■2014年04月

■ANTIKNOCK GIG -SPRING SPECIAL-(2014年4月28日)@新宿ANTIKNOCK

 GWに世間が突入した中で開催されたアンチノック主催の今回のイベントであるが、本当にジャンルを越えた組み合わせのかなり面白いイベントになった。国産djent最右翼のArise in stabilityと叙情系ハードコアのwithin the last wish、ヘビィロックから新たな「ポスト」を生み出す怪物THE CREATOR OF、シューゲイザーとエモの融合を超えた感情のオーケストラことCurve、歌謡ヘビィロックのSEI WITH MASTER OF RAMという本当にこんな組み合わせのライブは滅多に無いだろっていう面子がGW初頭の新宿を揺らした夜。その一部始終をここに。



・Arise in stability

 まさかまさかで二日連続でライブを観る事になったAISのライブからイベントはスタート。結論から言うと前日のナインスパイスの時のライブよりも更に良いライブをしていたし、今回は新曲中心のセットだったらしいけど、新曲がdjentという枠組みをAISが超えようとしているのを感じさせる楽曲で、ツインギターの変拍子駆使の変態的な刻みの応酬と、刺青仙人な六弦ベーシストであるヒロシさんのもうギター弾け!!って言いたくなるタッピングの応酬と、グルーブとメロディを司る変態バカテクベースは勿論健在だけど、新曲がこれまでのプログレッシブで複雑なサウンドを更に拡大しながら、よりメロディアスさも感じさせる物だったし、激情的な要素を盛り込んでいるのも良かったのだ。過去の楽曲も説得力があったし、連日のライブ漬けな日々から進化を手にしたのをこの日のライブでは感じた。単なるdjentバンドじゃ終わらないぜっていう意気込みを感じさせるステージだったし、新ギタリストが加入したこれからが楽しみになるライブだった。



・Within the last wish

 地味にライブを是非とも観たいとずっと思っていたWithinのライブだけど、このバンドは本当に良い意味で青臭い激情を本当にストレートに放つバンドだったよ。メタリックなサウンドの応酬で余計なギミックなんて全然必要無いぜと言わんばかりに迫り来るサウンドは純粋にハードコアとして格好良いけど、このバンドはあざとい位にメロディアスさを前面に押し出した楽曲が魅力的だし、パワフルなライブを展開していたのもそうだけど、そんなライブを展開しながら同時に心に突き刺さる繊細さが堪らなかった。 真摯なMC同様に本当に真直ぐな青きハードコアの説得力は強く感じたし、全身全霊で繰り出されるライブに心を打たれたのは言うまでも無い事実だ。この青き激情のハードコアの力はとんでもないエネルギーに満ちていたし、多くの人の心に突き刺さった筈だ。



・THE CREATOR OF

 今回特に目当てだったTCOのライブだけど、渾身のレコ発ワンマン2本を終えてからのTCOの更なる凄みと言う物を実感させるライブだったと思う。もうバンド全体がかなり脂に乗っているし、新作リリースとレコ発で完全に現体制のTCOで一つの進化を達成していたけど、それを更に超えるライブを早くも魅せてしまったのだ。今回のライブはかなり爆音の音の洪水が渦巻く強大な得体の知れなさをバンドから感じたし、バンドのグルーブとアンサンブルは更に強固な物になっていたと思う。セットは全曲インストの楽曲であったけど、このバンドの安易にポストロックという枠組みで語れない異様さが非常に際立っていたと思う。トリプルギターの複雑なアンサンブルでドラマティックに展開される楽曲も、もう屈指のグルーブを手にした坂本&佐川のリズム隊の強さもそうだけど、緻密さと強さの両方を完全に手にしてしまっているからこそ、その先を行くサウンドへと辿り着いたのだろうし、音源のその緻密さを聴かせるサウンドとは違って、爆音でうねる轟音とグルーブによる破壊と創造のサウンドが目の前に広がっていたし、曲が終わる度に「ヤベエ…」って言葉を出してしまうお客さんも複数いた。最後の「Acoustic」の渦巻く混沌の濁流は非現実が目の前に存在し、安易に括られる事を全否定するサウンドに圧倒。早くも次の進化へと突入したTCOは今回もアンチノックをその神秘的な轟音で支配したのだ。




・Curve

 TCOの凄まじすぎるライブの後は一転してCurveのライブだったんだけど、久々にライブを観たCurveもベクトルこそは違うけど、TCO同様に全てを圧倒する感情の洪水を生み出したのだ。今回のライブでプレイしたのはたったの2曲だったけど、先ず最初にプレイした「Dawn Promised」にて静謐さからエモーショナルさが爆発する新たな夜明けを体現していて、その時点で既に引き込まれてしまったのだけど、。本当に凄かったのはその後にプレイした近日1曲入りの新音源としてリリースされる新曲だった。実に20分にも及ぶ大作であると同時に、Curve史上最高の大名曲だったのだ。一昨年リリースした終わりを全否定する希望の轟音オーケストラこと「Till The End」以降のCurveのサウンドであり、これまでのCurveを遥かに越える大名曲だ。終わりを全否定した先の眩い希望を感じさせるこの曲は非常にドラマティックでありながら、同時に凄いベタな言い方をしてしまうと最初から最後までクライマックスしか存在しない楽曲だし、より力強くなったバンドサウンドの強さ、更に磨き上げられたメロディセンス、そして渦巻く轟音が生み出す眩い光、それらが全て詰まった曲だし、Curveというバンドの到達点であり、最高の名曲だったのだ。その穢れを洗い流し、新たな希望を手にした名曲でCurveというバンドは唯一無二の存在になったし、もう何も言うことは無くなってしまった。最高だよ!!



・SEI WITH MASTER OF RAM

 トリはマシリトの印藤氏率いるSEI WITH MASTER OF RAM。このバンドだけ今回予備知識が全く無い状態で観たのだけど、正に歌謡ヘビィロックと呼ぶに相応しい音だったと思う。割とスタンダードなヘビィロックの流れにあるサウンドな筈なんだけど、良い意味で感じさせる異物感は印藤氏の情念溢れるボーカルが成せる技だと思うし、演歌ロックの領域に達しているサウンドでありながら、ヘビィロックのダイナミックさも感じさせるサウンド、古い日本語ロックやフォークにも通じるサウンドは、どこか昔の日本語ロックバンドやサイケのバンドが持っていた居場所の無さを強く感じるし、まるで怨歌の様でもあるし、本当に一回ライブを観ただけじゃこのバンドの全容は掴めやしなかったよ。印象的だったのは最後にプレイした楽曲で、完全に歌物の楽曲だったのだけど、情念と荒涼とした感覚と、言いようの無さに奥底にある普遍性には心惹かれる物が確かにあった。



 そん訳で個性豊かな5バンドによるイベントだったのだけど、ライブハウス主催のイベントでありながら濃密で面白いイベントだったと思うし、こうしたジャンルを越えた異種格闘技戦なライブイベントは個人的に遊びに行って本当に面白いし、一つのジャンルで固まらないで、個性豊かなバンドがぶつかるイベントは独自の磁場も生まれる。GWの始めに良いイベントに行けて良かったです。
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■Realising Media & E-MOVE Hiroshi presents THE ALGORITHM Japan tour 2014(2014年4月27日)@新宿NineSpices

 今回はド変態の宴という事で、フランスのエレクトロニックdjentユニットであるTHE ALGORITHMをCyclamenの今西氏が招聘し、ジャパンツアーを組んでTHE ALGORITHM来日というツアーファイナル。bilo'uにArise in stabilityにRegionに勿論Cyclamenという国内勢で固めた布陣。といっても僕は実際THE ALGORITHMは全然聴いた事が無くて、今回のライブもbilo'uとCyclamen目当てで行ったという事を先に白状させて頂く。そして僕はTHE ALGORITHMに完全に粉砕される事になったのだ…



・bilo'u

 一発目は意外な事にbilo'u。2月に久々にライブを観て完全に違うバンドになってしまっていて、本当に恐怖を覚えたんだけど、今回も本当に誰も寄せ付けない孤高のライブだったと思う。モッシュなんかさせないとばかりに予測不能すぎる展開と構成の楽曲、もはや不協和を物にしてしまった感すらあるし、変拍子だとかカオティックという既成概念を更に上回る混沌。しかしそれは完全に計算され尽くした物であるし、それでいて邪悪なエネルギーは凄まじく、そして神々しくもあるのだ。卓越しまくった演奏技術で繰り出す悪夢を今のbilo'uは生み出しているし、ライブを観て「なんだこりゃ!?」ってなるし、常識を覆しまくるバンドだ。今回のライブも圧倒的過ぎるライブに言葉を失ってしまったよ。しかしこの人たちは本当に(客に対して)ドSだし、(自分達に対して)ドMだなあって思う。

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・Arise in stability

 少し転換が長引きつつ、次はAISのライブ。ベースのヒロシさんはこのライブの前にアンチでサポートでベース弾いて、AISでライブで、この後はCyclamenでベースを弾くという一日3ステージの絶倫っぷりに驚いたけど、新ギタリストが加入し、更に飛躍していくぜと言う気迫が見えたライブだったと思う。相変わらず変拍子多様、転調多様の複雑な楽曲を見事に演奏し、しかし単なるdjentでは無く、どこかメタル魂的な物も感じさせるAISは正統派でありつつも、どこか一筋縄じゃいかせなさを感じさせるのだ。とにかくテクニカルなタッピングの乱打に、疾走する部分は疾走しながら、落とす部分は落とす匙加減もそうだし、また前にライブを観た時よりも更に一筋縄じゃいかない感覚を今回のライブを観て思ったのだ。

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・Region

 今回国内組では初見だった静岡のメタルコアバンドであるRegion。本人達はプログレッシブメタルコアを自称しているし、変則性を持ったビートや展開が特徴的であるけど、スクリーモな要素もあり、ニュースクールな要素もありという雑多さを持つバンド。それでいて想像以上にストレートな楽曲だったりもして中々の好印象。想像以上に正統派なサウンドはその手の音が好きな人にはかなりストライクだろうし、熱いパッションを感じさせるライブは、こういったサウンドが好きではない僕でも納得させるだけの物を持っていたと思う。兎に角熱いバンドだったぜ。

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・Cyclamen

 トリ前は今回目当てだったCyclamen。2月に遂に初めてそのライブを目の当たりにして大きな感動を覚えたけど、今回のライブは更にバンドとして大きな進化を遂げたライブだったと断言する。セット自体は前回ライブで観た時と変わらずに2ndの曲を中心にしながらも過去の楽曲も満遍なくやる感じだったけど、2月に観た時よりもバンドとしての一体感が出ていたし、更にガツンと来る音になっていた。相変わらずのバカテクフレーズの乱発な楽器隊の演奏技術も凄いし、メンバーそれぞれがしっかりと魅せるパフォーマンスというかステージングをしていたのも印象的だし、今西氏は何度もフロアに降りてありったけの叫びを繰り出していた。「With Our Hand」の一撃必殺なアンセム感は凄いアガったし、2ndの楽曲はどれも熾烈な音の連打でありながら、より表現力も増していたし、単に熾烈なだけじゃない、単に演奏が上手いだけじゃない、メンバーが心からステージを楽しみながら全力で駆け抜ける感。それがよりバンドとして固まったアンサンブルと化学反応を起こしていたのだ。ラストの「Never Ending Story」のCyclamenの全てが詰まった楽曲によって生み出される感情を揺さぶり温かいハードコアは感動的だったし、本当にこのバンドは観る人の心を揺さぶるライブをかましてくれた。何よりも海外ツアーから帰還して、よりバンドとして大きくなってのだろう。本当に頼もしいバンドだ。

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・THE ALGORITHM

 そしてフランスからの刺客であるエレクトロニックdjentユニットTHE ALGORITHM。ドラムとマニュピュレーターによる二人組なんだけど、もうライブが凄かった!!まずSEがDragonforceの代表曲「Through The Fire And Flames」を16bitにアレンジした奴でその時点で場内は笑いに包まれたが、しかし笑っていられたのはそこまで。いざライブが始まると本当にこいつら二人かよっていう圧倒的過ぎる情報量。生ドラムが変拍子を駆使したドラムを乱打し、しかし躍動的なグルーブを司り、そしてマニュピュレーターがそんな生ドラムと呼応して変則的に変わる音色を駆使し、トランス感覚溢れる音を正にdjentのビートで繰り出し、踊れるけどただ踊れるだけじゃない、躍らせるというより頭を振らせる音の洪水。しかもマニュピュレーターの奴は収支ニヤついた顔でツマミいじってるから狂気を感じた。ライブの途中でCyclamenの今西氏が飛び入りでボーカルで参加し、更には同じくCyclamenのカツノリ君がギターで飛び入り。特にカツノリ君がギターで飛び入りした時は、カツノリ君の変拍子の刻みのサウンドとビートが本当に凄まじくシンクロしており、単にエレクトロニック方面のサウンドからdjentなアプローチをしているのでは無くて、エレクトロニックでありながら生み出される生々しさが凄かった。特にセットの終盤は脂がかなり乗りまくっていて、音のキレ、ビートのキレが半端じゃ無かったし、よりダイレクトに肉体を覚醒させるサウンドで宇宙を感じてしまったよ。最後の最後は出演者やお客さんもステージに上げさせ(はい、僕も煽られてステージ上がりました。Milanku来日ツアーファイナル以来の二度目です。その時もナインスパイスでした。)、その踊れるdjentサウンドにみんなで頭を振りまくって大団円。フランスの猛者の見事なライブは幕を閉じた。

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 この日はdjentイベントってのもあったから個人的に勝手にアウェイ感を感じていたりもしていたけど、蓋を開けば変拍子大好きシコシコ野郎共にとっては最高のイベントになったと思う。THE ALGORITHMというフランスの偏執狂変拍子ジャンキーのライブに多くの人々が圧倒されていたし、Cyclamenを始めとする国内バンドのライブも凄く良かった。今回はCyclamenの今西さんの大きな働きによって実現した来日ツアーだったけど、本当に大きな意味がある物だった筈だし、まだまだdejenという音楽ジャンルの可能性は大きいとも思った。僕個人はdjentを好んで聴く人間ではないけど、そんな僕でも今回のイベントは最高に楽しめたし、枠組みを超えてこういったライブイベントがもっともっと開催されたら、まだまだ日本の音楽シーンも面白くなっていくと思うのだ。
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■レジスト・レジスター/アジアの純真

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 元々はParc Fermesというバンド名で活動していたが2014年からアジアの純真へとバンド名を改名、それと同時にリリースされた自主制作1stフルアルバム。長方形型の特注スリープに、7枚の歌詞カードが記載された厚紙アートカードが封入されたバンドの拘りもかなり強く感じる仕様になっているし、Parc Fermes改めアジアの純真の渾身の一枚になっている。



 しかしながらこのバンドは本当に特異なバンドである、ライブではメンバー全員が学生服、若しくは活動家みたいな黒ずくめの衣装に身を包んでいるし、自ら「ポリティカル・ハード・アート・チーム」を名乗り、「革命と闘争のロマン」をテーマに掲げ、数多くの思想や事件が持つエネルギーを考察し、それを音楽だけで無く、ライブパフォーマンスやアートワーク等でも体現していくスタイルはバンドと言うより一つの演劇的な表現集団と呼べる物だ。今作に収録されている楽曲も、キューバ革命・ロスチャイルド家・三島由紀夫・天皇・自衛隊・戦争と日本といったテーマを基に作られている楽曲ばかりだ。そんな彼等だから音楽性も一筋縄ではいかない。ハードコア・レゲエ・パンク・オリエンタル・レトロといった雑多な要素を持ちながら統率された楽曲、泉中水氏のポエトリーとラップによるボーカルスタイル、それぞれの楽曲が持つ情報量の多さ、どれも異質であり、異様なエネルギーを持っている。
 アルバムのSEとなっている第1曲「イデアリズム」からアジアの純真の世界は始まり、第2曲「メガロマニア」からその世界は炸裂する。ドラッギーなグルーブが渦巻きまくり、レゲエミーツハードコアのギターワークが切れに切れまくり、捲くし立てる演説の様なボーカルが更なる性急さを生み出し、パンキッシュな躍動感を持ちながらグルーブを重視したサウンドはバンドの世界観云々以前に非常に異様なエネルギーを持っている。第3曲「ロスチャイルド」は一転してレゲエ的なアプローチが色濃く出た楽曲だし、ラップ調のボーカルと横ノリのグルーブのファンキーさは見事にマッチし、同時に単なるグルーブ重視のサウンドに仕上げるのでは無くて、パンキッシュな攻撃性も大切にしているし、「ぶっ壊せマネーシステム!!」と叫ぶサビのパートではその攻撃性が前面に出たフレーズが楽曲に見事なアクセントを作り出している。
 作品も後半になると更にこのバンドの深淵に入り込む。第4曲「ノスタルジア」のドープなサウンドと、盛り上がるパートでは直情的なサウンドになり、中盤のリードギターの泣きのフレーズなんか非常に堪らない。変則的なサウンドスタイルでありながらも、それを必然として聴き手に受け取らせるのはバンドの持つ世界観が成す技なのか、もしくは一つのテーマを持ち、それを演劇・アート的に表現するバンドだからこその必然なのか、いずれにせよ、バンドサウンドの面だけで語り尽くすのは難しいし、聴いてて本当に歌詞で放たれる圧倒的情報量の言葉や、アートワークや、音もひっくるめて聴き手に考える事を促すサウンドだし、向き合わせる音なのだ。第5曲「マイノリティ」はそんなバンドサウンドが展開されながらも、「天皇!核!自衛隊!」と捲くし立て叫ばれる言葉と共にシリアスかつスリリングに展開される楽曲が非常に魅力的であり、このバンドの楽曲はどの楽曲もドラマティックな楽曲構成と展開を持っているし、引きの部分を大切にしているからこそ、ここぞと直情的なボーカルとサウンドが展開される押しの部分で一気に感情を掻き毟るのだ。これは僕の個人的な見解ではあるけど、このバンドは世界観やアート的な部分を抜きにして本当に素晴らしい激情を放っているし、それはバンドの真骨頂とも言える「戦争と日本」をテーマにした第6曲「ヒューマニズム」を聴けば明白だ。そして最終曲「ノーフューチャー」はこのバンドの持つ激情のエネルギーが最もストレートに出た名曲であり、レゲエライクなカッティングのギターと変則的なビートで展開しながら、泉中水氏が「ノーフューチャー!!」と魂の叫びを放つサビのパート、そして吉松氏の感情を揺さぶりまくる激情のギターフレーズは魂を本当に揺すぶられてしまう。



 全7曲に渡って、圧倒的情報量と激情のエネルギーを持つ特濃厚の作品であり、都内のライブハウスシーンで活動しながら、何処にも属せない異質さ、そのバンドとしてのスタイルは劇団的でもありながら、そのエネルギーを考察し、体現する事によるシリアスなリアリズム、このバンドは決して誰もが賛同する音楽性や活動スタイルでは無いのかもしれないし、下手したら本当に多くの賛否両論や議論を起こす可能性もあるバンドだと思ったりもする。だからこそバンド・音楽という部分だけでなくて、アートワークや歌詞の点も含めてアジアの純真というチームを構成する大切な要素なのだろうし、テーマを掲げ、そこに真摯に向き合い続けているからこそ生まれる激情のエネルギーに僕は大きな賛辞を送りたい。



■zeitgeist/THE NOVEMBERS


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(2014/05/14)
THE NOVEMBERS

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 日本のギターロック・オルタナティブを代表するバンドの一つであるノベンバの自主レーベルMERZ設立後の初音源となる2013年リリースの4th。リリース当初はオフィシャルの通販とライブ会場の物販と一部小売店とダウンロードでの販売という少し特殊な形でリリースされたが、今年五月に晴れて全国流通となる。僕は先日足を運んだライブの物販の方で購入させて頂いた。また第1曲と第7曲と第9曲はdownyの青木ロビンのプロデュースとなっている。



 アルバムタイトルは映画監督ピーター・ジョセフの映画から拝借されているらしく、作品自体も多くのディストピア映画にインスパイアされて制作されているらしく、ノベンバの作品で最もシリアスで重厚な最高傑作となっているし、最早ギターロックの枠組みで語る事が不可能なバンドになってしまった。ポストロック・インダストリアルといった要素がかなり前面に出ているし、それをノベンバのサウンドとして見事に昇華した傑作だ。
 青木ロビンのプロデュースによる第1曲「zeitgeist」から先ず今作の異質さを実感する筈だ。機械的なビート、浮遊感と不穏さが際立ちまくった音色、揺らぎまくっている小林氏のボーカル、コールタールに沈んで行く様な精神的重さをいきなり炸裂させ、否応無しに聴き手は今作と向き合わないといけなくなる。第2曲「WE」は比較的ギターロックの色が出ているし、今作の中では大分メロディアスでキャッチーではあるけど、ポストロック的な静謐を歌物にしている手腕を感じさせる。一方で第3曲「Louder Than War (2019)」では攻撃的なインダストリアル色の強いサウンドが炸裂し、硬質な鉄と血の臭いが充満しているし、その攻撃性を生かしながら静と動の対比と疾走感が炸裂する第4曲「Wire (Fahrenheit 154)」と本当に多種多様な音が渦巻いているのに、それを作品の中でブレも無く聴かせるのだ。歪みまくったサウンドでありながら、スロウな不穏さが生み出す美しさが印象的な第5曲「D-503」も見逃せない。
 しかし今作は後半こそ真骨頂だと個人的に思ったりもする。前半の楽曲を総括し、今作で一番の破壊力と不穏さを持つ第6曲「鉄の夢」の金属的ビートとリフの断罪、ヘビィさを膨張させて爆発する攻撃性の塊みてえなバンドアンサンブルに小林氏の叫びが乗り、聴き手を確実にブチ殺してくる。そして今作屈指の名曲である第7曲「Meursault」は本当に素晴らしい。ゴス的な音階を持つギターのアルペジオの反復、ポストロック的なリズムの反復、そして今作の中で最もシリアスな絶望感を感じる小林氏の歌と歌詞、今作のハイライトであると同時に最もディストピア感が充満した楽曲だし、祈りの様な言葉とは裏腹に破滅感が充満する感覚に窒息しそうになるし、何よりもそんな音が非常に美しい。そこから終盤は一つの希望を感じさせる楽曲が続き、第8曲「Sky Crawlers」はウィッチハウスやアンビエントな質感を柔らかで優しい歌物として鳴らしているし、今作のエンディング的楽曲である第9曲「Ceremony」はノベンバの普遍性を強く感じさせる屈指のバラッドだし、最終曲「Flower of life」は浮遊感に満ちたメロディアスさと、エピローグ的な役割を果たし、大きな余韻を強く残し、そしてシリアスな今作を一つの救いと希望で締めくくるのだ。



 作品自体の尺は決して長い訳では無いのに、作品全体を通して本当にサウンドも精神性もかなり重厚だし、ベタな言い方になってしまうけど、今作を通して聴くと本当に一つの映画を観たみたいな気分になるのだ。何よりもノベンバと言うバンドが新たな地平に立った作品でもあるし、ノベンバ史上最も音楽的多様性と豊かさを持ち、これまでのノベンバを総括し、そしてこれからへと繋げていく作品だと僕は思う。紛れも無く日本のロックの新たな地平をノベンバは開いているし、今作に触れた後に感じる事は本当に人ぞれぞれだと思う。だからこそ本当に意味がある作品なのだ。見事過ぎる最高傑作だ。



■Out Of The Way Vol.33(2014年4月19日)@中野Moonstep

 本当にこの日は恐ろしい位に都内各地で熱いイベントが同時多発していて、僕自身もどのライブに行くか非常に悩んだりもしたけど、考えた結果Chaosmongers企画に足を運ばせて頂いた。OEAの二日目に行けなかったのもあって、リベンジ的な意味でNECROPHILEとセンスレスとCoffinsを観たいのもあったし、これだけの面子が集結するイベントも中々無いし、久々に中野Moonstepへと足を運んだのだった。



・NECROPHILE

 10分程押してNECROPHILEのライブからスタート。ライブを観るのは久々だし、その存在を知ったのは再結成後からなんだけど、相変わらずオールドスクールデスメタルの格好良さが凝縮されまくったライブは本当に痺れる。デスメタルらしい腐臭を撒き散らしながらも、自己陶酔的世界観と共に純粋なメタルの格好良さを素直に出すサウンドはガツンと来る。禍々しさを放出しまくるギターリフの刻みの応酬と、うねるベースと、オールドスクールデスのスタイルを見事に体現するドラムのビートの一体感は気持ちが良いし、1stデモの曲の素晴らしさは言うまでも無い。特にこのバンドの素晴らしさが凝縮された「Night Of The Gloomy Narcist」は何度ライブで観ても最高に劣悪な地獄サウンドを見せ付ける。最後の最後はサプライズでMESSIAH DEATHのドラムの人が飛び入りでドラムを叩き、編成を変えてMESSIAH DEATHのカバーを披露というサプライズも飛び出し、今回のイベントを頭からガッツリ盛り上げてくれた。

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・STINGER

 初めてその音に触れるSTINGERだけど、このバンドも滅茶苦茶格好良いバンドだった。音楽性はファストでメタリックなハードコアという所で、とにかくズクズクと刻みまくっていくギターリフと、暴走しながら躍動するビートの応酬でブルータルでありながらもド直球で攻めに攻めるスタイル。その暴れ狂うサウンドの中で一つの激情を生み出していた点も非常にグッドだし、極悪なメタリックハードコアサウンドは初見ながらもかなりガツンと来た。最初から最後まで暴れ狂うサウンドにド肝を抜かれたのは間違いない。怒涛のサウンドでMonnstepを熱くしてくれた!

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・Chaosmongers

 ここで今回のイベントの主催であるChaosmongersのアクト。このバンドも初めてその音に触れたけど、最高に格好良いスラッジコアだった。スラッジコアと言ってもサバス色は皆無で、そのサウンドの基盤になっているのはクラストだったりするけど、クラスト色を全開にしたままでスラッジへと変貌させたサウンドスタイルは脳天を叩き割る破壊力に満ちていた。ダウンテンポで引き摺るサウンドでありながらも、そのリフはクラストのそれだし、スラッジコアでありながら、ハードコアバンドとしてのサウンドがライブにかなり出ていたとも思う。そんな音なんだからライブも凄まじく無い訳が無いし、殺気と怒りに満ちたスラッジサウンドで昇天!見事なライブを見せてくれた。

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・ZAGIO EVHA DILEGJ

 長野が生み出したブルータルグラインドコアであるZAGIOだけど、このバンドのライブは本当に毎回観る度に怒涛という言葉しか浮かんで来ない。実質15分もライブはやっていなかったけど、その短い時間でとにかくブルータルでダーティなグラインドコアの暴力をノンストップで繰り出しまくる。サウンドに休む暇なんて一切無し!怒涛のブラストと極悪高速なギターフレーズの刻みと殺気に満ちた叫びだけでZAGIOのグラインドコアは完成するし、それをメンバー全員が暴れ狂いながら繰り出すからとんでもないドス黒いグラインドコアとなるのだ。もうこのバンドのライブは凄まじさしかないし、Moonstepにいた客全員ガン掘りしてブチ犯しまくってライブは終了。見事に鼓膜を蹂躙されてしまった。

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・SENSELESS APOCALYPSE

 実にライブを観るのは一年振り以上になった静岡パワーヴァイオレンスのセンスレスだけど、久らいぶ々に観てもとにかく速い!短い!五月蝿い!!というパワーヴァイオレンスの大正義のサウンド、カオティックさとキャッチーさを絶妙に融和させたシュートカットサウンドの暴力は観る者に有無を言わせない興奮を与えてくれるし、マナブさんの「お前ら全員死ねー!!」という叫びは天晴れだ。センスレスもライブ自体は20分もやらなかったと思うけど、こちらもチューニング以外はほぼノンストップで最高に格好良いパワーヴァイオレンスをブチかましまくり、興奮と狂騒のみしかないサウンドで圧倒してくれた。ノーギミックヴァイオレンスサウンドはセンスレスだけの物だし、本当に相変わらずの熾烈さだった!

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・Coffins

 トリは世界レベルで御馴染みのデスドゥームバンドCoffins。ボーカルのメンバーチェンジ以降のライブを観るのは今回が初だったけど、新ボーカルの人は前任のRyoさんとまた違って、低域グロウルを吐き捨てる様に繰り出すボーカルスタイルが特徴的で、前任のRyoさんに負けず殺気と気迫に満ちたボーカルを聞かせてくれたし、今回はカバー曲を2曲もプレイしたけど、そっちも見事にCoffins節なサウンドになっていた。メンバーは非常にリラックスしたテンションでライブをしている様にも見えたけど、相変わらずのデスメタルと速さと遅さから繰り出されるCoffins印のドゥームは容赦無く観る者をブチ殺しにかかっているし、重戦車のグルーブの安定感と重みは世界レベルバンドだからこその物。ライブも結構久々に観たんだけど、新編成になってどうなるんだろうという不安は完全に消し飛んだし、新ボーカルを迎えてもCoffinsはcoffinsでしか無いという事を見事に証明してくれた。安心と信頼のライブクオリティだったし、デスメタルとドゥームが正面衝突した悪鬼のグルーブは毎回殺されてしまうんだ。新編成になっても日本が誇る世界レベルは止まらない!!

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 個人的にOEA二日目に行けなかったリベンジを果たせたし、どのバンドも見事に格好良かったし、被りに被りまくってた中でこのイベントを選んで良かったと心から思った。ライブも22時前に終了し、楽しい土曜の夜を過ごさせて頂きました。しかしながら久々に観たCoffinsが相変わらずの格好良さで本当に良かったし、他のバンドも負けじと素晴らしいライブをしていた。
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■Rebirths/thisquietarmy

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 2014年のTokyo Jupiterのリリース第2段はカナダはモントリオールのギタリストEric QuachによるソロプロジェクトであるthisquietarmyのコレクションCD。thisquietarmyは活動を開始してから精力的なライブ活動と、数多くの音源のリリースを行って来たが、今作はこれまで世に送り出した楽曲の中から厳選した4曲を再レコーディングして収録した作品であり、それだけじゃなく今作にのみ収録された未発表曲をボーナストラックに加えた全5曲。



 僕自身は今作で初めてthisquietarmyの音に触れたのだけど、これは見事に美轟音レーベルであるTokyo Jupiterらしいアーティストだと思う。音自体数多くのエフェクターを使用したギターと電子音によって構築され、時にリズムマシーンの音も入るという物であり、全曲が長尺の楽曲になっている。こういった類のアンビエント系の音は物によっては非常に退屈だったりもするんだけど、この人の音は大きく展開する訳でも無いし、基本的には音の反復と持続音で構成されているのにそれが無い。第1曲「Aphorismes MMXIV」が本当にそうなんだけど、持続する電子音が妙な心地よさを生み出しつつ、リズムマシーンの音が入るとじわじわと轟音成分が見え始め、そしてギターの轟音がシューゲイジングを加速させ、徐々に熱を帯びながら美轟音の洪水へと変貌していく。良い意味でのあざとさを感じさせながらも、静謐さからドラマティックな轟音のストーリーへと展開するサウンドは、この手の音が好きな人ならドンピシャだし、アンビエント・ドローンを退屈な物にするのでは無くて、美しくドラマティックな物にしているのがこの人の凄い所だと思う。
 第2曲「The Pacific Theater MMXIV」は一転してのっけから重苦しく歪んだギターのサウンドから始まり、荘厳であり重みのあるサウンドスケープを体現、Year Of No Lightとスプリットをリリースしたのも納得だし、ここ最近のYear Of No LightやMONO辺りと共振する轟音のストーリーは非常に重厚であり、ドラマティックなのだ。個人的には第3曲「Revival MMXIV」が特に気に入っており、今作で最もサウンドの荒々しさを感じるだけじゃなくて、リズムマシーンのリズムの作り方や轟音と共に鳴るギターのアルペジオのフレーズなんか非常にポストメタル的である。燃え上がりそうで燃え上がらずに焦らしに焦らす曲展開なんかも好きだ。第4曲「The Black Sea MMXIV」は完全一転して幽玄なアンビエントのアプローチをしているけど中盤から入る重みのあるギターの轟音がシリアスな緊張感を増幅させ、一つの悲哀の物語を13分に渡って繰り広げる名曲。そして未発表曲である第5曲「Stealth Drone」は完全にドローンな1曲で、不気味に蠢く持続音の霧の中で今作を締めくくる。



 芸術性や世界観やストーリー性の構築美を感じさせるサウンドスケープとギターの轟音の幽玄さによるサウンドは、単なる自己満足なアンビエントとは違って、しっかり聴き手を意識して作られていると勝手に思っていたりするし、そういった類の音が苦手な人でも敷居が低く楽しめるし、勿論アンビエント好きや轟音フリークスや、ここ最近のYear of No Light好きやポストメタル・ポストロック好きにも幅広く勧めたい作品である。寝転がって何も考えず、その音に身を委ねると幻惑の世界に飲み込まれる作品。勿論今作はTokyo Jupiter recordsにて購入可能だ。



■FEVER 5th ANNIVERSARY on tabuz six(2014年4月15日)@新代田FEVER

 新代田FEVERの五周年イベントとなる今回はまさかまさかのBorisとTHE NOVEMBERSの2マンという誰も想像が出来なかった組み合わせで、驚いた人は多いと思う。それだけじゃなく、直前になってベンジーこと浅井健一氏の新バンドであるROMEO's bloodの出演も決定し、本当にもう二度と観れないであろう異質過ぎる組み合わせの3マンとなった。当然ながら平日にも関わらずFEVERはほぼ満員となったし、来ているお客さんの層もいつになくバラバラで混沌としていた。そんな夢の様であり、誰もが想像出来なかった3マンライブはFEVERの五周年を飾るに相応しすぎるイベントになったし、ロックの最果てを行くイベントとなったのだ。



・ROMEO's blood

 先ずは浅井健一氏の新バンドのROMEO's bloodのライブからスタート。浅井氏はまさかまさかのベースボーカルで、ギターはTHE NOVEMBERSの小林氏、ドラムはBACK DROP BOMBの有松氏という3ピース編成のバンドなのだが、もう良い意味でこれまでベンジーがやってきたバンドと変わらない。どこをどう切ってもベンジー印なロックを鳴らしていたし、しかし浅井氏がベースボーカルになった事によってこれまでの浅井氏のやってきたバンドとまた違う感触があったのも事実。小林氏がギターを担当している事も大きいだろうけど、小林氏の空間系エフェクターを使いながらの、ダイナミックに歪んだギタープレイは普遍性を持ちながらも、これまでの浅井氏のバンドと違った更なる荒々しさを見せていたし、今回披露された曲は当然ながらどれも音源化されていない楽曲ばかりではあったけど、個人的にはこれまでのベンジーでありながら、渋みさけじゃなくて、初期衝動的なロックのダイナミックさを強く感じさせる物があったと僕は思うし、やっぱりそれは痺れる位に格好良かった。30分程でライブは終わってしまったけど、ベンジーはいつまで経っても創作意欲とロックの衝動が衰えなんかしない事を実感したし、まだ始まって間もないバンドでありながら、ロックバンドとして十分過ぎる位に格好良かった。これからどんな進化を見せるのかも楽しみだし、何よりもベンジーという長年シーンの最前線に立ち続けているスターのカリスマと貫禄は凄く格好良かった。



・Boris

 六月に全世界が待望していた新作アルバムのリリースがアナウンスされたBoris。前回にエッグマンで観た時に、この「バンドは本当に異次元のライブをするバンドになった事を実感したけど、今回のライブも本当に異次元だった。ステージの幕が開いた瞬間にステージ一面スモークに覆われており、そんな神々しい雰囲気の中で始まった「Cosmos」のここ最近のBorisのお家芸とも言えるヘビィロックからスケールを拡張して壮大なる情景を描くサウンドで既に意識を彼方へと連れて行かれてしまった。転換中のサウンドチェックの時点で今日のBorisはいつも以上に爆音なのを確信したけど、出ている音はとにかく重くて殺人的音量の筈なのに、シューゲイジングする轟音によって本当に神秘的としか言えない轟音のシャワーが降り注ぎ、のっけから既に昇天しそうになっちまった。続く「Rainbow」では一転してwata嬢ボーカルのサイケデリックな楽曲であり、これまでも何度もプレイしていた楽曲だけど、サイケデリックでドープなグループはより深みを増しており、wat嬢のギターソロもより表現力と深みが増幅していたと思う。そんな対照的な2曲から始まりつつも、ヘビィロックとしてのBorisを見せ付けるのも忘れない。六月リリースの新作に収録予定の新曲2曲でキャッチーでありながらもヘビィネスが増幅しまくった異質過ぎるヘビィロックで観る物の鼓膜をブチ壊しにかかり、そして必殺の「Statement」ではモッシュも発生し、大きな盛り上がりを見せる。そしてAtsuo氏がMCでFEVERの良い所に「楽屋が広い。」、「スモーク焚きまくっても怒られない。」、「音大きくしても電源落ちない。」と挙げてフロアを笑いに包み込んだりしつつ、終盤はBorisの神秘的で壮大なスケールを見せるヘビィロックが更にとんでもない事を見せつける「Angel」をプレイ。本当に照明やスモークといったビジュアル的なステージングも含めて、Borisのステージが完全に完成されきっていたし、前々からライブが凄いバンドなのは知っていたけど、本当に今のBorisは脂が乗りまくっている最高の状態なんだって事を実感。最後は「決別」で締めくくり、眩い光の情景をスモークの向こう側から描いていた。六月には金沢のGREENMACHiNEを迎えてのリリースパーティを再びFEVERで敢行するし、その日も勿論足を運ぶつもりだ。とにかくBorisという世界トップレベルのヘビィロックは今まさに誰も辿り着けなかった場所に立っている事を実感したし、このバンドのライブは改めて何度観ても感動しかない。



・THE NOVEMBERS

 そしてトリは日本のギターロックを代表するバンドになったTHE NOVEMBERS。今回のイベントでBorisと共演する事を知って、音源を聴き始めたら想像以上に好きになってしまい、今回Boris同様にライブが楽しみになったバンドであり、初めてライブを観る事になったのだけど、はっきり言うと音源よりも更にエグさが増幅したライブをしていたと思う。ステージに立つ四人に非常に華があって、ギターロックのカリスマバンドの風格を感じさせる佇まいも印象的だったけど、一曲目にプレイした「dysphoria」から完全に持っていった。音源よりも更にエグくなった高松氏のベースの音の歪み具合の凄さ、吉木氏のメリハリの利いたロック・オルタナのスタイルを継承しながら重みを感じさせるドラムが重みを感じるグルーブを生み出し、マツモト氏と小林氏のギターの切れ味の鋭さと、空間的エフェクターを巧みに使いこなしたサウンドの鋭利さ、特に小林氏はボーカルに音割れしそうなレベルのエフェクトを施し、それで殺気に満ちたボーカルをブチかましてくるから凄い格好良いし、バンドのサウンド全体に血生臭さが充満していた。最新作からの「D-503」も音源とは違ってグランジな荒々しい重さを感じるアレンジになっていたのも印象的だった。プレイした楽曲の半分以上は僕が知らない曲ではあったけど、鋭利で重い攻撃的な楽曲も浮遊感に満ちた歌物の楽曲も確かな線で繋がっていたし、グランジもシューゲイザーもサイケデリックもインダストリアルもポストロックも飲み込み、それを最終的に最高のロックとして放出するサウンドの説得力は凄かったし、音作りの上手さやステージングの上手さもそうだけど、本当に魅せるライブをするバンドだし、大きな人気を持つバンドなのを改めて納得させられた。多種多様の音楽性を見事に纏め上げて、それを最高にエグい音で赤黒い音として放ち、ロックの持つ負の側面を堂々と尖りきったサウンドで放つノベンバのロックの凄みに満ちていたし、特に本編終盤にプレイした「鉄の夢」、「dogma」、「Wire (Fahrenheit 154)」はテンションも乗りに乗りまくっていたし、全てを圧殺するサウンドが広がり、圧倒されてしまったよ。そしてアンコールでは五月にシングルとしてリリースされる「今日も生きたね」をプレイ。一転して本当に優しくて温かい歌物の楽曲であったけど、本編での殺気に満ちたライブとは一転して、その温かな歌はライブのエンディングを締めくくるに相応しかったし、同時にノベンバの持つ普遍性と懐の大きさを体感。こうして一時間強の圧倒的なライブを締めくくった。



 本当にこの日のライブは世界に誇れる夜だと思ったし、全3バンドが放ったロックが圧倒的な輝きを見せていた夜だと思う。最初は完全にBoris目当てで行く予定だったライブだったんだけど、THE NOVEMBERSのロックの虜に完全になってしまったよ。ノベンバはこれから行ける限りライブに是非とも足を運びたいと心から思ったし、急遽参戦となったROMEO's bloodも貫禄のライブだった。こう変な言い方になるけど日本のロックってやっぱ良いなあって心から思ったし、一見するとバラバラ過ぎる3バンドの共演だったけど、3バンド共に紛れも無い本物のロックバンドでしかないのだ、だからこそこの夜は必然だったと僕は思うし、きっとこの夜を過ごした他のお客さんも同じ事を感じたと思う。
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■いいにおいのするAlcest JAPAN TOUR 2014 with Vampillia東京編(2014年4月13日)@渋谷duo MUSIC EXCHANGE

 一昨年の初来日という伝説、それから約一年半の歳月を経てAlcestは再び日本へとやって来た!!新作「Shelter」を引っさげての来日ツアーとなる今回は、前回同様にいいにおいの招聘による物だが、まさかの寺でのアンプラグドライブやツアーファイナルでのワンマン等、盛りだくさんの内容だけど、そのツアーの東京編は会場を前回のnestから一気に大きくしてキャパ700人程のduoでのライブ。そして対バンは御馴染みのVampilliaに国内激情の帝王であるEnvy!!もう全てがスペシャル過ぎる夜だったし、duoは勿論ほぼ満員状態。Alcestが日本で本当に大きな人気を持つバンドになったという事を改めて実感したし、見た限りのお客さんの層も本当に多種多様でびっくりした。こうして前回での来日公演の時に僕達に再会を約束したAlcestはその約束を果たしに来たのだ。そんな特別な夜の一部始終をここに記す。



・Vampillia

 予定より20分程押して先ずはVampilliaのライブからスタート。ライブを観るのは一昨年のAlcestの来日公演以来で本当に久しぶりだったのだけど、ライブ前にベースのミッチ氏の前説からスタート。反町隆史の「Poison」を歌ってのっけから会場を爆笑に包み込んでライブはスタート。今回は吉田達也氏はお休みで、ドラムは竜巻太郎氏のみの編成であったけど、本当に久々にライブを観たけど、前から凄いライブをするバンドだったけど、それが更に凄まじい事になっていた。序盤のストリングスと静謐なギターを基調にした壮大なアンサンブルの幕開けから緊張感が凄まじい事になっていたけど、ボーカルの人が登場して(何故かやたらと厚手なコートみたいな服を着ていた)からが本番!一気にブルータルオーケストラのエクスペリメンタル世界の扉が開き、デスボイスとギターの男の娘の人のオペラボーカルが交錯し、ストリングスとピアノが異様な空気を生み出し、ギターの轟音が貫き、竜巻氏のドラムが混沌を生み出していく、異常過ぎるのに、全てが必然として存在するVampillia特有の世界へと連れて行かれた。今回久々にライブを観て思ったのは、本当にこのバンドは一つの括りで語る事が不可能なバンドになったという事だ、そのオーケストラもブラックもエクスペリメンタルも飲み込み、一つのポップネスも手にし、多種多様なコラボをしても決してブレ無い唯一無二の音楽性は勿論だけど、メンバーの異質なルックスや出で立ち、パフォーマンスも含めて、得体の知れなさしかないバンドになったと僕は思う。今回のライブじゃまさかの脚立が準備されてて、それを客の手によってフロアに運ばれ、ボーカルの人がその上に跨り、叫び、そっから大爆発して見事にライブを締めくくったかと思ったら、ミッチ氏がアンコールを要求して、SIAM SHADEの「1/3の純情な感情」を口パクでエアカラオケ。そして始まったアンコールで披露した新曲の凄さ。全てが必然的に存在していたし、爆笑と感動と驚きが渦巻くライブはVampilliaというバンドがより得体の知れないバンドへと進化した証明だったのだ。これまで数多くの音源をリリースしながら、今月末にやっと待望の1stアルバムがリリースされるし、このバンドは日本だけじゃなく、世界を震撼させるバンドにいよいよなろうとしていた。のっけからクライマックス過ぎたし、本当に大きなバンドになったし、それはduoの広いステージでも堂々とライブをするだけのバンドになったという事なんだよ。

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・Envy

 続いて国内激情の帝王の座を欲しいままにしているEnvyのアクト。今年の頭のカモメのツアーファイナル以来にそのライブを観た訳だけど、先ずは今回のセットリストはAlcestの来日ツアーでのライブという事も意識していたのか、激情系ハードコアの熾烈さとしてのEnvyというよりも、壮大なスケールで激情を放つバンドとしてのEnvyという点が大きく出ていたと思う。一曲目がまさかまさかの「深く彷徨う連鎖」!!静謐さと激情の爆発を見事に生かし、悲痛さを全開にしながらも、その痛みを乗り越えた先の光を描く様な轟音の洪水に既にクライマックスへと突入してしまっていたし、のっけから壮大すぎる激情の物語を奏でてしまった事によって今回のEnvyのライブも既にEnvyの圧勝が確定。それに続いたのが、まさかライヴでまた聴ける日が来るとは思ってなかった「静寂の解放と嘘」!!「君の靴と未来」の楽曲だと「さよなら言葉」や「左手」は比較的ライブでやっていたりもするけど、この曲は熾烈さを極めていた時代のEnvyの熾烈さの先の感動的瞬間をドキュメントにしたみてえな名曲だし、それを現在のEnvyのアンサンブルで演奏なんかしたら言うまでもなく最高だし、ツインギターの熾烈なるギターリフの応酬も、ビートの暴発も、tetsu氏の全身全霊の叫びも含めて、Envyというバンドの全てを語り、ただ単に全身全霊でライブをするだけじゃなくて、それを唯一無二のスケールで鳴らすからこそEnvyというバンドは未だに国内激情の帝王の座を誰にも明け渡さないし、どんな大きなステージでも本当に様になるし、照明のナイスな演出も勿論あるけど、ステージ上の五人からは本当に後光が差してる様にも見えた。そして静謐さから感動を生み出すEnvyとしての真骨頂とも言える「風景」、そしてシリアスな緊張感を孕んだ音の波から、性急なる激情の洪水へと雪崩れ込む「幸福纏う呼吸」へと続き、何度も何度も感動的瞬間がやってくる。各所で話題を呼びまくっている新曲「devilman」もこれまでのEnvyを総括し、そして更なる高みへと上り詰めていくという覚悟すら勝手に感じてしまう位だったし、終盤の「狂い記せ」の時はもう僕の中の感情が訳が分からなくなってしまい、そしてラストの「暖かい部屋」で完全に感情が決壊してしまった。もうこのバンドは激情云々で語り尽くせないバンドになってしまったし、本問いにライブを観る度に進化しか感じなくなっている。何度も言うけどEnvyは国内は勿論、世界レベルで最高峰の激情系ハードコアを鳴らすバンドであるし、それは貫禄すら超えた、神々しいライブにも表れていた。何度観てもこのバンドのライブは感動しかない。本当に凄い。

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・Alcest

 そして本日の主役であるAlcestのライブへ。ブラックメタルを捨て去り、完全にシューゲイザー方面へと振り切った最新作にして新たなる傑作である「Shelter」をライブでどう表現するのか、前回の初来日の時よりも明らかに大きくなった会場と人気の中でAlcestはどんなライブをするのか、本当に楽しみで仕方なかったし、前回の来日の時にまた日本に来る事を約束ShelterしてくれたAlcestに対して、僕自身も再びAlcestと再会する喜び、色々な事を考えている内にライブは始まった。「Shelter」の導入である「Wings」がSEで流れ、そして「Opale」のイントロの甘美なる轟音が響き渡った瞬間に完全にAlcestの世界。天上の物語が始まった。郷愁と青を感じさせる旋律から生み出される柔らかな轟音。派手では無いけど確かにグルーブを支えるリズム隊の絶妙に柔らかさを感じさせながらも、しっかりと押さえるグルーブ。2本のギターが夢の世界へと導き、ツインボーカルの歌が更なる夢幻の世界を作り上げる。その瞬間に確実にAlcestが描く幻惑の世界が存在していた。続く3rdのラストを飾る「Summer's Glory」のイントロが響いた瞬間に僕の中でAlcestとこれまでと現在が確かに繋がった。まだブラック要素が存在していた3rdの中で、とんでもなく爽やかな開放感に満ちた「Summer's Glory」と最新作は間違いなく繋がっているし、最新作の様なドリームポップな音では無く、あくまでのこれまでのAlcestを感じる音の感触で楽曲が演奏される事によって、Alcestの持つ普遍性の不変さを僕は改めて実感させられた。
 そこからは最新作の曲が続き、これまでのAlcestの持つメランコリックさが出た「L'eveil des muses」にてAlcestの世界が本当に一本の線で繋がっていた事を実感。音源とは違って、これまでのAlcestを感じさせるメタル要素をほんのり感じさせながらも、絶妙な重みを感じる音と、幻惑の感覚が見事なバランスで同居していたし、そのメランコリックな余韻を受け継いでの「La Nuit Marche Avec Moi」も感動的であった。何よりもどんなにこれまでのAlcestの感触で曲が演奏されても最新作の持つドリーミーさは薄れていないし、本当にその音に身を任せているだけで心は夢見心地で気持ちよくなっていったし、何よりも前回の来日の時に初めてライブを観て改めて実感した。心が豊かになって表れていく感覚は今回のライブでも健在どころか、より高次元で表現されていたとすら思う。「Voix Sereine」の静謐さから柔らかに放たれる美しさは本当に神秘的だったし、最新作のタイトル曲である「Shelter」の青い郷愁の音は、失ってしまった物に対するメランコリックさもありながら、その先の光を確かに感じた。
 ライブも終盤に入ると過去の楽曲を中心にプレイし、3rdの一曲目を飾る名曲「Autre Temps」のメランコリックさを極めた泣きに泣きまくっているイントロのアルペジオが目の前で奏でられた瞬間に、Alcestが描いて来た夢の世界に美しい雨が降り注ぐ情景が浮かんできてしまった。2ndのラストを飾る「Sur l'océan couleur de fer」もそうだけど、湿り気とメランコリックさに満ちたブラック色を少なからず感じさせる楽曲が見事なまでに最新作の楽曲と嵌り、一つの線が確かに存在しているのを実感したし、それが現在のAlcestが持つドリーミーな感触を感じさせる音で演奏されていたから、また新たな発見がありつつ、これまでのメランコリックさが生み出す重みと、現在のドリーミーさが融和した音は、音源には無い新たな感動を生み出した。今回のセットの中で一番ブラック色が強く、シャウトまで飛び出す2ndの必殺の名曲「Percées de lumière」も今回のセットの中で全く浮いていないどころか、必然として存在していたし、その熾烈なるシリアスさは今回のライブの中で一番のカタルシスを感じたし、夢幻の世界の緩やかな崩壊の様でもあり、しかし新たな始まりの為のポジティブな崩壊だと勝手に思い込んでしまいそうにすらなった。本編ラストは1stから「Souvenirs d'un Autre Monde」をプレイし、これこそ正に初めてAlcestに触れた時に感じたシューゲイジングブラックメタルだとか、ポストブラックだとかを超えた癒しと感動の至福の音であり、メランコリックでシリアスでありながらも感動的で、心を揺れ動かす福音だったのだ。だからこそアンコールで演奏された最新作のラストを飾るAlcestにしか生み出せなかった至福のドリーミーシューゲイジング轟音ポストロックな「Délivrance」は本当に感動的なエンディングだったし(個人的にはアンコールじゃなくて、本編のラストで演奏して欲しかったりもしたけど)、夢の世界の終わりと、そして新たなる夢の始まりだったし、何よりもAlcestは何も変わってなんかいなかった。この世の全ての穢れを浄化する本当に夢の時間を体感したし、ライブ演奏こそ音源とやってる事は大して変わらないし、音源に大分忠実な演奏だった筈なのに、音源以上の感動の世界だった。凄い身も蓋も無くざっくりし過ぎた事を言うよ?やっぱAlcestってすげえわ。

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セットリスト

1.Wings~Opale
2.Summer's Glory
3.L'eveil des muses
4.La Nuit Marche Avec Moi
5.Voix Sereine
6.Shelter
7.Autre Temps
8.Sur l'océan couleur de fer
9.Percées de lumière
10.Souvenirs d'un Autre Monde

en.Délivrance



 本当に全てが特別な夜になったと僕は思っているし、VampilliaとEnvyという国内勢は勿論だし、Alcestの夢の様なライブも本当に心が豊かになるライブだった。こんな夜は滅多に無いし、本当に3バンドが全く違うベクトルでありながら、「それぞれがそれぞれの感動を圧倒的重厚さで生み出していたのが本当に印象深い。何よりも再びAlcestに再会出来た喜びは大きかった。Alcestは現在もツアー中であり、4/20には初来日の東京公演の舞台であったnestにてワンマンライブでツアーファイナルを締めくくる。本当に気になる人は足を運ぶべきだし、それだけAlcestはライブで音源の更に上を行く感動を生み出すから。そして僕はまた再びAlcestと再会する日を夢見るんだよ。
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■picnic/THE NOVEMBERS


picnicpicnic
(2008/06/04)
THE NOVEMBERS

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 00年代後半以降の日本のギターロックを代表するバンドであるTHE NOVEMBERSの08年リリースの1stアルバム。リリース当時は正直そんなにガッツリ来なかったんだけど、Borisとのまさかの2マンライブの報を知り、改めて聴き直したら個人的にガッツリ好きになってしまった作品だ。このバンドはSyrup16gやART-SCHOOLといった日本の内省的ギターロックバンドと比較される事が多いけど、それらのバンドとはまた違った魅力と個性があり、人気を大きく集めるバンドになったのも納得である。



 彼等の音は本当に普遍性に満ちたギターロックだし、今作の音は正直に言うと特別な目新しさという目新しさは無いと思ったりもする。国内外のギターロックバンドやUSオルタナの影響を受けたサウンドが特徴的であり、それをTHE NOVEMBERSというフィルターを通し、自らの音にしているといった印象。US、Ukのそれぞれのロックバンドから影響を受けているのもそうだけど、国内バンドの湿った感覚も受け継ぎ、それを消化したからこその普遍性は、独特の癖を持っていると思う。第1曲「こわれる」のイントロのギターのアーミングのフレーズなんてモロにUSオルタナのそれであるのだけど、そういったノイジーさと切れ味鋭いカッティングで攻め立て、浮遊感と鋭利さを剥き出しにして突き刺していくのだ。分かりやすい破壊力がある訳では無いけど、鉄の匂いを感じさせる弦楽器の音に、ノイジーに捲くし立てるソロなんかは本当にオルタナティブロックの美味しい場所をしっかり押さえて、同時にそれらの音の隙間をすり抜けて行く小気味の良さもある。多くの国内バンドの湿り気を重視したサウンドと通じながらも、同時に荒涼とした乾いた感覚もそんざいしているのだ。透明感溢れるフレーズとコード進行を持ちながらも、カッティングの音が乾いた感触も生み出し、ここぞというパートではディストーションの雄たけびと共に、小林氏の痛々しいシャウトが炸裂する第2曲「Arlequin」も名曲だし、このバンドの楽曲はどれも普遍性の高いギターロックでありながら、分かりやすい楽曲構成を全くしていなくて、起承転結のセオリーを微妙にズラした楽曲の構築方法も非常に面白い。
 そんな楽曲だけじゃ無くて第3曲「chernobyl」の様にシンプルなアレンジで楽曲のメロディの良さを生かした淡々とした歌物の曲の出来も良いし、単にシンプルなアレンジを施しているだけじゃなくて、随所随所に入り込むシューゲイジングするギターの音なんかは楽曲を良い感じに引き立てるスパイスにもなっているし、ギタボの小林氏が映画にも大きく影響を受けた歌詞の世界観を持っていることもあるのか、楽曲の進行もどこか映画的な淡々とした感覚を持っているし、歌物の楽曲ではそれが更に際立っている。一方で第5曲「ewe」では青い疾走感と共にシンプルな言葉で紡がれる痛々しい感情の螺旋が堪らないし、第7曲「ガムシロップ」の甘いコーラスのギターフレーズの音色が響き渡り、シンプルな構成の中で淡々と紡がれる歌から、歪んだ轟音のクライマックスへと雪崩れ込む瞬間の何とも言えない空虚さと青さの崩壊はこのバンドの本質を良く表していると僕は思う。
 そういった甘さも痛々しさもひっくるめた上でディストピア感覚と自己嫌悪と醜さを暴く第9曲「白痴」は本当に今作屈指の必殺の1曲だし、ノイジーなディストーションギターの必殺のギターリフと淡々としたアルペジオのフレーズの対比や、サビで小林氏がありったけの痛々しい絶唱を聴かせ、今作で一番冷酷な鉄の香りを感じさせるサウンドはバンドの世界観と非常にマッチしているし、中盤の血生臭さしかないギターソロなんか最高だ。そして最終曲「picnic」で映画のエンドロールの様な余韻を強く感じるラストを迎える。



 間違いなく00年代国産ギターロックの名盤だし、内側から痛めつけるギターロックの代表格としての存在感は十分過ぎる位にある。そして普遍性と共に、絶妙にすり抜けるメロディセンスとサウンドセンスは他のバンドにはやはり無い物だし、多くのファンを獲得したのも頷ける内容だ。そして現在は更に踏み込んだ深遠なる音を鳴らすバンドとなり、より唯一無二の存在になっている。



■Evilfucker/Sithter

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 東高円寺を拠点に活動するスラッジコアバンドであるSithterの2014年リリースの待望の1stフルアルバム。リリースはロシアのドゥーム・スラッジレーベルBAD ROADから。しかしながらこれが本当に極悪極まりない恐怖の一枚となってしまった。これまでリリースしたデモ音源でも既にその脅威は実感していたが、いざフルアルバムで彼等の音を聴くと徹底して死の匂いを感じさせる怨霊渦巻くスラッジコア作品となっていた。



 のっけから長尺の第1曲「Death Sonic Cemetary:から今作は幕を開くけど、凶悪なハウリングノイズが放出された瞬間に、もう得たいの知れなさしかないし、這い回るベースが不穏さを煽り、それがスラッジコアの音塊になった瞬間に完全にSithterの世界だ。今にも止まりそうな推進力皆無の引き摺るビートとリフ、しかしその音の破壊力がアホみてえな事になっているし、パンキッシュなボーカルは正にEyeHateGod感やサザンロック感を感じさせてくる。彼等の音は紛れも無くEyeHateGod辺りの正統派スラッジコアバンドのそれで、ドゥーミーさを増幅させながらも、あくまでハードコアバンドの感覚で鳴らしているし、ハウリングのノイズが渦巻くパートではサイケデリックなアシッドさも見せて、時に這いずるBPMから一転して、グルーブとビートの躍動感を手にし、BPMを速くして、その重戦車グルーブはそのままに、暴走するパートなんかは本当に格好良いし、スラッジリフの応酬と共に、ストーナーなギターソロをブチかまして来たりもしてくるんだから、凄い。何よりも正統派スラッジでありながら、楽曲全体を覆うサタニックな空気、それがジャケット同様に表れているし、怨霊だとか死臭だとかいった物を、正統派スラッジから、ドス黒い禍々しさと共に放っている。その世界観は作品全体で徹底しているし、これは正に涅槃への片道切符なのだ。
 一方でそんな空気を持ちながらもロック色を爆発させまくり、ストーナーなギターフレーズが最高に格好良い第二曲「Dawn Of New Destruction」は悶絶物だし、這いずる重さを暴走させまくるハードコアさとスラッジさの落差が見事な第5曲「I Sith」、今作で最もBPMが速いハードコア側からのスラッジである第6曲「My Distortion God」はSithterのハードコアバンドとしての凄みを実感するしか無いし、あくまでもサザンロック・正統派スラッジのテイストを大切にしている音楽性なのに、徹底してブルータルな極悪さを放出させる事によって生まれた死の匂いがSithterの核だと思うし、ハードコア色の強いパートから、全楽器の音が凶器と化し、極端な位にノイジーさを放出しながら地獄へと突き落とすスラッジさへと雪崩れ込む瞬間に、もう聴き手は完全に殺されている。楽曲も割とコンパクトな作りの物が多く。長尺曲はそこまで多くないし、あくまでもハードコアパンクでありつつ、スラッジコアであり続けている。それがSithterの凄さだ。
 特に圧巻なのは最終曲「Childlen Of The Damned」だ。ホラーなSEから始まり、銃声の音みたいなシンバルが鳴り響、そして、これまでのスラッジでありながら躍動に満ちた楽曲とは一転して、今作で一番のBPMの遅さのスラッジリフが暴力的に降り注ぐ。14分半にも及んで繰り広げられるスラッジ絵巻は、今作で最もブルータルであり、地獄の怨霊という怨霊を全て呼び集めようとする狂気しか無い。終わり無く繰り広げられるスラッジリフが生み出すサイケデリックさも見逃せないし、終盤のギターソロはかき集めた怨霊共が合体して、聴き手を食い殺すうねりがあり、同時に地の底に落ちている筈なのに謎の高揚感に満ち、最後は全てがブラックノイズと化したスラッジ音塊でこの世界を死で染め上げる。その時、Sithterの手による闇の儀式は完遂しているのだ。



 これまで凄まじいライブで話題を集め、僕自身も今年頭の自主企画でその猛威を実感したのだけど、そのライブでの凄みとドス黒さをそのままパッケージングし、死と怨念に満ちたスラッジコアをここに完成させた、同時にスラッジコアの王道を往く作品であり、スラッジの引き摺る悪夢と、ハードコアな粗暴さを同時に繰り出し、ブラックのイズが生み出す異質のサイケデリックさへと繋がり、それらが全て死の世界へと引きずり込む無数の怨霊として存在している。ここまで徹底してスラッジであり、死を感じさせる作品を生み出せたのははやりSithterというバンドの凄ささと思うし、国産スラッジの重要作品としてこれから語り継がれるのは間違いないだろう。地獄をそのまま音にしちまったみてえな悪夢の名盤が生まれた。



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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