無二であると同時に、Convergeは不動の帝王であり続けるから到達出来た世界なのだ。
ライブは一時間程で終わってしまったが、僅かなMC以外はほぼノンストップで名曲を混沌の乱打として繰り出し、終わり無き狂騒のビッグバンが炸裂していた。特に本編ラストの「The Broken Vow」では本当に単なる音塊になってしまったアンサンブルが直下型の落雷として轟き、そして壮絶なる世界が広がっていた。そしてアンコールの「Last Light」であっという間にライブは終了。一時間を全力で暴走したConverge、もうなんだろうか、ハードコアはどこまでも人を狂わせる事が出来るし、人をハッピーに出来るんだなって思ったよ。特にライブ中盤か終盤辺りで俺たちのアーロン大先生がダイブしている光景とか(目の前でダイブしててびっくりした)、終盤の「Axe to Fall」で皆がモッシュしながら笑顔で拳を突き上げてる光景とか、脳みそグチャグチャになりながらモッシュしまくりながら観てたけど、このレポ書きながら色々思い出してみると、本当にあの空間は最高にハッピーなハードコア地獄だったんだと思う。

セットリスト
1.Heartache
2.Concubine
3.Dark Horse
4.Heartless
5.Aimless Arrow
6.Trespasses
7.Bitter and Then Some
8.All We Love We Leave Behind
9.Sadness Comes Home
10.Locust Reign
11.Glacial Pace
12.Cutter
13.Worms Will Feed/Rats Will Feast
14.Axe to Fall
15.Empty on the Inside
16.Eagles Become Vultures
17.The Broken Vow
en.Last Light
前座のOld Man Gloom、そして主役のConverge。どちらも熾烈極まりないハードコアを放出していたし、この日の夜は間違いなくスペシャルな夜だったと思うし、それは足を運んだ人々みんなが思う事だと思う。唯一今回のライブに不満があるなら僕がConvergeで一番大好きな「heaven in her arms」をプレイしなかった事だけど(激情のあちらのバンドも大好きだけど、元ネタであろうこの曲も死ぬ程大好きなんです。)、そんな事はどうでも良いのだ。とにかく最高にConvergeが格好良すぎたし、俺たちのハードコアヒーローなんだよ。笑顔と突き上げられる無数の拳と混沌と狂騒が生み出すカオス、それがConvergeなんだから!!
(でも本音言うとSWANSもめっちゃ観たかった。何故被ってしまったのか…)
■大Z祭(2013年2月13日)@渋谷O-EAST
・CRYPTCITY
一発目は中尾憲太郎率いるCRYPTCITYから!ドラムの弘中氏がドラムで参加してる事もあり、Zとは親交の深かったバンドだが、とにかくジャンクさと鋭利さと轟音のダンスミュージックをこれでもかと繰り広げてくれた。メンバーの半分が外国人である事から生まれる無国籍でズ太いアンサンブルもそうだけど、中尾氏と弘中氏のリズム隊の生み出すグルーブが本当に凄い!ダンサブルでありつつも、極太で巨根なベースと、どこまでもタイトで力強いドラムが織り成す躍動感、セブ氏のジャンクでアンビエントで、それでいてロックとニューウェイブ感覚が一緒になった独自のギターワーク、ここぞとばかりの場面で轟音サウンドが耳を貫き、変則的でありながらも、最高に踊れるロックとしてCRYPTCITYは本当に凄いバンドだと改めて再確認させられたし、30分にも及ぶ狂騒のサウンドは今回のイベント一発目から一気にフルスロットルで燃え上がっていた。
・DMFB(Dub Magus From Beirut)
そしてサブステージにて大阪からDMFBのアクト。ラップトップとパーカッションの2人組で、今回初めてその音に触れたが、これがまたダブの範疇を超えた、民族音楽的ビートの酒池肉林のサウンドだった。序盤はミニマルなビートの反復が繰り広げられていたが、それが徐々にビートの野性味が加速し、気付いたら大地の躍動を想起させる物へと変貌。リズムパット・パーカッション・ラップトップを駆使し、電子音のビートと生のビートを巧みに組み合わせて、ダンスミュージックの一つの形を提唱していたと思うし、これはかなり良かったぞ!!
・LOSTAGE
再びメインステージでLOSTAGEのアクトへ。1曲目から「BLUE」の青い透明感が疾走し、場の空気を一気に変える。LOSTAGEは本当に三人編成になってから楽曲・ライブ共に確変的進化を遂げたバンドだが、今回のライブでも盟友へ向けての渾身のアクト。「DOWN」の鋭角ポストハードコアサウンドから、ゲストサックスにZの根本兄を迎えての「真夜中を」、そして必殺の「ひとり」という前半のLOSTAGE節が炸裂しまくった流れでもう体温が一気に沸点を軽々しく超えてしまう。かつてはZも兄弟バンドであり、同じ兄弟バンドであるLOSTAGEは本当に深い親交で繋がっていたと思うし、MCで五味弟はZへの愛を語ったりもしていた、中盤のアチコ嬢をコーラスに迎えての「楽園」の切なさに満ちたダブサウンドで一つの優しさを生み出し、そして終盤2曲はZの魚頭氏をギターに迎えて4人編成で「Television City」、「MinDJive」という初期の名曲を披露し、フロアは完全にモッシュの嵐に。どこまでも羽ばたいていくオルタナ・ポストハードコアサウンドで更に宴を加速させていた。ワンマンも最高のライブだったが、今回もお見事でした!!
・Ropes
サブステージにてART-SCHOOLの戸高氏とアチコ嬢によるアコースティックデュオRopesのアクトへ。その評判を耳にしていたので、ライブを観るのが楽しみだったが、本当に素晴らしいアコースティックサウンドを聴かせてくれた。どこまでも伸びやかで優しいアチコ嬢の歌声と、戸高氏が優しく爪弾くアコギの音色。本当にたったそれだけのサウンドだけど、たったそれだけで胸に響く歌をしっとりと聴かせてくれたし、KAREN時代の曲も披露してくれたりもした。アコースティックという最小限の編成から、最大級の多幸感を生み出すRopes、またそのライブを体感したいと思わせてくれた。
・M.A.S.H(大沼志朗、森順治、雨宮拓)+井野信義
またメインステージに戻り、日本の有数のジャズプレイヤーによる演奏へ。フリージャズというかインプロ的というか、セッションライブというか、ジャズに関して全く無知な僕は、その音楽性を理解するのに精一杯になっていたが、そんな僕でも各プレイヤーがそれぞれ凄まじい演奏技術を持っているのは嫌でも理解したし、即興音楽的な、次にどんなアプローチが待ち構えているか分からない感覚、それぞれの音がぶつかり合う感覚、そのダイナミズムはやはり凄みを感じた。特に最後に根本兄をサックス、弘中氏をドラムに迎えてのツインサックス・ツインドラムの編成でのセッションは圧巻の一言だったし、長年戦い続ける孤高のプレイヤー達の競演にフロアからは本当に盛大な拍手が巻き起こっていた。
・SKILLKILLS
バースペースで9dwの高揚感溢れる音に酔いしれながら、知人と話なんかをしてる内にメインステージにてSKILLKILLSが始まった。今回非常に楽しみにしていたバンドの一つで、そのライブの凄さは、各方面で聞いていたが、正直に言うと想像以上のライブだった。弘中氏のドラムが凄いのはもう言うまでも無いし、スグルキルス氏のベースも凄いのも言うまでも無いのだが、本当にこのバンドはリズム隊が凄すぎる、どこまでも最小限の音しか鳴らしていないのに、その音の一つ一つの重みが本当に他とは違うし、空白すら聴かせ、変則的に変化を続けながらも、一貫してうねるグルーブの凄さ、そして多彩なアイデアを生かしに生かしまくり、単なる人力ヒップホップで終わらない本質的な意味でポストである続ける音楽性、マナブスギル氏のリリックのセンスと毒素、そしてビートに最高に嵌るフロウ。ヒカル氏がターンテーブルとキーボードを駆使し、余白を埋めるどころか、更に掻き回し、ヤバ過ぎる技術とアイデアと独創性を最大限に生かし、新たなレベルミュージックを確立したskillkillsは、別格のバンドであるのだと思う。そしてそのグルーブの躍動と中毒性が更に加速しまくったライブはフロアを緊張感と狂騒で躍らせまくっていた。初めてそのライブを観たが、これは本当にヤバイスキル!!圧巻!!
・NICE VIEW
長丁場のイベントだったので空腹に耐えかねて食事を取っていたのでセノオGEE氏のライブはちょろってしか観れなかったのだが、続くトリ前の名古屋が誇る3ピースファストコアバンドであるNICE VIEWのアクトへ。それがもう余計な言葉なんか必要無い位に圧巻のライブだった。超光速で繰り出されるビートの嵐、光速ギターリフの応酬。ツインボーカルの絶唱の掛け合い。ハードコアのありとあらゆる要素を喰らい尽くし、それをどこまでも獰猛な音塊として放出されるライブは、もう余計な事なんて何も考えられなくなってしまう。実に30分近くに渡って一杯曲もやってくれたりもしたが、そのどれもが屈指のキラーチューンであり、モッシュの渦が巻き起こる。しかもキャッチーさもしっかりあるからもう最高!!何よりも竜巻太郎氏のドラムが本当に怒涛の音の洪水であり、超高速のビートを乱打には、もうテンションはブチ上がるしかない、格好良かった!!とか凄かった!!としか言えない位、モッシュしまくてったし、ちゃんと言葉でそのライブの凄さを伝えられないのが悔しいけど、本当に格好良いハードコアの前じゃ「凄い」、「ヤバい」、「格好良い」。これだけの言葉しか出なくなってしまうし、NICE VIEWは間違いなくそんなバンドだ。名古屋のハードコアの重鎮の貫禄、痛感するしか無かった!!
・Z
そしていよいよ最後のライブとなるZのアクトへ!長丁場にも関わらず、フロアは本当に沢山の人で埋め尽くされており、そしてZという最果てのバンドの最後をこの目に焼き付けようとしていた。そして始まった。1曲目は「ベロ」からキックオフ!!硬質で全てを切り刻む魚頭氏のギターリフから始まり、そして根本兄が叫ぶ!弘中氏のドラムも過去最大級のビートの重みに満ちており、そして狂騒としての激情をどこまでもアバンギャルドかつ、破滅的に描く屈指の名曲によって、既にZにしか生み出せなかったハードコアが咲き乱れ、余計な感傷だとかそういった物を全部否定するかの様に圧倒的世界が目の前で繰り広げられている。続く「ほっくメキ」もそうだが、「絶塔」の楽曲はビートの強靭さ、リフの破壊力、解き放たれたサックス、根本兄の全てを絞りつくす様な叫び、全てが極限まで高まってしまったからこそ生まれた激情であると同時に、それを体現するライブは本当に世界が別の物へと変貌していく瞬間を眺めている様ですらある。「NEWわけを煮る」ではカヨ嬢をコーラスに迎えて披露され、ポップさからそれをぶった切る混沌へと雪崩れ込む瞬間は本当にゾクゾクしたし、LOSTAGEの五味弟を迎えての「DONUTSの罠」はZで最も分かり易い破壊力を持ちながらも、テンプレートに収まらない異形さもあるし、ツインギターの音圧の凄み、より立体的になったアンサンブル、ビートが繰り出す破壊的衝動、リフとリフの衝突、Zが単なるアバンギャルドなバンドでは終わらずに、狂騒と破壊力と同時に生み出すバンドとしての証明であった。
そしてゲストに元メンバーである根本弟を迎えてツインドラム編成になり「新今日」から「新今日」を披露。僕が個人的にZで一番大好きな楽曲であると同時に、魚頭氏のギターも最もキレにキレまくり、根本兄の歌詞の世界も、サックスも全て開放され、そしてツインドラムの正確無比であり、タイトなビートの重心とフリーキーさも解き放たれており、更には極限まで冷徹でありながらも、その膨張していくスケールがある意味ドラマティックですらあるし、そして終盤で極限のエクスペリメンタル世界へと雪崩れ込む瞬間は比喩でもなんでもなく、脳が覚醒する瞬間を感じ、そして意識が完全に別の方向へと導かれてしまった。それは続いて披露された「うくす」、「以上でも以下でも」でもそうだったし、極限という極限を極めようとしたZにしか到達出来なかった領域だと思うし、もうグチャグチャになった意識、そして目の前で起きている音の世界について何も考えられなくなってしまい、ただ極限を体感する快楽が全身を支配していた。
更にゲストに元メンバーである山田氏を迎えて1st「御壁」から「500万円」へ。フリージャズの要素を分解に分解しまくり、それをハードコアの先のハードコアとして打ち鳴らし、更には山田氏の解放されたベースがまた意識をネクストレベルまで持っていく。そして初期のキラーチューン「図式マン」へ。Zの持ち味である魚頭氏の強靭なギターリフの反復による陶酔感覚は、この初期の楽曲から既に確立されていたのを改めて痛感する。走りまくる根元兄弟に対して「間違えすぎ」と魚頭氏が一旦曲を中断し、再びやり直すなんていう微笑ましいシーンを挟みながらも、その二回目の「図式マン」は反復の中で変化するギターのトランス状態が更に拡散し、絶頂!!
「御壁」の曲を2曲披露し、山田氏が退場し、今度はCRYPTCITYのセブ氏を迎えて「全員OUT」を披露、「図式マン」での高揚を引き継ぎながら、アンビエントな感触のセブ氏のギターを魚頭氏のリフが、また新たなトランス状態を生み出す。そして本編ラストであり、根本弟のZでの最後のプレイとなるZ流スラッシュハードコア「USO村」へ!!ザクゾク切り刻むリフと、怒涛のツインドラムのビートが生み出す直情的でありながらもあらゆる型を破壊するサウンドにもう何度目か分からない絶頂へ!!こうして本編は終了。
そしてアンコールの手拍子に早々にメンバーが再び登場し、今度はセノオGEE氏とskillkillsのスグルキルス氏を迎えて「まぁなんて新しい 今があったはずなのに 怠惰な日々」へ。セノオ氏の独創性と変則的フロウが織り成す極限のラップと、弘中氏とスグルキルス氏の極限のグルーブ、魚頭氏と根本兄のギターとサックスの極限の音色が織り成す人力ヒップホップで冷徹さを極めた情景へと雪崩れ込む。そしていよいよアンコールラストであり、Zの最後の曲となる「蛇鉄」へ。末期のZでは毎回ライブで最後に演奏されたポリリズムの極限ともいうべきこの曲で、再び3人での演奏、今までの全てを放出するかの様な「蛇鉄」によって、Zは自らのハードコアを極限まで極めたからこそ生まれた不穏さと、その先にある新たな世界を描き、そして2013年2月16日。Zは最後を迎えた。二時間にも及ぶハードコアの最果てが、確かにあった。
セットリスト
1.ベロ
2.ほっくメキ
3.NEWわけを煮る
4.DONUTSの罠
5.新今日
6.うくす
7.以上でも以下でも
8.500万円
9.図式マン
10.全員OUT
11.USO村
en1.まぁなんて新しい 今があったはずなのに 怠惰な日々
en2.蛇鉄
最後の最後に根本兄が、改めて今回のZの解散についてMCで語っていたし、それに対してそれぞれが思うこともあるだろうし、Zの解散については僕は何も触れない。しかし魚頭氏も根本兄もそれぞれMCでメンバーに共演者に、来てくれた人々に感謝の言葉を述べていたし、僕自身も今回の「大Z祭」が本当に多くの人々が集結し、そしてZという唯一無二のバンドが終わった瞬間を目撃した。その事実で十分だと思う。僕個人としては本当に清清しさすら感じるラストライブだったと思うし、極限を極めようとして極めた男たちの最後の激情をその目で焼付け、その耳で体感したという事実。それが心から嬉しく思うのだ。メンバーそれぞれがまた新たな音楽を作ることも宣言しているし、僕は今回のZのラストライブでは感傷なんて全く無く、本当に心の底から「お疲れ様です。」と「最高のバンドであり最高のライブでした!」それだけが言いたい。
魚頭氏は根本兄によって人生が変わったという事をMCで言っていたが、僕自身もZというバンドによって音楽に対する価値観を変えられてしまった人間の一人だし、それは僕以外にも本当に多くの人々が思っている事だと思うのだ。根本兄弟と魚頭圭によってSWIPE、There Is A Light That Never Goes Outと続き、そして最後のバンドという意味で名付けられたZという名前を冠した極限のハードコアは、文字通り最後を迎えてしまった。しかし根本兄弟も、魚頭氏も、弘中氏も、そのZの先にある別世界をそれぞれ目指して進んでいく、たったそれだけだ。何も悲しくなんか無いのだ。
この極東の日本という国にZという最果てを目指し燃え尽きたバンドがいた、その事実を一人でも多くの人に知って欲しい。そして彼等が残した3枚のアルバムは僕の中で永遠のマスターピースだ。
■comadre/comadre
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Touche Amore、Loma Prietaと並んで現在のUS激情を引っ張る存在であり、ベテランバンドでもあるcomadreの2013年リリースの4枚目のアルバム。US激情を語る上で欠かせない存在である彼等だが、今作は一つの変化と進化を見せた作品であり、長年活動を続けるcomadoreの新たな可能性と、一つの渋さすら手に入れた名作に仕上がった。
どこまでもソリッドでストレートな激情を聴かせるのがcomadreの魅力ではあるけれども、今作はより渋い作品でもあり、キャッチーな方向に振り切れ、更には多様性も手に入れた作品である。初期作品に比べてしまうと、ハードコアとしての破壊力っていう点のインパクトは少し弱いとは思ったりもするけど、これまでのcomadoreの作品からの流れを見れば必然的な変化でもあるし、ハードコアとしての真直ぐで全力な疾走感もしっかりある。まず大きな変化としては、録音が本当にクリアで生々しくなっている事だ、楽器隊の音がこれまで以上に更に輪郭がはっきりしているし、それをある種のざらつきと生々しさを感じる湿度で録音されているのが本当に大きい。そして楽曲は今までになくキャッチーになっている。ハードコアとしてのプリミティブな衝動はそのままに、エモの方向にも振り切れた楽曲郡は、ソリッドで余計な贅肉を削ぎ落としたcomadre印のアンサンブルの中から、見事にグッドメロディを奏でている!更に楽曲によってはホーンやオルガンを導入するという新たな試みを施しているが、それが決して蛇足にはなってなくて、今作のグッドメロディを最大限に生かす効果を生み出しているし、更には長年の貫禄もあるのだろうけど、バンドのサウンドに一つのいぶし銀な渋さまで与えているのだ。ハードコアのテイストを感じさせながらも、よりエモ的な方向へと振り切り、更にキャッチーになりがらも、聴き込む度にじわじわと沁みる旋律の良さと、ソリッドでありながらも、どこか地に足をしっかり付けた余裕まで感じさせている。そして何よりもどこまでも自由に羽ばたく軽やかさすらあるし、ストレートなロック・ハードコアであり続けながら、新たな境地にcomadreは到達したのだ。
数多くの激情系ハードコアバンドが存在するが、今作でcomadreは間違いなく、激情だとかハードコアだとかを超えた、ストレートで最高に渋いロックバンドとしての器の大きさと、長年鍛えたサウンドを開花させ、新たな進化を手に入れたのだ。現行のUS激情のバンドの中でも間違いなく最重要バンドの一つであり、今作で日本でも新たなリスナーを獲得するだろう。ハードコアファンは必聴な一枚!
■Seven Sisters Of Sleep/Seven Sisters Of Sleep
![]() | Seven Sisters of Sleep (2011/06/2は1) Seven Sisters of Sleep 商品詳細を見る |
アメリカはカルフォルニアのスラッジメタルバンドであるSeven Sisters Of Sleepの2011年リリースの1stアルバム。リリースはSouthern Lordから。友人に薦められて、予備知識なしに音源を購入したが、これが滅茶苦茶格好良いスラッジだったのだ。それでいて激情系ハードコアの色も強く出ており、スラッジでありながらもプリミティブで粗暴なハードコアとしても最高に極悪な1枚になっている。
こういったスラッジ系のバンドは基本的に楽曲が長尺になっているバンドが多いのだけれども、今作は8曲20分という非常にコンパクトな作品であり、楽曲は1分台、2分台ばかり。音自体は紛れもないスラッジであるのだけれども、元々スラッジコアがハードコアの連中から始まった音楽である事を思い出させる、極悪な激情系ハードコアでもあるのだ。EyeHateGod辺りの影響を感じさせながらも、引き摺るスラッジさと、そのスラッジな重さはそのままにハードコアらしくBPM速めで突っ走るパートもあったりと楽曲の緩急はかなり強い。ギターのハウリングから始まる第1曲「Monasteries」ではこれぞスラッジと言わんばかりに引き摺る音の重苦しいグルーブとチューニングの重いギターリフ、のた打ち回る絶叫ボーカルと、スラッジ色全開で重圧殺してくる。しかし第2曲「Passed Out Standing」では悪の軍隊の行進の様なリフの応酬で攻めに攻めまくり、スラッジコアと激情系ハードコアの融合とも言うべきサウンドを見せてくれる。第3曲「Tide is Rising」では疾走するパートも盛り込み、正に暴走する重戦車とも言うべき獰猛さで殺しにかかってきているが、ブレイクダウンしてからは一気にBPMを落としてスラッジコアな引き摺るサウンドも盛り込み落差の激しさを見せても来る。コンパクトな楽曲もあって中だるみする事も無く、ハードコアとスラッジの良さと危険性を濃縮したかの様な楽曲、サザンロックの影響を感じさせるリフのセンス。とにかく凄まじい音圧と、ロウなサウンドの下劣さと、容赦は全く無いし、まさに泥水の中に沈む様なスラッジハードコアは、この手に愛好家には本当に堪らないサウンドだと思うし、この攻撃性は全身で浴びてしまうと全身複雑骨折保証物。
古き良きスラッジコアの流れを汲みながらも、よりハードコアとしての粗暴さを高めたこいつらは、正にスラッジの危険性を容赦無く噴出しながら、それをハードコアのダイレクトさで全力でブチ殺しにかかっている。EyeHateGod好きは勿論、激情系ハードコア好きにも是非薦めたい1枚。1stにしてかなりの破壊力を持っている!!
■Z会 17発(2013年2月9日)@新代田FEVER
・LITE
根本兄と魚頭氏の前説からZ会はスタート。そして一発目は国内マスロックの代表格であるLITEの出番。1曲目はもう御馴染みの「Ef」でキックオフ。彼等の代表曲でもあり、必殺のマスロックチューンは本当にアンサンブルを限界まで鍛え上げ、観る度に進化を感じる。勿論その演奏技術の高さも凄いのだけれども、ストイックに自らのアンサンブルを鍛え続けているからこその貫禄、肉体的な躍動感と緻密に構成される楽曲の知性という両方を極め、更にはここ最近のラップトップ・シンセを導入した楽曲でも、それらの音を生かし、押しと引きを巧みに使い分けて、脳髄を覚醒させるマスロックは流石の一言。嵐の様に繰り出される音の乱打と、どこまでも獰猛でありながらも、計算されたアンサンブルの巧みさ。正統派マスロックでありながらも、他とは一線を画すLITEというバンドは日本のマスロックだけでなくインストミュージックを背負うだけのバンドになったなって改めて思った。あっと言う間の30分だったが、のっけからFEVERの熱量を熱くしてくれた。
・Gomnupers
続いては札幌が誇る重圧殺マシーンことGomnupers。恐らくは約3年振りの東京でのライブだが、元々ファストコアだった彼等がスラッジコアへと変貌し、重圧殺マシーンとしての凄みを不動の物にしているけど、今回のアクトでもそれは健在、シンプルな3ピースでのインストスラッジコアであるけれども、とにかく重い!シンプルにひたすらリフで攻めつつも、極端に遅くなったアンサンブルの引き摺るグルーブ、ギターもベースも低域出まくりな凄まじい重低音、基本的にはリフの反復で楽曲は構成されていながらも、時折複雑に入るドラムのキメやブレイクがまたグルーブを増幅させ、ただFEVERを持ち前の重低音で揺らしに揺らしまくる!楽曲こそ結構コンパクトであるのに、どの楽曲も終わりなくリフと重低音の反復の引き摺る推進力放棄なグルーブで埋め尽くされているから、時間間隔を狂わされ、気付いたら脳が壊されている。本当に圧巻のアクトだったし、札幌が改めて化け物ばかり生み出す修羅の国である事を再認識させられたよ。重圧殺マシーンのおぞましさをFEVERにいた人々は嫌でも痛感した筈だと思う。
・mouse on the keys
そしてZとは長年の盟友であるmotkのアクトへ。二台の鍵盤とドラムが織り成すインストミュージックはどこまでもクリアであり、とにかく躍動感溢れながら緻密に複雑なビートを叩き出すドラムと、二台の鍵盤の流れる音は下手したらシンプルな編成でありながらも、とにかく情報量が凄く、幾重にも音は重なり合って、見事に美しい流線型を生み出すアンサンブル。どこまでも透明でありながらも、不穏さも加速させ、それが冷めない熱病の様なテンションで繰り出される。ポストロックは引き算の手法で生み出すバンドが多かったりするけど、彼等は引き算も足し算も使い分け、それでいて必要な音のみを生み出しながらも、その音の情報量が凄いし、何よりも圧倒的な高揚感を彼等の音楽からは感じる事が出来る。人の意識をネクストレベルまで高める鋭くあり、優しくもあるアンサンブルの別世界。ラストはZの根本兄もサックスで加わり、更にフリーキーさも高めてどこまでも自由に羽ばたく音が毎踊っていた。Zの長年の盟友は、Zの終焉間近の今回のZ会に間違いなく不可欠だったし、本当に良いライブをしてくれたよ。
・Z
そして今回の主役であるZのアクト。残り2本となったZでのライブのセミファイナルであり、根本兄が75分のロングセットでやるという宣言にフロアは一気に興奮の渦に。そして一発目はもう御馴染みの「ベロ」でキックオフ!!魚頭氏の全てを切り刻むギターリフから始まり、根本兄がいきなり叫びながらフロアへダイブ。ただでさえフリーキーでエクスペリメンタルであるのに、更にはハードコアの強度や肉体へと訴える強度まで手にした激情の最果てにあるラストアルバム「絶塔」の必殺の1曲にフロアはいきなりモッシュ&ダイブの嵐、ハードコアとしての強度を持ち、弘氏の躍動感と強度溢れるビートと、魚頭氏のリズムを引率しながらも、極限まで研ぎ澄まされた人間アンプサミットの名を欲しいままにする音作りとリフの強度、根本兄のフリーキーなサックスが生み出す脳を完全に異次元へと誘う、どんなドラッグよりも飛べるエクスペリメンタル激情系ハードコアZの本領が既に発揮されていて、もう頭はよく分からない状態に。続く「ほっくメキ」でもそれは健在でFEVERをカタルシスへと飲み込んでいく。「NEWわけを煮る」ではhununhumのカヨ嬢がコーラスで参加し、パーカシッブな軽快さの中での不穏さも見せる。そして魚頭圭大爆発!!な「DONUTSの罠」でギターリフが生み出す極限世界が描かれ、フロアのテンションは最高潮へ!!
そして元ドラムであり、ゼアイズ時代から「新今日」まで根本兄と魚頭氏と共に戦い続けた根本弟こと根本歩がゲストとして加わり、根本弟と弘氏のツインドラム編成になりZ屈指の極限のサイケデリックエクスペリメンタルな楽曲である「新今日」へ。ツインドラムでビートの音圧が増幅され、更にタイトにシンクロしながら、それぞれの持ち味を生かしたプレイを繰り出し、ビートはより複雑怪奇に、そして長尺の中でよりサイケデリックな高揚感を生み出すギターとサックスが織り成すドラッギーな音像はあらゆる感覚の常識を破壊する物だし、本当に圧巻だった。そこからツインドラム編成のまま「新今日」に収録されている楽曲をプレイするが、サイケデリックなエクスペリメンタルさとハードコアの強度、どこまでも自由に拡散する不穏の音がカーニバルを繰り広げる。「全員OUT」ではセブ・ロバーツがゲストで参加し、ツインドラム・ツインギターで不穏さを更に加速させる。そして本編ラストの「USO村」でズクズクに刻まれるギターリフとツインドラムの応酬が繰り出す激情と激情のぶつかり合いにフロアは再びモッシュの嵐!!本編だけでもあっと言う間で、10曲が織り成してた音は正に異次元の物だった。
止まないアンコールの手拍子に応えて、再び魚頭氏がステージへ。そして共に表れたのはex.灰汁のMCであるセノオGEE!更にはskillkillsのスグルキルス氏をゲストベースに迎えて「絶塔」の中でも異質過ぎる人力ヒップホップ「まぁなんて新しい 今があったはずなのに 怠惰な日々」徹底して正確無比なビートを繰り出す楽器隊。フロウもリズム感覚も言語感覚も完全に独自の物であり、圧倒的な量の言葉の刃と毒を吐き出すセノオGEE、そして根本兄のサックスと、Zの極限の音を極限まで研ぎ澄ました異形のヒップホップが繰り出される。そしてラストは再び3人編成で「蛇鉄」をプレイ。今回のライブを全て集約するポリリズムの断層が生み出すハードコアの完全に昇天してしまったよ。
セットリスト
1.ベロ
2.ほっくメキ
3.NEWわけを煮る
4.DONUTSの罠
5.新今日
6.霊吹
7.うくす
8.以上でも以下でも
9.全員OUT
10.USO村
en1.まぁなんて新しい 今があったはずなのに 怠惰な日々
en2.蛇鉄
最後のZ会となった今回だが、出演バンドは正に最強に相応しかったし、何よりZは最終的に実に一時間半にも及ぶ壮絶なアクトを見せ付けてくれた。しかし感覚的には本当にあっと言う間だったし、音で人を狂わせるZというバンドは本当に唯一無二なんだと思う。
そして2/16の大Z祭にてZは遂に終わりを迎える。僕自身もこの日は足を運ぶつもりだ。最果ての音を鳴らす男たちの最後をしっかりと見届けたいし、それは今回のZ会でFEVErに足を運んだ人、誰しもが思っている筈だ。