■2013年08月
■NoLA presents "天"(2013年8月24日)@新大久保Earthdom
・ANOTHER DIMENSION
一発目はこの日が初ライブとなるANOTHER DIMENSION。このバンドなのだがTERROR SQUADの宇田川氏がボーカルを務めており、他のメンバーもSEI WITH MASTER OF RAMや鉄槌のメンバーという最強の布陣で結成された自称メロデスバンドである。そんな物だから初ライブにも関わらず観る物を上げに上げるパフォーマンスだったりとか、安定感と貫禄を見せる演奏だったりとか、初ライブらしさはまるで無いし、ベテランの猛者の実力を十分に感じさせてくれた。音楽性は自称メロデスだけど、非常にストレートなメタリックハードコアであり、男らしくブルータルに刻むリフの行進と、猪突猛進なビートが繰り出すサウンドは本当に良い意味でモロだったし、そのストレートさがまた格好良い。自称メロデスらしく、ギターソロのパートは一気にメロディアスでクサいフレーズを繰り出したりするある意味でのお茶目さもあったりしつつ、とにかくハードコアの猛者達が繰り出すサウンドは本当に男らしく惚れた。
・wombscape
先日の自主企画で圧倒的過ぎるライブを見せてくれた暗黒の芸術的音楽集団wombscape。流石に今回は前回観た自主企画の時に比べてしまうと少しだけ見劣りしてしまうアクトだったが(今回のライブも凄かったけど、自主企画の時のアクトがあまりにも凄すぎたので、まあ多少はね。)、観る物を異次元へと導くライブアクトは相変わらずだし、その音楽性だけで無く、ステージングでも引き込むwombscapeのライブは相変わらず健在だった。今回のライブは実質2曲のアクトではあったけれども、カオティックハードコアという枠組みでは最早語りつくせない異形さ、狂気を暴発させるパートでは熾烈さを極めに極めた音が無慈悲に降り注ぎ、アンビエントを飲み込んだ静謐なパートでは緊張感が生み出すおぞましさ。そして最後の最後は不協和音の轟音が全てを塗りつぶすという展開。毎回ライブを観る度に思うのは、彼等は音楽と言う表現で、煉獄を描くアート集団でもあるし、バンドとしても本当に異形であるという事だ。今回も持ち前の世界を十分に見せ付けてくれたと思う。
・ZENANDS GOTS
そんなwombscapeに続く形でZENANDS GOTS。今回も安定の熾烈さと格好良さを見せてくれたライブだったけど、爆音揃いのこの面子の中でも特に爆音なバンドで、本当にギターボーカルとドラムだけで構成されているバンドとはとても思えない圧倒的音圧。相変わらずの超ファストな楽曲の中にあらゆるエクスペリメンタル要素を凝縮したサウンド。特に今回のライブはドラムの一発一発の音の重みだったり破壊力が凄かったと個人的に思うし、ドゥーミーでありながらファストでカオティックなサウンドで嵐の様に過ぎ去るライブは今回もやはり抜群の物だった。
・小手
そんなエクスペリメンタルな空気を完全に変えてしまったのが小手だ。ボーカル以外が狐と天狗のお面を付けて、ドラム以外は作務衣という出で立ち。そしてセッティングが終わり、ライブが始まるが、完全なる静寂の中でメンバーが仁王立ちしている様はとんでもない緊張感に溢れ、そこからライブは始まったが、このバンドは本当に何処にも属さないし、属せないバンドだと改めて思った。ポストロックを基調にしたアンサンブルは決して音数は多くないのに、その音の重みが確かにあるし、変化していく旋律が生み出す確かな熱量。分かりやすい轟音パートがある訳でも無いのに、異様にドラマティックに展開されている楽曲。研ぎ澄まされたバンドとしてのサウンドはもう一つの完成系になっているとすら思うし、何よりも本当にストレートに葛藤や苦しみや悲しみをポエトリーリーディングで歌い上げるボーカル。まるで説教する法師の様でもありながら、個人的感情の語り部でもあり、相変わらず心に染み渡るアクトを見せてくれた。このバンドも本当に唯一無二である。
・NoLA
そして本日の主役であるNoLAのアクト。このバンドは本当に観る度に自らを更新するライブを展開しており、初めて彼等のライブを観た昨年八月のNoLA企画の時ですら壮絶極まりないライブをしていたのに、一年前より更に凄まじいライブをする様になってしまっているし、このバンドは本当に何処まで全てを置き去りにして駆け抜けてしまうのかと思うのだけれども、今回のライブでもまた自らを更新するアクトを見せてくれた。今回は新曲多目のセットだったが、ド頭からのスラッジさを全開にした持ち前の漆黒の濁流を更に際立たせ、それをよりブルータルに放出する新曲からもう何だこれはってなってしまったし、これまでの楽曲も更に熾烈さを極めていたと思う。ボーカルの建氏は相変わらずのっけからフロアに飛び出して客にモッシュを仕掛けまくり、のた打ち回りながら憎悪と狂気をボーカルで放出。ギターとドラムは更に音に重みが加わっていたし、NoLAの持ち味である徹底した漆黒の重さから、速さと遅さを自在に行き来して、それをエクストリームミュージックに仕立て上げると言う武器を更に強固にしていた。勿論、彼等のライブの持ち味である貫禄と狂気と神々しさが正面衝突した現実離れした悪夢のような音塊はもう天井知らずだし、今回披露された新曲郡を聴いて、今後リリースされるであろう新作に対する期待もかなり高まった。本当にこのバンドは漆黒の先の先にある地獄の最下層を目指しているとしか思えないし、まだまだとんでもない物を見せてくれる事を確信した。異形の若武者の進撃はまだまだ止まらない!!
今回のNoLA企画も全バンドが強烈過ぎる音を放出していたし、企画主のNoLAがまた素晴らしいライブを見せてくれた。日本のエクストリームミュージックの新たな可能性を見せてくれるという意味でNoLA企画は毎回スペシャルだと僕は思うのだけれども、まだまだこんな物じゃない感を僕は感じるし、今回素晴らしいライブを見せてくれた猛者達の躍進を心から願う。今回もまた素晴らしい悪夢の夜だった!!
■stereo type 活動限界ワンマンGIG@吉祥寺WARP(2013年8月24日)

三島のポストロック・マスロックバンドであるstereo type。これまで二枚の素晴らしいアルバムを残した彼等だが、今回活動限界という名の活動休止を発表し、解散ではないにしてもバンドの歩みは一旦ストップする事になり、その休止前のラストライブのワンマンライブを敢行した。僕は数年前から彼等の音楽を愛聴していたけど、ライブは観る機会が無く、初めて足を運んだ彼等のライブが残念ながら活動休止ライブとなってしまったのだけれども、それでも彼等のライブを観る事が出来たのは嬉しかったし、本当に素晴らしい最後を飾ってくれたと思う。
オープンと同時にWARPに入り、その時は人がまばらで少し不安になったりもしたが、気付いたら多くの人々でWARPは満員になっていた、正午過ぎという時間にも関わらず多くの人が集まっているフロアを見て、多くの人が彼等の最後を目に焼き付けようと集まったのを実感。そして10分位押して彼等の活動限界GIGが始まった。
1曲目は1stアルバムから「被害妄想癖」でスタート。のっけからスリリングなアンサンブルが炸裂し、WARPは一気に緊張感で充満する。彼等はインストのポストロック・マスロックバンドであり、テクニカルなサウンドと、変則的に目まぐるしく、たった1分弱の楽曲で既にstereo typeのサウンドを見せ付ける。彼等は絶妙な熱量を持ったバンドだし、インストでありながらも、その旋律とアンサンブルが生み出す冷徹な熱さだったりとか、鋭い刃を向けられた様な冷や汗がダラダラ流れる様なアンサンブルだったりとか、それらの要素が本当に大きな魅力になっているバンドだと僕は思っている。
セットは最初期のEPの楽曲やオムニバスの楽曲、1stと2nd。そしてこの日先行販売されたラストEPから新旧満遍なくプレイされてたのだけれども、このバンドは本当に最後まで一貫していたバンドだったなとアホみたいに単純な事を思ったりもした。初期の楽曲から、ラストEPの楽曲まで本当に何一つ彼等はブレていないのだ。確かに新たしい楽曲のが洗練されているし、彼等の進化を感じたりもするのだけれども、初期の楽曲もそれらの楽曲と普通にタメを張れる完成度だし、長年の活動で鍛え上げてきたであろうアンサンブルもあるからこそ、本当に一貫していたし、ギターとベースとドラム、たったそれだけど本当に全てを語り尽くす様な楽曲を繰り出していた。途中機材トラブルなんかも残念ながらあったりもしたけれども、そんな事は本当にどうでも良い位に、彼等の楽曲はスリリングな格好良さとカタルシスと緊張感に溢れているし、目まぐるしく変貌していく音の数々に酔いしれるしか無かったのだ。
特に終盤ににプレイされた名曲「午前二時からのドライブ」の駆け抜けていく音の粒子、統率されたプログレッシブなサウンド、しかしそれでも滲み出る狂騒と混沌、中盤のマスロック印なタッピングからのBIG MUFFをかましたディストーションサウンドの絶頂具合。本当に素晴らしかった。そして本編ラストの「大言壮語も吐いて去ろう」にて自らを締めくくる最高の楽曲にて、持ち前のサウンドを最後の最後まで進化させ、そして多くの狂騒と共に締めくくられた。
本編が終わってBGMが鳴り始めたが、当たり前だけど多くのアンコールを求める手拍子。そして予定に無かったアンコールへと突入。アンコールは2ndから「隣り合う緑」をプレイ。クリアなアルペジオから徐々に熱量を上げて、粗暴で切れ味鋭いカッティングから、変則的でありながらも確かな線で強く結び付いたアンサンブルそして最後の最後にて絶頂射精な3つの音がぶつかり合う瞬間。本当に耳から離れなくなった。こうして彼等の活動限界GIGは幕を閉じた。実に全12曲一時間弱の最高のワンマンライブとなった。
セットリスト
1.被害妄想癖
2.不埒な女の計画
3.さよならを教えて
4.手首切っても死ねない
5.東京ブルー
6.春は遥か遠く
7.海ファズ
8.俺達に放課後は無い
9.疑惑
10.午前二時からのドライブ
11.大言壮語も吐いて去ろう
en.隣り合う緑




この日の夜に盟友であるweaveとbirthを迎えて夜の部と称して昼間来れなかった人の為に急遽スタジオライブも敢行したから、これがラストライブでは無いが(活動休止で解散では無いから、ラストライブと言うのもまた変な話だけど)。バンドにとっては初のワンマンライブだし、本当に最高のライブを一時間に渡って繰り広げてくれた。僕は別のライブに行く予定があったので、夜の部のスタジオライブには残念ながら足を運べなかったし、前述した通り初めて観るstereo typeのライブが今回の活動限界ワンマンGIGになってしまったのだけれども、stereo typeという唯一無二なバンドを愛した身として、今回のライブに足を運べたのは個人的に凄く嬉しかったし、本当に良いライブだったと単純に思う。
一先ずはstereo typeの皆さん、活動お疲れ様です。また何処かのライブハウスでライブを観れたりしたら僕は本当に嬉しく思います。
■GONG/BOMBORI

この音は必然的にサイケデリックであると僕は思う。都内で活動するBOMBORIの2013年リリースの1stを聴いて僕はそう思った。一年前にたまたま彼等のライブを観て、そのダブのヘビィなグルーブも飲み込んだ末に生まれた危険な高揚としてのサイケデリックサウンドに完全に脳髄を粉砕されたのだけど、彼等の記念すべき1stでも、その意識を彼方へと連れ去りながら、ギリギリのラインで窒息しそうな感覚と、そこから解き放たれた時のトランス感覚は健在だ。
ツインドラム、ダブからサイケデリックからヘビィさを横断するサウンド、microKORGを取り入れている事、彼等のサウンドは一概にこれっていう形容が中々に難しいバンドだと思うのだけれども、彼等はまず本当に卓越した演奏技術を持っているバンドで、ツインドラムの二人とベースに関しては本当に郡を抜いた物を持っていると思うのだけど、彼等の音のキモの一つとしては本当にグルーブという物が大きな物を占めていると思う。ギターやコラージュされた音が自由自在に音の色を変化させながらも、一貫としているのは確かなリズムセクションだ。特にツインドラムだからこそ生まれた緻密かつ複雑でありながらも、聴き手の本能に訴える原始的なリズムの躍動という物をこのバンドから強く感じるし、ダブの緊張感からドゥーミーさまで感じさせる重厚なグルーブとノイジーさが生み出すサイケデリックな高揚、それらを一つの音として纏め上げたバンドだし、やっている事は難しい様でいて、実は非常に分かりやすい形で「ヘビィさとグルーブから生まれる緊張感とサイケデリックとしてのトランスミュージック」を生み出していると思う。
盤を再生した瞬間に耳に入ってくるmicroKORGの耳を劈く旋律から、ドープに展開される音の濁流。和笛みたいな音と、ツインドラムが織り成す妙にオリエンタルなサウンドが先ず脳髄から離れなくなってしまうけど、第2曲「Kingdom」からは更に不穏さを加速させる上物の音と、確かな地盤を作りながらも、変則的かつダイナミックに展開されるリズムセクション。原始の世界へと聴き手をトリップさせる本能的な音は意識のレベルを確実に一つ上まで上げるし、圧倒的情報量で放出される音を感じる為に、脳の普段はロクに動いてない様な所までフル稼働していく感覚を個人的には覚えた。よりダンサブルになった第3曲「Land」では更にトランスしていく音がまた脳の意識を更に上の次元まで持ち上げてくるし、とにかく不穏な緊張感が充満しているにも関わらず、本当に踊れるのだ。それはまるで体中が冷や汗でタラタラになっていながらも、本能が勝手に自らの肉体を起動させる様な物だし、脳の意識と本能が同時にフル稼働する様な音が生み出す確かなサイケデリックさだ。時にドゥーミーな重低音も放出し、本当に多くの音階を支配しながら、それを解き放たせている。
特に終盤の楽曲は本当に別次元になっており、第6曲「Summer」は正にダブの方面から、夏の哀愁と狂騒を生み出している楽曲で、一つのメランコリックささえ持ちながらも、持ち前のサウンドは全くブレてなんかいない。終盤ではストーナーなギターフレーズまで飛び出し、多くの側面を持つ音が縦横無尽に駆け巡りながらも、狂騒が生み出す何かが新たなる覚醒を生み出す。そして決まり手は第7曲「Granule」だ。哀愁溢れるギターフレーズから始まりながらも、それらが熱を浴びて、そこから今作屈指の狂騒へとワープする。手数多く叩きつけるツインドラムのビートの散弾銃、大胆不敵にサイケデリックとダブとドゥームを飲み込むギター、そしてそれらの音を加速させる不穏のmicroKORG。最後の最後では全ての音が一つの音塊としてのビッグバンを生み出し、宇宙へと聴き手を突き放しやがる。そして最終曲「Gang Of Six」で聴き手を完全に置き去りにして終わる。
グルーブとトランスするサウンドが生み出す一大エクスペリメンタルサイケデリックオーケストラであり、46分に渡って新たな次元へと聴き手を放り投げる様なサウンドを見事に展開している。非常階段のJOJO広重氏の「BOMBORIの音楽は向こう側への渡し船」という言葉は非常に的を得ている。そして彼等はライブが本当に音源以上に凄くて、本当に彼岸の更に先まで飛ばされる感覚を覚えるだろう。是非ライブにも足を運んで欲しい。今作はバンドの公式サイトの方で現在通販で入手可能だ。
■Punhalada/Punhalada

2012年に愛知にてN.E.K.のRafael YaekashiとIwaneの二人にドラムのAndoを加え結成されたクロスオーバー系メタルバンドであるPunhaladaの2013年リリースの7曲入り1st。リリースはRafael自身のレーベルであるKARASU KILLERから。まだ結成して間もないバンドながらGRIND BASTARDSに参加し、数多くの猛者と殺り合ったりしているバンドなだけあって、初音源の今作でも十分過ぎる位の熾烈なる音を鳴らしている。
彼等の音はスラッシュメタルを機軸にしながら、ハードコア・グラインドコア・ストーナー・ドゥーム・ブラックメタルと非常に雑多な音を組み合わせたクロスオーバー系の音でありながら、それをしっかり統率し、楽曲のレンジの広さを持ちながらも、破壊的で絶望的な音という部分で確かな統率を感じるし、バンド名通り、背後から刺し殺す極悪さをしっかりとアピールしている。Rafaelのドスの効いた低域ボーカルとハイトーンを組み合わせたボーカルスタイル、Iwane氏のリフでゴリゴリ刺しながら、ソロでは見事な表現力を見せ付ける変幻自在なギター、Ando氏のハードコアパンク感覚の前のめりで突っ走るドラム、単なるクロスオーバー系メタルでは片付けられないと思う。
第1曲「Diversao E Ilusao」からストーナー色も感じさせるソロから始まり、ザクザクに刻むリフと突っ走るビートが地獄の行進をしている。絶妙なIwane氏のコーラスがまた良かったりもするし、ポルトガル語で歌う絶望が熾烈なサウンドとマッチしている。あらゆる要素を飲み込みながらトラッシュしている。第2曲「Anormal」ではハードコア成分を更に高め、高速2ビートと高速ギターリフと高速引き倒しベースが三位一体で暴走しており、グラインド成分も持たせ、アッパーな音を展開。GRIND BASTARDSのコンピに提供した第3曲「Perturbado」はビートダウンパートではドゥーミーな成分も見せつけ、更に雑多になりながらも、持ち前のリフで攻める殺気とビートの破壊力で堂々と突っ走る。重戦車ビートが炸裂し、ドスの効いた低域ボイスとハイトーンのボーカルを巧みに使いこなす暴走グラインドな第4曲「Sombras」と、本当に音のレンジは広いし、あらゆるエクストリームミュージックの美味い汁を吸い尽くした、吸血鬼的なサウンドは負の感情を体現する熾烈さという点でどれも同じベクトルを向いているし、後半の楽曲はドゥーミーさや煙たさを前に出した楽曲が続くけど、それでも変わらない。彼等流のストーナーロックである第6曲「Isolado」から、ミドルテンポのビートからドゥーミーなサイケデリックさが展開される最終曲「Escuridao Eterna」まで、全7曲に渡って繰り広げられる絶望と殺気の殺戮ショウはただ見事だ。
まだ結成間もないバンドでありながら、弦楽器隊の二人はあらゆるバンドで経験値を積んでいる猛者だし、初の単独音源ながらも、確かな猛威と破壊力を十分に見せ付けてくれている。メタラーからハードコア好きまで納得させるだけの力がこのバンドには確かにあると思う。