■2014年01月

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■Illgenic/skillkills


ILLGENICILLGENIC
(2014/01/22)
SKILLKILLS

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 もう何というかskillkillsの創作意欲は何処から出てくるのか。前作からたった1年弱、こんなハイペースで作品を生み出し続ける事も凄いけど、新作を出す度に本当に新たな衝撃を与えてくる黒い突然変異ことskillkillsの3rdは、もう凄い期待していたけど、そんな期待なんて軽々しく超える作品になった。グルーブの鬼であり、グルーブの革命児であるskillkillsが自主レーベル「ILLGENIC RECORDS」からドロップした今作は、かなりの衝撃を与えた前作を更に越え、更に聴き手を殺す作品を生み出した。



 もうこのバンドを単なる人力ヒップホップで語るのは最早野暮ですらあるけど、誰も思いつかなかった奇想天外の発想と音を生み出しながら、その根底は非常に純粋でプリミティブなグルーブの快楽に溢れているし、今作はそれを更に研ぎ澄まして極めた作品だと思う。第1曲「(((())))」からして完全にネクストへと突入してる。いきなり毒電波みてえなシンセの音が響き渡り、マナブスギル氏は更に情報量を増やし、更にフロウの快楽を突き詰めたラップを展開しながらも、バンドの核である弘中兄弟のビートとグルーブが更におかしくなっている。決して音数は多くないし、2人が鳴らしているのは非常に最低限の音なのに、ドープでありながらも、妙にアッパーな感触があるし、隙間だらけなのに、とんでもなく躍動感を与えてくる。ビートの部類としては非常に「引き」の要素を持ちながらも、その引きを巧みに使って実は「押し」の要素も感じさせている。非常に矛盾しているけど、弘中兄弟のビートとグルーブはそんな境地に達してしまっている。第2曲「Chewing Gum」では常にミニマルな反復のビートを刻みながら、その反復が最大の効果を生み出し、更にマナブスギル氏のラップもミニマルに反復し、ヒカルレンズ氏のキーボードが変化と混沌を与えていく。
 今作は前作の圧倒的情報量と比べると明らかに音数は減った。そしてよりレベルミュージックの根底にも近づいたとも思う。前作ではアヴァンギャルドな発想を原始的グルーブへと繋げていたけど、今作は本当に最低限の音のみで全てを生み出せる様になったし、独自の黒っぽさが確かにあるのだ。第3曲「Don't Think」はその黒っぽさが前面に押し出されているし、そしてグルーブの揺らぎが更に際立つ。第4曲「G.S.K.P.」は一転して混沌とか狂騒と言った音が多く存在していながら、それでも徹底して研ぎ澄ましたグルーブがやはり核になっているし、第5曲「Debut」はそのミニマルなビートから、一発一発の音の躍動を強く押し出し、跳ね回るビートと、タイトなシンセの音色の相反する音が、何故か自然とグルーブの快楽へと繋がっていく。
 作品も広後半になるとよりそのグルーブの真髄へと引き摺り困れる。ブルージーさを押し出し、サイケデリックなトランス感覚を生み出す第6曲「Electric Dandy Band」、そして狂騒と混沌は加速し、第8曲「Chi-Pa-Pa」は壊れた声の出る玩具の音声をずっと聞いてるみたいなもうよく分からないグルーブの世界が広がり、人力でありながら変拍子徹底駆使、拍が完全におかしいのに、それがごく自然な形になってしまっているのが最早恐怖でしか無い。そして最終曲「24-7」で聴き手を完全に突き放して終わる。



 前作に比べるとキャッチーな要素こそ少し後退した印象はあるけど、よりおかしさが増えたシンセとサンプリング、より研ぎ澄まされたラップ、そして反復と構築と分解の無限回廊を繰り返しながら、最終的にグルーブとビートの悪夢と快楽を生み出す弘中兄弟の音。その発想力も凄いけど、やはり彼等はその終着点を前作同様に「レベルミュージック」、「ネクストミュージック」、「ダンスミュージック」として放っているし、やっぱり今作もノレるし踊れる。何よりも今作も「WE WILL KILL YOU IN SOUND」であるし、「ヤバ過ぎるスキル」が溢れている。4人のスキルが生み出す音が聴き手を殺す。そして結局は全てが「完全にノーギミック」なのだ。2014年初っ端からskillkillsは見事に人々をkillする名盤をまた生み出してしまった。



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■LIGHT(2014年1月25日)@渋谷CYCLONE

 昨年とうとう9年振りの3rdアルバムである「LIGHT」をリリースしたTHE CREATOR OF。09年末の再始動からライブ活動を重ね、そして遂にその進化した新たなTCOを音源としてリリースしたのだけど、今回はそのリリースパーティの第1段として、ゲストに天才ドラマーであり天才トラックメイカーであるtomy wealth氏を迎え、ゲストDJにはTCOのフロントマンである鈴木氏の実兄でり、こちらはクラブシーンでDJをしているGOJA氏を迎えてのライブ。完全に前線に帰ってきたTCOの新たな始まりと進化を告げるリリースパーティだったし、本当に全てが完璧な夜だった。



・tomy wealth

 先ずはゲストミュージシャンとしてtomy wealthのライブから。先週のkamomekamomeのツアーファイナルでも素晴らしいライブを見せていたが、彼等のライブは場所なんて関係無いとばかりに毎回感動を与えてくれる。先ずはtomy氏の作り出したトラックの完成度の高さが機軸にあると思うし、ヒップホップを基盤にしながら、それを更に再構築して流れる様な美しいピアノのフレーズを全面的に押し出し、ヒップホップのループの美学に、洗練された旋律の美しさが生み出す神秘的な音像。そのトラックに加え、生音でのリズム隊の音が、ライブとしての躍動を与え、トラックに新たなる生命の息吹を与えているのだ。もう言うまでも無いけど、tomy氏はトラックメイカーとしては勿論だけど、ドラマーとしても本当に素晴らしい表現者で、技術も凄いし、何よりもその技術をフルに生かした表現力と、本当に自由で解き放たれているドラムが凄い。今回も複雑極まりないドラムを圧倒的情報量で叩き出し、手数もかなり多いのに、徹底して作り込まれたビートは、その音だけでも一つの芸術的美しさを生み出し、精密さもうありながら、ダイナミックなビートの躍動が本当に散弾銃の様に放たれていく。そのドラムとトラックが生み出す一つの秩序こそがtomy wealthの真髄だと思うし、だからこそ彼等はライブバンドとして毎回ライブを観る度に大きな感動と新たな発見を観る者に与える。また今回も素晴らしいライブだったし、2月のTCOリリースパーティ第二段もtomy wealthがゲストを務めるけど、その時は更なる感動を与えてくれる筈だ。



・GOJA

 そしてステージでTCOのセッティング中はフロアDJでTCO鈴木氏の実兄であるGOJA氏のDJタイム。僕は正直に言うとクラブに全く行かない人間だし、クラブシーンの音についても全く明るく無いんだけど、GOJA氏の音は本当に低域とビートのグルーブと、徹底して踊れるビート、そしてそのビートとグルーブが生み出す揺らぎの音楽だったと思う。トラックの機軸はループするビートと、それが徐々に形を変えていく事によるトランスな高揚感。ビートを彩る音はメロディよりもサイケデリックな感触を重視している印象で、また1曲1曲が非常に分かり易い形で纏められているからこそ、ダイレクトに曲の魅力が伝わって来ていた。約30分のセットで確かな高揚を生み出し、ダンスミュージックとしてもサイケデリックとしても存在感を見せ付けるDJだったと思うし、TCOの前にフロアを見事に暖めてくれた。



・THE CREATOR OF

 そして本日の主役のTCO。今回はなんと一時間半に渡るロングセットで新作「LIGHT」の全貌を遂にライブで完全なる形で披露するライブとなった。今回は上手にドラムセットがセッティングされており、佐川氏と武田氏は上手側、下手側に鈴木氏、下手の奥に古谷氏、中央奥に坂本氏が立ち、それに加えて終始後光のみで照らされるステージ、メンバーの顔はほとんで見えず、5人のシルエットが常にステージに見えるというステージング。しかもサイクロンの素晴らしい照明もあって、本当にステージに立つ5人の姿は神々しかった。そしていよいよTCOの逆襲のライブが始まった。
 ライブは「Resonance」からキックオフ。オーガニックなギターのアルペジオとトライヴァルなビートが静かに、でも確かに柔らかな熱を帯びて始まりを告げた。クリアなギターの旋律が優しく響き渡る中で、一発一発の音がタイトで重いドラムと、複雑極まりないラインを弾くベース、フレーズの反復が徐々にテンションを高めてドラマティックな高揚を予感させながらも、その焦らしていく様な高揚していく瞬間に酔いしれたくもあり、そしてディストーションギターが入り込んでもループするアルペジオの美しさ、先程まで透明感溢れるフレーズを奏でていたギターがヘビィなディストーションのリフになり、そしてサイケデリックな轟音となり、静かな波として観る物の耳に入って来ていた音が轟音の渦となる瞬間のドラマティックさ。もうこの1曲目の時点で今日のライブは完全にTCOの勝ちだってのを確信した。続く「Pass Away」はその「Resonance」の余韻を受け継ぎながら、幽玄のギターフレーズの神秘的音色がまた色彩を変えて波打ち、リズム隊のグルーブはより強度を増していく。複雑に音が絡み合いながらも、その音が本当に完璧な位にシンクロする事によって、バンドの音が一つの渦へと変貌していくし、その新たなる創造を祝福する様なピアノの旋律がまた美しい。この時点でTCOの音に完全に引き込まれてしまったし、優しい轟音と言う形容こそが一番しっくり来る音像。強さを感じさせながら、柔らかに観る物を包み込み、酔いしれさせる。2ndの流れを受け継ぎながら、それを更に上へと更新させた「LIGHT」のこの2曲で、本当の意味でのTCOの始まりが高らかに告げられたのだ。
 SEの「The Revival」を挟み、今度は一転して「Black Star」。反復するピアノの幽玄さに反して、のっけからディストーションギターが炸裂し、その鈴木氏の歪みと、武田氏の厳かなクリアで高次元のギターフレーズの絡み、そこに古谷氏の音が加わる事でバンドとしての音を更に明確にし、その3人の音を支えながら、しっかりと自らの存在をアピールする坂本氏のベースと、静謐な繊細さと、原始的躍動を感じさせる佐川氏のドラムが存在し、緊張感と、性急でありながらも、自由自在に飛び交う音の粒子、それらが音でありながら、一つの色彩の様に存在し、シリアスな緊張感から新たなる法律を生み出していく。そして今回のリリースパーティの企画名になっており、新作アルバムのタイトルトラックである「LIGHT」は改めて今のTCOを象徴する楽曲だなと認識した。これまでインストの楽曲が続いた中で、鈴木氏がボーカルを取るこの曲の歌詞はたったワンフレーズ。淡々とそのフレーズを繰り返し歌っていく中で、音数こそ少ないけどその音の一つ一つが重いピアノ、同時に更に厳かさを増させたリズム隊の音、3つの音の重みを基盤に空間を司る武田氏の余韻を聴かせるクリーンギターと鈴木氏の降り注ぐ様なディストーションギターが旋律を確かに聴かせ、そして終盤では更に増幅したディストーションと美しく奏でられるトレモロの音色、そして物語が一つの終わりと始まりを告げるドラマティックな轟音の渦となって押し寄せ、本当に大きな感動を生み出す。この「LIGHT」は何度も感動的瞬間が存在した今回のライブでも、本当に屈指のハイライトな瞬間の一つだったと僕は思うし、現編成になって初めて生み出された曲だからこそ、説得力も本当に凄かった。「Settle」ではその「LIGHT」の余韻を受け継ぎながら、よりサイケデリックに白銀の音を奏で、徐々に渦巻く音が意識を酩酊させていく感覚を生み出していく。
 そしてセットも後半に入り新作の中でも一番ヘビィネスを感じさせる「You Are」へ。引き摺る歪んだリフから始まり、反復し、他の音が加わり始め、そして暴発するヘビィネス。鈴木氏も打って変わってシャウトを繰り出し、重音と化したドラムとギターリフがシンクロしていく。しかも単なるヘビィネスでは無く、ヘビィネスの中から感じさせるメロディアスさやある種のキャッチーさ、熾烈で躍動的な音が曲が進行する度に加速し、そして爆発するカタルシス。この「You Are」はTCOが本当に分かりやすい形で既存のヘビィロックに「No」を突きつけた曲だと思うけど、その破壊と創造のヘビィロックはライブだと更に熾烈に響き渡る。そこからが本当に凄かった。2ndからまさかの「Narcolepsy」だ。反復する静謐な音色が大半を占めながら、アンビエントに音が変化し、柔らかに観る物を包み込む。更に後半のパートはよりヘビィかつダイレクトにアレンジされ、アンビエント曲をライブでここまでダイナミックに変貌させてしまう手腕には驚くしか無かったし、それに続く決定打は1stからの「Hi On」だろう。これまで何度かライブでやっていた曲だけど、一転してトライヴァルなヘビィネス絵巻へ。密教的なギターフレーズ、ストーナーとかドゥームとかを飲み込み、ヘビィロック側から放つサイケデリックさ、今回のライブで一番破壊的な音を鳴らしながら、15分で魅せる熾烈さと壮絶さ。放つ音の全てが坩堝となり生み出す混沌。そしてそれを最新の曲も2ndも1stも全て確かに繋げてしまっていたし、この「Hi On」も間違いなく今回のハイライトの一つだっただろう。
 ライブも終盤になり、一転して「Wind Up」大半の曲がインストとなっている今回のセットでは一番の歌物であり、この曲もTCOのヘビィロックの新たな形を示した曲だ。シリアスで重苦しいヘビィネスから始まり、最後は美しい悲哀の先の光を生み出す曲だが、これまでに何度もプレイして来た曲だったのもあるだろうし、その重みや貫禄をより感じさせ、楽曲の中で見せるストーリーも色彩も高次元であり、そして最後の最後に感じたのは確かな光だった。「Out For Three Days Straight」のその余韻を引き継ぐ白銀の音の粒子のシャワーと化したサウンドも素晴らしかった。そして最後は2ndから「Acoustic」。再始動当初からずっとプレイし続けていたこの曲は、僕自身が進化を追いかけ続けていたのもあったし、音源とは全く違う形になっていながらも、それはよりTCOというバンドが先に進んで行ったからこそだったし、過去と現在を繋ぎながら、その先を確かに見たし、最後の最後はその音の全てが混沌とした音塊になり放出されていた。全12曲、アンコール無し、一時間半にも及ぶライブは本当にあっという間だったし、そしてその一時間半で魅せたのは圧倒的な音が生み出す新たな体験であったし、何度も何度も感動的な瞬間があった。MCこそ鈴木氏が曲の合間に何度か「あざっす!」と来たお客さんに感謝を述べた位だったけど、その音でTCOは全てを語っていた。


セットリスト

1.Resonance
2.Pass Away
3.The Revival
4.Black Star
5.Light
6.Settle
7.You Are
8.Narcolepsy
9.Hi On
10.Wind Up
11.Out For Three Days Straight
12.Acoustic



 ゲストのtomy wealthのライブ、GOJA氏のDJ、そしてTCOのライブと本当に全てが完璧なリリースパーティになったと思うし、「LIGHT」のリリースによって完全復活を果たしたTHE CREATOR OFというバンドの存在の証明となった夜だったと思う。本当に長い眠りから目覚め、逆襲の時に向けてライブ活動と曲作りを重ねてきたTCOを僕は4年近く追いかけてきたけど、今回のライブはこれまで観たTCOのライブの中で間違いなく一番のライブだったと思うし、圧巻の一時間半だった。「LIGHT」という全ての先を行くアルバム、そしてそれを本当に完全な形で鳴らすライブ、THE CREATOR OFは本当に唯一無二の存在だと改めて思ったし、そして進化の象徴は遂に新たなスタートを切ったのだ。2月22日に今度は場所を変えて三軒茶屋HEAVEN'S DOORにてリリースパーティ第2段を控えているが、その時は更なる進化を見せると僕は勝手に確信しているし、これまでもライブを重ねる毎に進化してきたTCOはまだまだこれから更に新たな地平を切り開いていくだろう。これこそが日本が生み出したオルタナティブロック・ヘビィロック・ハードコア・ポストロックの最新で最強の進化系であるし、TCOは絶対に止まらない。もう今から2月のライブが楽しみで震えてしまうよ。この日のライブは本当にこれからも胸に焼き付くと確信している。さあ進化の化け物の逆襲はまだ始まったばかりだ!!
タグ : ライブレポ

■Cyclamen、今西勇人ロングインタビュー

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 Cyclamenの音に初めて触れた時、本当に大きな衝撃が走った。今でこそ少しずつ日本でも市民権を得ているdjentという新たなる音楽の形だが、Cyclamenの音はdjentの枠組で語られながらも、その枠に全く収まってくれない。djentのゴッドファーザー的存在であるSikThのMikee Goodmanとのコラボも話題になったし、日本人のバンドでありながらフロントマンでバンドのメインコンポーザーの今西勇人氏はかつてはイギリスに在住し、現在はタイに在住。その登場当初は在英日本人によるワールドワイドかつ、完全にDIYなスタンスでの活動も大きな話題になった事を覚えている。勿論、Cyclamenが単に今西氏がワールドワイドな活動をしているから凄いって訳ではない(それでも十分斬新で凄いけど)。SikThのDNAを継承しながら、激情系ハードコアのエッセンスを取り入れ、更には変拍子駆使でとんでもなくテクニカルで熾烈極まりない音を放ちながら、同時にとんでもなくポップで多彩で、本当豊かな色彩を放ち、海外のラウドロックの最先端を行くセンスを持ちながら、同時に日本人だからこその感情表現の豊かさとポップネスを持つCyclamenは本当に唯一無二の存在だと思う。
 この日本でのライブ活動はこれまでほぼ無かったにも関わらず、インターネットを中心に彼等の名前は広がっていった。そして今年の2月に日本人でありながらまさかの来日と言う何処かのmonoみたいな形でのライブツアーが実現する事になった。これは間違いなく日本のラウドロック・ライブハウスシーンにとって大きな事件だと僕は勝手に思っているし、僕を始めとして、今回の来日を待ち望んでいた人は多いと思う。今回の来日ツアーに合わせて、当ブログでCyclamenの首謀者である今西勇人氏へのメールインタビューが実現した。インタビューを読んで頂ければ分かるが、今西氏は本当に丁寧かつ真摯にCyclamenについて語ってくれた。昨年リリースした最新の2ndアルバム「ASHURA」(当ブログでの紹介の記事はこちら)も素晴らしい作品だったが、そのCyclamenの音の出所、そして何故こうやって世界規模でDIYな活動を続けていくのか、今回の来日ツアーについて、本当に贅沢な位に今西氏に聞きまくったが、そこで見えたのは、今西氏の多彩で自由で先を行く音楽センス、そして最先端な音楽活動方針、何よりも自らの生活の中で音楽を生み出していくという熱意だった。



■先ずはCyclamenというバンドの結成から現在に至るまでの経緯を簡単に教えて下さい。

 最初はソロの宅録プロジェクトで、イギリスのReading(日本でいう埼玉の様な場所)で音楽を作り始め、SikThのMikee Goodmanがゲストボーカルしてくれたことを切欠にインターネットコミュニティで一目置かれるようになりました。
 その後バンドを結成してイギリスツアーを成功させた後、結婚してアジアに拠点が動いたのを切欠に日本での活動も始めました。



■元々はソロユニットとして始まり、一度バンドになり解散して、またソロになり、現在はまたバンド編成と大きな変化をこれまでしてきた訳ですけど、その様な変化を遂げていく中で今西さんのCyclamenの活動に対する心境の変化とかはありましたか?

 特に無いですね。。ソロの時の方がライブを考えなくて良いので作曲の生産力が3~4倍になりますが。バンド体制になると自分はマネージャー役になって自分の時間と努力が相当そっちに持っていかれてしまうんで、正直ミュージシャンとしての活動は減ります。気持ちとしては自分自身の力で常にCyclamenでやりたい事だけやってるんで楽しいです。お金は本当に入んないですけど(笑)。



■今西さん自身、Cyclamen結成時はイギリスに在住していましたし、現在はタイに在住していますが、こうして日本ではなく世界を拠点に生活する事によって今西さんの音楽に対する価値観やCyclamenの活動に対してどの様な影響があったりしますか?

 日本に住んで活動していた自分との比較対象が無いんで難しいですが、やっぱり活動の考え方は相当ヨーロッパ寄りなんだなとは思います。積極的に自分を売り込んで、流行を完全に無視しても心配にならないのはイギリスのシーンが他に比べて新しい音の音楽への抵抗が無かったからだと思います。
 やっぱりタイと日本での活動を始めてその「慣れない音楽への壁」みたいなものは少なからず感じます。あと自分が元々メタルやっている日本人って事で変わり者だったんで逆に開き直りやすかった気はします(笑)。



■イギリスで始まったCyclamenですけど、イギリスという異国で日本人として音楽活動をするにあたって、何か思う事とかはありましたか?

 やっぱりライブに行っても大抵はアジア人は自分一人だし、感性もちょっと違うんで中々自分の居場所の良いシーンを見つかりにくかったってのはあるかもしれません。その代わりMySpace等のお陰でとても強いインターネットコミュニティが出来て、前よりずっと自分と気の合う人達っていうのが見つかりやすくなりました。
 自分はSikThの大ファンだったんで彼らのファンとは大抵話が合うっていうのは助けだったかもしれません。でもイギリスという最先端の音楽を次々世界へ配信する場で活動させていただいたお陰で、オリジナリティの追求と技術の向上には相当良い刺激になりました。頑張って自分にしか出来ない事を追求していかないと誰も長く興味を示してくれませんから。



■元々はソロで活動してましたが、どのような経緯でバンドとして活動しようと思いましたか?
 
 サポートしてくれている皆さんから「ライブが見たい!」っていう声があったからですかね。自分はひきこもりなので特に自分がやりたい!と思って始めたわけでは無いと思います(笑)。
 後はソロプロジェクトだとなかなか真剣に捉えて頂け無いということもあったかもしれないですね。ツアーをしているっていうのが何かしらのステータスである気がします。



■Cyclamenは俗に言うdjentという形で紹介される事が多いと思いますし、元SikThのMikee Goodmanとコラボした経歴もありますけど、今西さんの中ではCyclamenの音はどの様な立ち位置にあると思いますか?

 「シクラメン」って名前にしたのがそもそもこの花の色によって花言葉が変わるっていう性質が、自分の音楽の気まぐれさに合っていた感じがしたからなんで、ジャンルで区切られると、何で区切ってもそれなりに当てはまらない部分が出てきちゃいます。逆に言えば何で区切っても「それだ!」とは言えないので「なんでもいいや」って感じです!
 でも仲良くしてくれるバンド、リスナーの方々にはやはりdjent好きに人たちが多いんで、人間のグループとして考えればdjentで良いんじゃないかなとは思います。



■今西さんの中でCyclamenの現在の音に至るまでに影響を受けた音楽やカルチャーがありましたら教えて下さい。

 SikThは言うまでもなく、そしてEnvyも自分のボーカルスタイル、曲の広大さの表現の仕方に相当影響ありますね。
 カルチャーとしては自分は完全にハードコア思考なんでDIY哲学、小さな会場で観客と汗だくになりながらのライブとか大好きです。リスナーの皆さんと「人間として繋がる」ってことはとっても大事にしてます。メタルではその傾向があまり無いので大切にしていきたいですね。



■それでは作品に関する話になりますが、昨年2ndアルバムとなる「ASHURA」を発表しましたが、これまでの作品と違ってシリアスさや怒りといった部分が大きく出ているアルバムだと思います。音楽的な多様性が際立っていた1stである「SENJYU」とはまた違う作品になったと思いますが、「ASHURA」を製作するにあたって「SENJYU」を製作した時とは変化とかはありますか?

 「ASHURA」はコンセプト上、怒りに満ちた作品なんで、あれ以外の表し方が無かった感じですかね。「SENJYU」はコンセプトにした物語の主人公の気持ちの変化を書き表したものだったので多様なスタイルで表現するのが真っ当でしたし、機材が少し変わった事以外の変化は特に無いですね。
 アルバム両方とも同じ話を元に書き上げたコンセプトアルバムですし、音楽の書き方もそんなに変わってません。「表す気持ちのテーマ」が変わったのでアルバムの音が変わったってぐらいですかね。



■「SENJYU」と「ASHURA」は明確な繋がりを感じさせながらも作品としては全然違うベクトルを向いていると思いますし、それでもCyclamenとしては一貫した音を鳴らしていると思います。単なるdjentでは片付けられない音だと思いますが、今西さんが理想とするCyclamenの目指す先とは何でしょうか?

 どんなスタイルの音楽を弾いても「これはCyclamenだ、Cyclamenじゃないと出来ない」と思わせる音を作る事ですかね。他の人が真似出来る音楽なら他の人がやって、それを自分が聴いて満足してしまうんで。あくまで「この世に自分を満たす音楽が無い!」と思うからこそ、自分で音楽を作りたいと思うんだと思います。



■Cyclamenの楽曲は非常にストーリー性を感じさせる楽曲ばかりですが、曲を作るにあたってどの様な事を意識してますか?

 アルバムって複数の曲が一つのパッケージとして入れられる、っていう一曲ずつの相性がとても重要なものだと思うんですよね。だからその一貫性を持たせる為に、物語を作曲のベースにするってことをしてます。EPはその逆でその辺をあまり気にしないで作曲できる気軽さが好きですね。
 アルバム曲は基本的に「こんな感情を表すにはどういう音にすれば良いんだろう?」って毎回考えてそこから音を作っていきます。逆にEPは何となく書いていってできたものが表す感情に合わせ残りを埋めてくって感じですね。
 音楽はあくまで数ある「表現」の一つですから、表す気持ちの伝わらない曲は失敗作だっていう思いは強いかもしれません。ただその表したい気持ちをリスナーが必ずも体験した事があるとは限らないんで、そこで通じないのはしょうがないですかね。これも相当自己満足の域での話なんですが、自分にとっては良い曲が出来たかを判断する良いガイドラインになってます。



■これは僕の個人的な感覚でもありますけど、Cyclamenの音楽はテクニカルで熾烈でありながらも非常にポップな側面を持っていると思います。今西さん自身はCyclamenの音はポップな方向性も見せたいと考えていたりはしますか?

 「見せたい!」と意識してやっている訳じゃないんですけど、やっぱり13歳までは日本にいましたし、J-Popの影響はめっちゃ強いですね。ボーカルもアバンギャルドなものより頭に残りやすい物が好きですし。
 人は特に13~20歳(中学、高校時代)ぐらいに聴く音楽に一番影響を受けるそうで、自分はラウドな音楽には16ぐらいまで全く免疫が無かったのでそのせいかも知れません。B'zの大ファンで彼らの90年代の曲をタイのカラオケとかでもよく歌ってます(笑)。



■アートワークの面でもコンセプトを強く感じたりしますが、音楽は勿論ですけど、Cyclamenの全体像の中で今西さんはどのような拘りがありますか?

 アートは自分の家族が昔から芸術好きだったんで拘る所はありますね。だからほとんどのCyclamen関係のアートも自作になっちゃってますね(笑)。
 メタルバンドとして気をつけてるのはあまりに典型的なメタルなアートをしないって事ですかね。髑髏・ゾンビ・血・銃などは結構意識して避けてます。音楽でもアートでも、芸術性がそれなりにあり流行に負けない物を作りたいって気持ちはとても強いです。



■Cyclamenは非常にDIYな活動をしているバンドだと思いますけど、今西さんの音楽活動をするにあたっての考え方とか、どうしてこの様に徹底してDIYな活動をしているのかを教えて下さい。

 格好良く言えば「自分の信じる物を100%自分のやりたい形で表現したいから」。格好悪く言えば「レーベルが興味示してくれるほどトレンドに合った音楽してないしお金にならないから」です(笑)。
 簡単に言えば、自分は有名になって世界中をツアーするより、音楽で一生食べていきたいんです。そもそもひきこもりっ気が強いんで家にいるのが好きですし(笑)。
 レーベルに付くとどうしても売り上げの大半を持っていかれてしまうんで、それを考えると自分で100%全てやるのが30年、40年音楽をやっていくのにはそれが必要不可欠だと思います。あと人を仕事で信頼するのが極度に苦手で、「この人と働きたい!」と思う事がないのもそれが理由ですけど。



■この様なDIYな活動をしていますけど、今西さんの中で理想としているバンド活動の方法やビジョンがありましたら教えて下さい。

 Cloudkicker、羨ましいですね(笑)。好きな仕事で働いていて、その横でやっている音楽でも成功して、それに加えすべてを自分一人でやってるっていう。彼も特にツアーで世界を回る事とかにあまり興味が無いみたいで、あくまで無理せずに音楽を楽しむって姿勢でやっているじゃないですか。彼の音楽活動にはとても影響受けてるし参考にもしてます。



■今回ジャパンツアーとしてCyclamenは日本に来日しますが、どの様な切欠で本格的に日本進出する事になったのですか?

 日本人のバンドメンバーが加わって、2月にbilo'uからのお誘いでライブに出る事をきっかけにスケジュール組んでたら、いつの間にかツアーになったって感じです(笑)。
正直Cyclamenは本当に日本で無名だと思っていたんでこれだけ興味を示して頂いている事には本当に心から感謝してます。



■日本でのライブはこれまであまり無かったですし、僕を含めて音源でしかCyclamenに触れていなかった人は多いと思います。そういった人にライブでどうやって自らの音を伝えていきたいですか?

 自分にとってライブはリスナーの方々に顔と顔で向き合ってお礼を言う場所なんで、とにかくこんな自分勝手に活動していることをサポートしてくれている皆さんへの感謝の気持ちを伝えたいですね。
 それ以外は来てくれた観客の人達に申し訳なくないように自分達が100%を出し切ったライブを必ずするって事だけですね。



■今回bilo'uの呼びかけで来日ツアーが実現しましたが、今後日本のバンドとはどのように繋がり、またどのような動きをしたいと考えてますか?

 自分はとにかく日本のアンダーグラウンドシーンとコネクションが無いので、どなたでも気が合えば!って感じですね。Withyouathomeでの活動もありますしジャンルや考えの壁無く、色々な人たちとお会いできると嬉しいです。



■2月からのジャパンツアーに対して何か意気込みとかはありますか?

 正直色々不安ですね。「音源ではこんなに格好良かったのに」って言われないか(笑)。
 特にdjentのバンドを見て来た人達はとってもタイトに演奏してくるバンドを見慣れてるんで、それに負けないぐらいの内容をCyclamenで出すって多分今までで一番の挑戦かもしれません。でもその挑戦が自分たちをより良いミュージシャンにしていくんで、そこで逃げないで向き合うことも大切だと思います。



■Cyclamenはワールドワイドに活動してきたバンドですけど、こらから世界で、または日本でどの様に自らの音を広めていきたいですか?

 世界各地からサポートをいただいているのは本当に有難いのですが、 同時に彼らの前でライブという形でしっかりお礼ができていないのがちょっと残念ですね。ですからこれからはなるべく行った事の無い場所を回って、一人でも多くの方々に感謝の気持ちを伝えていきたいです。



■これからCyclamenの音はどの様に進化すると今西さんは思いますか?

 「Ashura」を切欠にアグレッシブな曲の楽曲はだいぶ減ると思います。少なくとも次のアルバムはもっとアンビエントとクリーンギターが多いメロディアスな物を計画しています。
 ここ数年でCyclamenのメタル色が相当強まったんで次のリリースを機会に180度方向性の違った、それでもCyclamenらしい音楽作っていきたいですね。



■最後になります。今西さんにとってCyclamenとは何でしょうか?またCyclamenというバンドはどうありたいと今西さんは思いますか?

 Cyclamenは自分の息子ですね。溺愛しているし、問題はたくさん投げかけてくるし、お金はかかるし、切りたくても切れない、自分のアイデンティティとしての一部です。これからも末永くCyclamenと共に生きていきたいです。
 バンドとしてはいつまでもやりたいことを楽しくやっていきたいですね。それに尽きます。その中で生きていけるほどのお金が稼げればそれに越した人生の幸せはないんじゃないかなと思います。



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 インタビューにもあった通り、Cyclamenは2月に今西氏の来日により日本でのツアーが決定している。今回の来日を待ち望んでいた人も多いだろうし、そのライブでCyclamenはこの日本でも更に名を上げていく事になると思う。各所で国内の猛者とぶつかり合う事によってCyclamenはどの様なライブを見せるのか、僕を含めてCyclamenのライブをまだ観た事が無い人は多いと思うし、音源で見せたストーリーを果たしてどの様な形でライブで表現していくのか、そしてその先には何があるのか。全てが未知だけど、もうすぐCyclamenの全貌がこの日本で明かされるのだ、その瞬間に彼等の存在は日本でも決定的な物になるだろうと僕は確信している。今回の来日ツアー、絶対に見逃してはいけないし、時間が合う方は、ツアーの中の一本でも是非とも足を運んで頂きたい。ツアー一発目の2月1日のライブはフリーライブとなっているし、これ以上に無いチャンスだと思う。さあ自らの目でCyclamenという猛者の全貌を目の当たりにするのだ!!



【Cyclamen Japan Tour 2014】

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2014年2月1日(土)"Ashura" release show Japan@宮地楽器神田店Zippal Hall(無料ライブ!!)

2014年2月2日(日)DIGFEST Vol.1@京都Studio 246

2014年2月11日(火)Periphery w/Cyclamen, Hammerhead Shark@渋谷Club ASIA

2014年2月15日(土)GIG GEEKS vol.2-the H-@新宿Antiknock

2014年2月16日(日)Mud Max vol.1@新宿Antiknock














【Facebook】https://www.facebook.com/thiscyclamen
【twitter】https://twitter.com/thiscyclamen
【bandcamp(全音源フリーダウンロード可能!)】http://cyclamen.bandcamp.com/music

■On The Eternal Boundary/Archaique Smile


On The Eternal BoundaryOn The Eternal Boundary
(2013/12/04)
Archaique Smile

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 昨年のMilankuの来日ツアーでも全公演に同行し、清流の様な轟音で観る者を感動の渦に巻き込んだ4人組インストポストロックバンドであるArchaique Smileの全5曲入の2013年リリースの1stアルバム。同じ日本のバンドだとmonoに代表される様な轟音系ポストロックのバンドであり、その音は本当に正統派な轟音系ポストロックバンドであるが、今作に収録された5曲は確かな感動を聴き手に残してくれる。



 彼等の音自体は正直に言うと特別斬新と言う訳では無い。収録されている楽曲の殆どが長尺であり、楽曲構成も非常にストーリー性を強く感じさせ、静謐で清らかな音からドラマティックに熱量を高めて最後は轟音のバーストという構成も言ってしまえばかなり正統派だ。しかしそんな彼等が何故良いかと言うと、正統派の手法だからこそ際立つそのストーリーテラーとしての力量、純粋な楽曲の良さ、エヴァーグリーンな清らかなる旋律の美しさ、そして実はシンプルな手法でアプローチしているからこそ生み出せたダイナミックな躍動と熱量。それに尽きると思う。第1曲「Falling To The Sky」の冒頭の清らかなるトレモロとアルペジオの二本のギターが飾るオープニングからしてもう分かっている感があるし、再生した瞬間に彼等の生み出す物語に引き込まれていくだろう。前半はクリーンなギターと一歩一歩少しずつ歩を進める様なリズム隊の音、楽曲が進行するにつれて浴びていく熱は待ち受ける爆発の予感しかないし、轟音パートに入った瞬間はもう待ってました!とばかりに吹き荒れる美しい轟音。しかも最後の最後で更にうねる至上の轟音が音塊としてダイナミックに轟流するカタルシス。明確な起承転結を確かに感じさせてくれるし、それは繊細でありながらも、ここぞという所では力強く音を放ってくるから、確かな音を聴き手に残す。
 第2曲「A Doom Massacres Our Hearts」からは更にその物語は純度と鮮明さを浮き彫りにしていく。ツインアルペジオの無垢な旋律から早々に轟音パートに入り込み、のっけからクライマックスとばかりに焦らし無しに放たれる轟音は堪らないし、その熱量をダイナミックに伝えるリズム隊の音は更に性急に加速していく。そして再び静謐なパートで落として終盤で再び轟音パート、楽曲構成の方法論こそ極めて普遍的でありつつも、その構成美と美轟音の酔いしれる。今作で唯一5分未満の第3曲「Grave Of Memories」では透明感溢れる残響音の余韻を聴かせるパートから、神秘性の高いトレモロの渦が静かなる爆発を見せる終盤でグロッケンと美しい調和を果たしているし、第4曲「Melting Mind」は冒頭のフレーズから一つの救いを感じるポジティブな旋律が耳に残り、作品がいよいよクライマックスへと雪崩れ込む予感を感じさせながらも、新たなる始まりを想起させ、そしてその始まりを祝福する神々しい轟音が吹き荒れ、聴き手の心の淀みや悲しみを完全に吹き飛ばし、代わりに確かな感動とポジティブなエネルギーを残してくれる今作でも屈指の名曲。そして最終曲「Faint Light」にて感動的な今作を締め括る見事なラストシーンを映し出し、悲しみを乗り越えた先の世界を描き今作は終わる。



 非常に正統派な轟音系ポストロックバンドでありながら、1stにして非常に感動的な静謐さから轟音へと雪崩れ込む神秘的な物語を描き、そこには何の淀みも無い。彼等の音に触れると本当に心が豊かになっていくのを感じるし、どんなに熾烈な轟音を放っても、それは圧倒的な感動の情景から来る物であり、人々の負の感情を全て吹き飛ばす熱さとエネルギーが確かに存在しているのだ。これからの国内ポストロックを担うバンドになっていくだろうし、これからの進化も非常に楽しみになる充実の1stだ。



■DERIVE/noy


DERIVEDERIVE
(2013/11/20)
noy

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 08年結成の初台WALL発のエモーショナルハードコアバンドであるnoy。最近ではONA FESやBIGNOSE FESへの出演もあり、少しずつではあるが、着実に知名度を上げていった彼等が2013年の満を持してリリースした8曲入りの1st音源。リリースは国内外問わずに素晴らしいバンドの音をリリースしているcozmic noteから。エモーショナルハードコアの新たな時代を切り開く、本当に激熱な作品になっている。



 noyのサウンドは本当に全くの小細工やギミックは存在していない。今作の楽曲も最長で約3分程だし、とにかく最初から最後までフルスロットルで駆け抜けるハードコアだ。とにかくストレートに己の感情をダイレクトに放つそのサウンドスタイルが最高に格好良い。音楽性は激情系ハードコアの流れもそうだけど、endzweck辺りのメロディアスなニュースクールハードコアの流れを受け継ぐバンドであるし、そのサウンドは本当に性急だし、メロディアス。イントロからの第2曲「反発性推進力」だけで、もう完璧にブチ抜かれてしまうだろう。のっけのトレモロリフがいきなり感情を煽りに煽りまくり、ソリッドに歪むリフとピックスクラッチを合図に暴走するサウンド。怒涛のハードコアのビートと、刻みのリフとメロディアスに泣きまくったギターの洪水、そしてポエトリー調でありつつも、繊細で全身全霊なボーカル、合間合間に入るコーラスの叫びもナイスだし、しっかり盛り上がるパートでここぞとばかりにシンガロングパートを入れてくるし、手法自体は極めてスタンダードでありながらも、僅かな尺の中でドラマティックに展開されるサウンドが堪らないし、まるで曲の全パートがサビみたいになっているし、とにかくハイテンションで突っ走り、シンガロングやコーラスも含めて、とにかく叫びまくり、一方でボーカルは一つの青臭さを感じる性急で歌心溢れる叫びを繰り出しているのだ。メロディも非常に青臭く、ハードコアの肉体性を強く感じるリフが中心でありながらも、メロディありきで生み出されるフレーズの数々がとても印象に残るし、そして確かに存在するのはその瞬間、その瞬間の感情の爆発だ。第6曲「平行線の価値観 現在を再構築」は今作の中でも一番ドラマティックであり、今作では最長の約3分の楽曲であり、そのサウンド自体もやっぱり小細工無しの直球エモーショナルハードコアでありつつ、静謐に聴かせるパートではそのメロディセンスが際立ち、そして終盤で感情のビッグバンだ。たった3分でここまでのスケールとストーリーを見せる力量もそうだし、それでもやっぱり不器用なまでに真直ぐなハードコアなのだ。捲くし立てまくるボーカルと、最初から最後までこれでもかと泣きを前面に押し出した感動的な第7曲「日々の隙間」の終盤のトレモロリフとシンガロングパートなんて本当に何度も拳を突き上げてしまうし、そんな終盤の2曲のドラマティックさから最後の最後の最終曲「この夜に明日を見出す」は限界突破した激情が炸裂し、1分半の間で何度も何度も瞬間のカタルシスが暴発している。全8曲約16分の間に何度も何度もドラマティックな瞬間が生まれる、正に涙のハードコアだろうこれは。



 本当に正統派なメロディアスな激情・ニューススクールハードコアだし、サウンド自体は決して目新しさは無いとは思うけど、そんな小細工無しの真剣勝負なハードコアだからこそ凄く心に響くし、ハードコアバンドとしての馬力と、素晴らしいメロディセンスが見事に手を組み、そして熱い魂の叫びが心を動かす確かな一枚になっている。新生代エモーショナルハードコアの青き力に溢れた激情の一枚だ。



■BEDSIDE DONORS TOUR FINAL(2014年1月18日)@恵比寿LIQUIDROOM

 柏が生んだ生きるハードコアレジェンドことkamomekamome。昨年リリースした「BEDSIDE DONORS」はカモメが現在ハードコアバンドとして本当に最強である事を証明する最高の1枚になったが、そんなカモメが全国をリリースツアーで回り、そしてツアーファイナルは大舞台リキッドルーム!対バンにtomy wealth、HAWAIIAN6、Envyという最高すぎるバンドを呼び、自身のツアーファイナルを迎えた。スタート30分前にリキッドに到着するとお客もまばらで不安になったが、一発目のtomy wealthが始まる直前にはリキッドは溢れる人。前売りも当日券もソールドというリキッドという大きいハコで見事な快挙を成し遂げ、本当に大きなバンドになったカモメのツアーファイナルは始まった。



・tomy wealth

 トップバッターはドラマー兼トラックメイカーtomy wealth。こちらも昨年新作をリリースし、そちらも素晴らしい内容であったけど、僕はtomy wealthの真の魅力はライブにこそあると思う。音源だと神秘的な美しさを持つリリカルなトラックに耳が奪われてしまったりするけど、ライブではtomy wealth氏のドラマーとしての力量が本当に凄まじい事を痛感させられる。勿論トラックメイカーとしてのセンスは凄まじいんだけど、そこにtomy wealthのドラムとカナダ人ベーシストのベースによるグルーブがダイレクトに入る事によって最高のダンスミュージックとなるのだ。特にtomy氏のドラムは本当に複雑でありながらもとんでもない手数を叩くし、それが正確無比でありながら本当に気持ちの良いグルーブに満ちているのだ。元々ハードコア上がりと言うのもあるだろうか、本当に一発一発の音が強いし気持ちが良い。それを圧倒的情報量で放ち、同時にリリカルで美しいトラックと見事な調和を果たし、インストでありながら、ドラムがまるでボーカルと同じ役割を果たし、本当に豊かなる音の色彩と洪水を生み出す。トラック自体はヒップホップに基づいてるのに、その枠組で語れないし、とにかく美しいのだ。そして昨年リリースした新作ではカモメの向氏をゲストボーカルを迎えた名曲「Automatism」が収録されているし、今回向氏とのコラボを期待した人も多かったと思うけど、終盤でtomy氏のドラムの乱打からみんなの期待通り向氏がステージへ。そして名曲「Automatism」。ただでさえ圧倒的情報量を誇るtomy wealthの音に向氏の詩的でヒップホップ的で、でもやはり枠組に収まってくれないボーカルが乗った瞬間は本当に大きな感動の渦が生み出された。そんなスペシャルなコラボもありながら30分で本当に濃密極まりないステージを見せてくれた。



・Envy

 次のHAWAIIAN6は残念ながらエントランスで一緒に足を運んでた友人と談笑していた内に始まっていて、気付いたらライブを見逃してしまってたので、それに続くEnvyから再びフロアへ。Envyのライブ自体は実に1年振り位に観るのだけど、本当に国内激情系ハードコアの誇りと貫禄に満ちた圧倒的ステージだったと思う。「Worn Heels and the Hands We Hold」の深遠でクリアで美しいトレモロのギターフレーズが響き渡る瞬間に、もうEnvyにしか生み出せない世界が確かに始まっていたし、その音色が増幅し、TESTU氏の叫びと共に暴発する激情のスケールは本当に段違い。メンバー5人の姿も非常に神々しさを感じたし、数多くの激情のバンドが日本に多く存在するが、やはりEnvyは別格中の別格の存在であるという事を改めて認識させられる。続く必殺の「Left Hand」では一転してソリッドで熾烈なるハードコアが炸裂。そのバンドとしての力量もそうだけど、よりスケールを拡大させたアレンジが本当に素晴らしく、一気に胸の奥の奥まで抉り取りに来ていた。「Pendulum」のポエトリーと哀愁溢れるギターフレーズから一気にブチ切れた演奏へと変貌し、ソリッドなハードコアパンクとしての強さをここぞとばかりに見せ付ける。今回のEnvyは本当に演奏面のテンションとブチ切れ具合が凄まじかったし、実に20年近くに渡って活動を続ける戦うベテランとしての凄みがあった。こちらもライブでは御馴染みの「Scene」の激情系ハードコアから轟音系ポストロックなアプローチをかまし、壮大で優しい一つの物語にはただその世界の住人になるしか無かったし、更に新曲は、これまでのEnvyを総括しながらも、これからのEnvyを見事に見せ付けるハードコアとしての強さや熾烈さと、ここ最近のEnvyのスケールが見事に一つの形になった名曲であり、攻撃性と悲哀が交錯する新たな物語。そして終盤の「A Warm Room」の温もりに満ちた音から最後の最後に「Farewell To Words」にて熾烈なる痛みをとんでもない熱量で放っていた。最後の爆音で圧巻の40分を見事に締め括っていた。フロアもモッシュの嵐でとんでもない熱量と盛り上がりを見せていたが、やはりEnvyというバンドは本当に代えの無い存在であると感じた。今でも最前線で戦う国内激情のゴッドはそのライブで自らの存在を証明していた。



・kamomekamome

 そして本日の主役のカモメのアクト。昨年は5回ライブを観たし、本当に大きなバンドになった事を実感させられたが、今回のツアーファイナルはこれまで何度も何度も観たカモメのライブの中で本当に最高のライブになったと先に断言させて頂く。プレイボールはカモメの新たなる最強の1曲目「ナイーブ レターズ」から。向氏と中瀬氏の絶唱の激突から始まり、完全にツインボーカル編成も板について、ハードコアバンドとして多くの人々を取り込むだけの器の大きさと、何物にも負けない屈強なる強さを手に入れた現在のカモメを象徴する名曲だし、白金氏と織田氏の2本のギターがメロディアスでありながらとにかく攻めに攻めまくり、嶌田氏のドラムは散弾銃のビートを叩き出し、中瀬氏は高速フィンガーピッキングでタイトにグルーブを生み出しながらハイトーンのシャウトをこれでもかと繰り出し、そして向氏の男の中の男な叫びが乗る。もう全てが完璧だったし、本当に危険なハードコアパーティに相応しい最高の幕開けだ。フロアもいきなり危険すぎるモッシュの嵐、ダイバー続出!!その光景を見た瞬間に僕はkamomekamomeというバンドにはもう元ヌンチャクだとか元Switch styleという前置きは本当に必要無くなったんだと思ったよ。続く「例え言葉は冷静に」では更に熾烈になり、とんでもない情報量を誇る音と叫びの洪水が生み出す混沌に圧倒されながら、フロアの「悴んだ声が!!」というシンガロングに対して本当に嬉しそうな笑顔を見せた向氏が印象に残ったし、カオティックさとエモーショナルさの正面衝突は本当に心と肉体を熱くする。「頭の中お大事に」ではよりソリッドなる混沌で3曲目で既に止めとばかりに殺しに来ていたし、もうこの新作の頭3曲だけで今日のカモメは誰も文句なんか言えないレベルで完全勝利だった。
 MCで感謝の言葉を述べながら「俺は我孫子と言う超田舎から来てるけど、東京モンはこんな田舎物に負けんのか?」と何故か訛りを交えたMCをして、既に火が着きまくってるフロアを更に煽る。そしてまだまだこんな物じゃねえぞとばかりに「メデューサ」というカモメの危険度MAXなド変態ポリリズム炸裂ハードコアで燃料投下!!嶌田氏のポリリズム炸裂しまくりのドラムもブチ切れてたし、のっけからとんでもないテンションを誇っていたバンドの演奏も更にリミッター解除でギアがフルスロットル!!「影 満ちる先」では一転して哀愁のメロを炸裂させつつも、やはり根底にあるハードコアバンドとしての熱量はとんでもないし、こんなにメロディが立っているのに、こんなにソリッドでストレートなのに、でもやっぱりカオティックだし、本当に一筋縄じゃいかないカモメの魅力を存分に体感。
 続くMCでは「立って様が、座って様が、腕を組んでいようがありがたい。それが貴方のダンスなんだから。」と向氏はMCをしつつ、「でもそんな事させねえ曲やる。」という合図と共に「この時期のヴァンパイア」という既に必殺の曲を繰り出しまくってるにも関わらず、それらすら越える最強のドラマティックなカモメの最強の楽曲郡の中でも特に最強の1曲をボム!!とにかくポリリズム炸裂しまくりのギターリフなのに、本当に泣きに泣きまくったメロディを感じさせ、杯ボルテージなんて言葉ですら片付かない、人間の限界を超える激情がバンドが生み出し、中盤のツインボーカル絶唱パートでは本当に感動的過ぎる瞬間が存在していた。「事切れ手鞠唄」ではこれまでの流れと一転して、初期カモメのドス黒い血と死の匂いを強く感じさせる痛みと悲しみのハードコアを展開、向氏が放つ痛みと苦しみに満ちた言葉が心を抉り取り、まるで向氏が自らの心臓を抉り取り、それをフロアに見せている感覚さえ僕は覚えてしまった。でもその後の「ハンズフリーからのお知らせ」に僕はどこか絶望の先の救いすら感じてしまったりもするのだ。
 三度目のMCは今回出演したバンドと足を運んだお客に向氏は感謝の言葉を告げる。そして最終チャプターは再び新作の曲となり、新作で最もストレートなエモを放つ「瞬く街」。これまでの熾烈さとは一転して心を鷲掴みにする優しさと郷愁に満ちたこの曲でまた涙腺が崩壊しそうになったけど、その次はカモメのライブの終盤と言えば「化け直し」だ。嶌田氏の危険すぎる四つ打ちのビート、そして向氏の「土足で構わない、どんどん上がって来てくれ。」という煽りでフロアは再びエンジン着火。そしてあれだけ変態性の高い曲でありながら、止まらないモッシュとダイバー、これはやはりカモメが本当にハードコアバンドとしてとうとう最強になってしまった、だからこそだ。そして本編のラスト2曲は、「エクスキューズミー」で燃え上がるフロアを更に絶頂へと導き、そしてカモメの最新のアンセム「手を振る人」。「手を振る人」は僕の中で幾多の苦しみと戦いながらも、それを乗り越えたからこそ生み出せたアンセムであり、確かな希望だ。シンガロングパートでは何度も魂から叫んでしまたつぃ、本当に新たな始まりを告げるに相応しい名曲だ。
 本編が終わっても、勿論フロアはまだまだギチギチだし、もっとやれとアンコールの手拍子。そして早々にメンバーが登場してこちらも新たな始まりを告げるアンセム「Happy Rebirthday To You」2010年にリリースされた3rdは間違いなくカモメの転機だったし(これは向氏がMCでも言ってたけど)、初期は絶望と痛みばかりを歌って鳴らしていたカモメが、それを乗り越えたからこそ生み出せた名曲だと僕は勝手に思っているし、そして数多くのライブでフロアを何度も何度も狂騒に巻き込んで来たからこその「Happy Rebirthday To You」だ。そりゃ説得力がとんでもねえし、何度も何度も泣きそうになる瞬間があった今回のカモメのライブで本当に涙腺がここで決壊してしまったよ。しかしこれでは終わりじゃなかった、二度目のアンコールではまさかまさかの2ndの最後を締め括る、僕がkamomekamomeの名曲郡の中で一番大好きな「プロメサイア」!!決壊した涙腺はもう完全に崩壊し切ってしまったし、この曲を生み出せたからこそ、今のカモメがあるし、だからこそカモメはこんなにも大きなバンドになったんだ。僕が2ndでカモメを知って、6年近くに渡ってこのバンドを追いかけて来たけど、この「プロメサイア」を観て、僕は本当にkamomekamomeというバンドを追いかけ続けて良かったと心から思った。最後の「Come On Let's Go!!」の絶唱は、本当に明日へと繋がる号令であるし、だからこそ生きていける。凄い臭い事を言ってるも分かっているけど、僕は心の底から本当にそう思うんだ。こうしてカモメのツアーファイナルはアンコール含めて全14曲、本当に完全燃焼のライブだった。ここまで長々書いておいてアレだけど、本当に最高のライブだった!!その一言が全てだよ。



セットリスト

1.ナイーブ レターズ
2.例え言葉は冷静に
3.頭の中お大事に
4.メデューサ
5.影 満ちる先
6.この時期のヴァンパイア
7.事切れ手鞠唄
8.ハンズフリーからのお知らせ
9.瞬く街
10.化け直し
11.エクスキューズミー
12.手を振る人

en1.Happy Rebirthday To You

en2.プロメサイア



 本当に言いたい事は上手く言葉になんかなってくれねえけど、でも僕は2008年頃にたまたま違うバンド目当てで行ったライブでたまたまカモメを観て、それで完全にブチ殺されて好きになって、何度もライブに足を運んだりもしたけど、本当に僕は心からkamomekamomeが大好きで良かったと胸を張って言いたいし、何度も言うけど本当に大きなバンドになったと思う。僕自身はヌンチャク世代じゃねえし、ヌンチャクもカモメを知ってから聴き始めた人間でもあるけど、もう本当にヌンチャクだとかSwitch Styleだとかいう前置きはいらねえんだ。kamomekamomeという現在進行形のバンドとして、ここまで大きくなったしKKKCとして10年以上に渡って歩んで来たからこそ、ここまで大きなステージに立ち、本当に多くの人を熱狂させるバンドになったんだ。今回1stの曲は1曲もやってないし、もしかしたら向氏は1stの頃の感覚がもう無いのかもそれない。そんなのは僕の勝手な憶測だから放っておいてくれなんだけど、でも向氏がkamomekamomeというバンドは有名無名関係なく、ただ格好良いバンド達と共に大きくなるバンドとして、そして音楽好きな奴等と一緒に大きくなるバンドとしての道を選んだ事は絶対に間違いじゃないし、今回のツアーファイナルはまた新たな希望であり、確かな始まりの合図だったと僕は思う。kamaomekamomeというバンドはこれからもっと大きくなるだろうし、もっと大きくなって欲しい。僕はこのバンドが大好きで良かったと心から思うし、だからこそこれからもkamomekamomeの事は追いかけ続けて行くのです。



 この日のリキッドは本当に沢山の笑顔で溢れていた。ありがとうkamomekamome。
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■Alkaloid Superstar/ZOTHIQUE

Alkaloid SuperstarCD



 作家クラーク・アシュトン・スミスの小説に登場する大陸ゾティークからバンド名を拝借しているらしいサイケデリックハードコアバンドであるZOTHIQUEの2013年リリースの1stアルバム。僕は昨年のNoLAとおまわりさんの共同企画でこのバンドと出会ったが、その全てを薙ぎ倒す音塊に一発で殺されてしまった。今作でもライブ同様にハードコアとドゥームとサイケデリックが激突する重戦車の音塊と悪夢の音像が蠢いている。



 盤を再生した瞬間にキーボードの不穏な持続音から始まり、不安を煽りまくるが、作品の導入である第1曲に続く第2曲「The Immortal」からとんでもない事になってしまっている。常に飛び交う不協和音のキーボートと蠢くアンビエントで暴力的サウンドコラージュ、しかしバンドの音自体は完全にダークサイドなハードコアサウンド。吐き捨てる様なドスの効いたボーカルと、重戦車リフがストーナーかつハードコアに暴走していく。リズム隊のグルーブもモロにハードコアな暴走サウンド。しかし中盤からキーボードの音を前面に押し出し、ドゥーミーなリフの這い回る残響と共にハードコアからドゥームのサイケデリックさへと展開し、訳が分からなくなってしまう。そんなサイケデリック絵巻で脳を溶かされきった先には再び激重暴走ハードコアで攻めてくるから、サイケデリックとハードコアの両極端な振り切った音の相互攻撃に聴き手は圧殺必至だろう。第3曲「Frozen Gloom」はストーナーを色濃く押し出しながらも、アトモスフィリックの美意識を絶妙に感じさせる辺りがニクいし、そんなパートではキーボードsとノイズのコラージュが本当に大きな効果を生み出している。第4曲「A Lotus In The Sun」は完全にドゥーム方向に振り切った楽曲であり、推進力を放棄したビートと、残虐なるドゥームリフが先ずドゥームメタルとして熾烈さをこれでもかと生み出しているけど、同時にキーボードのサウンドがその音を更に彼方の物にしてしまっているし、9分にも渡って本当にサイケデリックな煉獄が続く圧殺悶絶な1曲となっている。
 サイケデリックと言っても彼等のノイジーさやサイケデリックさは非常に伝わり易い形でアウトプットされているし、サイケデリックといってもあくもでもサウンドの幹になっているのはハードコアとドゥームの相互破壊的サウンドだし、そのサウンドの破壊力を更に際立たせる為にキーボードやノイズのコラージュが一役買っているし、そういった要素を抜きにしてもこのバンドはハードコア・ドゥームとして本当に格好良い。第5曲「Into The Vaults of yoh-Vombis」なんて高速Dビートから始まり、最高にダーククラストな格好良さが剥き出しで、暴走していく2分間が長尺の楽曲が多い今作の中でも更に際立って攻撃的で良い。そして今作は終盤になると更なる混沌の坩堝となり、音自体は意外とキャッチーなストーナーだったりするのに、辺り構わず飛びまくる音がそれを未知の世界へと誘う第7曲「Alkaloid Superstar」、そして14分近くにも及ぶ最終曲「Sunless」ではアコースティックギターの調べから始まり、悪魔が大挙して押し寄せるみてえなスラッジ成分の強いリフへと変貌し、それが時にアトモスフィリックに、時にハードコアに形を変えていきながら展開し、やはりキーボードの不協和音は飛び交いまくり、最後はノイズもキーボードもドス黒い音塊となったスラッジリフもスラッジグルーブも全てが膨大な球体となって降り注ぎ爆発する。その瞬間にはもう何も無くなってしまっている。



 ハードコアとしてとんでもない馬力とを誇りながら、ドゥームのグルーブと音塊をぶつけて粉々にした音にサイケデリックな音像で更にかき乱していくサウンドは脳のあらゆる神経を引き千切られる感覚すら覚えてしまうだろう。しかしそれでもこのバンドは単純にダークサイド側のハードコアとして本当にとんでもなく格好良いバンドだと僕は思うのだ。



■L'autre Hemisphere/Errata

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 やっぱフレンチ激情ってすげえバンドばっかりだわ。こう両手を上げて喜びたくなるバンドが新たに登場したフランスの激情系ハードコアバンドであるErrataの1stを聴いて本当にそう思う。今作はErrataの2013年リリースの1stアルバムであり、実に3年近くの歳月を経て作り上げられた結晶だ。リリースは俺達のTokyo Jupiterだし、もう言う事は無い。これはフレンチ激情の持つ激情の美意識を総動員して作られた傑作だ。



 フレンチ激情と言えばDaitroを始め、CelesteやAussitot MortやSed Non Satiataと本当に素晴らしいバンドばかりなんだけど、彼等もそれらのバンドの持つ楽曲の完成度の高さを誇る楽曲ばかりを生み出している。更には収録されている楽曲の大半が長尺であり、轟音系ポストロックやポストメタルの要素を受け継いでいるバンドとも言える。しかし静謐な方向に振り切っているかと言えば違って、美轟音のサウンドを最大限に生かしながらも、その美しく悲哀漂う旋律をあくまでもアグレッシブな激情系ハードコアとして鳴らしているし、ここ最近のEnvyが持つスケール感溢れるサウンドをこのバンドは鳴らしていたりする。
 今作で数少ないコンパクトな尺の楽曲である第1曲「Tour D'abandon」からErrataの描く美しい物語は始まる。クリーンなギターの空間的フレーズの導入から、身を切り刻むギターリフの応酬と悲壮感たっぷりに叫びまくるボーカルが一気に肉体性を発揮し、ソリッドに刻まれるリフから美しさを感じさせるし、そんな中でシンガロングパートを盛り込んでくる辺りも凄い分かっている。本当に美と動の対比が見事だし、この第1曲から一気に引き込んでくる。そして第2曲「Entracte」からは長尺曲のオンパレード、作り込まれたフレーズの美しさと2本のギターが織り成す調和は同時に暴発の不穏さを感じさせるし、悲壮感溢れるフレーズと叫びがアグレッシブに暴れ回りながらも、同時にリリカルな美しさを見せたりもする。長尺でありながらクリーンなパートは実は意外と少なくて、美旋律を聴かせるパートでも歪んさサウンドが際立つし、それをポストロック・ポストメタル方面に振り切るのでは無くて、それらのバンドが持つ構築美を持ちながら、あくまでも粗暴な激情系の音として鳴らしているから長尺でもダレる事は全く無いし、常に不穏な躍動が美旋律パートにも存在し、そしてそれらが非常にドラマティックな美しさを持っているのだ。そして楽曲のラストでは美轟音のバーストがアグレッシブに轟く瞬間は本当に堪らない。第3曲「Narcisse Est Mort」も長尺ながら断罪のギターフレーズと捲し立てるポエトリーから始まり、歪みに歪んでいながらその奥からは美意識しか感じさせないギターフレーズと、常にアグレッシブの躍動しながら、確かな構築美を持つリズム隊のビートとグルーブは流石だし、随所随所に美旋律を聴かせるパートをアクセントとして盛り込みながら、断罪の音を痛みと悲壮感満載で放ってくる。轟音系ポストロック要素を更に増幅させ、今作でも屈指のスケールを持つ第4曲「Dernière Escale Avant Naufrage」、クリアなアルペジオで始まりながらも、ポストメタル方向へと振り切り、ISISやpelican辺りのリリカルさが全開な第5曲「Le Sang Des Silènes」、痛みと混沌と美しさが交錯する第6曲「L'arène Prend Le Roi」は本当にカタルシスが洪水の様に押し寄せて来るし、第7曲「Empreintes」で見せる今作でも特に美しい美轟音、そして最終曲「L’éperdu Des Astres」で見せる壮絶なクライマックス。全曲聴き所しか無いし、3年の歳月を経て作られただけあって本当にとんでもない完成度を誇る作品だ。



 1stアルバムとは到底思えない完成度を誇りながら、そのスケールや美旋律をどこまでも壮大でありながらアグレッシブにお痛みと共に放出する今作はやはりフレンチ激情のレベルの凄まじさを感じさせるだけでなくて、これまで登場した数多くの先人に引けを取らないだけの物を十分に感じさせる。最初から最後まで徹底して描かれる壮大な激情の物語は触れて絶対に損は無い筈だ・フレンチ激情好きは勿論。ポストロック・ポストメタル方面が好きな人も是非聴いて欲しい屈指の傑作。もう一回言うけど、やっぱフレンチ激情ってすげえわ。



■The Sympathy Without Love/dip leg

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 2000年代初頭から活動していた岡山の激情系ハードコアであるdip leg。現在は活動を休止してしまっているが、国内劇場のシーンに遺した功績は大きく、今でも根強い人気を持つバンドだと言える。今作は彼等が05年にリリースしたアルバムであり、全8曲の中で変則的に形を変えながらも、確かに心を突き刺す音を鳴らしている。



 00年代を駆け抜けたバンドという事もあるし、彼等の音は国内の激情の黎明期のバンドと同じ空気を確かに纏っている。3cmtourとかThere Is A Light That Never Goes Outだとかそこら辺のバンドに近い空気を今作から感じるだろうし、もっと言えばkillieとかtheSun辺りのバンドが好きな人には凄くストライクだとも思う。だけど彼等の本当に大きな魅力は徹底してエモーショナルなメロディと、不穏な緊張感の融和だと思う。ボーカルなんかはハイトーンで叫ぶスタイルなんだけど、そのボーカルが先ずしっかりとメロディを感じさせる物だし、不協和音の中で確かなメロディを感じさせるギターワークと本当に相性が良い。だからと言ってエモとかメロディアス方面に振り切るのではなくて、変則的に展開する楽曲構成による緊張感と不穏さを組み合わせて、結果的に非常にドラマティックな激情系ハードコアとなっているのだ。破滅的でもありながら優しく、窒息しそうになりながらも、気付いたら一つの救いがあったりする感覚。感情の陰鬱さと、その先のエモーショナルなエネルギーが本当に凄いし、それを性急に放ってくるから堪らない。
 のっけの第1曲「Ideal And Fact」から見事すぎる感情の暴発から始まるんだけど、その暴発の余韻を見事に残してメロディアスな2本のギターフレーズが流れていく瞬間に感じる郷愁。アルペジオとソリッドなリフを交互に繰り返し、焦らし無しでこれでもかとドラマティックに展開されていく楽曲にもう脱帽だし、楽曲構成こそ本当に変則的であるのに、その中であらゆるパートが確かな線となって繋がり、暴発と静謐な美しさを冗長にするのではなく、あくまでも激情系ハードコアの一つの普遍性の中でアウトプットしているのがdip legの大きな魅力だ。断罪の様なギターフレーズのリフから始まる第2曲「Rod Lost Die Understand」も豊富なアイデアを生かしたギターワークが光りまくっているし、プログレッシブな妖しい不穏さが感情を揺さぶる。個人的にはEngine downの一つの発展系だと思う第3曲「Disguise Around」のドラマティックなエモーショナルさは本当に堪らない。第5曲「Lost Courage」の動と静の乱打と、焦らしと暴発の連続は震え上がる位に格好良いし、第6曲「Wall-Free World」はプログレッシブなギターフレーズから滲み出る泣きメロの嵐と、遥か彼方を想う様な感傷に引き裂かれてしまう今作屈指の名曲。とにかく言えるのは全8曲全てが名曲であり、最初から最後まで聴き所しか無いという事だ。



 僕はdip legをリアルタイムで追いかけてた人間ではないし、このバンドは後追いで知った形なんだけど、それでも現在でもこの音は本当に有効だし、国内激情の歴史に残すべき名盤だと思う。変則的で混沌としていて、窒息しそうで感傷的な全8曲の激情の歌。確かに心に爪痕を残してくる。激情好きは絶対マストな一枚だ。



■Superficial/Self Deconstruction

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 ex SETE STAR SEPTの葛葉氏も在籍する、現在各所で話題を呼びまくっているカオティックグラインドコアバンドであるセルコンの1st音源。これが実に混沌と破壊のみが存在する極悪音源なのだ。収録内容が先ずぶっ飛んでいるし、全13曲で10分という超絶ショートカットチューンがノンストップで繰り広げられている。一番長い曲で1分19秒だし、ほぼ全ての楽曲が1分未満と言う内容だ。そしてそのショートカットチューンの中にとんでもない音の洪水が詰め込まれている。



 このバンドは最早単なるグラインドコアという枠に収まらない。ギタリストの葛葉氏のギターワークが本当に秀逸で、豊かな音楽知識を見事に生かしまくり、グラインドを機軸にしていながら、ゴアもカオティックもハードコアもスラッジも全てをその凶悪なギターワークに詰め込んでいる。全く休む暇なんて無いギターの凶悪な殺戮具合の連続が先ず凄まじいし、頭で理解する前に聴き手の体はズタズタに切り刻まれてしまうだろう。ドラムも怒涛のブラストを叩き出しながらも、転調の連続で、高速回転で暴走しながら横転しまくり、辺り構わずにその破壊のビートで無差別に巻き込んでいくのだ。そんなギターとドラムに乗るのはまたしても怒涛の男女ツインボーカルで、呻き声に近い呪詛を吐き出す女性ボーカルと、がなり声で捲くし立て叫びまくる男性ボーカルがこちらもノンストップでバトルを繰り広げる。セルコンの音に安全地帯なんて何処にも存在なんかしていない。
 グラインドコアとしてもとんでもない破壊力を持っているバンドだとは思うけど、やはりセルコンはグラインドを分解し、そこにあらゆる要素の危険な部分だけを組み入れ、再構築した上でまた破壊するサウンドが本当に大きな魅力だと思う。本当に短いショートカットチューンの中で楽曲は本当に目まぐるしく展開を繰り返すし、どのパートも日和なんて存在していない。破壊的な音の乱打をこれでもかと組み合わせて、とんでもない情報量を僅かな時間でフルスロットルで放出するスタイルだし、しかも徹底して速さで攻めると思えばまた違って随所にミドルテンポのパートやビートダウンを取り入れる事によって更なる混沌を生み出す。



 というかこうして文にしてセルコンの音を紹介する事自体が最早野暮だとすら思うし、とにかく破壊と混沌が全方位で迫ってくるサウンドは一瞬で聴き手を皆殺しにしてしまう事は間違い無いし、これはグラインドコアの最新で最凶の異質の狂気なんだと僕は思う。先日初めてセルコンのライブを観たけど、ライブも実に合計演奏時間15分未満の音源同様のノンストップショートカットチューンの嵐だったし、音源よりも更に凶悪になっている。混沌の先の混沌をセルコンは生み出しているのだ。



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メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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