■2013年05月
■wombscape、Ryoロングインタビュー

wombscapeというバンドは本当に言葉で形容するのが難しいバンドである。
彼等の音源を聴く程に、ライブを観る程に、彼等はますます不可解で異形のバンドである事ばかり知り、その音の輪郭が掴めなくなってしまう。
ハードコアとかそういった概念を越えた存在であり、そのライブではまるで悪夢を現実で体験するかの様な錯覚すら覚え、完全に振り切れた異次元の精神世界を生み出し、観る者の五感と脳髄を蹂躙する。一度ライブを観たらトラウマの様に脳に焼き付くバンドだ。
音楽という視点だけで無く、彼等には芸術性といった点も非常に強く感じるし、音楽をまるで絵画の様に生み出し描く。
彼等のその異形の世界と音はどの様にして生まれているかを知りたくて、今回バンドのボーカルであり、wombscapeという音楽を超えた芸術集団の指揮者的存在であるRyo氏にインタビューさせて頂いた。Ryo氏は丁寧にwombscapeというバンドの創作理念を語ってくれたが、そこで改めて彼等は一つの芸術集団であり、音楽を本質的な意味でのアートとして生み出すバンドである事を再認識させられた。
バンド名になっている「子宮内風景画」。それこそがwombscapeが生み出そうとしている世界であり、人々の脳髄の奥底に眠る感覚を覚醒させる芸術、それがwombscapeであると今回認識させられた。その悪夢の世界の扉を少しでも多くの人々に開いて貰いたいと思うし、その圧巻の世界に震えて欲しい。
追記:今回のインタビュー記事は縁があって編集版の方がライブハウス新宿ANTIKNOCKさんの発行するフリーペーパーの方に掲載させて頂く事になりました。本当にありがとうございます!!
■まずはwombscapeの結成の経緯や、現在までの活動について詳しく教えて下さい。
僕は以前、alteregoというバンドをやっていました。音楽性は、今より暗い感じでしたね。曲も全体的に長く、1曲で19分を越える曲もありました。ギターのkijoはCELL IMPLANTというバンドをやっていました。
wombscapeは2007年末に立ち上げたバンドです。バンドのコンセプトや世界観はその時点で完成しています。あとはそれを一緒に表現できる仲間を探すのにかなりの時間を要しました。表立った活動を始めたのが2010年です。
■wombscapeというバンド名に由来はありますか?
wombscapeは"womb"と"landscape"を合わせた造語で、「子宮内風景画」という意味です。母胎内にいる胎児が見る風景、またそれを目の当たりにした人間の感情を表現するというのがコンセプトです。
■wombscapeというバンドが影響を受けた音楽を教えて下さい。
メンバー皆、ルーツがバラバラです。ポップス、ロック、パンク、ハードコア、クラシック、前衛音楽、など。バンドを挙げたらキリがないので一概には答えられないです。
■曲はどのようにして生まれていますか?
曲は、1つの「物語」と捉えています。その物語には当然コンセプトや景色、ストーリー、そして主人公の感情があります。曲は全てその物語1つ1つに基づいてつくっています。
曲の元となる景色や感覚は、ある日あるとき突然、例えば白昼夢のように頭の中を埋め尽くすように生まれてくるんです。それを僕は「思い出す作業」と定義しています。
物理的な話ではなく、あくまで概念としてですが、「本来そうであった世界」、そして「決して忘れてはいけない世界」だと思っています。それらを再構築する作業がwombscapeの活動のテーマですね。
僕は絵も描くんですが、絵も同じです。日常を生きていて何かに直接インスパイアされるということはあまりないです。アレンジも音作りも絵を描くときも、常に「正解を探している」といった感覚です。なにか新しいことをしてやろうとか、こうしたら面白いんじゃないかとか、そういった模索は一切していない。曲作りに関して、迷いは一切ないです。
■wombscapeはカオティックハードコアの要素が強いと思いますが、バンドとしてカオティックとかハードコアはどんなものだと思いますか?
CONVERGEやTHE DILLINGER ESCAPE PLANをはじめとする、所謂カオティックハードコアというジャンルは聴いてきたので、音楽的な影響は受けています。ただ、ハードコアに拘っている訳ではなく、あくまで1つの要素として取り入れているといった感覚です。
たまたま今はハードコアの要素が強い曲が多いだけです。
僕自身、ハードコアにどっぷり浸かってきた人間ではないので、「ハードコアとは」という質問には答えられません。
■wombscapeは本当に負の方向に振り切ったダークなバンドだと思います。
バンドとして音楽性の部分は勿論ですが、精神的な部分でそういった要素は何処から生まれていると思いますか?
負の感情に特化した表現を意識的に追及しているわけではないんです。
作曲方法のことを話しましたが、先ほど話したような世界観と、それに対する感情を忠実に再構築/具現化したのがステージ上の表現です。負のエネルギーが出ているというのは結果論です。
■wombscapeはこれまでに2枚のデモ音源をリリースしていますが、それぞれの楽曲はどのように作られたのでしょうか?またそれぞれの楽曲の終着地点は何処でしたか?
「赤い絵具」はwombscapeで一番最初につくった曲です。どの曲も全て、それぞれのコンセプトに則り、ストーリーに沿うようにつくりました。
終着地点は特に定めていません。より良いアレンジを思いついたらいつでも改良します。あえてひとつの区切りをつけるとするならば、正規音源をリリースする時じゃないですかね。
■2ndデモに収録されている「蝕の刻」は、ライブだと音源より長い10分を超える大作になっていますが、これは音源を出してから変化して現在の形になったのでしょうか?
またその中で、どの様なイメージで現在の形になりましたか?
そうですね、収録したものより3倍以上も長くなりました。現在「触の刻」は4部構成になっています。デモに収録されているのは3つ目のパートのみです。デモをリリースした当初は今のような構成は考えていませんでした。その後、前後のストーリーが浮かんだので付け足しました。
■またwombscapeは個人的に凄く美意識というかアート的な部分を感じますし、それはライブでセッティングされたギターアンプのペイントなどで感じるのですが、バンドとして芸術的な視点や美意識は持ってますか?またそれがあるとしたら、それは何処から生まれているのでしょうか?
アートワークは僕が担当しています。絵は以前からマイペースに活動していました。
単純に、表現方法を音楽だけに絞るつもりがないという感じです。そもそもステージに上がる時点で身体を使った表現もする訳ですし。既にバンド立ち上げの時点で、バンドという形を複合的な表現が出来る場所として考えていました。その頃から、曲や歌詞は勿論、絵もコンセプトと全てリンクしたものを描くようになりました。
今後はステージにインスタレーションの要素も取り入れて、より表現の幅を広げていきたいと思っています。
■これこそがwombscapeっていうものだったり、バンドとしての信念や拘りがありましたら教えて下さい。
そうですね、wombscapeの活動は「音楽活動」というより、あくまで「芸術活動」というスタンスをより意識していきたいですね。
■僕はwombscapeをライブバンドだと思っていますが、ライブではどんなものを表現したいと思ってますか?
ライブでの表現に関しては、景色もそうですが、とにかく「感覚」や「感情」というものを一番大事にしています。特にステージ上は自分の感情を、つまりは自我を解放できる今のところ唯一の場所です。この場所がなくなったら、僕はきっと自分自身をコントロールできなくなるんだと思います。日常という小さな籠の中では「負」を撒き散らしては生きていけないですからね。
■ライブに対するバンドとしての考えなどありましたら教えて下さい。
個人的には、地方を含めもっとライブを増やしたいです。そしてそこから見えてくるものを追求したい。
■wombscapeが交流を持っているバンドを教えて下さい。
特に友好があるバンドだと、都内だとweepray、isolate、Starlingraid、大阪だとSeeK、Knelltです。
同じ世代に出逢えた仲間として、今後なにか一緒に面白いことが出来たらと思っています。
■交流をしているバンドや、ライブで競演するバンドに対して、どの様な意識を持ってますか?
ステージに上がるときは、常に「食いつぶしてやる」くらいの気持ちでやってます。それが仲間に対する僕なりの礼儀です。
■ライブハウスのシーンの中で特にwombscapeというバンドと共鳴するもの、共通するものがあるバンドはいますか?もしいましたら教えて下さい。
共鳴するものがあるバンド、いますよ。先にも出ましたが、weepray。彼らと出会えたのはwombscapeとして凄く大きな出来事だと思います。
weeprayとの共同企画のイベントがあるんですが、その名前が"心象共鳴"なんですよ。
まさにそんな感じです。心象共鳴は今後も続けていきます。
■ここ最近、都内のライブハウスで激情系ハードコアとかカオティックハードコアの猛者が多く登場し、水面下で大きな盛り上がりを見せていると思います。その中でwombscapeはどういった立ち位置でいたいとか、どういったバンドとして見られたいとかありますか?
既存のシーンに対しては、特に意見はないです。
■現在のライブハウスシーンについてどう考えてますか?
そしてwombscapeはそのシーンの中でどうしていきたいと思いますか?
1つのシーンに留まらず、色々なシーンに飛び込んでいくつもりです。
そのため、ホームとなるハコはつくらずに、常に色々な場所でブッキングするようにしています。
■wombscapeとして現在新たな楽曲はつくっていますか?
またそれらの新曲や今後リリースする音源はどんなものにしたいですか?
曲は常に作っています。1曲が完成するまでの時間は、一般的に考えたらかなり長いのかもしれませんが、1年足らずのものから、10年以上かかって未だ完成していないものまであります。
常に複数の曲を同時進行でつくり、何十回とアレンジを重ねます。
また、具体的な正規リリース予定はまだありませんが、妥協のない納得のいく作品をつくろうと思います。
■wombscapeというバンドは今後どんなバンドになっていくと思いますか?
これからもっともっと尖っていくと思います。今後の活動を楽しみにしていてください。
■最後に今後の予定を教えて下さい。
7/6に新宿ANTIKNOCKで初のwombscape企画のイベントを開催します。
今年のCONVERGEのオーストラリアツアーをサポートしたTHE BRODERICKというバンドのジャパンツアーの一環でもあります。大阪からは関西の盟友SeeK、東京からはweeprayとisolateが参加します。東京、大阪、オーストラリアの新世代ハードコアを堪能できる夜です。

独特なダーク・プログレッシブ・ハードコアを常に進化させてきてた、オーストラリアはメルボルン出身、2006年結成のThe Broderick。
これまでにConverge, Misery Signals, Poison The Well and Carpathianなどヘビー・ミュージック界で最も影響力のあるバンドと共にツアーに周りプレイをし、オーストラリアでその名を馳せた。
2012年にリリースされたデビューアルバムのFree to Rot, Free of Sinは多くのリスナーからその年リリースされた最も新鮮でヘビーな作品と称され、そのアルバムを引っさげて国内外のツアーに周り、ConvergeやRussian Circlesのオープニングアクトなどを努める。
そして2013年、初の東南アジアと日本へ渡り、その斬新でアグレッシブなサウンドで観る者を魅了する。
http://www.thebroderick.com/
THE BRODERICK Japan tour with SeeK
7.4 [Thu] 京都 SOCRATES Kyoto
7.5 [Fri] 横浜南太田 GALAXY Kanagawa
7.6 [Sat] 新宿 ANTIKNOCK Tokyo
7.7 [Sun] 心斎橋 HOKAGE Osaka
wombscape tour dates
6.29 [Sat] 横浜南太田 GALAXY Kanagawa
7.5 [Fri] 横浜南太田 GALAXY Kanagawa
7.6 [Sat] 新宿 ANTIKNOCK Tokyo
7.19 [Fri] 渋谷 KINOTO Tokyo
8.10 [Sat] 立川 BABEL Tokyo
8.24 [Sat] 新大久保 EARTHDOM Tokyo
wombscapeは7月に初企画を控えており、そちらは大阪のSeeK、オーストラリアからの刺客THE BRODERICK、東京からはweeprayとisolateを迎え、強大なる悪夢の夜を生み出す予定だ。
現在のライブハウスシーンのリアルを体感出来るイベントであると同時に、wombscape同様に圧倒的な美意識と芸術性を持つ精神を蹂躙するハードコアバンドが集結する夜となっている。
是非とも今から震えてその時を心待ちにして欲しい限りだ。
7.6[Sat] at 新宿 ANTIKNOCK
-wombscape presents "瞼ノ裏 ~THE BRODERICK Japan tour with SeeK"
open 18:00 start 18:30
adv \2,000 door \2,500 +1drink
※学生 ¥1,500(要ID認証/前売りのみ)
cast/ THE BRODERICK(Australia) / SeeK(Osaka) / isolate / weepray / wombscape

【official website】 http://wombscape.com
【sound cloud】 http://soundcloud.com/wombscape
【twitter】 http://twitter.com/wombscape
【facebook】 http://www.facebook.com/wombscape
photographer : ミツハシカツキ
http://peacethruwar.blogspot.jp/
7/6のwombscape企画のチケット購入は下記リンクから!!
e+
■生命vol.21(2013年5月25日)@八王子RIPS
・UMEZ
先ずはOAのUMEZから。ギターの人は初代sgt.のギタリストだったらしいが、目の前にはギターの男性とベースボーカルの女性、そしてマックとシンセが設置されている。いきなり耳を貫く轟音ノイズが不規則かつ熾烈に響いて、ノイズバンドか!?と一瞬思ったが、すぐさま打ち込みのビートが響き始め、轟音ノイズが瞬く間に色彩豊かでキュートでポップなシューゲイジングするギターサウンドに変貌し、女性ベースの人がウィスパーなボーカルで歌い始めてからは完全にシューゲイザー要素のあるキラキラギターポップの世界へ。BP.辺りを思わせるギターポップを展開しつつも、よりギターのノイジーさが際立ち、より浮遊感が漂う一種の危うさすら感じさせるサウンドだが、その危うさがポップな美しさを生み出し、幻惑のサウンドを30分に渡って展開。最後の最後はZARDのカバーで締めという反則技も繰り出しOAながらも確かな存在感を見せ付けてくれた。
・killie
そして先日台湾でのライブも行った日本が誇る激情系男尊女卑ハードコアであるkillieのアクト。もうその一瞬一瞬がハイライトであり、たったの1秒でも見逃せない瞬間のドキュメントとしてのkillieは1年半振りに観たライブでも炸裂しまくり!!よど号事件のニュース音声をSEに照明が3本の蛍光灯のみになり、ギター隊が「キリストは復活する」のイントロのアルペジオを奏でた瞬間に本当に空気が変わっていくのを感じたし、そして暴発のパートでは縦横無尽に暴れ狂うメンバーがその暴発のカタルシスを放出。その一瞬のキメやブレイク、叫び、その全てが決して見逃してはいけないドキュメントであり、空気すら切り裂くギターとビートが立て続けに攻めまくる感覚はもう興奮しか覚えない!!中盤でプレイした「歌詞は客の耳に届かない」は音源よりも更に不協和音具合も加速し、より性急になり、必殺のキメとフレーズが立て続けに襲い掛かってくる、もう混沌すら制する激情の洪水がこのバンドの魅力であるし、音源よりの更にカタルシスが高まるライブは本当に観る価値しか無いと僕は思うのだ。killieは紛れも無いライブバンドであり、全5曲、ほぼノンストップで繰り出された激情の嵐は本当に圧巻だった。ラストの「落書きされた放置死体」はもう絶頂と絶唱がぶつかり合い、フロアの熱気を更に高めて燃え尽きていた。killieのライブは久々に観たが、このバンド本当に別格中の別格だ。
・sgt.
そして今回の主催であるsgt.のアクト。今回の企画に足を運んだお客さんへの感謝のMCから始まり、そしてライブはスタート。サポートのキーボードを迎え、ギター・ドラム・ベース・ヴァイオリン・キーボードという5人編成でのライブだったが、のっけから成井嬢のヴァイオリンが豊かな色彩をこれでもかと開花させ、そして鉄壁のアンサンブルを誇りながら、躍動を生み出す屈強極まり無いリズム隊のビートも炸裂。複雑かつ美しく絡む鍵盤とヴァイオリンとギターの旋律は本当に高揚感を生み出しながら、目の前で美しい色彩を幾重にも重ね合わせ、長尺の楽曲ばかりであるにも関わらず、それを全く退屈に感じさせず、常にその先の高揚と絶頂を予感させる展開が繰り広げられ、一種のトランス状態すら感じてしまった。中盤ではサックスも迎え6人編成でのライブとなったが、それでも屈強なリズム隊のグルーブは普遍だし、更にサックスとヴァイオリンが奇妙ながらも見事にシンクロし、リリカルなフレーズを奏で続ける。あらゆる要素を持ちながらも、それを一種のエクスペリメンタルな高揚と、磨き上げたアンサンブルと旋律で聴かせ、インストゥルメンタルだからこそ圧倒的な情報量を音で生み出し、幻想的でありながらもスリリングな一時間弱のアクトは正に別次元の小旅行とも言うべき内容だった。本編ラストではヴァイオリンの成井嬢が客席にダイブし、更にアンコールでは鉄壁のsgt.サウンドで締め。今回の企画を盛り上げに盛り上げて締めてくれた。
ライブも22時を少し過ぎた位で終わり、無事に電車もある時間に帰路に。今回は片道一時間半近くかけてはるばる八王子まで足を運んだが、その瞬間の塗りつぶすkillieの激情と、高揚感と美しい色彩で魅せるsgt.という方向性こそ全く違うけど、それぞれ素晴らしいライブを見せてくれた2マンとなった。OAアクトのUMEZも見事な存在感であったし、八王子まで足を運んだ価値は間違いなくあった。今回出演した3バンドは全くベクトルの違う音楽性ではあるけれども、唯一無二なアクトを見せたって意味では共通しているし、またこの組み合わせでライブがあるなら是非とも目撃したい限りだ。
■wombscape presents "籠の中の黒い心臓 vol.6"(2013年5月12日)@笹塚MUSEUM
・ZENANDS GOTS
一発目はたった二人で生み出す圧倒的煉獄ことZENANDS GOTS。このバンドは観るのは三回目だが、前回観た時以上にライブが凄まじくなっている。ドゥームとかエクスペリメンタルとかファストコアとかカオティックとかを飲み込みに飲み込み、それを決して綺麗にまとめたりなんかしないで、たった一本のギターとドラムだけで乱雑かつ獰猛にノンストップで繰り出す様は単純に凄いし、曲も一部を除くとほぼショートカットチューンなのに、それらに詰め込まれた圧倒的な情報量。ライブ自体は約15分と非常に短かったけど、圧倒的テンションで繰り出されるエクスペリメンタルショートカットサウンドは何度見ても凄い!このバンド、まだまだとんでもない事になりそうだ!!
・INSECURE
続いてはサイケデリック激重ドゥームトリオであるINSECURE。ライブ自体は一年振りに観たが、もう相変わらず超長尺のサイケデリックドゥームを展開してくれた。極限まで音数を減らしながらも、その激重かつ爆音のアンサンブルは残響音すら聴かせるし、空白すら空気を作り出し、今にも窒息しそうな閉塞感に窒息しそうな緊張感を生み出す。一音一音の破壊力もまず凄いし、極限まで削ぎ落としているからこそ、その数少ない音の激重具合や、引き摺るドゥーミーなサイケデリックさがより際立っているし、ドゥーム・スラッジ好きならもう完全に涎が零れに零れるアンサンブルは一年振りに観た今回も見事に健在だった。曲数こそは少なかったけど、時間軸も五感も狂わせるドゥーム絵巻は圧倒的だった。
・O.G.D
そして川越でのライブから実に一週間のブランクでまたライブを観る事になったベースレスグラインドコアトリオであるO.G.D。とにかくメンバーがステージを暴れ回り、ロウでダーティでいてブルータルでトラッシュなギターリフの殺傷力と、グラインドコアのツボというツボを押さえまくったドラムのビートと、グロウルとゲロ声を巧みに使い分けるボーカル。たったそれだけで最高に格好良いグラインドコアを放出していた。勿論ショートカットチューンをノンストップで繰り出し、極悪さを極めようとしている、高速リフと高速ブラストビートが速さだけで無く、殺気やブルータルさも見せつけ、邪悪グラインドを展開する。本当にあっという間のライブではあったけれども、一週間というブランクにも関わらず、また最高に格好良いライブを見せて頂いた!!
・Dance Missing Tilt
トリ前は今回唯一初見だったDance Missing Tilt。上半身裸の男性のパーカッションの人と、前に座り込んだ女性が三人。シンセ2台のギターにマラカスにエフェクターに風鈴に、何故か一斗缶というセッティングではどんな音楽性か全く想像出来なかったが、蓋を開けてみたらなんじゃこりゃ!!だった。もはやビートを刻まずに不規則に叩かれるパーカッション、不意に何度もドラムスティックで叩かれまくったり投げつけられる一斗缶。美声から不気味なうめき声まで上げる三人の女性。ゴスな旋律かと思えば不意に不協和音のノイズになるシンセ、忘れた頃に振られるマラカス。それらが織り成す、前衛的な即興音楽?アバンギャルド的な物だった。僕個人としては灰野敬二とかそこらの音楽性に近いものを感じた。僕個人としては良いとか悪いとかじゃなくて、矮小な頭では理解しきれないってのが正直だったけど、そのパフォーマンスは何故か魅入られる物があったのも事実。今回のイベントでは本当に異質な存在であった。
・wombscape
トリは一ヶ月振りにライブを観るwombscape。転換に時間がかかってしまっていたりもしたけど、そこはもう関係なし!!関西でのショートツアーにてあっちの猛者と殺り合ってきたのもあるのか、バンドは更に殺気と憎悪を高めていた。一発目の「蝕の刻」から地獄みたいなギターの音が炸裂しまくり、Ryo氏はパラノイヤの如く叫び呻き、のた打ち回る。このバンドはどこまでも緻密に組み込まれた楽曲と、それを表現する演奏技術の高さもそうだけど、それらの秩序を保ちながら、どうじにそれを破壊していく構築と破壊をライブで繰り出すバンドだと改めて実感させられたし、音楽性的にはカオティックハードコアとかそうゆう言葉で形容出来るのかもしれないけど、そこだけでは絶対に括れないし、アンビエントな静謐さも、スラッジさも飲み込み、おぞましさすら美しく描くライブは更に凄い事になっていた。まるで美しき終末と破滅を描く様な音像が目の前に広がっていたし、ラストは地獄みたいな音をしたギターのトレモロリフで醒めてもこの身体が朽ち果てても悪夢は終わらないといわんばかりの情景が描き出されていた。その芸術性と混沌を極めようとするwombscapeはどこまでも最果てへと向かっている。それを今回改めて実感させられた!!
笹塚の練習スタジオという地下空間で繰り広げられた悪夢の宴。5バンド共に音楽性は本当に違うけど、共通して言えるのはどこまでも異形の音を放つ猛者であるという事で、本当に凄まじいライブをどのバンドも繰り広げていた。何度も思うけど、こういった地下シーン(こうゆう言い方はあんまり好きでは無いけど)が今、確実に面白い事になっているし、これらのイベントとが単なる地下イベントで終わらないで、もっと多くの目撃者が増えて欲しいと心から思う。七月にはアンチノックでの企画も控えているし、そちらも是非足を運んで頂きたい!!今のwombscapeのライブは本当に凄まじいから。
■HARDCORE CIRCUS vol.15(2013年5月5日)@川越チコ
・有象無象
一発目はハードコアバンドの有象無象から。のっけからギターとベースが歪みに歪みまくった爆音サウンドで強烈なインパクトを与えてきて、もう一言で言えば真っ向勝負なハードコアサウンドは本当に好印象。ノンストップで繰り出される爆音爆裂ハードコアサウンドに会場も序盤からヒートアップしていたし、男らしいサウンドに惚れさせて頂いた。しかしこのバンド、色々調べてみたけど何の情報も出てこない。
・O.G.D
お次はグラインドコアバンドのO.G.D。彼等はもうクラスト色を感じさせるサウンドを更にヴァイオレンスかつブルータルに仕立て上げて、暴走に暴走を重ねるスタイル。ライブでもそれは全開になっており、グロウルとハイトーンの絶唱を使い分けるボーカルスタイルだったりは非常に正統派だけど、グラインドの狂気をより高めているバンドだし、ライブではそれを全力で叩きつけてくるから尚良かった!
・NECROPHILE
そしてNECROPHILEのアクトへ。ギターの人がANATOMIAのドラムボーカルの人らしいのだけれども、調べてみたら実は本当に長い事活動しているデスメタルバンドであり、その筋じゃ大ベテランなバンドとの事。そんなキャリアがあるバンドなだけあって、本当に正統派なオールドスクールデスメタルの凄みを凝縮したかの様な音を残酷に繰り出していた。ただひたすらにブルータルさを突き詰めたリフがまず凄いし、3ピースで地獄を生み出そうとする極悪っぷり、その荒々しい猛獣の様なサウンドは川越を完全に血で染めていたし、そのサウンドにド肝を抜かれてしまった。
・AKBK
狂うクルーのメンバーが在籍しているプログレッシブグラインドバンドことAKBKへ。変則的なキメを取り入れている変態性もそうだけど、やはりブルータルでダーティなサウンドが肝になっているバンドだと思うし、その変態性を巧みに生かしながら、どこまでもファストにかつブチ殺しにかかる狂気値の高さを痛感。約25分程のライブで暴走してない瞬間なんて全く無かったのではないだろうか?更にはゲストでノイズを出してた謎外人がいたのもあって正に狂気乱舞で酒池肉林な殺戮ショウっぷりが全開。いや本当に凄かった。
・解剖室
前半戦ラストはDEATH COMES ALONGの変名バンドである解剖室。そのバンド名通り、音楽性は80年代パンクやポジパンのド真ん中を堂々と突き進むサウンドで、ボーカルの人がピンクの包帯で顔をグルグル巻きにしてたり、してるし、メンバーはポジパンを彷彿とさせるメイクをしていたりとかなり妖しい空気を醸し出すバンド。とにかく空間的なギターワークと、妙に妖しくおどろおどろしいボーカルが生み出すエログロな世界観が本当に印象的だったし、古き良き80年代パンクの空気を見事に継承したサウンドは、今回のイベントでは少し浮いていたかもしれないけど、
・突撃戦車
後半戦一発目は群馬のハードコアバンドである突撃戦車。このバンドも本当に正統派なハードコアバンドであり、Dビート主体のビートが縦横無尽に駆け巡り、それでいてズ太いトラッシュなリフも負けずに暴走!!バンド名そのままに、その音で聴く者、観る者に突撃していくサウンドスタイルの男臭さ。何よりボーカルがそんなサウンド以上に更に男臭い野獣っぷりを見せるのだ!!もう馬鹿じゃねえの!!って言いたくなる位に格好良いし、正統派ハードコアも底力を感じた!!
・BOLT STEIN
そして山形からの刺客であるBOLT STEIN。こちらもダーティでロウなグラインドコアバンドであり、悪の軍隊の行進の様なリフとドスの効きまくったグロウルで攻める攻める。絶妙に落とすパートを盛り込みながらも、そこから暴走グラインドコアパートへと雪崩れ込む瞬間の暴発。もう堪らなくなるし、とにかくここぞというツボというツボを突きに突きまくって来る。極悪極太グラインド!!一発で殺された!!
・FASTKILL
イベントもいよいよ終盤戦!続いてはベテランスラッシュメタルバンドであるFASTKILL。もうとにかく汚らしくてエグいリフで攻め立て、ボーカルはハイトーン系の吐き捨てシャウトを繰り出す。とにかく速いけど、キッチリなんかしてないし、礼儀作法やマナーなんか完全無視でダーティな音を無尽蔵に繰り出す。しかしもうバンドとしてのパワーが凄まじく、会場をブルドーザーで破壊してしまっているかの様な音にモッシュの嵐も巻き起こる。とにかくリフの格好良さと速さを生かし、どこまでもノーブレーキ・ノーヘルメットで暴走するサウンドに否応無しに魂は燃え上がったよ!最高だった!!
・WOLFGANG JAPANTOUR
トリ前は札幌からの刺客である3ピースWOLFGANG JAPANTOUR。今回の企画では音楽性的な意味では異質であり、メロディックパンクミーツメタリックハードコアミーツシューゲイザーという物。BP.なんかに近い物ではあるけど、よりメタリックになった印象であり、女性ベースボーカルのウィスパーのボーカルと共に、メタリックさを感じさせながらも非常にキャッチーなギターフレーズとパンキッシュなビートが絶妙な化学反応を起こし、ポップであり性急であるサウンドを展開。今回のイベントの中では一番ヴァイオレンスでは無かったけれども、ドリーミーでありながらもアグレッシブな独自のサウンドは会場の人々の胸を見事に焦がしたと思う。
・LITTLE BASTARDS
トリは熊谷のグラインドコアバンドであるリトバス。1曲目は勿論「Day By Day」から始まり、会場のボルテージは初っ端から最高潮!!もう何ていうか本当に全てに於いて圧倒的過ぎるライブで、最初から最後までフルスロットルで駆け巡る極太グラインドコアサウンドにただただ圧倒されるしか無かったのだ。モッシュもこの日一番の盛り上がりで、ステージを縦横無尽に駆け巡るメンバーがそれを煽り、もう一つの事故現場が川越の地下スタジオで巻き起こっていた!!細かい事なんて本当にどうでも良くて、ただただ最高のラストを最高の盛り上がりで締めくくってくれた!!
そんな感じでバンド数が多いのもあって駆け足なレポになってしまったが(しかも酒飲みまくってライブを観たから細かい事は何も覚えていない)、川越でこどもの日に極悪ハードコア祭!!っていうだけあって全バンド最高に楽しいライブを見せてくれたし、本当にただ単純に最高に楽しい一日になったのだ。都内から埼玉県川越市まで足を運んだ甲斐はあったし、チコは本当に沢山のお客さんで賑わっていた。案の定翌日は全身筋肉痛で死にかけたけど、最高の一日が確かに存在したのだ。
■ERA 11th ANNIVERSARY(2013年5月4日)@下北沢ERA
・tomy wealth
一番手はtomy wealthというドラマー兼トラックメイカーのライブ。ドラムとベースとトラックの3人編成でのライブセットだったが、先ず何よりもリズム隊のビートが本当に屈強。息の合ったアンサンブルによってビートは力強くも屈強な流線型を描き、美しい躍動を生み出す。そしてトラックのセンスもかなりの物で、エレクトロニカからアブストラクトを取り込み、屈強なビートと絶妙なシンクロを果たし、美しい旋律を主軸にしながらそれでいて躍らせるビートの凄みを痛感。tomy wealth氏自身は元々はハードコア上がりであるらしく、彼の音楽はダンスミュージックとしてだけでなく、ハードコア成分を非常に強く感じさせてくれるし、それをライブで再現した時に強さと美しさが調和を果たし、見事な高揚感を生み出すのだ。30分程のセットだったのが少し残念だったが、頭から肉体と精神を一気に覚醒させてくれた。
・heaven in her arms
続いては先日のロシアでのライブも大成功となった最早日本を代表する激情系ハードコアバンドとなったHIHAのライブ。目の前に聳え立つアンプの壁は何度見ても圧倒されるが、彼等のライブは更に圧倒的。先ずは「縫合不全」から始まるが、印象的なベースラインと共に3本のギターが美しいアルペジオを刻んでいく。静謐なダークさから高まるドラマティックさ、そしてそれが神秘的にバーストする瞬間からいきなりクライマックスへ突入。続く「痣で埋まる」でよりハードコア色を高め、トレモロリフの洪水と共に痛みを体現。その流れだけでいつも持っていかれてしまうのだ。そしてまさかの大名曲「鉄線とカナリア」へ!!!!!ポストロックの流れを汲む静謐なアンサンブルの美しさから、一気にバーストして感傷と痛みをダイレクトに放出するこの曲は正にHIHAの代名詞とも言える名曲であるし、その美しさに震えるばかりだ。新曲では打って変わって、ブラックメタルと激情系ハードコアが正面衝突したトリプルギターのトレモロリフが容赦無く攻め立て、2バスで暴走するドラムと共に漆黒の音塊をぶつけてくる様は圧巻の一言。そしてラストは漆黒のシューゲイザー「赤い夢」でドラマティックに幕を閉じた。40分程のセットで本当にドラマティックに漆黒の物語を描いたHIHAはやはり別格の存在であるし、毎回そうだけど今回も凄まじいライブを魅せてくれた。国内激情系最高峰の座は彼等の為に存在するのだ。
・GOTH-TRAD
トリは日本のポストダンスミュージック界を代表するトラックメイカーGOTH-TRAD。とにかく最高に踊れるのに異形というのが彼の音楽であり、ダブステップだとかそうゆう括りでは語り尽くせない音を放出。常に充満している重低音の強烈な一歩間違えたら不協和音になってしまいかねないビートの下地、そこに乗るサンプリング音もまた不穏という言葉が相応しく、それなのにその重低音で躍らせるだけで無く、意識の奥の奥まで覚醒させるのだ。彼自身がワールドワイドに活動し、高い評価を手にしているのもあるけど、本当に枠組みに収まらないし、本当に多彩で自由で解放された音が飛び出していた。一時間のセットが本当にあっという間で、ただひたすらに異形の音に踊り狂うしか無かった。
クラブミュージックから激情系ハードコアという本当に異種格闘技な3番勝負なイベントだったが、本当に濃密で素敵な夜になった。予想していたよりお客さんが少なかったのが残念だったが(この面子でイベントってこの先あるか正直分からないし)、そんなのは関係無しに重低音と轟音とビートに酔いしれたのであった。GWのド真ん中、下北沢は別次元にあった。