■2014年06月

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■我が意の夜明け/sekien

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 精力的にライブを展開し、各地でその名を広げている、兵庫県超姫路のネオクラストバンドであるsekienの2014年リリースの待望の1st EP!!7インチ(上のジャケット画像の左)はイギリスのImminent Destruction Recordsだが、プレスの関係でリリースが遅れた為、先にCD(上のジャケット画像の右)の方で先にリリースされていたりする。全4曲入りで、今作を聴けばsekienがどうして姫路から全国に名を広げていけたのかを理解出来る筈だ。



 しかしとうとう日本でもここまでネオクラストなバンドが登場したのかという驚きが多い。サウンドの機軸はTRAGEDY辺りのネオクラストの影響を感じたりするけど、彼等は先人を模倣するだけの真似事に全力で唾を吐き捨て、その音を自らの手で発展させる事に成功している。先人へのリスペクトを感じながらも、それを進化させる精神は本質的に「ネオ」だし、その歌詞も含めて紛れも無い「本物」のクラストコアだし、何よりもとんでもねえエネルギーが詰まっている。
 個人的に同じ神戸のSWARRRMの名盤「偽救世主共」の冒頭がふとよぎるイントロのアコギのギターのフレーズが先ずかなり印象的な第1曲「踉蹌」からsekienというバンドが間違いなく選ばれたバンドである事を実感するだろう。メロディアスで泣きに泣きまくりなギターリフが最高にメロディアスなのに、悲哀と痛みを表現し、エモティブさを全速で叩き出すドラムとドライブするベース、音質は結構ロウだけど、それはsekienの魅力をより明確にしているし、ベースボーカルのジョージさんのありったけに怒りを吐き出すボーカル、何よりもバンドの音全体が持つディストピアな空気、シンガロングパートもガンガン取り込み「ラララライライラーララライライ」なんて言語感覚すら放棄したコーラスまで飛び出し、ヘイトに満ち溢れていながら、聴いていると必然的に拳を握りしめてしまう音。そうだ、これは紛れも無く怒りのクラストコアだ。冒頭からクライマックスだと言わんばかりに泣きのギターと疾走するビートとグルーブが炸裂する第2曲「夜明け」は今作の中でも特に強烈な一撃で、ジョージ氏の「糞ったれ!!」って叫びも含めて、何よりも「俺達の夜明けまで!!」と怒りに身を震わせながらも、その手に希望を渇望する、混沌としたエナジー、そうだよ!!これこそがハードコアパンクの持つエネルギーだし、ネオクラスト云々以前に、ハードコアとして最高じゃねえか!!
 不穏に轟くベースラインと美しいギターから始まり、雷鳴のディストーションサウンドが炸裂し、引きと押しを巧みに使いこなしながらその熱量を高めて強大なるビッグバンを起こす第3曲「開闢」、今作で一番正統派クラストらしいサウンドでありながらも、ディストピアな空気を持ちながら地鳴りみてえな音で煉獄すら激震させ、しかしキャッチーな要素もあったりするし、中盤の泣きのギターから最後は「ラーライラーライ、ラーラライライライ!!」の激アツシンガロングからの、激アツギターソロで大団円な流れも秀逸だ。



 今作に収録されている楽曲だけでもかなり魅力的だけど、彼等がライブで披露している今作に収録されていない楽曲もまた良いし、何よりも怒涛のライブを展開する彼等のライブの凄みは音源では100%は伝わらない。それだけ彼等のライブは強烈どころか激烈だし、生々しいエネルギーをドス黒くブチ撒けるライブにこそsekienの本質はあるし、先日初めてsekienのライブを拝見させて頂いたが、本当に「ヤベェ」以外の言葉が出なかった。しかし音源も十分にエネルギーに満ちた作品だし、是非とも今作を聴いてsekienのライブに足を運んで欲しい。本当にこれからもっと凄いバンドになると思う。



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■アドベンチャーZ(2014年6月22日)@西荻窪FLAT

 本当にこんなに人がいるFLATは初めて見たかもしれない。昨年の「さよなら東京」から一年弱、いよいよ1stアルバム「調べ」をリリースする事になった激情系ハードコアバンドのlangのレコ発企画であるこの日のライブは本当に大きな盛り上がりと暖かさに溢れる夜になったと思う。今回出演したバンドも来ていた他のお客さんもそうだけど、言ってしまえば単なるレコ発の企画だけど、なんというかここまで愛に溢れるレコ発は本当に無いと思った。langというバンドが本当に愛されているバンドだと思ったし、でもその暖かさだけじゃなくて、langもそうだけど、この日の出演バンドはそれぞれがリスペクトの気持ちがあるからこそ、だから絶対に負けないって気迫をそれぞれのライブで見せていたし、だからこそ本当に最高に楽しいレコ発になったと思う。



・barican

 一発目は今回出演するバンドで唯一全く予備知識無しで観る事になったbarican。先ず第一印象は非常に爆音だって事なんだけど、てっきりディスコダントなポストハードコアなサウンドを鳴らすバンドだと思ったけど、それは半分正解で半分間違いだった。確かにサウンドはかなりポストハードコア然しているし、そのギターワークのセンスもそうだけど、もっとエモーショナルであって、もっと歌心溢れるバンドだった、日本語詞になってからのCOWPERSもそうだけど、ガツンと来るサウンドをかましながら、不協和音の中で生み出すメロディアスさがとても印象的だったし、こんなの好きにならない訳が無いじゃん!!グッドメロディと爆音で迸るサウンド、なんというか凄く胸を締め付けられたよ。

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・Horse&Deer

 楽しさもハードコアに魅力だ!!Horse&Deerはそんなバンドだと思う。突っ走りまくるくらいに突っ走るライブを展開し、とにかくショートでキャッチーな曲を連発し、持ち前のフックを生かし、スピード感しかないサウンドはハードコアのキャッチーさを突き詰めているからこそ生まれるんだと思う。ボーカルの人がMCで滅茶苦茶喋ったり、ライブじゃ滅茶苦茶躍動感しか無いアクションでパフォーマンスするけど、前にNoLA企画で観た時も思ったけど、本当にやっている本人達が最高に楽しんでライブをやっているのがこのバンドの良さでもあると思うし、短くて五月蝿くて楽しいって、これハードコアにとって凄く大事な要素だし、そこをピュアに放つからこのバンドは良いんだと思う。10曲近くを瞬く間に駆け巡り、その瞬間瞬間に確かな楽しさ溢れる彼らのライブ、やっぱり好きです。

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・sekien

 今回本当に観るのを楽しみにしていた超姫路クラストであるsekien。先日リリースされたEPを聴いて本当にド肝を抜かれてしまったバンドだったんだけど。はっきり言うとこのバンドのライブは本当に音源を軽々しく超えて、壮絶なる怒りに身を任せた化け物としてのライブだったと思う。メンバーは見るからにパンクスで全員刺青でベースボーカルのジョージさんは見るからにクラストなルックス。ギターの人は鼻ピアスにアロハシャツとかなり厳ついし、弦楽器隊のストラップは鎖ってもう何か凄いけど、そんなルックスを全く裏切らない厳つい音。爆音で鳴らされ疾走する怒りと悲しみ、完全にダークサイドなハードコアでありながら、とにかく泣きに泣きまくっているメロディも凄く印象的で、同じ神戸のバンドであり、激情グラインドの伝説であるSWARRRMや大阪のSeeKが持つダークさを徹底的に追求して生れるとんでもないレイジングなエネルギーが間違いなくsekienのライブにもあったし、EPの一曲目を飾る「踉蹌」からライブはスタートしたけど、本当に飲み込まれる。叩き潰されるといった感覚が音に溢れ、ジョージさんのボーカルはどこまでもクラストのそれで、ボーカルスタイルだとか声質だとかじゃなくて、怒りをそのままに歌い叫ぶそれは胸を打つ。ギターワークもクラストの流れに完全にあるのに、本来のクラストとは全然違う。そうだ、sekienこそが日本が生み出した本当に「ネオ」なクラストだし、「夜明け」の「糞ったれ!!」って叫びだけで、泣きそうになったし、「六六六」のラストの「ラーライライライライ!!」のシンガロングパートは勿論僕はシンガロング、音源に収録されていない曲もプレイしていたけど、そちらも言うまでも無く最高だったし、最後にジョージさんが床に倒れながらベースを弾き倒す姿は本当に痺れた。ライブ終わった後は「ヤベェ!!」しか言葉が出なかったし、今回やっとsekienのライブを観れて本当に良かった。このバンド、これからもっと凄くなる!!

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・Maggie

 このバンド「さよなら東京」以来に観る事になったけど、前に観た時と本当に違うバンドになっていた。前に観た時は90年代カオティックの影響を正しく受け継いだバンドって印象が大きかったけど、そんな物は軽々しく超えていた。まるでジャーマン激情のZANNに比肩するレベルの超絶激重サウンド、個々の演奏力は高いバンドなのは知っていたけど、キャビ二段積みのアンプから放つスラッジに迫るリフの重みとエグさは段違いの進化を遂げていたし、バンドとしての重みとダークさに特化したグルーブの進化は本当に大きかったし、新たなる地獄を生み出せるバンドになっていたと思う。途中にギターの弦が切れるトラブルがあって、それの復旧が思いのほか時間がかかってセットを削ってしまっていたのだけはちょっと残念だったけど、それでもミドルテンポで攻める音は圧倒的だったし、本当に良いバンドになった。ドス黒い音のうねりをこれでもかと味わった。

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・おまわりさん

 3月のBOMBORIとの地獄の2マン以来にライブを観るおまわりだけど、このバンドは本当に殺意と狂気はそのままに進化を続けていると感じた。今回のライブこそセットは少し短めだったけど、それでも相変わらず事故みたいなライブだったと思う。でもこれまでと違って、今年入ってから観たおまわりってゆっきーさんの出すノイズや松田さんのギターの音とかがそうなんだけど、熾烈さは今まで以上になっているけど、もっとこうクリアに観る人を突き刺す音になったというのは本当に大きき手、でも全然日和ってはいねえし、ただバンドとしての殺してやるって感情と死んでやるって感情はそのままに進化をしているという印象。アンビエント寄りのアプローチもより固まっているし、洗練されているけど、だからこそおまわりが前から持っていたジャンクさも際立つし、ハードコアとしての猛威は更に加速している。でもバンドとしての洗練こそあっても、やっぱりおまわりはおまわりで、案の定ボーカルの風人さんは即効でフロア飛び込んで暴れるわだし、その破滅的ノーフューチャー感覚は絶対にブレないから、おまわりは本当に信頼出来る。バンドとしての安定感や貫禄を手にしながらも、そこには決して留まらずに邪炎を放つから、やっぱ格好良いんだとも思う。本当に一瞬で駆け抜ける音の事故現場はまだまだ行けるぞ!!

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・lang

 そして本日の主役のlangだけど、今回のライブはnonremのギターボーカルである佑磨さんを加えた5人編成でのライブだったけど、それが本当に良かった!!「さよなら東京」で初めてlangを観た時にlangの虜になった僕だけど、その時にこれをツインギターでやったらもっと最高になると思ったりもしたけど、本当にそうだった。アグレッシブさを強く持ちながらも、フレンチ激情に通じる美意識をlamgには感じていたし、ギターが2本になった事によって音の広がりは本当に大きくなったし、langというバンドの世界観がより明確かつ鮮明になっていた、でもそんなスケール感だけには決して頼らないのもやっぱりlangの良さで、単純にギターが一本増えたからこそ音圧が更にビルドアップしたし、2本のギターが轟音を撒き散らしながらアグレッシブに暴れ回る音は本当にガツンを来た。特に「柄」をプレイした時なんて、その爆発力がとんでもない事になっていたし、持ち前のグッドメロディを生かし、時にはクリーンな音を奏でながらも、ポストロック方向には行かずに、あくまでも暴れ回る音で攻めるからlangは格好良い。そんな音をダイレクトに食らったら、そりゃフロアはモッシュ起きるし、本当にとんでもない盛り上がりだった。特にグッと来たのはアンコールでプレイした「常夜灯」で、2本のギターがアグレッシブに絡みながら疾走する音のクリアでありながら、確かに感じる歪み、ポエトリーのパートを挟んでからのクライマックスへの疾走。もうlangは紛れも無く最高に正しく激情であり、だからこそ本当に感動的なライブを出来たんだと思う。

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 こんなに心暖まるレコ発なんてそうそう無いし、この日は出演していたバンドだけじゃなくて、来ていた人も含めて本当にみんなで「作り上げた」イベントだったと思う。langのライブの時に本当に多くの人が楽しそうな笑顔を浮かべていたのは印象に残っているし、何よりもlangというバンドが本当に素敵なバンドだからこそこの日の夜が生れたんだと思う。こんな夜があるからこそ、きっと僕も貴方もライブハウスに足を運び続けているんだろうなって帰りの電車で何となく思ったりもした。
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■NOISE/BORIS


NOISE (ALBUM+SINGLE)NOISE (ALBUM+SINGLE)
(2014/06/18)
BORIS

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 遂に出た。「NOISE」である。ヘビィロックを基点に全ての音を縦断する変幻自在であり孤高であり最果てのバンドであるBorisの2014年リリースの最新作。ヘビィロックサイドの大文字名義では実に6年振りのリリースである。昨年は小文字名義のborisでのリリースや昨年から今年頭にかけての精力的な日本でのライブ、勿論世界レベルで評価されるバンドとしてのワールドワイドな活動と本当に止らないバンドだけど、遂に決定打と言える作品をリリースしてしまった。リリースは国内盤CDはエイベックス、アナログ盤はDaymareからで、エイベックス盤にはボーナスディスク付。



 Borisはこれまでの多数の作品をリリースし、その形骸を嘲笑う自由過ぎる変化と進化の軌跡を進んできたけど、今作NOISEはBORIS名義の作品でありながら、ヘビィロックサイドに留まらずboris名義での要素を持つ楽曲も普通に存在するどころか、これまでのBorisを総括する作品であり、しかしただ総括するんじゃなくて、散らばりまくった点を一つにせずにそのまま「NOISE」という箱にブチ撒け、そしてそれを最新の形で進化させたのだ。2011年にリリースされた3枚のアルバムは本当に大きな驚きに満ちていたし、特にJ-POPからエクストリームミュージックを奏でた「New Album」のインパクトは相当だったけど、「New Album」同様に成田忍氏がプロデュースした今作は「New Album」が一つの実験であるなら、今作はこれまでリリースした膨大なる作品が持つそれぞれの実験の結果の再検証であり、同時に発表であり、実験を踏まえた上での実践であり、そしてそれらを散らばったままヘビィロックとして鳴らし、結果として非常にBorisらしい総決算的な作品に仕上げたと思う。本当にこのバンドの触れ幅の大きさやアイデアの多彩さは驚くしかない。
 今作はこれまでのBorisをほぼ網羅した作品であり、収録されている8曲が見せる音は完全にバラバラだ。しかしどこを切っても存在するのはBorisにしか生み出せなかった音だし、それぞれの楽曲がこれまでの作品の焼き直しや再利用では無く、これまでの作品を完全に通過させる事によって全く別の次元へと到達させた作品だ。言ってしまえば「flood」も「PINK」も「New Album」も「feedbacker」も「Heavy Rocks」も今作にはあるし、同時にその過去の作品は存在すらしていないのかもしれない。全曲が必然的にそれらの作品の新たなる息吹であり、長い実験とリリースとライブを重ねて生み出した終着点であり、そして次の出発点なのだから。そう考えると今作は「NOISE」というタイトル以外を受け付けない作品だと思うし、あらゆる音の混迷と、ヘビィロックが放つ幾多の音の色が混ざり合った得体の知れない「何か」。そうかそれがBorisが生み出すノイズなのか。
 先ずそのタイトルに驚かされる第1曲「黒猫メロディ」は「New Album」で見せたポップネスが生み出すエクストリームミュージックの最果てであり、冒頭のV系ライクなギターフレーズなんかモロ過ぎて最高だけど、「New Album」と明らかに違うのは、サウンドプロダクトを小奇麗に纏めていない事だ。「New Album」に収録されているポップネスの極限を生み出した「フレア」と違うのは、曲自体は「フレア」同様にBoris流のポップスやらギターロックへの回答であるのだけど、音質はハイファイな音じゃなくて、確かな歪みを感じさせるし、ヘビィなリフが音の粒子を拡大させ、轟音として轟いているし、中盤のギターソロは最高にストーナーでサイケデリックだ。ポップさとヘビィさとサイケデリックの融合であると同時に、それらの音楽が持つ高揚感の極限のみを追求した音は最高に気持ち良いんだけど、歪んだサウンドが聴き手の耳に残り続け、中毒成分として残り続ける。一方で第2曲「Vanilla」は02年にリリースされた方の「Heavy Rocks」に収録されている楽曲を彷彿とさせるギターリフから始まりながらも、ポップで煌きに満ちた音像であるし、曲自体はこれまでのストーナー色の強く爆音でブギーするBORISとしてのヘビィロックの王道の楽曲であるけど、同時にこれまでに無くポップな高揚感がサイケデリックで宇宙的なサウンドで鳴らされているから、全然印象が違う。ポップネスからヘビィロックへ、ヘビィロックからポップネスへ。冒頭の2曲は起点が全然違うけど、その起点同士はすんなりと線として繋がるし、もっと言ってしまえば凄くシンプルに最高に格好良いヘビィロックでしか無いのだ。
 ヘビィロックサイドの音から一転して第3曲「あの人たち」はアンビエントとサイケデリックな音像による揺らぎの音像。くぐもった音像でありながら、一つ一つの音の音圧は最初から凄まじく、これまでにリリースした「flood」や「feedbacker」の系譜の楽曲だけど、冗長さを完全に削ぎ落とし、同時にアンビエントな轟音でありながら、非常に歌物な曲に仕上がっていて、ここ最近の作品でもあったborisとBORISの融合と言える楽曲でありながら、ドゥーミーな轟音とアンビエントの融合であると同時に、それを普遍的な歌物の感触すら感じさせるのはBorisの大きな成果だと思う。wataがメインボーカルの第4曲「雨」は更に極端に音数を減らしながらも、更に揺らぎ歪んだ轟音の壁すら目に浮かび、それをあくまでも6分と言う枠組の中で、アンビエント方向に振り切らずに、焦らし無しの轟音と歌が生み出す、美しいメロディが飛び交うパワーアンビエントの一つの到達系だと思う。第5曲「太陽のバカ」はまた一転してロッキングオンライクなポップな曲だけど、ギターの音作りがもっとヘビィだったり、もっと奥行きのある感触がやたら耳に残る。SUPERCAR辺りがやっててもおかしく無い位に普遍性に満ちた曲なのに、それすらもborisというフィルターを通過させると独自の捻れが生れるのは本当に面白い。
 そして決定打とも言えるのはこれまでライブでも演奏していた第6曲「Angel」だろう。20分近くにも及ぶこの曲は、ここ最近のBoris名義での大作志向の壮大な音像が生み出すサイケデリアの究極系であり、同時に痛々しく胸を抉る最強のエレジーだ。物悲しく、荒涼としていて、痛々しいwataのアルペジオの反復が終わり無く続き、ビートも極端に音数を減らし、本当に隙間だらけの音な筈なのに、その隙間を感じさせない。そこに歪みまくったギターが薄っすら入り、そこから轟音のヘビィアンビエントになり、青紫の轟音の中で、ただ哀しみを歌うTakeshiのボーカルが本当に胸を打つ。ストーナーやドゥームといった要素を強く感じる音作りなのに、深淵の深遠へと聴き手を導く、内側にも外側にも放射される悲しきヘビィネス。特に曲の後半は本当に神々しくて泣けてしまうよ。
 そんな空気をまたしてもブチ壊すのが第7曲の「Quicksilver」で、これは完全にBorisの最強のアンセムであり、同時に「Pink」に収録されている「俺を捨てたところ」の更に先を行く最強の進化系だ。ドラムのカウントから、せわしなく刻まれるギターリフと性急なDビート、本当に久々にシャウトをガンガン使いながらも、ここ最近のアニソン・V系ライクなBorisを感じさせるメロディ、Borisがずっと持っていたヘビィロックとアニソン的メロディセンスの融合という点を、再構築して生れたのがこの「Quicksilver」だし、彼等がここまでストレートにアンセムを作り上げた意味は本当に大きい。「Quicksilver」は間違いなくここ5年程のBorisを最高の形で総括した名曲だ。とおもったらラスト数分は極悪すぎるドゥームリフによる暗黒ドローンをアウトロにしているし、その落差が自然になってしまうのもBorisなんだと改めて実感した。最終曲「シエスタ」の約3分のアンビエントの静謐な美しさで終わるのも、やっぱりBorisらいいと思う。
 そしてエイベックス盤のボーナスディスクは、今回「NOISE」という枠組みから外されてはいるけど、また別の視点のBorisを味わえる内容で、Borisが提供したタイアップ曲中心に収録されている。Borisらしいパワーアンビエントさと、繊細で静謐な美しさが光り、地獄の様な歪んだ音像と対比を織り成すインスト曲「Bit」、「New Album」の「フレア」の路線を更にポップに突き詰めて、完全にBoris流のヘビィロックJ-POPと化した青き疾走「君の行方」、ストーナーロックと90年代V系が衝突してしまっているのに、そこをポップさで落としつけた、こちらもポップなBorisの進化系「有視界Revue」、昨年リリースされた「目をそらした瞬間」の再発CD-BOXの新録音源として収録されていた「ディスチャージ」の新verと、この4曲もそれぞれの楽曲が「NOISE」という作品を補足しつつも、強烈なインパクトを持つキラーチューンばかりだ。



 これまでその全貌を決して明確にはしないで、常に聴き手を嘲笑ってばかりいたBorisがここまで素直にこれまでの自らを見直す作品を作るとは思っていなかったし、これまでの膨大な作品を完全に一枚のアルバムに落とし込んだ。でもそれによってBorisの姿がやっと掴めるかと言ったら、それは完全に大間違いで、今作の音は進化系でありながら、脱ぎ捨てた蛹な気もするし、常に人を置き去りにしかしないBorisならではの置き土産なのかもしれない。今後、このバンドがどうなるかは結局想像なんて出来ないし、そんなの本人達ももしかしたら知らない事かもしれないけど、総括する、一つの点にするのではなく、散らばらせたまま、それをそのまま新たな枠に取り込み、それぞれの楽曲が反発しながら新たな調和を生み出す。その不自然さと自然さこそがもしかしたらBorisが提唱した「NOISE」なのかもしれないし、そんな歪みすら超えて、ただ単純に最高のヘビィロックアルバムだと思う。俺はこれを待っていたんだ!!



■発声・源/カイモクジショウ


発声・源発声・源
(2012/09/12)
カイモクジショウ

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 女性ボーカル、ギター、ドラムによるベースレス3ピースヘビィロックバンドであるカイモクジショウの2012年リリースのミニアルバム。90年代からずっと連なり続けるヘビィロックの系譜の中にあるサウンドでありながら、狂気と獰猛さと美しさと退廃的空気を持ち、多くの素晴らしき先人達が持っていた武器を全て持つヘビィロックの最新の進化系だ。きっと誰もがこんな音を求めていたんだと思う。



 ベースレスであり、ボーカルとギターとドラムのみという最小限極まりない編成のバンドだけど、それだからこそ彼等のサウンドは光る。先ず楽器隊の二人の演奏技術は郡を抜いている。どちらも徹底的に低域の音を追求し、ギターはヘビィネス全開のリフで刺しに行くだけじゃなく、そこに混沌の成分を取り入れ、変幻自在に変化し、チューニングの重さだけじゃ無く、要塞化した膨大なエフェクターを操り、音を豊かに変化させていく。ドラムも繊細で複雑であり、それだけでビートとグルーブを司る。しかし共通して言えるのはどちらも修行僧の如くストイックだと言う事だ。リフを磨きに磨いたギターと、重みと強さを追求したドラム、それだけで強い。そんなサウンドに女性ボーカル西田夏海の表現力豊かな素晴らしいボーカルが乗るのだ。クリーントーンの美しい歌声から、理性を放棄したダミ声のシャウトまで使いこなす。彼等は多くのヘビィロックバンドが嫉妬する才能と武器を持っていた。ヘビィロックとしての強さ、スケール、複雑さと緻密さの融和、耽美で退廃的な美しさ。それが全てある。DeftonesやTOOLといったバンドの系譜を継承しながら、それを更に研ぎ澄まし混沌に落とし、HEAD PHONES PRESIDENTやotepといったバンドにも連なる女性ボーカルならではの空気、それをストイックに突き詰めたバンドがカイモクジショウである。
 いきなりカオティックなタッピングから始まり、後乗りのギターリフとドラムのグルーブが最高に心地良く、しかしクリーンなパートになるとメロディアスに流暢な旋律が美しく、リフの強靭さとカオティック成分が正面衝突し、混沌の中の美しさを描き出す。彼等の持ち味である統率された混沌と鍛え上げたヘビィネスによるグルーブに裏打ちされた、強靭さの中から感じるコードの美しさやドロドロした感覚、西田夏海による捲くし立てるボーカルからダミ声シャウトから、国内の情念系女性シンガーにも通じるクリーントーンボーカルという表現力をフルに使った変幻自在のボーカルという、このバンドの音を最
大限に伝える第1曲「ECDYSIS」の完成度の高さには驚くしかない。一方でDeftonesを彷彿とさせる耽美でゴスで退廃的なメロディを前面に押し出し、スケールを増幅させたサウンドとクリーントーンで歌い上げるボーカルによる美しきヘビィロック抒情詩である第2曲「13TH,AUGUST」。恐怖と美しさという二律背反する二つの楽曲が自然と同じ線で結ばれてしまうのもこのバンドの魅力だし、それはストイックさだけじゃなく、ある種のヘビィロックバンド側のキャッチーなアプローチも彼等が忘れていない事の証明だし、凄く濃厚なのに、スッと飲み干せるし、しかしその味は舌に染み付いたら離れない。
 クリーンでアンビエンスなギターのみの小品である第3曲や打ち込みのアンビエントである第6曲といったインストの小品も作品の随所随所を締めているけど、特筆すべきは第4曲「発声・源」だろう。ソリッドなギターとタイトなドラムが交錯しながら、渦を巻き調和を生み出しているけど、激と美、暴と静、それらが確かに統率されながら次々と繰り出されて行く中で調和は徐々に崩壊し、TOOLばりにダークに沈む結末を迎え、混沌は収束しないでフェードアウトしていく。この曲は先日初めてライブで観た時に本当にびっくりする位のインパクトがあったし、カイモクジショウの凄みを一番感じる名曲だろう。最終曲第7曲「リプレイ」はもうCocco辺りが歌ってもおかしくないメロディアスで退廃的なヘビィロックバラードだし、ストイックなラウドさだけじゃなくて、メジャーフィールドでも十分通用する大衆性を持っているのもカイモクの良さだと思ったりもする。



 最小限の編成で最大の効果を生み出すヘビィロックであり、90年代に登場した多くの素晴らしいニューメタルバンドが持つ良さを卑怯過ぎる位に継承し、それをよりストイックに鍛え、同時によりキャッチーな形でカイモクはヘビィロックを更新した。確かにあの時代のニューメタルの空気や音でもあるんだけど、これは間違いなく最新のヘビィロックの進化系だし、何よりも妥協無しに鍛えたアンサンブルと唯一無二なボーカル西田夏海という最強の武器をカイモクは持っている。先日初めて観たライブでは、音源とは更に桁違いの音を展開していたし、ライブバンドとしての実力もとんでもない。いずれリリースされるであろうフルアルバムでは更に進化した音を聴かせてくれるに違いないだろうし、これからの飛躍が本当に楽しみで仕方ない。



■暗夜に蠢く/ZENANDS GOTS

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 本当に煉獄の音がこの世に産み落とされてしまった…04年結成と実は地味に活動期間は長かったりするギターボーカルとドラムの2ピースで残酷過ぎる世界を生み出すゼナンズの待望の正式リリースの1stミニアルバム。レコーディングは初代ドラムである中川氏在籍時にされた物であり、リリースは自主レーベルである不動の庵から。何度もライブを拝見させて頂いているし、エクストリームミュージックの極北とも言うべき、凄まじいライブに多くの人が殺害されているのは言うまでも無いけど、今作ではこれまでライブで魅せた残酷で救いの無い理不尽な暴虐さが濃縮されている。



 彼等の音は極限の最果て。ハードコアやグラインドコアの影響を受けているサウンドだけど、そこのルールを守る事を全否定し、そして彼等が選んだのは、極限の音に極限の音を更に加える事だった。言い切るとゼナンズはエクストリームミュージックの純粋すぎる悪鬼だ。グラインド・カオティックハードコア・ドゥーム・スラッジ、それらの音楽の一番純粋で危険な部分だけを抽出し、それを整理せずに、ゼナンズというボウルに全部ブチ撒け、そこに悪意・憎悪。殺意といった負の感情の、これまた純粋に濁りまくった感情をブチ込み、その結果必然として生まれたのがゼナンズというバンドであり今作だ。ほぼ全ての曲がショートカットチューンであり、全7曲15分というライブでの圧倒的ファストさをそのまま音源にした作品だ。しかしゼナンズにかかればたった15分で聴き手を完全獄殺なんて容易い話だ。だってライブでもそうだったんだから。
 本当に冗長さや余計な音は何一つ無い。ギターボーカルとドラムと言う最小限の2ピースであると同時に、彼等が必要とする音はただ人を苦しめる音と殺す音だけだったから。極端に短い楽曲も、速さも混沌も重さも殺意も全てがたった一瞬で襲いかかり、そして殺す。一撃で人間を単なる肉塊にする人でなしとか畜生とかサイコパスとかいう言葉すら生温いであろう異常快楽猟奇殺人鬼、彼等は絶望と恐怖しか与えてくれないし、彼等の音に救いは無い。第1曲「奈落」から逃げ場の無い世界が始まる、苦痛をそのまま音にしたスラッジなリフの血塗れの轟音のギロチンが落とされ先ず現世からさようなら。ドラムの音の重さも訳分からないし、どうやったらこんな音出せるんだっていうギターの音も訳が分からない。ミドルテンポで地獄の入り口すらすっ飛ばしのっけから地獄の最奥へと拉致。どっかの総書記ですら小便漏らすの確実な地獄への拉致加害者。ギターボーカルである千葉氏の憎悪に満ちたボーカルによる現世こそ最悪の地獄と言う生きる人間全てをドン底に叩き落す声明から「ここが地獄だ」という殺害宣言を皮切りにBPMは一気に加速。グラインドとカオティックとドゥームの織り成す地獄絵巻の始まりだ。「異形狩り」、「首斬れ」、「broken」、「骸」と禍々しいタイトルの曲ばかり並ぶけど、第2曲から第5曲までは本当に一瞬で駆け巡る。怒涛のブラストビートと、カオティックすら超えて、最早ただの煉獄XTC過ぎる音塊なギターのみで血で染め上げ、合間合間のブレイクすら一瞬で、「お前ら全員死ね」じゃなくて「お前ら全員殺した」って感じ、もう恐怖に震える暇すら与えてくれない「異形狩り」と「首斬れ」の2曲はゼナンズの危険過ぎる音だけで生み出した悪夢だ。憎悪・絶望・殺意・狂気・暗黒・地獄、そんな言葉すらチャチに聞こえてしまうレベルだし、もう訳が分からない。まだカオティックハードコアらしいギターフレーズで始まり、濁流のサウンドの中から微かにメロディを感じさせ、しかもそれがやたら美しく聞こえる第4曲「broken」ですら殺意は増幅するばかりだし、千葉氏の吐き出す言葉は絶望だけだ。第5曲「骸」なんてかなりファストで短い曲なのに、とんでもなくドゥームという矛盾すら生まれた始末だ。もう訳が分からない。
 終盤になると一転して今作で唯一曲が長い第6曲「変わり果てた空」では今までの曲と違ってギターが鳴らすメロディが明確になり、千葉氏のボーカルも叫び吐き捨てる憎悪全開のボーカルから読経的なボーカルを見せる。そしてゼナンズ流のポストメタルな美しさも感じる。BPMも再びミドルテンポになり、悲壮感とか超えた、絶望感とか超えた、もう分からないけど、地獄って多分メロディにするとこんな音なんだろうなって感じのアルペジオと容赦無く叩き付けるスラッジリフが織り成す美しさは完全に闇の世界に身を落としたゼナンズだから生み出せた物だし、それは本当に震える美しさだ。最終曲「赤い月」はまたまた一転してメランコリックで美しいアルペジオから始まり、それが今作で一番の美しさで堪らないけど、でも結局混沌に満ちたサウンドに変わる。でも違うのはさっきまで絶望を歌っていた千葉氏が絶望を抱えても生き続けてやるという覚悟を歌っている事だ。さっきまで散々地獄だとか絶望とか言ってたけど、でもその絶望すら抱えたまま生きて叫び続けてやるという覚悟を歌う事はもしかしたらゼナンズなりの一つの救いなのかもしれない。結局何処に行っても地獄なら、その地獄すら生き抜いてやるという声明は最高に格好良すぎる!!



 決して万人に受け入れられるバンドでは無いのかもしれないし、聴く人をかなり選ぶ音だと思う。しかし地獄系(こんなカテゴライズあるのか知らないけど)サウンドな他のバンドすら「お前らこんなんで地獄とか笑わせるぜ!!」とばかりにブチ殺し、更なる地獄で上書きするゼナンズ。千葉拓也という人の頭の中にはどんな悪魔が住んでいるのか心配になるし、現世がどんな苦痛に満ちた世界に見えるのかちょっと本気で心配してしまうレベルなんだけど、個人的に千葉拓也という人は屍の板倉氏同様に負の世界に選ばれた表現者である事は間違いないだろう。しかも彼等はライブバンドであり、音源でも凄い事になっている煉獄をライブじゃ更に凄まじい煉獄として放つから訳分からない。軽々しく暗黒だとか地獄だとか鬱だとか言っているバンドに飽き飽きしている人たちも多いのかもしれないけど、そんな人たちには心置きなく今作をお奨めする。確実に本当に地獄を見れるから。
 それともう一個、蛇足的な追記というか僕の個人的な妄想でもあるけど、幽遊白書には仙水編で「黒の章」というビデオが出てくる。蔵馬曰く「黒の章には 今まで人間が行ってきた罪の中でも最も極悪で非道のものが、何万時間という量で記憶されています。」っていう内容で、もしかしたら千葉拓也という表現者は黒の章を見てしまった仙水や御手洗と同じ感情を現世を見て感じてしまったのかもしれない。でもそれを音楽と言う表現に昇華し、この苦痛の世界を生き抜くという宣言をしている千葉氏はこれ以上に無い位に最高のアーティストだと僕は思うんだ。



■SUBMERGE(2014年6月15日)@小岩bushbash

 ライブハウス企画とは思えない位の凄い濃密なイベントだったと思う。ブッシュバッシュ主催の今回のライブだけど、国産ドゥームの雄であるNEPENTHES、熊谷のグラインドコアヒーローリトバスに、漆黒の若武者NoLAに、深淵の世界の音像を鳴らすELE-PHANT、そしてATOMIC FIREBALLのメンバーが新たに始めたREDSHEERというありえない組み合わせだ。ええ、そりゃ勿論行って来ました。ぶっちゃけ小岩は住んでいる場所から電車で一時間はかかるし、凄い遠いんだけど、でもやっぱりブッシュバッシュは熱いライブあると遠くても足を運んでしまうんですよ。そんな感じでのんべんだらりとブッシュバッシュに足を運び、スタート予定より10分程押してイベントは始まった。



・ELE-PHANT

 先ずは今回初見となったELE-PHANT。ギターレスの3ピースで、ベースの人の足元には大量のエフェクターとマックブックと足で弾くタイプのシンセとかあって要塞化していたし、どんなバンドか全く想像が出来なかったけど、いざその音をライブで体感すると形容不可能な音に余計訳が分からなくなってしまった、上手い例えが俺の頭じゃ見つからないけど、サイケデリックゴシックスラッジだと無理矢理に形容するとそうなる。ボーカルはエコーやリヴァーブがかなりかかっていて、彼方から聴こえてくる感じだし、スラッジのビートの方法論を用いているけど、半ばギター的な音を出すベースの放つ旋律はゴシックな美しさもある。上手く例えられない音楽性ではあるけど、難解かと言うと全然違うし、こう彼岸から手招きする音なんだと個人的には感じたりもした。引き込まれる物はかなりあったし、揺らぐ音像とヘビィさの狭間を行き来する音はかなりオリジナリティ溢れる物だった。

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・NoLA

 今年に入ってからはライブを観るのは初になるNoLAだけど、先日のオーストラリアツアーを経て、いったいバンドがどう進化したのか非常に楽しみではあったけど、NoLAは海外ツアーを経て本当にバンドとして大きくなっていた。4人編成になったばかりの頃にあった固さは完全に消え去り、ツインギターになった事によってアプローチの幅が大きくなったのも大きいけど、2本のギターが生み出す音は漆黒の轟音という表現以外何も浮かばない暗黒で暴虐すぎる音を鳴らしていたし、ただでさえ激重のサウンドだけど、より速さも遅さも含めてエクストリーム成分の純度が高くなっていた。バンド全体のグルーブと演奏が本当に一つの得体の知れない生き物になっていたし、ボーカルのタケル君のパフォーマンスはいつもに比べたら少しだけ大人しかった気もしながらも、相変わらずフロアに飛び出したりしてたし、バンドとしてのカリスマ性も凄い事になっていた。未音源化の楽曲もいよいよ一つの形に結びついていたし、中でも静謐なダークさを押し出した新曲はNoLAというバンドの新境地だし、これは4人にならなかったら生み出せなかった音だろう。何よりも本来の意味でのキャッチーさとは程遠い音楽でありながらも、バンドとしての強さやブチ殺される感はより明確になったし、それはNoLA流のキャッチーさでもあるのだろう。ただ単純にヤバいとしか言えないライブを堂々としていたし、本当に海外から帰って来て、凄まじい進化を遂げていた。それと本当に早く次の音源が聴きたくて仕方ない!!

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・REDSHEER

 今回ライブを観るのを個人的に凄い楽しみにしていたREDSHEER。メンバーの方々がやっているバンド等に関しては詳しい予備知識は無いけど、このバンドのライブはもう何と言うか震えるしか無かった。音楽的にはもうカテゴライズは出来ない。Slint系統のポストロック、カオティック、ポストメタル、エモ、オルタナティブ、言ってしまえば全部あるんだ。編成こそシンプルな3ピースだし、音数こそ多いバンドじゃないけど、もう一発目のギターの音の金属の残酷な冷たさしかない音が最高だし、硬質なビートを複雑に展開させていくビートは快楽でもあるんだけど、単に気持ちの良い音で終わってくれない。このバンドの持つコード感やメロディセンスは紛れも無くダークで閉塞感溢れているのに、何故か胸を掻き毟られそうな感覚になるし、ダークさと痛々しさから生み出されるエモーショナルさなんだと思う。悲痛に叫びを繰り出し、ポストメタル的な美意識を感じる楽曲であるにも関わらず、壮大なアプローチで世界を広げては来ない。ジャンクな感覚を残した音からは引き摺り回される様な、心臓だとか肉体をガリガリと削られる様な、もっと内側の内側に入り込んでくる様な、そんな自己嫌悪と精神的苦痛でのたうち回る事すら気付いたら快楽になってしまう様な、凄いざっくりとした言い方になるけど、割礼だったりとか、TOOLだったりとか、もう何だろう、ジャンルだとか関係無しに聴き手の内側を抉る、ズブズブと沈む、彼岸側の最高のバンド達と同じ物を感じた。勿論それぞれのバンドのアプローチは違うし、これが強引な括りになってしまうのは承知しているけど、音楽が持つ負の方向の側面の一番危険な成分だけで生み出されたのがREDSHEERの音なんだと思う。たった一回ライブを観ただけじゃバンドの全貌なんて掴ませてくれなかったけど、でも本当に震える美しさと痛みに満ちたライブをしていたし、このバンドはこれから追いかけて行きます!!

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・Little Bastards

 一転して熊谷のグラインドコアヒーローであるリトバス。もう最初の最初のMCで「今日は難しい事は言いません。Little Bastardsとグラインドコアの二つだけ覚えて帰って下さい。」って言ってしまうシンプル過ぎる明快さから。「頭に余裕があればこれも覚えて帰って下さい。デイバーデーイ!!!!!」って流れがもう最高だったし。一発目はもう安心と信頼のグラインドコアアンセムであるDay BY Dayからスタート。リトバスのライブは一年振りに観たんだけど、このバンドはそのMCだったり音もそうだけど、グラインドコアを最高にキャッチーにしているバンドだって改めて思った。とにかく速くて荒々しいんだけど、根底の部分にあるのはもっと純粋なハードコアパンクだと僕は思うし、合間合間に笑わせてくるMCを入れながらも、一曲一曲はストレートに駆け抜けていくし、長年積み重ねた物もあるからこその強さと楽しさがリトバスのライブにはあると思う。それに「Day By Day」はやっぱり最強のアンセムだけど、他の曲も全然負けてないし、一心不乱に突っ走る音は確かな意志を感じさせながらも、観る物を笑顔にするポジティブなヴァイブスに満ちているし、だからこそリトバスのライブはただ単純に楽しい!!熊谷のグラインドコアヒーローは小岩でもしっかり存在感を見せつけまくった。

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・NEPENTHES

 トリはNEPENTHES。少しライブを観るのは久々になったんだけど、リトバスからの流れを見事に受け継いで、最高のパーティを生み出していたと思う。やっている事は純粋培養のドゥームメタルだし、グラムさやキャッチーさこそあるけど、相変わらず音が半端無く大きいし、極太のグルーブとリフの暴力性はギンギンになっていたけど、この日はボーカルの根岸さんが本当に絶好調だったと思う。今まで以上に野獣と化していて、何度もフロアに飛び出しては暴れているし、お客さんにガンガン絡んでいくし、僕も結構酒飲んでたからってのもあったけど、何度も根岸さんに抱きつかれたり、マイク向けられて一緒に叫んでしまったりもしていた。MCで「酒を飲んでるか、そこが重要。」なんて言っていたけど、NEPENTHESはただ極悪なドゥームを鳴らすバンドなんじゃなくて、酒で酔ってサイケデリックでヘビィなドゥームメタルでギンギンになっちまおうぜって感じのバンドだとやっと分かったし、変な言い方になるかもしれないけど、ドゥームメタル側のパーティバンドなんだと思う。そりゃエグい音で爆音でブギーする音を浴びていたら酒も美味いし、酔ってただ本能でその音を楽しみたくなるじゃん!!最初はYシャツにジャケットを羽織ってた根岸さんも、案の定最後はいつも通り服は脱げてたし、最後は客の女の子ともみくちゃになって終わりと言う何ともらしい終わり方。前日にGREENMACHiNEのライブを観たのもあるけど、ドゥームってやっぱりロックとして最高に格好良いんだよ。それをNEPENTHESは教えてくれた。

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 僕自身は前日のBorisとグリマシの2マン後に飲みに行って二日酔いでブッシュバッシュに足を運んだけど、それぞれベクトルこそ違っても最高のバンドばっかりだったし、調子に乗って酒を煽っていた日だったけど、ハコ企画でこんな濃密なイベントになるってのが凄いし、そこはブッシュバッシュの良さでもあると思う。毎回小岩は正直遠いと思いながらも足を運ぶのは、こんな最高のイベントがあるからなんだと僕は思う、兎に角最高に楽しかったんですよ!!
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■Live Noise Alive(2014年6月14日)@新代田FEVER

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 きっと誰もが夢見ていたんだ。最果ての最果てを往くヘビィロックバンドであるBorisがいよいよ最新作「NOISE」をリリースする事になったが、今回はそのリリースパーティであり、まさかの前代未聞の「NOISE」再現ライブ。普通、アルバムの再現ライブって当然ながら作品がリリースされてからする物だし、この日はLPの方は物販で先行販売されていたとはいえ、まだ「NOISE」という作品はリリースはされていない。そんなリリース前の作品の再現ライブとは実にBorisらしいじゃないか。しかもゲストは石川県金沢が誇るドゥーム・ストーナー・ハードコアの爆音重戦車であり、Borisと並び国産ドゥームの最重要バンドとして数えられているGREENMACHiNE!!グリマシも再始動以降は石川や関西でのライブこそあったけど、東京でのライブは再結成後初めてなんじゃねえか。そんな夜だ、当然の如くチケットはソールドアウトだし、オープンしたばかりの時こそ人はまばらだったけど、スタート直前になると本当に人がギッシリに。僕もそうだけど、みんなグリマシとBorisの2マンという実現を願っていた夢のライブを心待ちにしていたんだ。そして新代田を爆音で燃やす夜が始まった。



・GREENMACHiNE

 本当に長年ライブを観る事を夢見ていたけど、こうしてライブを観れるってだけでも本当に嬉しかった。石川県金沢が誇るHARD CORE ROCKであり、ドゥーム。スラッジから爆裂のハードコアを鳴らすGREENMACHiNE。もうSEの「D.A.M.N.」の冒頭を飾るハウリングノイズが聴こえた瞬間に上がるしかなかった。そしてやっとライブを観て分かったのは、GREENMACHiNEはこれ以上に無い位にロックバンドだと言う事だ。やっている事自体はスラッジやらストーナーの流れを汲んだサウンドではある。でも彼等がライブで感じたのは本当にシンプルなまでに爆音リフの応酬と吐き捨てる叫び、速さも重さも自在に操るグルーブの殺傷力。とにかくロックバンドとして強いのだ、爆音のリフはただ破壊力しか無かったし、ノンストップで繰り出される誰もが聴きたかった名曲たちは徹底してロック過ぎる。音は極限までエグいのに、不思議とキャッチーでもあるし、ハードコアとロックという両方の意識にスラッジとかストーナーとかドゥームの危険成分を詰め込んでいるからこそ、エクストリームサウンドを最大限の分かりやすく、何よりもブチ上がるしか無くなるキャッチーでおぞましいサウンドとして放つ事が出来るのだ。ライブは50分程のロングセットだったけど、爆裂サウンドを全身で浴びてモッシュしてたら気づいたらライブは終わってしまった感じで体感時間は30分程だったと思う。ずっとライブを観たくて仕方なかったけど、いざライブを体験したら最高に危険なロックだったし、BorisやEEやチャーチと並んでドゥーム四天王と呼ばれていた彼等の凄さしかなかった。爆音は、ドゥームは最高に危険で格好良いって事を教えてくれた。もう最高過ぎたし、聴きたかった曲は大体プレイしてくれたし、言う事無しだったよ。やっぱGREENMACHiNEって凄いわ。

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・Boris

 長い転換が終わって、いよいよBorisのアクト。いよいよ最新作「NOISE」の全貌が明らかになるライブ、今回「NOISE」に収録されている楽曲の多くはこれまでのライブでも披露されていたけど、いざ散らばったピースが組み合わさるとどうなるのか、本当に楽しみだった。そしていよいよ始まった。開始早々にステーrジは既に大量のスモークに包まれていて、そして多くのメロイックサインが突き上げられる。先ずは「黒猫メロディ」からキックオフ。これまでんおライブでも披露していた「New Album」で見せたポップネスからのBorisの進化系とも言えるこの曲だけど、ポップネスはそのままに、よりサイケデリックさが増幅し、正に彼方から放たれる音にいきなり昇天しそうになってしまう。曲自体は非常にポップなのに、そこで終わらないのがBorisだし、ポップさと爆音のエグい音と、それらが生み出す最果感覚と彼方感覚の行き着く所にある極上の光のサイケデリックさ、特にラストのギターソロは本当に「連れて行かれる」という感覚を覚えたし、のっけから必殺の名曲でブチ殺して来やがった。続く「Vanilla」はこれこそBorisのヘビィロックという必殺の曲であり、ストーナー要素を持ちながらも、今まで以上に堂々とポップな必殺の一曲。しかしただのヘビィロックで終わらない一筋縄ではいかなさがやはりあるし、Borisがライブで見せるヘビィロックの真ん中を行きそうで行かない感覚があったし、爆音のギターが生み出すサイケデリックな高揚と陶酔、突き刺すドラムの躍動が見事にマッチし、放つ音の快楽は格段の物だった。
 頭の2曲はヘビィロック色全開のBorisだったが、Atsuoの銅鑼の乱打から始まった「あの人たち」で流れを完全に変える、スモークの量は更に増え、平然とフロアの前の方ですらスモークに覆われてしまう。そして一転してくぐもったサイケデリックさとダウナーさ、沈み行く中で揺らぐ感覚と、細かい神経まで覚醒させられる音。改めて思うけど、こうした振り幅の大きさこそBorisが持つ魅力だし、単なるアンビエント・ドローンなアプローチでは無く、そこで歌を基調にしているから最高の悲哀が生れるし、その音に陶酔しきってしまう。wata嬢がボーカルを取る「雨」ではwata嬢とTakeshiの歌は本当に消え入りそうな物だったし、何よりも轟音と爆音の洪水が生み出す異次元感覚は凄い。何よりも最初から轟音でバーストして来るから破壊力が本当に凄い。そんな轟音の洪水を切り裂くAtsuoのドラムは音数こそ少ないけど、本当に観る者の一人一人に対して刺し殺してくるドラムを叩いていたのも印象的だったし、スモークで覆われた三人の姿は本当に神々しかった。一方で「太陽のバカ」というギターポップ色の強い曲では、ステージからスモークが消え去り、三人が明確に姿を現した状態でライブをしていたのも印象的だったし、浮遊感を絶妙に残しながら、ヘビィなリフも取り込む音、横ノリのグルーブとポップさと揺らぎが一つの形に集約されていたのも大きい。
 しかし本番はAtsuoの「今、A面とB面が終わりました。引き続きC面とD面をお楽しみ下さい。」というMCから始まった20分近くにも及ぶ大作志向Borisの集大成とも言える哀歌「Angel」からだった。wataの終わり無く反復する悲哀を詰め込んだアルペジオのフレーズから胸を掻き毟られ、引き裂かれる痛みを勝手に感じてしまうし、再び常識の範囲外のスモークの中から響く歌と音色。アンビエントとヘビィネスの融合はBorisの一番のお家芸だけど、何度もライブで観たこの曲は完全な形で孵化し、完全すぎる形で生まれた最強のエレジーだ。その音像は浮世離れし過ぎているし、震える美しさ。そして壮大なストーリー性。こんな大作をライブのセットに普通に組み込んで来たのも凄いけど、こうして「Angel」が「NOISE」という一つの作品のパーツとして鳴らされて気づいたのは、分断された世界に対するレクイエムであるという事、悲壮感すら芸術にしてしまっている事。もうそれだけだった。
 そんな大作の余韻をBorisが残すかと思ったら大間違いだ。「Quicksilver」だ。Borisの最新で最強のアンセムによって煙の向こう側の世界から一気に光が差し込む世界へと変貌させた。Atsuoのカウントから爆裂のギターリフのイントロが響く瞬間にフロアは待ってましたとばかりにモッシュが発生。疾走するDビートとポップネスとヘビィネス。そうだよBorisはやっと俺達にその姿を見せてくれた。スモークも無くなり、クリアになった視界はこの曲と最高にリンクし、青き疾走と共に燃え上がる最高のアンセムだったよ。でも結局Borisはまた俺達を置き去りにする。アウトロのドローンノイズの激重爆音の渦によってまた視界は歪み、聴覚は狂い、そしてフロアへとダイブするAtsuo。この「Quicksilve」は間違いなくこの日のハイライトだったし、Borisのこれまでと今とこれからを確かに繋げた瞬間だった。そして最終曲「シエスタ」はFEVERの電源が落ちた事によって演奏されず終了。アンコールも無し。非常にBorisらしい結末で最高のレコ発パーティを締めくくった。

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セットリスト

1.黒猫メロディ
2.Vanilla
3.あの人たち
4.雨
5.太陽のバカ
6.Angel
7.Quicksilver



 Borisはこれからはアメリカツアーへと出向き、9月に再び日本に帰ってきてライブをするけど、こうして全貌を明かし、また僕達を置き去りにしてしまったBorisというバンドは本当に特別なバンドである事を改めて実感したし、GREENMACHiNEも最高のHARD CORE ROCKをブチかましてくれた。誰もが夢見ていた夜がこうして今回実現した訳だけど、本当にその夢が現実になった瞬間、それは想像を遥かに超える特別な物だった。ありがとうGREENMACHiNE。ありがとうBoris。僕はやっぱりロックがドゥームがハードコアが大好きだ。心からそう思うし、全方位から迫るエクストリームサウンドは全てが特別だったんだ。
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■Multicolored Libricide/Yvonxhe

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 東京の国産プリブラであるYvonxheの2014年リリースのEP。リリースは1stアルバム同様に国内ブラックメタルシーンに大きく貢献するレーベルであるZero Dimentional Recordから。全5曲で8分という非常にシュートカットな内容の作品だ。また今作からドラマーがメンバーとして正式に加入している。



 1stアルバムも聴かせて頂いているけど、このユニットの特徴である曲の短さと言う点は今作でも大きく健在だけど、音質面ではかなりブラックメタルから遠ざかっている。1stアルバムでは作品全体にリヴァーブの加工が施されていたけど、今作ではそれが無い。そして1stはこれ以上無い位に正統派ブラックメタルだったけど、今作ではもっと根本的な部分での正統派ヘビィメタルのカラーが強くなっているのも大きな特徴だ。
 方法論自体は王道のブラックメタルだし、トレモロリフや寒々しいメロディやブラストビートもある。しかし極端に曲を短くする事によって冗長さを完全に切り離している。しかしフレーズ一発勝負かと言えばそれは違うし、ショートカットな楽曲の尺の中で曲の起承転結が非常に明確になっている。トレモロのソロが飛び出したかと思えば、もっとメタルらしいフレーズもあったり、基本的に全体を通してフレーズはメロディ主体で、そのメロディは哀愁の泣きと寒々しさと、それとアクセントとして激情系ハードコアなエッセンスもあると思う。音質のブラックメタルらしい感触を残しながらも、極端に劣悪にはしてないし、良い塩梅でのローファイさだから凄く聴きやすい。
 第1曲「S21」は冒頭からスラッシュメタルな成分を感じるギターリフが耳に入り込むし、そこにブラックメタルのメロディをブチ込む事で、攻撃性を持ちながら、暴走するサウンドの奥に妙な美しさを感じさせてくれるだろう。第2曲「Late Radiation Injury」はもっとおどろおどろしいブラックメタルの感触があって、その空気感も良いけど、随所随所のブレイクの入れ方とかはハードコア的でもあるし、トレモロ基調で進行しながら、こういった随所に散りばめたエッセンスが単なるブラックメタルでは終わらせない。第3曲「Judgescab」はメランコリックなギターフレーズとトレモロリフの応酬からやたらドラマティックなギターフレーズに変わり、個人的には激情系ハードコア・ポストブラック感もあってかなり好み。第4曲「Necrotomy」はデスメタルの影響も感じる地獄のリフの応酬からメロディアスなパートに入り、地獄感を味わせてくる癖に、やたらキャッチー。最終曲「Multicolored Libricide」は今作で一番ブラックメタル色が濃厚だけど、最初から最後までクライマックス感全開で突っ走っていく。



 本格的なブラックメタルではありながら、随所随所の細かい作りこみや、ブラックメタルだけじゃなく、全体的にメタラー魂的な要素もあるから、ブラックメタルが苦手な人でもかかってこいな内容になっているし、8分と言う非常に短い作品でありながら、濃密に駆け巡る音は単純に格好良い。ブラックメタルとしては一風変わった作風だけど、非常に間口の広い作品だと言える。寧ろこれは非ブラックメタラーの方が好きかもしれないと思うよ!!




■Dense Fog/Funeral Moth

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 今年頭にフューネラルドゥームの最重要バンドであるWorshipの来日ツアーをサポートしたのも記憶に新しいex.CoffinsのメンバーやグラインドコアのBROBのメンバーが在籍する日本が誇るフューネラルドゥームバンドの2014年リリースの1st。レーベルはWeird Truthから。今作ではNEGATIVEAIDGUERRILLA REALMのメンバーも加入し4人編成での作品になっている。またこちらもフューネラルドゥームの最重要バンドであるMournful CongregationのJustin Hartwigがゲストでギターを弾いている。



 出た「Dense Fog」だ。日本語訳すると「濃霧」と名付けられた今作はジャケットも本当にそんな感じなんだけど、音も完全に濃霧その物だ。前作のEPとは明らかに方向性dが変わっているし、絶望感も半端じゃないけど、より美しい作品に仕上がったと思う。先ず収録内容が本気過ぎる。全4曲70分超えで、インストである第3曲以外は全曲20分超えというとんでもない大作志向だ。そして前作EPとの大きな違いは、前作が激重の無慈悲なリフと推進力を無くしたビートが生み出す煉獄だとしたら、今作は明らかにクリーントーンのギターの音が増えている。のっけから21分超えの第1曲「盲目 - Blindness」から変化と進化を強く感じるだろう。本当に止まってしまいそうな音数を極端に減らしたビート、低域グロウルで日本語で絶望を歌うボーカルが脳内を絶望で覆い尽くすけど、でもそのギターの音は本当に優しい。クリーントーンでメロウで耽美な美しさをメランコリックに奏でるアルペジオの反復は、絶望的な音の中で確かな救いであるし、聴き手に確かな感情移入の余地を与えてくれている。20分超えではあるし、決して楽曲の展開は多い訳ではないんだけど、明確な起承転結を強く感じるのも大きな進化だ。特に後半になってからの展開は本当に鳥肌が立つ美しさで、歪んだ激重リフの緩やかな渦が大きくなって、先ずはクリーントーンなカラーのあるギターソロで泣かせに来るし、最後のJustin Hartwigのロングギターソロはゴシックな空気と終末の美しさを全開にした泣きのソロで堪らない。個人的には大作志向のCorruptedにも通じる物を感じた。
 しかし第2曲「Behind The Closed Door」は一切の感情移入の余地を許さない漆黒のフューネラルドゥーム。心拍数が停止してしまいそうなビートと、メロディアスさなんて放棄したリフの残響と破滅的な威力。しかし徐々にメロディアスさを感じせる音になっていくのは流石だし、途中から不穏なクリーンのパートになるとまた感触も大きく変わっていく。終わりの始まりを想起させるギターアルペジオの美しさに震えたと思えば、また無慈悲なドゥーム煉獄。今作は確かなメロディアスさを感じさせる事で、感情移入の余地や美しさと言った点も大きく出た作品ではあるけど、しかし無慈悲さも全く日和ってなんかいないし、寧ろそれらのバランスが本当に作り込むまれているのは大きいと思う。クリーントーンの美しいギターから泣きのギターへと美しい世界を見せる第3曲「濃霧 - Dense Fog」の4分程のインストに恍惚しつつ、最後の最後に待ち構える最終曲「自害 - Kill Yourself」は完全に絶望の極み、この世界と決別した人間が見る世界を描いた様な曲だと思うし、空白だらけの音の隙間ですら窒息しそうな感覚に襲われるし、無慈悲な歪みのリフもメロディアスなクリーンのギターも無く、ただ精神を削る痛々しさだけが永延と這い回る。前半はずっとそんな感じだし、ただ少しだけ歪みながらクリーンな音がひたすらに精神を内側から蝕んでいくし、そして後半はディストーションギターの濃霧が全てをただ覆い尽くし、最後の最後は音量が小さくなったギターリフの反復のみで終わり、絶望の中を彷徨うしか無い事を無慈悲に告げる。



 フューネラルドゥームという音楽性もそうだし、その作品構成もあるから間違いなく人を選んでしまう作品ではあるし、聴くのに体力を使う作品でもあるけど、本当に濃霧その物な音が目の前に広がっていくし、その精神世界や情景の表現力はとんでもない事になっている。破滅の美しさが見事でありながら、同時に安易な安らぎなんて与えず、ひたすらに闇と向き合わせてくる作品。言うまでも無く傑作だ。



■Fountain Of Rich Aroma/Fountain Of Rich Aroma

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 もう既に解散してしまったバンドではあるが、都内で活動していた3ピースポストハードコアバンドであるFountain Of Rich Aromaの07年リリースの単独音源。リリースは愛媛が誇る国宝レーベルであるImpulse recordsから。全7曲でパッケージは特製スリープという中々凝った物だ。



 そのジャケットからもダークで妖しい空気が滲み出ているが、出している音は本当にそれである。サンディエゴ系統の音を放っているけど、もっとダークでノイジーな音だし、3ピースという最小限表現形態だから余計な装飾なんて何も無い。メロディアスさや感情移入の余地を全く許さない狂気の音像は恐怖感を覚えるし、何よりも変則的で混沌としている。
 個人的にこのバンドの音を聴いて想起したのが北海道が生んだ伝説的カオティックハードコアバンドであるTHE CARNIVAL OF DARK SPLITだ。あのバンドが持っていた空気を見事に継承しているのだ。リフの作り方とかビートやグルーブの理論なんかはサンディエゴポストハードコアの礎の上にあると言えるけど、とにかくジャンクでノイジーだ。Shipping NewsやSLINTといったバンドが持っている冷徹さもあって、より混沌とした印象を受ける。第2曲「Claster」から炸裂するジャンクでノイジーなギター、ハイトーンのパラのったボーカルもあり、よりダークな狂気を感じるし、機械的なビートと、反復の理論と、ノイジーなジャンクさが組み合わさったギターリフのおぞましさはとにかく暗黒。しかもその暗黒さも耽美さや世界観があるダークさと違って、クスリで頭がおかしくなって人気の無い夜の道で男女問わずにレイプして刺し殺して内臓を食う食人強姦殺人鬼の狂気だ。変則性に溢れていながら、各楽器の音が暴走しまくるポストパンク性も溢れ、負の方向へと暴走する初期衝動に満ちた第3曲「Prince Buster」の蠢く邪悪さとサイコパスっぷりはもうヤバい。随所随所でアンビエント成分を生かしているのもまた良いし、密教感とノイジーさが手を組んだ第4曲の渦を描いて底に落ちていく感触もグッド。更に全てを分断する非人道的ビートの応酬とか人でないしも良い所だ。



 とにかくダーク!ジャンク!妖しい!残忍!そんな要素しかないノイジーなポストハードコアだけど、冷徹なサウンドの奥底から滲み出る狂気は震えるし、ダークサイドのポストハードコアとしてはかなりグッドな作品だと思う。全7曲に渡って徹底的に暴発する殺意の塊は聴く物を凍りつかせるだろう。

プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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