■2014年09月

■Salad Days vol.302(2014年9月27日)@小岩bushbash

 最初、このイベントがアナウンスされた時は最高のイベントだと歓喜しまくっていた。ブラックメタルや激情を超えた闇の世界を描く最早とんでもないバンドになってしまったCohol、柏から世界を熱くするハードコアを生きる伝説として放つkamomekamome、境界性人格障害ハードコアの肩書きを持つ精神の闇を吐き出すハードコアの最果てである屍、メタルコア云々すら超えて、ただ最強の音を放つEDGE OF SPIRIT。本当に最高の4マンだと思った。
 しかしこの企画がアナウンスされて暫くして屍サイドからこの日のライブを最後に屍が解散する事がアナウンスされた。本当に突然のアナウンスにどうして良いか分からなかったし、半ば信じられない気持ちだった。本来はSalad Daysというイベントであり、豪華過ぎる4マンだったこのイベントは屍のラストライブと言う特別な意味を持つイベントとなった、勿論ソールドアウトだったし、これまで足を運んだブッシュバッシュのソールドしたどのライブよりも圧倒的に人が多かった。2014年の9月27日という日はきっとこの日足を運んだ人、出演したバンドや関係者、そして僕自身にとっても本当に忘れられる事なんて絶対に出来ない日だった。



・Cohol

 トップバッターはより漆黒の闇を描くバンドとして唯一無二の存在になろうとしているCohol。いよいよ新作のリリースも迫っているし、よりとんでもないバンドになるのは明確なんだけど、現時点で既にブラックメタルと激情系ハードコアの衝突地点から、更なる世界を描くバンドになっているし、10分程押してCoholのライブが始まった瞬間にステージを覆うスモークがどこか神秘的な空気を生み出す。セット自体は全部で5曲程と曲数こそは決して多くなかったし、ライブ時間も長くは無かった。でも「底知れず吠える軟弱」からいきなり成す術すら無くなる音を放出。Itaru氏のギターは相変わらずキレにキレまくっているし、ブラストビートとトレモロリフと高速ピッキングが織り成す音は完全に闇の音でしか無いし、それでいてライブ全体で世界観を体現出来るバンドだっていうのはCoholの一番の武器かもしれない。この日もItaru氏はその音楽性とは裏腹に熱いMCをしていたけど、Coholって荒涼とした絶対零度な音を放っていると思ったら、それは半分正解で半分間違いだと思うし、闇の方面に振り切った音のみを高濃度で生み出しながらも、そのパフォーマンスには確かな熱さもあって、単なるブラックでは無く、ブラックの中に熱をブチ込んでいるからこその激情であり、その音は単純に観る物のボルテージを一気に上げるだけの力がある。世界観と熱量と言う二つの最強の武器を持つからこそ、Coholのライブは本当に良いし、だからこそ唯一無二の存在になったのだ。



・kamomekamome

 この日のカモメは全てが特別だったと思う。ただでさえ必殺のアンセムばかりのカモメだけど、この日のカモメは全てが桁違いだった。ここ最近のライブでは絶対にラストにやっている「手を振る人」でいきなりスタートだった時点で、もう今日のカモメが全てが特別なライブになるのは分かっていたし、ただでさえ人口密度がおかしい事になっていて地獄と化したフロアをもっと熱くしてやるぞと言わんばかりの最初から激シンガロング&激クライマックスな激アンセムを持ってきた事は屍の最後のライブを前にしたからこそなのかどうかは分からないけど、最初から向は汗だくになっていたし、僕を含めたフロア前方にいた人々も汗がおかしい事になっていた。そこから更にフルスロットルとなり、「ナイーブレターズ」、「例え言葉は冷静に」をお見舞い、よりダイナミックに伝わるサウンドと、ツインボーカルの絶唱が生み出すエモーションはブッシュバッシュの様な小さいハコでは更に凄い事になるし、カモメはもう場所すら関係なく、どんな場所でも最強のライブをするバンドに今のカモメは間違いなくなっているし、その後の「メデューサ」、「この時期のヴァンパイア」、「エクスキューズミー」という過去曲もよりとんでもない事になっている。荒々しくありながらも、ハイブリットで無敵のテンションと音が常に充満し、その音と言葉だけで全てを捻じ伏せる!!そして恒例の化け直しでも、ギチギチの危険地帯になっているフロアになっているにも関わらず恒例の「土足で構わない、どんどん上がって来てくれ!」というMCからの「化け直し」、そしてラストは全てを祝祭するアンセムである「Happy Rebirthday To You」!!この日プレイした全8曲の全てがカモメの中でも最強の曲達だったし、汗まみれになりながら、シリアスでありながらも、ハードコアの祝祭を放つカモメはやっぱり最強のバンドの一つなんだ!!



・屍

 そしていよいよ屍のラストライブが始まる。フロアは今までブッシュバッシュに足を運んだ中でも間違いなく一番の人口密度になっており、何もしなくても人を殺せるんじゃねえかってレベルの暑さと熱気に包まれていたし、そんな地獄みたいな状況の中で屍の最後を看取ることが出来るのはある意味では凄く幸せなのかもしれない。そして屍の最後のステージが始まった。完全に赤のみの照明の中でハットを被っている板倉氏、何だか異様な空気が既に充満しているけど、そもそも屍のライブって異様じゃ無かった試しが無いし、屍ってバンド自体がとんでもなく異様なバンドなんだった。そして最初は未音源化の新曲である「mortal music」からスタートという意外すぎるキックオフ。ディストーションの音や叫びは控えめに、コーラスの強いギターの音色と板倉氏の歌と言う、非常にポジパン色の強い楽曲であり、屍の今後の展開が最高に楽しみになる曲でもあったけど、そんな曲の空気はやたらと感傷的だったし、空間を支配する退廃的美しさに、既に溺れそうになっていた。続く「五月ノ花」は僕が個人的に屍の中でも特に好きな一曲だけど、美しい余韻を引き継ぎながら、今度はディストーションが炸裂しまくった音になり、本当に重い。屍の重さはチューニング云々の重さじゃないのは分かってはいるけど、この日の「五月ノ花」はとにかくおかしかった、全身が砕け散りそうな圧迫感があったし、「メッセージ」の不穏さと憎悪の激情の連続にも飲み込まれそうにもなっていた。
 序盤から中盤にかけては代表曲も意外な曲もやりながらもセットであったし、正直に言うと空間自体の酸素が既に足らない状況になっていたし、完全に臨死体験的ライブではあったけど、それぞれの曲が最後の出番を終えていくのを見守りながら、板倉氏が何度も地獄の叫びを上げ、塗り替えられる絶望絵巻を呆然と立ち尽くして眺めていた。しかし、そんな空気から最初期ファストコア時代の曲に切り替わった時は本当にハイライトと言える瞬間だったし、「人間に生まるること難し・・」から「死ね!」の流れは最高過ぎたし、一気にモッシュする人も増えたし、「死ね!」での「死ね!死ね!!死ね!!!」のシンガロングは最高に楽しかった。屍は本当に異様なバンドではあるけど、同時にハードコアバンドとして素晴らしいバンドでもあるし、負のハードコアの極北に辿りついたバンドだからこそ、屍は代えのいないバンドであったし、最高の激情を鳴らしていた。ラストは「EXHAUST OF SILENCE」という未音源化の新曲。これが本当に素晴らしい曲であったし、屍のこれからの進化を間違いなく体現した大曲であった、この曲を聴いて、屍というバンドが終わってしまう悲しみを改めて実感するしかなかったし、まだまだバンドが終わるには早いとも思ったし、屍というバンドの先を見たかったと心から思った。最後は板倉氏がステージから身を乗り出して前にいたお客さんと何度も拳をぶつけているのが印象的だったし、山口氏がステージバックのフラッグを剥ぎ取り、フロアに投げた瞬間に屍と言うバンドは終わりを迎えたのだ。その後にアンコールもあったけど、僕は屍の残骸だと感じてしまって、「EXHAUST OF SILENCE」が終わった瞬間に、間違いなく屍は死んでしまった。最後の最後まで本当に凄いバンドだったよ。



・EDGE OF SPIRIT

 屍が最後のライブを終えて、その直後にライブとか自分だったら絶対にライブなんてしたくなる状況だけど、でもEDGEはやっぱり違った。EDGEがトリを務めてくれて本当に良かったと思う。EDGE自体は観るのは大分久々になってしまったのだけど、頭に繰り出したキラーチューンである「Brotherrsss」だけで、EDGEはいつも通りの最強のライブをするだけだと分かった。このバンドのタフネスと強度は本当に凄くて、時にビートダウンもあり、とにかく極悪なツインギターの刻みで攻めまくり、あざとい位にシンバルを叩き付けるパワフルで情報量の多いドラムありと、メタルコアらしいメタルコアでもあるんだけど、EDGEが唯一無二なのって、本当に一貫したスタイルを守り続けながら、バンド自身はとんでもなく強くなっていくだけって所だと思う。shoさんはこの日もとんでもない声量の叫びをこれでもかと繰り出し、貫禄を撒き散らしながら、ステージに佇んだり、MCでは「ほんまここ酸素やばいね。死んだら労災下りるん?」なんて言って笑いを誘っていたけど、shoさん自身は屍に対するリスペクトをMCでは述べていたが、ライブでは感傷を全く感じさせなかった、いつもみたいに化け物みてえなライブをして、鬼気迫る表情でありながら、常に笑顔を浮かべていたりして、フロアも含めて今この瞬間のEDGEのライブを楽しもうと言う気持ちを感じたし、僕自身もそうだった。ラストに繰り出したアンセム「Glear」で完全燃焼のライブとなったし、EDGEがこのイベントのトリを務めてくれたお陰で、屍の解散を辛気臭く見送るラストでは無く、屍に対して晴れ晴れとした気持ちで「お疲れ様」って気持ちを抱き、そしてこれからも続いていくバンド達のこれからを追いかけたいというポジティブな気持ちが芽生えるアクトだったと思う。



 こうして2014年9月27日の事を思い返しながらこのレポを書いたけど、実際にはまだ屍というバンドの解散に関しては実感も無いし、納得もいっていない部分がある。他にもやって欲しかった曲だって沢山あるし、新曲で始まり新曲で終わったセットだったからこそ、本当にまだまだ活動を追いかけたくもあった。勿論、屍も含めて出演した4バンドのどれもが素晴らしいライブをしていたし、最高に格好良いライブをしていた。それでも屍の終わりという意味で、この日は特別な日であったし、誰もが死ぬまで忘れない日になるんだと思う。屍には心からお疲れ様の想いとリスペクトを、そしてまだまだ活動を続けるCohol、kamomekamome、EDGE OF SPIRITにも大きなリスペクトを。
スポンサーサイト
タグ : ライブレポ

■“Live Noise Alive” Japan tour 2014(2014年9月23日)@代官山UNIT

 秋分の日という季節の節目にBorisの節目となるライブだ。6月のGREENMACHiNEを迎えての新作「NOISE」の完全再現ライブ(実際はいつも通りのアンプ落ちという様式美で完全再現にはならなかったけど)から三ヶ月。USツアーをこなし、日本に戻っての東名阪ツアー、そしてそのツアーのラストとなる東京公演は実に久々のワンマンライブであり、Borisのこれまでとこれからを繋げた改心の一撃である「NOISE」の集大成を見せるライブであるのだ。6月の完全再現ライブからBorisが、「NOISE」という作品がどんな進化を遂げたのか、本当に楽しみだったし、そして最果てのヘビィロックであるBorisの集大成でありネクストステージの始まりとも言えるライブだ。本当に凄いライブだったし、これまで何度もBorisのライブは観て来たけど、バンドが今こそ最高の状態であるのを再確認し、そして過去最高のライブとなった夜だった。



 18時半頃にUNITに入った頃は若干少なめだったお客もスタート時刻である19時には大分入り、UNITは概ね八割方はお客さんが入っていたと思う。それだけ今回のライブは誰しもが大きな期待を抱いていたし、フロアからもどことなくワクワクした空気が流れていた。Atsuoがプロデュースを手がけたENDONの新作が流れる中、それが止まり、予定より約15分程押して、いよいよ今年のBorisの集大成とも言えるライブが始まった。
 いつも通りスモークで覆われたステージにメンバーの三人が登場し、先ずは「NOISE」の一曲目を飾る「黒猫メロディ」からスタート。この曲はこれまでもライブでやっていたし、ポップネスとしてのBorisを見せる楽曲ではあったけど、よりヘビィロックとしての色を押し出したサウンドスケープはUSツアーによって恐らく完全に固まったと思うし、爆音がいきなり攻め立てまくりながらも、その音はどこかサイケデリックな浮遊感を感じるし、単純に音が凄く気持ちが良い。歪みながらも突き抜けるWataのギターと、突き刺すAtsuoのドラムが肉体にガツンと来るし、その余韻を受け継ぎながら、更に彼方へと疾走するヘビィロックである「Vanilla」の流れで一気に体温が上昇し、ポップネスとヘビィネスが縦横無尽に駆け巡る新たなるBorisのサウンドが完全なる形になったのを実感。そしてまだまだ行くぜとばかりに更に音を歪ませて必殺の「Pink」で爆音ストーナーの天国へとフロアを変貌させ、最早御馴染みのアンセムの一つである「Statement」でフロアの熱気は更に上昇!ボーカルを取るTakeshiとWata以上にテンション高く「メッッセーッジィ!!」って感じで叫ぶAtsuoはドラムもテンションも絶好調で、バンドの音が乗りに乗りまくり、序盤の4曲でヘビィロックバンドBorisの真骨頂をいきなりお見舞い!!
 Atsuoの煙草を止めたら3kg体重が増えたなんていう近況報告的な内容も含んだMCから一転して、次は精神世界を抉り取るborisサイドな内容のBorisの音を見せ付ける楽曲へ。「あの人たち」のサイケデリックに揺らぐ音から更に増えていくスモーク、美しい音の粒子が無数に浮遊しながらも、同時に先ほどまでの攻めのヘビィロックな楽曲をプレイしていた時以上に上がっている音量、ただ美しいだけじゃなくて、本当に美しい音ですら観る物を圧殺させるという破壊力を持つのがBorisであるし、wataの爆音の轟音だけじゃなくて、Takeshiのベースも凄まじい音になって、その重低音でUNITの床が振動し、下半身のジーンズが音の波を直に体感して震えているのすら感じ始める。そしてインプロ的な導入から始まった「雨」はこの日の最初のハイライトだったと思う。「あの人たち」の時よりも更に音量が凄まじい事になっているし、Wataのおぼろげなボーカルから美しきパワーアンビエントの煉獄へ。そして楽曲の後半では天国と地獄が交錯する感覚すら覚えてしまったし、身の危険すら感じる重低音は更に凄い事になり、皮膚が本当に音を体感して震えるのすら感じてしまっていたんじゃ無いかってレベルだったと思う。バンドの音として「NOISE」の楽曲を完全に物にしてしまっているだけじゃなくて、それを美しくありながらも、本当に次元も時空も変貌させてしまう何かにしてしまい、それは正に音が完全に得体の知れない「何か」という名前の化け物として目の前に君臨していた。一転して「太陽のバカ」では音量が適量になって、あの独特のポップネスを展開しながらも、音源よりもソリッドに刺していく音が何とも心地良い。そして「Cosmos」ではこれまで以上に美しさを感じさせるサウンドスケープに変貌していて、感動的な音色を生み出しながらも、よりポップでクリアな歌物的な感覚も感じさせる音になっていたのも印象深い。音量こそ凄まじい物では無かったけど(それでも十分爆音)、新たなる桃源郷を音で描き、天使が飛び回る祝福の轟音に酔い知れてしまったよ。
 Atsuoの「それでは後半、お楽しみ下さい。」のMCからこの日二度目のハイライトとも言える「Angel」へ。この曲は20分近くにも及ぶ超大作でありながら、ここ5年程のアンビエントとポストメタルの融和とも言えるBorisの作風の真骨頂とも言える屈指の名曲であり、これまでのBorisを見事に総括する楽曲であるけど、あの終わり無く繰り返される物悲しいアルペジオだけで世界を変貌させるんだけど、そんな美しく悲しいエレジーがとんでもない進化を遂げていた。特に凄まじいと思ったのは終盤の轟音パートで、再び重低音が凄まじい事になっていたし、果てしなく続く轟音と重低音、更には終わり無く繰り返されるストロボの連続と大量のスモークとコラボレーションという照明のアプローチも見事に嵌っていたし、視覚的な部分も酩酊の感覚を覚えるだけじゃなくって、殺人的重低音の音圧と音波に最早身の危険すら感じてしまっていたのに、その場から逃げ出せない、逃げ出したくない。もうここで重低音に圧殺されちまっても良いや、この音と共に命が終わってしまっても良いや。そんな事すら感じてしまう次元の違い過ぎる音は感動的だったし、轟音系のバンドは数多く存在するけど、ここまで圧倒的スケールで放たれる轟音を体感したのは初めてだった。その余韻をブチ壊したのは、Borisの新たなるアンセムであり、最強のキラーチューンである「Quicksilver」だ。この曲は正にBorisのこれからを想起させる楽曲でありながら、Borisのこれまでのアンセムの多くの要素を持つ魔改造ソングであり、Dビートで忙しなく繰り出されるドラムと、キャッチーに切り刻んでいくリフ、正に新たなるフロンティアへと疾走していくカタルシスだし、「Angel」と「Quicksilver」という「NOISE」を象徴する二つの楽曲が確かに繋がっていたし、それはこれまでのBorisと間違いなく繋がっていた。そして最後のハイライトは「Quicksilver」のアウトロの煉獄ドローンから最初期のドローン地獄である「Vomitself」だ。間違いなくこの日一番の音量であり、というかこれまで観たライブで一番の重低音と音圧と音量だったと思う。もう全身が音の振動をリアルの体感し始めて、フロアの床の振動も尋常じゃ無かったし、鼓膜だけじゃなくて、脳も心臓も押し潰されてしまうんじゃねえかって感覚もあったし、第一回のLTABのリキッドで観たSUNN O)))以上の音量と音圧が間違いなく存在していたし、そんな地獄すら通り越した涅槃の先の世界に震えるしか無かったし、間違いなく異次元レベルの体験だった。そしてそんな重低音の中でAtsuoはいつも通りフロアにダイブ、終わり無く繰り出される重低音が止み、本編は終了。本当に凄い体験だったし、その時の音圧はライブが終わっても全然体から抜けてくれなかった。
 フロアの手拍子に応えて、予定していなかったらしいアンコールへと。Takeshiが「大丈夫?USツアーの最終日に最前にゲロ吐いた奴いたんだけど。」っていうリアルなVomitがあったというMCをし(いやあの音圧じゃボミットする人間も出るよ。)、いざアンコールと思いきや、ベースの音が出ない。どうやらいつも通りアンプのヒューズが飛んでいたらしく、「トブね~。」なんて笑いながら言っていた。でもそこは変わりにOrangeのヘッドを代用する事で事なきを経て、アンコールへ。アンコールは一転して、サイケデリックロックBorisの真骨頂である「Rainbow」へ。ドープなグルーブの心地良さはさっきまでの音圧はなんだったんだって言うレベルで完全な別物ではあったけど、隙間を感じさせるロックもしっかり聴かせてしまう振り幅もやっぱりBorisだし、Wataのファズギターソロも絶好調!そして最後はやっぱり定番の「決別」で美しき轟音の天国を再び描いて見事に大団円。Borisのこれまでを総括し、そしてこれからへと繋げるライブだったし、「NOISE」とおう作品を見事に総括する二時間だった。

IMG_6514.jpg

IMG_4432.jpg

IMG_1115.jpg



セットリスト

1.黒猫メロディ
2.Vanilla
3.Pink
4.Statement
5.あの人たち
6.雨
7.太陽のバカ
8.Cosmos
9.Angel
10.Quiksilver
11.Vomitself

en1.Rainbow
en2.決別



 Borisってバンドは本当に凄いバンドであるって凄く単純だけどシンプルで一番大事な事を改めて実感したよ。一つだけ不満があるなら折角のワンマンだから「NOISE」の曲や定番の曲だけじゃ無くて、ここ最近ライブでやっていなかった過去曲もちょっとだけ聴きたかったっていうのはあったけど、それ以外は全てが最高のライブだったし、ありとあらゆる異次元が一つに集約されていたライブになったと思う。
 最後に「よいお年を!」って挨拶してフロアから「はえーよ!」って突っ込みがあったりしたけど、Borisは2014年のライブ活動はこの日で完全に終了で、残りは地下に潜る形になるのだけど、Borisの事だ、また来年になったら新たな音を届けてくれるに違いないし、また新たな異次元をライブで見せてくれるに決まっている。今年は例年に無く日本でのライブが多かったBorisだけど、「NOISE」という集大成的傑作をドロップし、そしてまた僕達を置き去りにし、新たなる果てへと駆け抜けて行った年だったと僕は思うし、だからこそBorisは最高のバンドなんだと思う。何よりも重低音も轟音もポップネスのヘビィネスも全ての音が結局はヘビィロックという物に集約されているんだと思うし、そこからまた新たなる驚きと感動をBorisは人々に与えていくのだろう。
タグ : ライブレポ

■isolate ヒビノコト Release Tour(2014年9月21日)@新大久保Earthdom

 本当に凄まじい名盤となった激情・ブラッケンドハードコアの新たなる扉をこじ開けたisolateの1stアルバムである「ヒビノコト」であるが、現在行われているリリースツアーの東京場所はisolateの盟友達が集結しただけじゃなくて、本当に目出度い事が重なったパーティとなった。isolateと同じ日に1stをリリースした青き激情の伝道師であるwakamiya、待望の新作がDaymareからリリース間近なノイズコアの新たなる破壊神であるENDONと最早トリプルリリースパーティであるし、更にはライブ活動を遂に再開させた、アートと暗黒のハードコアであるwombscapeの復活おめでとうライブでもあり、少し無理矢理ではあるけど、混沌と窒息と愛のカオティックを放つweeprayの来年Till Your Deathから1stリリース決定おめでとうライブでもあり、何か色々目出度いし、パーティのシチュレーションは完璧だ。この日も間違いなく新たな始まりの夜であったし、本当に最高のリリースパーティになった。



・wombscape

 スタートが少し押して先ずはwombscapeのライブからスタート。暫くライブ活動を休んでいたけど、一時的にバンドを離れているらしいkijo氏とDhai氏に代わって、Starlingraidのギタリストである柳氏をサポートに迎えた特別編成でのライブ.
しかし正直に言うと万全の状態とは言えないであろうwombscapeだけど、そんな事は言わせない!!とばかりにこの編成だからこそ出来る事を発揮しようとしていたライブだったと思う。先ずステージのセッティングがより凝った物になっていたし、ステージ前に籠ライト、更にフロントライトも加え、ハコの照明は全く使用しない凝ったステージセッティング、更には柳氏とwataru氏はアンプにSUNN O)))だし、柳氏はアンプ3台という極悪仕様。そしていざライブが始まると本当に凄かった。のっけからRyo氏が瞼から流血という事態が発生したり、wataru氏がベースの弦を切るというアクシデントもあったし、そういった点は完全では無かったのかもしれない。でもそんな事を抜きにして「今しか出来ないwombscape」を見事に発揮していた。先ず凄いのはStarlingraidという極限のグノーススコアバンドで変態過ぎるギターを弾いている柳氏のギターだと思う。普段の編成と違ってギター一本になってしまっているハンデを覆す凶悪過ぎる音圧で叩き潰すギターの音、ギター一本だからこそフレーズの数々の殺傷力が逆に研ぎ澄まされ、音の数々に引き算の美学を感じるアレンジ、そしてアクシデントを乗り越えてからのwataru氏のベースの極悪過ぎる重低音の地獄具合。勿論Ryo氏のボーカルとステージングも狂気と悲痛さを一心に表現する見事な物だったし、そんな現編成での「黒い絵具」は圧巻だし、しかも爆音で地獄みたいな音だけなのに、それが確かに快楽に繋がっている事。アート方面や精神世界的表現も凄いけど、カオティックとしての表現もより研ぎ澄ましたライブは復活を果たしたwombscapeの新たな犯行声明だった。しかし柳さんのギターは改めて凄いな。音圧とか極悪だったのに、ライブ終わって全く耳鳴りとかしなかったし、音が凄く気持ち良く体感出来たから凄い。

IMG_0363.jpg



・wakamiya

 wombscapeが暗黒でいきなり落としてからのwakamiyaである。1stであり間違いなく名盤となった「Lives」リリースツアーを絶賛繰り広げている彼等だが、暗黒の世界をブチ破るかの様に見事な青のクライマックスを描くライブを展開していたと思う。「Lives」の頭を飾る「狼煙」からライブはキックオフしたけど、いきなり爆音で放たれる衝動の塊を全身で受けた瞬間に、体内の血液の温度が一気に上昇するのを確かにこの身で感じたし、ライブは本当に久々に観たけど、新作の楽曲が更に良くなっているのは勿論なんだけど、バンドが本当に強くなった。良い意味での荒々しさを前面に出すアンサンブルに変わったのも大きいと思うし、ボーカルの喜早氏のパフォーマンスとボーカルと言葉は、爆音の青の中でも確かに観る物の胸を突き刺す。「akaridori」のシンガロングからのクライマックスの哀愁には何度も拳を握り締めたし、「Lives」でフロアにダイブした喜早氏がまさかの鼻血を出すと言う、wombscapeに続いての流血と言う、もうなにもかもが全身全霊過ぎる感じ、喜早氏が鼻血を出しながらも、堂々と笑顔でステージに立っていたのもエモーショナル過ぎたよ。曲自体は5曲しかプレイしていないし、個人的にはもっと多く曲をやって欲しかったって願望はあったりもしたけど、よりバンドとして強くなっただけじゃなく、何も恐れずに歩んでいくと言う覚悟が今のwakamiyaのライブには間違いなく存在している。まだまだツアーは続くらいいけど、新作と数多くのライブでwakamiyaはもっと大きなバンドに進化すると確信した!!

IMG_0010.jpg



・ENDON

 wakamiyaの感動的アクトから一転して再び地獄だ。遂にDaymareから新作をリリースする戦略と暴力と快楽としてのノイズコアを放つENDONだ。しかしながらいつ見ても機材とアンプの要塞と化したステージは何か凄まじさしか無い。セッティング中に機材トラブルがあったらしくて、少しセッティングが長引きながらも、いざライブが始まったら一瞬でノイズ地獄が爆誕。二人のノイズとギターとドラムによる4つの暴力が一瞬で渦になり、爆発し、それが際限無く繰り返される事によるカタルシスはENDONのお家芸だし、凄まじいビートを叩きながらも、その一発一発の音が心臓を突き刺すドラムを基盤にし、鼓膜を破壊しながらも、そのリフは最高にハードコアで格好良いギター、そして地獄っぷりは変わらないのに、変幻自在に音を変化させるノイズ、それに加えて那倉氏の痛々しい叫びを繰り出しながら、貫禄溢れる佇まい。ヴァイオレンスなパフォーマンスをしなくなって久しいけど、もうそんな物は必要無いんだ。ノイズの渦だけで人を完全に殺せるバンドになったし、しかもただ単純にノイズを放つのでは無くて、複雑に作り込んだ楽曲だからこそ、自在に変化する音、ハードコア要素があるからこその肉体的暴力性。それらもひっくるめて、理知的でありながら、本能的であるノイズコアとしてENDONは凄いバンドになったと思うし、今回プレイしていた新作に収録されているだろう楽曲もENDONがノイズの先を行くバンドになった証明なんだと思う。リリースツアーも控えているし、ENDONが全てを破壊する日はもう完全に目の前に待ち構えている。死ぬ覚悟を今からしておけ!!

IMG_2079.jpg



・weepray

 Till Your Deathからの新作リリースも決まり、こちらもいよいよカオティックの新世界を見せる事で、全てを殺す体制に入ったweepray。ベースの阿武さんの衣装もそうだし、メンバーそれぞれのパフォーマンスもより楽曲の世界観を増幅させる物になっているけど、新たにステージバックにログフラッグを導入したりとwombscapeに負けずとステージセッティングや世界観をよりライブで表現するバンドにもなったweeprayだけど、それ以上にバンドとしてのライブが更に凄くなっている。こちらも阿武さんのベースの機材トラブルが序盤にあったりこそしたけど、たった4曲でweeprayってバンドが描くストーリーは物凄い事になっているんだ。ここ最近からプレイし始めた新曲が先ずそうで、既存のカオティックに対するアンチテーゼを個人的に感じさせ、長尺で複雑に楽曲を展開させながらも、それぞれの音が人を窒息させる音でもあるのだ。もう赤塚&小室のギター隊の音の研ぎ澄ませ具合や空気すら支配する緊張感はweeprayの持つ大きな武器であるし、大野氏の独特のタメやクセを生かした精神的重さとしてのドラム、阿武氏の音階を感じさせないのに、とにかく不穏に這い回る煉獄の低音火傷な精神破壊装置としてのベース、笠原氏のステージング、それも凄くなっている。何よりも後半の「この手とその手」、「彼岸花」の2曲は、精神を破壊するカオティックとしてだけじゃなくて、肉体を破壊するカオティックとしてのweeprayがより新たな進化を遂げていたし、笠原氏はステージ前に乗り出して、痛々しい叫びを言葉にしながら、フロアをガンガン煽っているし、阿武さんもガンガン煽りまくる!!フロアもモッシュが巻き起こったりと、ここ最近観たweeprayの中でも特に大きな盛り上がりだったし、weeprayもバンドとして脂が乗った最高の状態なのを実感した。来年の新作も勿論だけど、11月に控えたHexisを迎え撃つ自主企画も楽しみだし、weeprayはまだまだ行ける!!

IMG_0658.jpg



・isolate

 そして本日の主役であるisolateである。ベースもギターも要塞と化したアンプが並んだステージになっていたし、それだけでも新作をリリースしたisolateのライブが新作同様に凄まじい事になっているのを確信するしか無かったけど、いざライブが始まると、想像と期待以上のライブとなった。セットは過去の楽曲は全く無し!新作「ヒビノコト」のインタールードの楽曲を除いた全曲を披露するというセット(「屁理屈」を抜かしてしまって、それはアンコールで披露になったからほぼ全曲セットではあったけど)。そして新作の実質トップを飾る「解纜」の2本のギターによる轟音の渦で今日出演した4つの猛者すら吹き飛んでしまうレベルのカタルシスがいきなり発生!!のっけからボーカルの安藤氏は全てがフルスロットルと化して、前以上に野獣と化した安藤な叫びとアクションを繰り出す。前々からそうだったけど、メンバーそれぞれのアクションも含めて、本当に魅せるライブとなっている。時には前に出てきてフロアを煽る様なアクションをしながらも、常にギターを刀みたいに振り回しながら暴れ狂うギター隊の二人、後ろこそ向いているけど、ベースを振り回し、煉獄の低音を放つコケグチ氏、そして凄まじいブラストを繰り出し、ドラムを叩いている必死の表情も最高に絵になるイケヤ氏と、メンバーそれぞれのパフォーマンスも含めて本当に絵になるバンドになったと思う。「閉ざされた中で」から「航路の先の」ノンストップで繰り出された爆走する轟音のカタルシスからの、一気にブラッケンド色を強くして地獄の重低音を放つ流れという序盤からいきなりヒートアップ。安藤氏はこの日結構MCしていたし、MCでは親しみやすい兄貴って感じのキャラクターなのに、ライブになると気迫が凄まじいし、でも今までと違ってライブ中に凄く楽しそうな顔をしている瞬間が何度もあったし、しかも何人かの最前にいた客にキスまでするというパフォーマンスまで繰り出していた(僕も安藤さんに唇を奪われました)。
 新作第2チャプターとなる「蝕」、「欲で着膨れする」、「美徳の勘違い」という轟音でありながら聴かせる世界観に満ちた楽曲でも、音源でも凄かった轟音の渦は更に増幅し、静謐さには絶対に逃げないで、熾烈なまま深みを感じさせ、音の破壊力は見事過ぎた。アクシデント続きな今回のライブであったが、トリのisolateまでギター隊の二人が弦を切るというアクシデントがあって、もう色々なアクシデントばっかりだったけど、他の4バンドもそうだったし、勿論isolateもそんなアクシデントありましたっけ?っていうレベルのそんな物をライブの凄さで忘れさせるどころか、アクシデントあるからこそ、その後にライブが更に凄くなるみてえな所もあったし、新作第3チャプターとなる「裏側の微笑」、「薄氷上」はisolateが描く終末寸前のバイオハザードでありディスとピアであり世紀末な感じを描き、圧倒的情報量で繰り出される音の連続に興奮するしかなかったし、新作最終チャプターである「歪」と「終末」の2曲でアースダムを完全に破壊。何よりもラストの「終末」のギターとベースだけになるラストのパートは完全に途方に暮れるしか無くなる虚無を音で生み出していたし、そしてアンコールの「屁理屈」と「狂う影にあわせて」で再びフロアに火を付け、そして完全燃焼。40分弱で圧巻過ぎる音の連続しか無かったし、isolateというバンドはもう無敵のバンドにいよいよなったのを感じた。isolateってやっぱすげえわ!!

IMG_3641.jpg

IMG_0202.jpg

IMG_7382.jpg



 アクシデントこそ確かに多かったと思う。でもそんなのは全く関係無かったし、この日も新たな混沌の始まりに相応しい最高のライブだったんだ。isolateとwakamiyaはまだまだツアーが続くし、weeprayも新潟と東京での自主企画を控えているし、ENDONもリリースからのツアーがあるし、wombscapeも再びライブを繰り返していく。それぞれの新たなる始まりがあるし、その先にある物をこの日来ていた人々は目撃する事になるんだと思う。だからこそ僕は2014年9月21日のこの日にあった事件をこれからも絶対に忘れないと思う。それぞれの激音の飛躍はまだまだ続く!!
タグ : ライブレポ

■Predator presents 【"Dark Side Dimension" Release Tour Final】(2014年9月19日)@新宿ANTIKNOCK

 アンチノックを拠点に活動するトラッシュメタルバンドであるPredator企画である今回、僕自身はPredatorというバンド自体は知らなかったけど、対バンが更に凄い事にしかなってないNoLA、古河から陰鬱なる混沌を放つURBAN PREDATOR、超姫路代表であり国内ネオクラストを背負うsekien、金沢から世界を爆音で燃やすThe Donorという半分以上地方のバンドの出演であり、そして激音の坩堝になる事間違いなしなイベントであり、今回足を運ばせて頂いた。以下金曜の新宿を燃やした夜の一部始終である。



・URBAN PREDATOR

 トップバッターは茨城県古河を代表する混沌の3ピースであるURBAN PREDATOR。来月には待望の新作のリリースも決まっているけど、今回ライブを観て思ったのは、このバンドは新作リリースと、それに伴うツアーで間違いなく激音の世界で大きく名前を売っていくだろうって事だ。ベースレスという編成は下手したら音圧的な意味で大きな弱みになってしまうかもしれないけど、URBANは馬立氏の8弦ギターによる攻撃性特化のギターがそんな事を感じさせない、このバンドはグラインドやカオティックを飲み込みながらも、全てが単調では無い。楽曲こそ決して長くないけど、目まぐるしく展開される音、ギターとドラムが一騎打ちする生々しい緊張感はこのバンドの大きな魅力だし、テクニカルさとリフの重みを食らわせるギターと、ブラストもビートダウンも自在に操り、尚且つダイナミックに叩き出されるドラム、何よりも日本語詞で悪意と憎悪を繰り出すSOUL氏の陰鬱な陶酔の体現者としての泣き叫ぶボーカルとパフォーマンスが全てを決定付ける。ライブも20分もしないで終了だったけど、最初から最後まで一点突破で闇を繰り出すライブはおぞましさしか無かったし、古河から日本を闇に叩き落すURBAN PREDATORはこれからもっとヤバい事になると確信した。

IMG_3462.jpg



・NoLA

 それにしてもNoLAは2012年の夏に初めてライブを観てから凄いバンドだと思っていたけど、このバンドの進化は本当に天井知らずだと思う。前回に小岩でライブを観た時に海外ツアーでの更なる進化と、Makino氏加入以降の4人になったNoLAが完全に形になっていて、もう馬鹿だけど凄いとしか思えなかったライブだったけど、それを軽々しく超えてしまっていたし、バンドとして更に脂が乗りまくっている最高の状態に今バンドはあると思う。過去曲も、これからリリースされるであろう新曲も、ツインギターによる音が完全に様になっているし、ただ重いだとか、ただ速いだとか、ただ遅いだとか、そんなレベルで語れる物じゃなくなってしまっている。ボーカルのタケルのパフォーマンスも絶好調で、いつも通り速攻でフロアに飛び出して暴れ叫びまくっているし、前から貫禄が凄い事になっているとは言っていたけど、貫禄だけじゃなくて、より研ぎ澄ました衝動を激重の音に邪音として込められていたと僕は思う。メタルとかドゥームとかハードコアとかという概念は最早NoLAには不要だし、エクストリームミュージックと呼ばれるサウンドでありながらも、最早それすら最強に極悪なヘビィロックとして無慈悲に放つのだ。恐怖とおぞましさと対面するしか無くなるNoLAのライブは今こそ本当に目撃すべきだと再確認させられた。

IMG_4971.jpg



・sekien

 このバンドは本当に姫路のバンドかと疑いたくなるレベルで、都内は勿論だけど全国でキチガイとしか言えないライブをこなしまくっているsekienだけど、そんなキチガイスケジュールをこなしているからこそsekienのライブのタフネスは本当に凄いと僕は思う。今回のライブは最初の三曲は今後リリースされる新曲を披露していたけど、一曲目はまさかのインストであり、ポストロック的アプローチを盛り込んだsekienという新機軸!!このバンドはネオクラストを自称しているけど、形骸としてのネオクラストにはならずに、本当の意味での「ネオ」を目指すバンドだと僕は思っていて、だからこそ常に新しいアプローチを取り入れるのも、新曲をガンガンやるのもsekienからしたら当たり前の話なんだと思う。勿論今年リリースされたEPの楽曲も更にバンドとしてパワフルになっているし、「夜明け」や「六六六」といった楽曲は最早キラーチューンであり、アンセムにもなってしまっている必殺の名曲としての役割を果たしまくっている。彼等の音は昔から連なるジャパコアだったり、スパニッシュネオクラストだったりが機軸であるけど、それらに対する愛を昇華し、新たな音としてsekienの音になる、それった普通に凄いし、もっと言うと、そんな先を行くって精神はやっぱりハードコアパンクの最重要要素だと僕は勝手に感じるのだ。何よりも、爆音で言葉と音を全身全霊で常にsekienはぶつけてくる、だからこそsekienは信頼出来るバンドだし、最高に格好良いんだ。超姫路とかネオクラストもsekienの肩書きとして不可欠ではあるけど、それ以前にバンドとして最高に格好良いライブを常にしている。だからこそだ。

IMG_0287.jpg



・The Donor

 sekien同様に今本当に凄い人気と実力を持つ金沢のTHe Donorだけど、ライブを観るのは二回目。しかしこのバンドはもうCoffinsやHIHAみたいにやってる事は勿論違うけど、世界レベルと呼ばれるバンドに全く負けないライブをするバンドだと僕は改めて思った。シンプルな3ピース、基本的にファストな楽曲、ドゥームもスラッシュもネオクラストもロックも雑多にブチ込んで、これはThe Donorの音でしか無いって音にしちまっているって点、エクストリームミュージックの危険領域の最果てにいるバンドであると思うけど、前回にライブを観た時も思ったけど、The Donorの凄さって、爆音で放つ音が本当に得体の知れない強さを持つ事だと思っているし、それを最高にキャッチーに放っている事だと僕は思うんだ。今回のライブも多くの楽曲を少しのMC以外はほぼノンストップで繰り出していたけど、ライブでの爆音サウンドでもメロディが凄くしっかりと伝わってくるし、爆走するドラムも、極太ベースも、全てを司るギターも、全てが桁違いの格好良さだし、人間の本能に訴える音でしかない。しかしながらラストにプレイした「Shine」は本当にアンセムだと思うし、激情系ハードコア要素も盛り込み、極悪でありながらも、神々しい音のクライマックスの爆走は、熾烈で肉体と精神を破壊する音から一転して、神々しい光を見事に放っていた!このバンドは全てを持っていくバンドだし、今回のライブも凄さしか無かったんだ。

IMG_2476.jpg



・Predator

 トリは今回の主催であり、NoLAよりも更に若い新星であるPredator。直前にベースの人がバンドを離れてしまったらしく、ギターボーカルとドラムのみの2ピースの編成でのライブではあったけど、今回の凄すぎる対バン達に怯む事無く、自らの音を確かに放っていた。荒々しさは確かにあったりもするんだけど、ブルータルなギターリフと、ハードコアパンク的な荒々しく走るドラム、そしておぞましい叫びをせわしなく放つボーカル、常にファストに暴走しまくりながら、ハードコアとデスメタルとトラッシュメタルがクロスオーバーした音は、確かに格好良い。正々堂々と激音のみで攻める音も凄くプラスだし、ひたすら刻みのリフで極悪さを増幅させていた。他のバンドに比べたらまだまだ荒さはあったとは思うけど、でもやっている事は凄く格好良いし、これからもっとおぞましいバンドになるのは確実だと思う。初見だったけど、観る人を納得させるだけの物は確実にあるし、NoLAがそうだった様に、これからもっと進化してくれるバンドだ。期待を確かに抱かせるだけの物はあった。

IMG_1794.jpg



 そんな感じに金曜夜に暗黒激音祭な今回の企画だったけど、日本のエクストリームミュージックの今がまさしく存在する夜だったし、古河から姫路から金沢までと都内や大阪以外の地方からもヤバいバンドがドンドンヤバい音を鳴らしているのを肌で体感する最高の機会になったと思う。日本の激音の今はまさに新たな時代の始まりの夜明け前だし、これからもっともっとこんなイベントが増えてくれたら俺はもっと楽しくて最高だと思う。
タグ : ライブレポ

■Lives/wakamiya


LivesLives
(2014/09/10)
wakamiya

商品詳細を見る




 「Lives」なんて本当に堂々としたタイトルを作品に冠したと先ず思った。山形にて結成され、現在は東京を拠点に活動する激情系ハードコアバンドであるwakamiya、一時期は3ピースだったけど、去年から再び4ピースになり、そして現在の編成になって初の音源であり、遂にリリースされた1stフルアルバムが今作だ。リリースはバンドの自主レーベルであるHunt Recordingsからで、いよいよwakamiyaというバンドが本気で攻めに入った。そして何よりも激情系ハードコアの若手バンドとしての気迫と覚悟、それが、見事に作品になったと思う。



 元々はインストバンドだったし、これまで自主制作でリリースした2枚のEPでもそうだけど、wakamiyaというバンドは青きメロディを最大限に生かしながらも、マスロックやポストロックといった要素もかなり盛り込み、激情系でありながら、独自のスタイルを追求していた印象が個人的にかなりあったのだけど、今作で見事に自らのサウンドをネクストステージに持って来た。これまでの作品以上にストレートな音が増えたと思う。第一曲「狼煙」からタイトル通り宣戦布告の狼煙であり、のっけから青き衝動をそのまま音にしたギターストローク、爆音かつ轟音で炸裂する美しき激情、喜早氏のボーカルもねっけから激情の叫び。マスロック色の強いテクニカルなギターフレーズと、疾走するドラムのビートと、バキバキに歪んだベースと言うwakamiya印のサウンドはより濃密になっているし、喜早氏のポエトリーとまくし立てる言葉の数々と叫びのボーカルもより確固たる物になっている、静謐な音もあるけど、よりドラマティックな楽曲構成になり、爆音でストレートになった音は本当に説得力に満ち、バンドとして根本的に強くなった。フルスロットルで爆走し、激情系ハードコアの美味しい所を全部持ってちゃうんですか!?な第2曲「陽引ノサダメ」でもより磨き上げられた珠玉のメロディとバンドとしての強さがこれまでとは桁違いだ。持ち前の静と動の対比と元々はインストバンドだった経験を生かし、クリアな旋律と共とシンガロングパートから、完全に歌に振り切ったボーカルが涙を誘いまくりな第3曲「akaridori」ともうこの作品にはクライマックスしか無いのかって感じになるし、第5曲「Lives」はもう言葉と音が自由自在に美しい色彩を描きながら轟音の渦を生み出し、ソリッドなサウンドで今作でも特に攻めに振り切った楽曲でありながら、日本語詞にて生み出す感情の渦の連続がサウンドと見事にシンクロし、熾烈な音になっているのに、どうしてこうも優しくも激しく胸を抉るのだろうか。
 今作の後半の楽曲になるとより顕著になるのだけど、wakamiyaというバンドの魅力はそのサウンドだけじゃなくて、日々の喜怒哀楽といった感情と情景を愚直なまでにストレートに言葉にした歌詞も大きな魅力であるし、叫び、ポエトリー、まくし立てるスポーキンボーカル、クリーントーンの歌、自由自在にボーカルスタイルをサウンド同様に変化させながらも、どんなボーカルスタイルであろうとも、言葉の数々は聴き手に真直ぐ伝わってくる。音楽性としては多様さもかなりあるのに、wakamiyaというバンドの楽曲はどれもブレを感じないのは、基盤として常に青く切ないメロディが咲き乱れている事と、その言葉の数々であろう。まるで葛藤と苦しみと共に、その音をこれからも伝えると言う覚悟を歌った第8曲「Kaimen No Hana」は涙無しでは聴けないし、そして第9曲「迎え火」、最終曲「水無月」はそんな今作を締めくくる最高のクライマックス、痛みも苦しみも歌いながらも、wakamiyaにあるのはどこまでもポジティブなエネルギーであり、そして日々を生きる人々の為のアンセムであるのだ。



 wakamiyaというバンドは本当に不器用なまでに真直ぐなバンドだと思う。青き激情を鳴らす素晴らしいバンドは他にもいるけど、wakamiyaはもうwakamiyaでしか無いと思わせるのは、その音と言葉を、他のどのバンドよりも真直ぐに伝えてくるからだと思う。バンド自体の演奏技術はかなり高いし、かなり複雑な楽曲をプレイしているバンドである筈なのに、結局はストレートなメロディと言葉で勝負している。だからこそwakamiyaには説得力しかない。それぞれの日々を生きる人々へのメッセージでありマスターピースだ。wakamiyaがこれからを間違いなく作り上げるんだ。



■Darkness triangle zone(2014年9月13日)@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR

 闇のトライアングルという事でTHE CREATOR OFとampcharwarとBlie△Nによる3マンライブに今回は足を運ばせて頂きました。異色な感じもありつつ、実は凄いしっくり来る3バンドによる3マンはあらゆる「ポスト」な感覚を持つ3バンドっていう共通事項が確かに存在し、それぞれが濃厚な存在感を放つライブ。独特の毒素に満ちた3マンになったと言える。この日は本当に多くのイベントと被っていたにも関わらず多くの集客があったのも印象深かったし、新次元の音が渦巻く夜になった。



・Blie△N

 先ずは初見である「BlieAN」の中心人物だったKenji GeorgeによるソロプロジェクトBlie△N。元々かなりの人気バンドだったらしく、ソロプロジェクト化してからも高い人気を持っているらしいのだけど、いざライブを観てみると、それも納得だった。基本的にはジャンクに無節操な音を詰め込んだサウンド。グランジだとかデジタルロックだとかインダストリアルだとかノイズ的要素を盛り込みながらも、それをキャッチーで踊れる音として消化し、骨太でありながらクールでありつつも、パンキッシュな熱さもあり、それはやはりグランジをルーツにしたサウンドだからだと思う。またもっと印象深かったのはとにかくどの音もズ太い、同期のオートチューンのサウンドを良いアクセントにしながらも、パワフルなドラムと極太のベースによるビートとグルーブはとにかく気持ちが良かったし、切れ味のあるギターサウンドもかなり好印象。ほぼノンストップで楽曲を繰り出し、ダンサブルに重低音を放ちまくっていたし、そんな音にフロアは大きな盛り上がりを見せていた。45分があっという間だったし、初見だったけど大きなインパクトを残すライブだった。



・THE CREATOR OF

 続いてはTCOのライブ。先ずはベースの坂本氏が脱退し、ギターだった武田氏がベースに転向しての4ピース編成になっていた事に驚く。そんな事を他所に鈴木氏は「あ、こんばんわdownyです。」なんて挑発的な挨拶(この日はリキッドでdownyとEnvyの2マンだった)。そして4人になって初のTCOのライブは「Acoustic」からスタート。当たり前だけど、アレンジが大きく変わっていたし、ギターが鈴木氏と古谷氏の二人になった事も大きな変化として出ていた。もっと空間的アプローチが増えているし、正直に言うと序盤は固さがあったりもした。でも4人にメンバーが減った穴を埋めるのでは無くて、また新たなアプローチによって進化に繋げるという意思が見えたのは大きいと思う。武田氏のベースも中盤からはかなり良い感じになって来て、リズム楽器としてのベースというだけじゃなくて、元々がギタリストであるからこその、メロディラインを司るベースを聴かせていたし、佐川氏のドラムとのシンクロ率も徐々に高めていた。鈴木氏のギターの音はより音圧が増幅した印象もあったし、この日はラストの「Wind Up」以外はインストで45分の中で6曲とプレイした曲こそ決して多くなかったんだけど、カオティックなノイジーさと調和の絶妙な隙間をすり抜ける音はスリリングであったし、よりバンド感を体感させるアプローチになったのはまた大きな変化だと思う。元々グランジがルーツのバンドだし、今でこそ一般的にはポストロック・ポストメタルにカテゴライズされるアプローチの音楽性だと捉えられるのかもしれないけど、グランジ機軸のダウナーでありながらも、攻撃的な音が増え、このバンドは良い意味でますます分からなくなって来たし、日に日により他と比較出来ない音になっている。さて4人になったTCOはこれからどうまた変化と進化をして行くのか、本当に楽しみだし、序盤こそ固さがあって少しヒヤヒヤしたりもしたけど、終盤で見事に新たな可能性を感じるアンサンブルを展開していたのは流石である。



・ampcharwar

 トリは本当に久々にライブを観るampcharwar。しかしながら相変わらずバッキバッキに歪みまくったベースと本当に強さしか感じないベースのビートとグルーブは本当に強烈だし、このバンドの大きな武器になっている。モロにレッチリなカッティングのギターフレーズなんかを盛り込みながらも、あくまでヘビィなリフで鋭角かつ直角落下な重低音サウンドによるダンスミュージックで、オートチューンと見事に溶け合いながらも、ヘビィネスをこれでもかと発揮していく。このバンドもこうして改めてライブを観ると中々独特の音だし、ヘビィネスとかオートチューン自体は今となっては別に珍しい物では無いのだけど、このバンドはロックとヘビィネスのグルーブとリフとビートの快楽が間違いなく下地にあるし、ライブバンドとしての実力は確かな物だと思う。所々ベースが前に出てて、ギターの音が少し薄くなるのはちょっと気になったりもしたけど、リフが前面に出てくるパートは本当に格好良いし、ズッシリとガツンとくるヘビィロックは久々に観ても良かったし、更に脂に乗りまくっていたと思う。



 こうして三茶の独自のヘビィロックのトライアングルは幕を閉じ、独特の磁場が確かにヘブンズに存在していたと思う。単なるヘビィロックでは無くて、ヘビィロックの先を確かに鳴らそうとする3バンドがそれぞれの音でぶつかっていたのが印象的だったし、大きな盛り上がりを見せていた。

■ヒビノコト/isolate


ヒビノコトヒビノコト
(2014/09/10)
isolate (アイソレイト)

商品詳細を見る




 2014年最重要作品だと思う。激情系ハードコアの新たなる未来を生み出し、多くの人気を集めていたisolateがいよいよ1syフルアルバムをドロップした。全15曲39分、リリースは勿論KEEP AND WALKから。これがもう最強の一枚になっている。単なる激情系ハードコアではない、単なるブラッケンドハードコアでは無い、これまでリリースされた作品も勿論素晴らしかったけど、それすら生温く聴こえてしまう位に、今作は暗黒も激烈さも痛みも美しさも轟音も全てが桁が違う。激・重・暗・美・裂・黒だと?そんな言葉じゃ表せない何かが確かに存在していて、そんな化け物に付いた名前が「ヒビノコト」ってのはまた凄いと思う。THE SECRET招聘、DEAFHEAVENとの共演といった経験も生かし、それを最高の形にした大傑作だ。



 しかしこのアルバムは本当に極限過ぎて、理解がまだ追いつかない。手法自体はこれまでと大きく変化したって訳では無い。安藤氏の日本語での痛々しい叫びのボーカルも、ツインギターの轟音トレモロも、熾烈なるブラストもこれまでの作品にあった要素だし、今作もそんな音が大きな比重を占めている筈なんだけど、先ずは音圧がこれまでの作品に比べて明らかに凶悪になっている。これまでのシューゲイジングブラックな轟音とは違って、よりブラッケンドな極悪で重くて黒い音に変貌したのは今作の大きな進化点であると思う。またインタールードの4曲を除いた全ての楽曲が常に轟音とブラストと叫びの織り成す休む暇なんて全く無い激音でしかなく、クリーンな音はほぼ皆無。また初のフルアルバムという事もあって、歌詞もそれぞれの楽曲が繋がっていて、作品で一つのテーマを歌っている様にも思うし、何よりも激音に続く激音なのに、作品全体で明確なストーリーが存在している。また個人的に今作は四部作になっていると思っていて、それぞれのインタールードの楽曲を皮切りにそれぞれの章が始まると言う形式になっていると思う。終末の始まりを描く第一部、美しさを描く第二部、激音を極めた第三部、そしてクライマックスであり終末の第四部と言う形式だと僕は感じた。
 SEの第1曲「鼓動」が終わり、第2曲「解纜」が始まった瞬間にトレモロの轟音が耳を壊しに来る。美しく咲き乱れる轟音と共に、最初からクライマックスとばかりの美しき音の連続はスケール感がこれまでと桁違いだ。随所随所のブラストビートが楽曲を盛り上げ、美しき旋律が際立つのに、何でこんなに苦しくて悲しい気持ちになってしまうのだろうか。そして第3曲「閉ざされた中で」からは完全に地獄。常にブラストが暴走し、弦楽器隊の音も一転してBPMが速くなり、約1分をファストに燃やし尽くす。第4曲「航路の先」はこれまで以上にブラッケンドな音を感じさせ、よりブラックメタルに接近した音を聴かせるんだけど、他のブラッケンドと全然違う感触を覚える。それぞれの音の輪郭は明確でありながら、肉体を刻む音でありながら、同時に精神を蝕んでいく。HEXISの様な暗黒ブラッケンドともまた違うのは、isolateの持つメロディの美しさが熾烈なる楽曲でも見事に生かされているからだろう。激烈になればなる程にそれはより際立ち、そして終末の始まりを見事に想起させる。
 インタールードである第5曲「安堵の時」からの第6曲「蝕」は一転して、今作のダークな深層へといよいよ入り込む、人間の奥深く先にある負の感情を抉り取り暴く様な言葉とギターの音が素晴らしく、今作は「暴く」作品である事を感じさせられてしまった。第7曲「欲で着膨れする」はまた一転して空間的エフェクターを使いまくったアンビエントな音色を使いこなし、更に深みと奥行きを感じさせる音に仕上げ、そこからドラマティックに暴走するサウンドは今作の中盤のハイライトだと言えるし、激しさの中の黒の美学としてのisolateが炸裂しまくっている。第8曲「美徳の勘違い」も激音だけじゃなく、不穏でクリーンなアルペジオのフレーズを見事に生かし、今作で最も音色が綺麗で、ここまでの熾烈な音の連続にこう来てしまうともうどうしようも無く胸を締め付けられてしまう。
 第9曲「空白の至福」というインタールードを挟み、第10曲「裏側の微笑」は一転。ドス黒い濁流の音色へと再び変貌し、今作でも特に激烈な地獄が始まる。続く第11曲「屁理屈」も第12曲「薄氷上」もショートでファストであり、今作の中でも特に速さと激しさが際立っている。断罪の様にトレモロをひたすら刻みまくり、ベースとドラムのビートも業火の様に焼き尽くす。特に「薄氷上」の破壊力はこれまでのisolateの楽曲の中でも最強クラスであり、全ての音が真っ逆さまに落下している。落下角度もなんかおかしいし、しかも一瞬の落下ではなくて、とんでもない速さで終わり無く落下していく感覚なのだ。何か自分で何言ってるか分からないけど、多分富士急ハイランドの高飛車以上のカタルシスがこの瞬間に間違いなく存在している。
 第13曲「雨音の隙間に」からのラスト2曲は本当に素晴らしい。第14曲「歪」は今作で最も終末感溢れるメロディが存在し、トレモロとクリーンなギターフレーズが織り成す闇のハーモニー、ただ歪んでいるだけじゃなくて、ただ美しいだけじゃない。激と美の最終進化形態であり、この音にはただ飲み込まれるしか無くなってしまう。そして最終曲「終末」はクライマックスの連続であった今作の最後を飾る真のクライマックスであり、そして安易な感傷や感動なんて粉々に粉砕する無へと還るしかない絶望の終末だ。今作のそれぞれの楽曲のエッセンスを持ち、そして最後は激音の果てに2本のギターのみになり、それがレクイエムを奏でる。そして作品が終わった瞬間に聴き手はただ取り残されるだけなんだ。



 その音も、言葉も、本当に規格外過ぎるし、正直ここまで凄い作品を作り上げるとは思っていなかった。これまでも新たなる激情・カオティックを鳴らすバンドとしてisolateは圧倒的な存在感を放っていたけど、今作でそれは確固たる物になったと思う。紛れも無くisolateにしか生み出せない作品だし、39分間が本当に一瞬で過ぎ去ってしまう。この激音の洪水の先に安易な救いは無いし、悲壮感溢れまくっているのに「ヒビノコト」なんてタイトルを付けたのは本当に大きな意味を感じたりもする。東京暗黒重速歪音楽団の肩書きはハッタリなんかじゃねえし、これは真髄の音だ。この怪物の音はもう形容すらさせてくれやしない。極限の熾烈なる美しき黒の濁流。もうそれでしかないのだ。



■D'accord/Fjørt

fjortCD.jpg



 何度このジャケットは!?(驚愕)と突っ込まずにはいれないけど、そこはまあ置いておこう。今ジャーマン激情がまた新たな波を起こしている。ジャーマン激情の最重要バンドであるTrainwreckの新作も素晴らしかったが、若手バンドも負けていない。Fjørtもそんなジャーマン激情のホープであり、2014年にリリースされた2ndである今作さは彼等に期待を抱くしかなくなる作品に仕上がっている。



 彼等は激情系ハードコアバンドでありながら見事な洗練を見せるバンドだと思う。3ピースの編成でありながらメロディアスに多種多様に変貌していく楽曲は既存の激情とはまた違う新たな風を感じる。凄い大雑把な言い方にはなってしまうのかもしれないけど、Thursdaの様な硬派でありつつもメロディアスなスクリーモ・ポストハードコアの流れにあるサウンドだと僕は思う。作品の冒頭を飾る第1曲「D'accord」から見事に突き抜ける風。ツインボーカルで聴かせるスクリーモの応酬と、高い演奏技術による鉄壁のアンサンブル。空間的アプローチも随所随所に取り入れ、ポストロック的なフレーズを盛り込みつつ、スクリーモっぽいリフもガンガン使っていく。静謐さに振り切るのではなく、アグレッシブさを武器にしてドラマティックに楽曲を展開させ、あざといメロディと共に泣きに泣きまくりな激情を聴かせる。アンダーグラウンド感は無いから、そこに嫌悪感を覚える人はいるかもしれないけど、ある種のオーバーグランドさを持ちつつも、硬派なサウンドは僕個人としては凄い好きだし、これはあくまでも硬派なハードコアサウンドをより間口を広げた洗練であり、何よりも楽曲の完成度の高さとメロディセンスと演奏技術は単純に手放しで賞賛出来る。
 一転して激情系ハードコア要素が強く獰猛に爆走する第2曲「Schnaiserkitt」も凄く格好良いんだけど、単にアグレッシブなハードコアをプレイするのではなくて、アグレッシブさの中で緻密に組み込まれたフレーズが光り、煌きのクリーントーンの音色をアクセントにしながらも、歪んだギターリフと爆走するビートで攻める!攻める!ちょっとダサ格好良さもあって、それがまたあざとくありながらも良さを感じるリフの応酬からクリーンなトレモロと歪んだベースの静謐なパートで落としてくる当たりもベタベタなんだけど、そんなベタさもこのバンドの良さだと思う。第3曲「Valhalla」はそんな彼らの良さが特に詰まっている名曲で、メジャー感溢れるサウンドでありながら、激情系の持つ感動的なメロディと爆裂サウンドの融和が堪らない。第5曲「Hallo Zukunft」ではスクリームだけじゃなくて、クリーンの哀愁漂う歌まで聴かせてくれるし、まじりっけの無いクリアな旋律に心が豊かになるのは必至だ。
 ポストロック的アプローチや激情・スクリーモの美味しい所取りで多様に音を変化させながら、常に美しい旋律が鳴り響く今作だけど、終盤はまた素晴らしい楽曲が並び、ポストロック方面に振り切ったクリーンな音の前半から、ドラマティックに泣きまくる後半の拳を握り締めたくなる熱さにやられる第9曲「Atoll」、そしてEnvyの様なスケールとアグレッシブさとメロディを聴かせる止めの最終曲「Passepartout」は今作のラストを飾るに相応しい素晴らしい名曲。



 単なる激情では無く、単なるスクリーモでは無く、単なるポストロック方面の要素を持つ音楽では無い。クリーンさを生かしながらも、美しいメロディとアグレッシブなサウンドとドラマティックさを見事に生かし、激情系ハードコアを一つのオーバーグランド感のあるサウンドに仕上げた今作は、ステイアンダーグランドさは皆無だし、そうした原理主義者からは批判を浴びるかもしれないけど、確かな楽曲の完成度の高さと素晴らしさ、何よりも激情系ハードコアをネクストまで持ち上げようとする気迫と力量は賞賛しかないし、素晴らしい作品だ。



■GreenAppleQuickStep(2nd) / GreenAppleQuickStep


GreenAppleQuickStep (グリーンアップルクイックステップ) 12”LP(プレスCD付) [Analog]GreenAppleQuickStep (グリーンアップルクイックステップ) 12”LP(プレスCD付) [Analog]
(2013/08/07)
GreenAppleQuickStep (グリーンアップルクイックステップ)

商品詳細を見る




 不失者の元メンバーも在籍している北海道のサイケデリックロックバンドであるGAQSの2013年リリースの2nd。今作はレコードでのリリースに拘った作品で販売はレコードのみとなっているが、同内容のプレスCDも封入されているので、レコード再生環境の無い人でも問題は無い。BlackSnowFlakeSound(札幌)のRichard Horneがレコーディングとミックス、Bob Weston(Chicago Mastering Service , Shellac)がマスタリングを担当し、生々しすぎる程の質感と音の良さが今作にはある。



 さて1stから実に4年振りのリリースであり、2010年からベースレスの3ピースとなった彼等だけど、1stの頃以上に不器用なロックバンドとなった。彼らの音は洗練はされていない。寧ろ1stの方がある意味では洗練されていたかもしれない。しかし彼等が鳴らすのは内側へと向かう彼岸のロックだ。割礼やちゅうぶらんこといったバンドと並ぶだけのバンドだと僕は勝手に思っているし、よりスタンダードなロックに接近しながらも、より湿り気が増し、よりグルーブに重みが増えた。不器用に剥き出しになったからこその進化を今作から感じる。
 美しく憂いを感じるコードと、変則性とメランコリックさを追求しまくった2本のギターの絡みが美しく、淡々としていながらも、確かな重みをビートに託したドラム、そして心の奥底へと静かに浸透する歌。スロウテンポで展開されているのに、妙に心を掻き毟るのは何でだろうか。そんな事すら考えていても結局どうでもよくなってしまう位に、陰鬱なロックを極めた第1曲「トンネル」が先ず素晴らしい。なんというか本物のサイケデリックロックって、本当にトランス出来る音か、本当に心の奥底をダークに揺らす音だと僕個人は思っていて、ありがちななんちゃってアバンギャルドやゆら帝の表層だけ模倣したバンドはもれなくファックだと思うんだけど、GAQSには当たり前だけどそんな物は無い。確かに揺らぎのグルーブやギターワーク、スロウテンポで割礼の如くゆれつづける音は紛れも無くサイケデリックではあるが、それ以前に正しすぎるロックバンドなのだ。第2曲「徐々に」のブルース進行を軸にしながら、ドープに沈み込んでいく様は堪らないし、もう意識すら放り出してしまいたい、この音に溺れていたい、もうどうでもいい。そんな退廃的な感情すら甘美で美しいと思ってしまうし、ファッションヒッピー共がやっている自称サイケよりもよっぽど危険だ。ギターストローク一つで鋭さを感じさせ、音も無く聴き手を暗殺出来る勢いであろうギターの音と質感が本当に素晴らしい第3曲「僕らの」、タイトルが先ず最高だし、本当にドラムとギターだけで、空白塗れなのに、その隙間に情念が込められた一つの怨歌でもある第4曲「タイコとギター」。どれも最高だ。
 そして前述の通り音が本当に良い。余計な装飾を施さず、加工もせず、ただ生々しいギターとドラムと歌は緩やかでスロウテンポでありつつも、確かな血の流れを感じるし、この音は密室で聴くと本当に鼓膜から心の奥底に響くし、ベッドルームミュージックとしてのエロスすらギターの音の一つ一つに感じてしまう。第6曲「夜のにおい」なんて本当にセックスの時に流したりなんかしたら最高に嵌るだろうし、このドロドロした感触やエロスやロマンこそがロックの真髄であるなと凄く馬鹿みてえに単純な事を思う。最終曲「雨の降る夜」の憂いと悲哀と終末観も素晴らしく、このダウナーさを極めたのがGAQSというバンドなのだろう。



 今作には分かりやすく速い曲は無い、豪快なディストーションギターも無い。荒々しいドラムも無い。寧ろ音は空白を感じさせる物ばかり。しかしたった一人ぼっちの夜を過ごす時、ただ大切な人と血と性欲の対話をする時、この音は最高に嵌るし、血とエロスのサイケデリアの真骨頂だ。僕個人としては本当に割礼級のバンドだと思っているし、この音は本当に側にいて欲しい音なのだ。夜に聴くと最高に嵌るし、その夜の数だけ、このレコードの価値は増えていく。そんな作品こそが本当のロックであり、本物の名盤だ。



プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

タグ別記事表示

日本 ライブレポ 激情系ハードコア アメリカ スラッジ ポストメタル ポストハードコア ポストロック カオティックハードコア ドゥーム エモ オルタナティブロック イギリス サイケ フランス アンビエント ストーナー ネオクラスト ドローン ドイツ シューゲイザー ハードコア ロック グラインドコア プログレ ギターロック ポストブラックメタル インタビュー マスロック ポストパンク デスメタル スウェーデン カナダ モダンへビィネス スラッシュメタル ブラックメタル ギターポップ エクスペリメンタル エレクトロニカ ジャンクロック イタリア インダストリアル ベルギー フューネラルドゥーム グランジ ノルウェー 年間BEST ジェント オーストラリア スペイン アコースティック ポップス プログレッシブメタル ラーメン ブラッケンドハードコア フォーク ミニマル モダンヘビィネス ニューウェイブ パワーヴァイオレンス ロシア ゴシックメタル ハードロック ファストコア ノイズ ニュースクールハードコア フィンランド メタルコア ゴシックドゥーム トリップホップ ヒップホップ 自殺系ブラックメタル オランダ 駄盤珍盤紹介 アブストラクト ノーウェイブ クラウトロック ダブ ヘビィロック パンク ゴシック ダブステップ ノイズコア シンガポール ラトビア ミクスチャー チェコ インディーロック メロディックパンク テクノ ポーランド ドラムンベース ウィッチハウス オルタナティブ アイルランド デンマーク スイス ヘビィネス メキシコ ポジパン ジャズ ヴィジュアル系 アシッドフォーク メタル ブルデス 声優 ボイスCD ドリームポップ トラッドフォーク クラストコア スクリーモ カントリー プリミティブブラック 韓国 ハンガリー アイスランド イラン シンフォニックブラック ギリシャ スコットランド USハードコア ポルトガル ガレージ ソフトロック フリージャズ モダンクラシカル 台湾 トルコ ファンク 

カテゴリー

ブログ内検索

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード

カウンター