■2015年10月
■City With White And Gray/Vanellope
stereo type、passive chordの芹澤氏がフロントマンを務める静岡県三島のインディーロックバンドの最新ミニアルバム。
元々は小田部雄一BAND名義で活動していたが、バンド名変更やメンバーチェンジを経て、ベースレスになりながらも制作された今作はエレクトリックな音を取り入れ、より柔らかで鋭いポップネスとクールネスを鳴らしている。
今作は非常に日常的な音楽が詰まっていると思う。これまでのインディーロックなポップさを持ちつつも、より音の幅を広げる事に成功している。単なるギターポップサウンドでは無く、エレクトロニカ・ポストロック・シューゲイザーな芹澤氏の他のバンドで培った物を柔軟に持ち込む事によって浮遊するポップさの新たな方向性を提示する事に成功した。
繰り返されるフレーズのひんやりとした感触と、電子音の浮遊感の反復が気持ちを徐々に高揚させて、最後の最後はエモーショナルに歌い上げる第2曲「Twilight Sad」から文字通り黄昏の悲しみへ。
ジャキジャキと刻まれて絡み合う2本のギターの鋭さが今作の特徴だけど、それをポストロック的なアプローチに終わらせないのは、芹澤氏のメロディセンスが光りまくっているからだ。この人は本当に体温の微熱感をメロディで表現する事に長けている人だと思う。シューゲイジングな音を取り入れながらも柔らかに爽やかに疾走する第3曲「Sunshine State」は芹澤氏のメロディセンスの良さに溢れ、しかも持ち前の歌でしっとりとした歌物としても完成させている。
第4曲「This Is My Lesson To You」ではシンセメインの進行によりSF(少し不思議)な非日常的空気を出しながらも、その空気を破裂させる轟音に胸キュンさせられ、ギターロック要素が一層色濃くなった蒼の疾走曲である第6曲「Stranger」にトキメキを覚え、最終曲「Stud City」の緩やかなテンポの中でこれまでの澄まし顔な音を一変させて泣きじゃくるギターに胸が焼き付く。
ポストロック要素が色濃くなり、一見クールで平熱な感触の音ばかり続くけど、あざといエモさでは無くて、日常的な体感温度なメロディと音によって、聴き手の体温にフィットする音は、安らぎや癒しをもたらしてくれるだろう。だけど単なる日常のBGMとして消費する事を今作は拒み、日々の生活の中の確かな喜怒哀楽やハッとする瞬間にも寄り添う。
派手な音では無いけれど、その微熱感が聴いてて何だか堪らない気持ちにさせられ、でもやっぱり甘酸っぱさが鼓膜の中から広がってくる作品だ。
■Glutamic Acid/Twolow
As Meias、Kulara、Hellish Life、Detrytusに3LAとメンバーのこれまでのキャリアを挙げたらキリが無いスーパーバンドTwolowの1stフルアルバム。
2014年秋の自主企画での初ライブからの精力的な活動で名を広め、またバンド名からも分かる通り全員がラーメン二郎フリークスという事実も色々話題になったりもしたが、悪ふざけは全く無しで全てが大マジで全マシだ。それは今作の音が全て物語っている。
まるで3ピースの限界に挑む様なサウンドプロダクトがまず現代の小難しさばかり先行するヘビィロックに対する宣戦布告だろう。メンバー3人のプレイはそれこそ複雑なフレーズを叩きつけてはいるけど、極太麺の如く図太い一本の線としてアウトプットし、バンド名は伊達じゃないとばかりに一口目でガツンと衝撃に襲われるだろう。
Twolowを語る上で絶対に外せないのは90年代の混沌とした時代のヘビィロックだろう。それはグランジから始まり、モダンヘビィネスやジャンクロックといった部分にまで渡るけど、Unsane、Today is the Day、先日のワンマンでもカバーしていたTadの様なSUB POPのバンド、ヘビィネス代表格であるHelmet、果てはメタルまでと幾多に渡るエッセンスを調合してコクと旨味を引き出している。
ただTwolowは90年代焼き直しバンドでは無い。タイトに複雑なビートを叩きながらも、躍動感を絶対に失わない塚本氏のドラム、ストイックに太く歪んだベースラインを弾き倒す亀井氏のベース、そしてダミ声で吐き捨てるボーカルと共にリフに次ぐリフで堂々と攻める水谷氏のギター。そこに余計な味付けは全く無いし、素材の味を最大限に生かし、現行のヘビィロックに対して真っ向から立ち向かい、だけどそれを90年代から続くヘビィロックを2015年の物として表現しているのが今作のキモだ。
「Turning On」から全マシのリフがダークネスを振りまき、リズム隊の音が内蔵を圧迫していく。空研的なエフェクトはほぼ使用せずに、生々しさ重視のレコーディングやミックスが施されるライブ感、ベタな言い方だけど、鉄と血の匂いが充満する音がTwolowの持つ90年代ヘビィロック感の正体だろう。
疾走感がメジャー感を生み出す「Lost Inからドゥーミーさすら匂わせ、Twolowの武器であるミドルテンポの業火の真骨頂「Article #9」、そしてめくるめくリフとビートのドープさからラスト1分の疾走によって貪りながら食った、完飲!!って感じの絶頂感と焦燥感と使命感という衝動で締めくくられる「Dead Man Working」まで素材の味と体に悪い成分をてんこ盛りにした極上の一杯ならぬ極上の一枚だ。
バンド名は二郎だし、自主企画名は「ニンニク入れますか?」だし、アルバムタイトルはグルタミン酸だから知らない人は悪ふざけしたラーメンバンドだと勘違いしてしまうかもだが、それはギルティだ。
全てが大マジじゃなきゃこんなシリアスでダークなヘビィロックが生まれる訳が無いし、オルタナティブロックっやハードコアのリスナーは勿論だけどメタラー兄貴が聴いても大満足な一枚だろう。
REDSHEERやBB等、90年代から時代を作り上げた猛者がその時代の空気感を受け継ぎながらも新たな音を創造する現在、Twolowもそんなバンドだし、腹ペコ野郎共は食い逃してはいけないのだ。
■TOBIRA/ele-phant
ABNORMALS、KING GOBLIN、exBUCKET-Tのメンバーによって結成されたギターレス3ピースele-phantの待望の1stのフルアルバム。
ハードコアとかメタルとかヘビィロックとかその他諸々のジャンルは確かなラベルになるけど、時にそのラベルは必要ないと思わせる作品やバンドは本当に素晴らしい物を生み出すけど、今作はそんな作品だ。
カテゴライズはドゥームだしサイケであるけど、そのカテゴライズは逆にele-phantの本質を掴む上では邪魔だとも思う。ロックという言葉は非常に漠然としているけど、今作は「日本語ロック」の新しい金字塔だ。
音楽性は確かにドゥームであるけど、ドゥームやストーナーの根源がブルースであるのと同じで、今作はブルースでもある。曲のレンジが本当に広いしハードコアからヘビィネスからサイケまでと、その触手は多くの物へと侵食しているが、散らかった印象は全く無い。
ギターレスという編成で、歌とベースとドラムという最小限の編成で生み出す最大の効果。それは割礼やATATHEMAが持つミニマルさにも近いし、この3人だけで全てを成立させてしまってる。
キラーチューン「逃げ水」で先ずはそのヘビィなメランコリックさにガツンとやられるだろう。ベースとギターの両方の役割を音を自在に変化させる事で兼任し、シンプルなリフだけで全てを語り、空白を聴かせる要素もありつつ、ダイナミックにロックなビートを叩くドラム、何よりもcomi氏のボーカルが素晴らしい!!時に叫んだりもしながらも圧倒的な歌唱力と表現力で世界を生み出すボーカルは存在感しか無いし、代わりになる人が全くいない。
ドラムとベース、たまにシンセだけで音が作られているって書くとコアなフリークス向けな音だと勘違いされそうだけど、その楽器隊が普遍性とマニアックさの中間地点をすり抜ける音を生み出し、comi氏の歌が一気にメジャー感を演出する。それでいて色気と渋さもある。第3曲「アクマニセンセイ」は今作でも特にハードコア色が強いけど、単なるハードコア的表現ではなく、ハードコアの瞬発力にオルタナティブなうねりを加えて堕ちていく。
今作でも特に素晴らしいのは第4曲「すぐ」、第8曲「Black Room」、最終曲「扉」だ。静けさの中でハードボイルドなブルースを歌い上げる「すぐ」はele-phantのミニマルさの真骨頂であり、「Black Room」の往年のサイケデリックロックの空気感と密室感から万人が泣くバラッドへと押し上げていく様、約9分に渡って激音と混沌の中で悲しみと手を取り合う「扉」。陳腐な言い方だけど最高だ。
一見飛び道具的な編成ではあるけど、既存のドゥームやサイケとは全く違うアプローチを取り、リフで押し潰さず、リフを聞かせ、メロディに溢れ、躍動で踊らせ、そして最高のボーカリストによる歌で心を奪い取る。
日本語ロックはある時期を境に停滞したと思って諦めている人にこそ今作は聴いて欲しいし、寧ろティーンエイジな世代にも、昔のロックにしがみついている人にも聴いて欲しい。似ているバンドゼロ、斬新でありスタンダード、だけど取りつくかれたら逃れられない「悪魔の歌」がそこにある。歌謡エクストリームミュージックここに極まり!!
■ピカデシカ/ネム
大阪のサイケデリックロックバンドであるネムの待望の1stアルバム。前作EP「デート盤」ではサイケデリックロックを基調にポストロックなテイストを絶妙に盛り込んだ独自の捻れを展開していたが、今作はよりアプローチを広げてニューウェイヴやジャンクロックなテイストも加わった。
よりメジャー感溢れるストレートな感触なロックサウンドへとアップデートした快作。だけど幾多のエフェクターを駆使しまくった極彩色の音像もより進化を遂げている、王道ロックな風格を携えながらもより深さを手にしている。
ネムは難解な振りをする自称サイケとは一線を画すバンドだったが、今作で手にしたメジャー感は大きな武器になると思う。第1曲「The Sun」はそれこそネムが元々持っていたズブズブと沈んでいく内側に迫るロックのダークネスに溢れているし、ざらついた音質で空間的エフェクトとディストーションを配合させた歪んだ時間軸のグルーズに陶酔してしまうけど、よりダイナミックで肉感的な音にもなったのが今作でのネムを進化の一つだろう。
一方で着色料ゴッソリ使ったファズギターによるジャンクロック・ニューウェイヴな空気の第3曲「SATISFUCTION」は横乗りのグルーブと縦に切り裂くギターフレーズの金属的な音が心地よく共存している。よりノーウェイブになった第4曲「残像」は反復フレーズの機械的なアンプローチも盛り込む。
「デート盤」にも収録されていた楽曲の再録である第5曲「三千世界」は反響するギターの音色が楽曲の色彩を変えながらも、繰り返されるベースとドラムのグルーブの快楽に沈んでいく名曲だが、より音の輪郭が明確になった事によって、より刺さる音になっているのも大きい。
ジャンクさとドープさで退廃的空気をより加速させる第6曲「幸福論」、そして終盤の第8曲「SLASHBOY」と第9曲「牛歩」でより刺々しくエロティックなロックを展開し轟音渦巻く全9曲を終える。
今作で個人的に特に好きな要素はフロントマンの音無氏の歌をより強く感じさせる曲が増えた所だ。時折ロックスター感のあるシャウトもかまし、クールでセクシーで浮世離れしたオーラをそのボーカルからより強く感じる。コアなフリークスだけじゃなくて、世のロック女子をみんな虜にしてしまうだけの声を音無氏は持っているんじゃないかと勝手に思っていたりもする。
勿論バンドの音の方もより明確で分かりやすいアプローチも増え、ノリやすい曲も増えたけど、それが余計にネムの持つ内側へと堕ちていく感覚を際立たせている。同時に確かに外側に向けてもアプローチをしているし、全方位に向かってサイケデリアを放出している。ロックが持つ非日常的世界をネムは描いている。
割礼、ゆらゆら帝国、dip、THE NOVEMBERZ、ちゅうぶらんこ辺りのバンドが好きな人にはマストな一枚。その情念に焼き尽くされて中毒になってしまうだろう。
■Extreme East K.55 -二万電圧 5th Anniversary-(2015年10月18日)@東高円寺二万電圧
しかしながらハコ企画でこれだけ強烈なバンドを集めてしまう辺りは流石は二万電圧といったところで、このメンツがこれから集まることはないんじゃないかっていうプレミアムな夜。僕自身旧20000V時代から大好きなハコでもあるので今回は二万電圧の五周年を祝うために駆けつけさせて頂きました。
・TRIKORONA
ハナから不条理だけを音にするパワーヴァイオレンスTRIKORONAだ!!
30分の持ち時間で全12曲、是枝氏の簡単なMC以外はノンストップでショート&ファストなケミカルで毒物だらけのギラギラした爆音ハードコアだけで勝負を仕掛ける。
服部氏が暴走し続けるドラムで爆撃し、門馬氏はスラップと変態的な動きばっかり繰り返すベースで頭を混乱させ、是枝氏のファズギターがリズム隊が作った歪過ぎるサウンドを更に極彩色にコーティングし、小山氏は散文的な言葉を叫びだけで血の色で塗り潰す。
パワーヴァイオレンスはこの世に数多く存在するけど、TRIKORONAが鳴らすパワーヴァイオレンスは暴力じゃ無くて、この世の理不尽な不条理をブチ壊す為の不条理であり、これを単なる音の暴力で片付けてはいけないのだ。
ラストには新曲もプレイしたが、爆音のマッドサイエンティストっぷりはよりパワーアップし、しかしインプロ的なアプローチを取り入れて、不穏な静寂にもならないけど、バーストもしない沸騰寸前のギリギリの感覚で五感が麻痺させられてしまった。ライブ終わったら案の定耳が爆音でやられてしまったが、そこには確かなカタルシスもあった。
・isolate
続いて爆音の轟音ハードコアを放つisolateだ。
先日の苔口氏流血ライブは最早伝説になってしまったけど、この日は苔口氏はじめ誰も怪我なく無事に終了する少し落ち着いたライブだったかな?いや落ち着いたってのは嘘だし、isolateの場合は安定したライブのクオリティを保ちながらも、結局はメンバー5人の放出具合は常に限界突破してしまっているのだ。それが平常運転ってだけの話でしかない。
今回は何処かじっくりとオーディエンスに音を聴かせる感じ(あくまでもいつものisolateと比べて)のライブだったのもあるけど、このバンドは音のバランスが本当に良い。
安藤氏のボーカルはディストーションかかりまくり、ツインギターの轟音は強烈、苔口氏のベースも邪悪な低音をブチ撒け、池谷氏は鉛の降る様なドラムを展開。だけど全ての音のバランスが良いし、爆音だけど耳に自然と馴染むといった感じだ。
ラストの「終末」は爆発から最後の最後のツインギターのアルペジオまでドラマティックな世界を生み出し、激と美のバランスに心が震えた。
今年はライブ中心の活動のisolateだが、来年また更なる激音で全てを凌駕してくれるだろう。東京暗黒重速歪音楽団の二つ名に偽りは無し!!
・REDSHEER
前日のwombscape企画に続いて二日連続でのREDSHEERである。大好きなバンドのライブを二日連続で観れるなんて幸せだ。
セット自体は前日と全く変わらなかったけど、この日はテンションが振り切っていた前日のライブとはまた色々とトーンが違って、REDSHEERの魅力である激音の中にある引きの部分が目立ったライブだった。
頭の「Silence Will Burn」こそテンションが振り切っていたけど、その熱をそのままにプレイした「Blindness」はよりじっくりと聴かせる物であったし、静から激へとバーストする新曲は、激の部分よりも静の部分を際立たせるトーンでプレイされていた。
ラストの8分間に及ぶダークネスの衝突地点「Curse from Sad Spirit」は前日に比べてより音の色彩が増えていたと思う。3ピースの限界に挑み続けているバンドだからこそ、最小限の音でありったけの情報量と熱量で攻めるライブは何度観ても燃える。だけど、その中で熱情の裏側にある知性がより表現力高くアウトプットされていたのも印象深い。
前日と感想こそ被ってしまうが、やはりREDSHEERは一筋縄じゃいかない。複雑骨折を繰り返した末に生み出された美しさは人間の複雑で面倒な感情を表現している。ハードコアの先にある誰も触れなかった「何か」にREDSHEERは迫っているのだ。
・BACTERIA
ノイズとキャッチーさとダンサブルさを今尚提示し続け、フォロワーすら生み出さない孤高の存在BACTERIA。昔から全くブレずに自らのオリジナリティだけで勝負するこのバンドもまた替えの無い存在だ。
シューゲイズするノイズとダンサブルなビートで序盤からフロアを踊らせまくり、強烈な印象を与えながらも、キャッチーでメロディアス、ノイズギターが疾走する非常にテンションの高いアンサンブルに心躍りながらも、その中にエロスと妖しさをしっかり滲み込ませるからまたドキドキしてしまう。
中盤にプレイしていた長尺曲は一転して終わりなく繰り返されるシンセの音色と共に悲壮感溢れるメロディとボーカルで悲しみの世界よこんにちは。徐々に徐々に音が浸透し、感性を緩やかに侵していくホワイトノイズと共に、夢の世界にいる様な。でもその世界が終わってしまう様なワンダーランドな虚無感に心がジクジクと痛くなってしまった。
でもラストはしっかりアッパーに盛り上げてライブは終了。一年振り以上にライブを観たけど、BACTERIAの持つ80年代末期から90年代初頭のロックのロマンは2015年になってもブレずにパワーアップし続けているのである。
・BB
トリはBB、ここまでの4バンドの強烈すぎるライブに頭は完全にやられてしまってはいたけど、この日はBBが全てを持って行ってしまったと思う。
二万でのライブは初だったらしいが、BBの音は二万の音響と最高の相性を誇り、ただでさえカオスなヘビィネスがよりカオスな爆音仕様でパワーアップし、楽器隊の音が突き抜けるノイズとして鼓膜にブチ込まれていく。
ほぼ後光のみの照明がメンバー四人の出で立ちをより神々しくし、赤を基調にした照明はまるでBBの持つダークネスを象徴しているかの様でもあった。
バキバキに歪みまくったベースも、トライヴァルでありながら馬力が凄まじいドラムも、激昂を音にしたノイジーなギターも全てが塊として投げつけあっれていくのに、不思議とBBの持つダークなメロディが情景として脳内で想起されるのはやはりRyuji氏のボーカルの持つダークなエロスが各楽器の放つ赤黒い音とシンクロし、より深く深く沈んでいく音を生み出しているからだと思う。
最初から最後までMCは全く無し、その音のみで全てを語り、最後の最後は脱出不可能なヘビィネスの嵐の中で全てを突き放してライブは終了。
BBはライブを観る度にパワーアップし、想像の斜め上を余裕で超える音だけで観る物を圧倒する。ヘビィロックとハードコアの理想形をBBは毎回見せ付けてくれる。この焦燥と絶望の音はBBにしか到達出来ない領域だ。他では絶対に味わえない。
5バンドに渡って最高の爆音だけを浴び続ける事が出来た非常に幸福な夜、いつもより女性のお客さんが多くていつもの二万とどこか雰囲気が違ったりもしたけど、二万電圧は誰が来ようと爆音バンドで迎え撃つだけなんだろう。
改めて二万電圧五周年おめでとうございます。これからも数多くの激音の夜を生み出し続けて欲しい限りです。僕は東高円寺二万電圧が大好きです!!
■籠の中の黒い心臓 vol.11(2015年10月17日)@小岩bushbash
現在多方面で注目を集めるエモヴァイオレンスsto cosi cosi、1stアルバムをリリースし精力的にライブを重ねるREDSHEER、そして大阪からSTUBBORN FATHERとSeeKという化物バンドを招聘し、ハードコアでガッツりと固めて来た。
言ってしまえば東京と大阪の新たなる激音バンドのガチンコ対決な日だったし、一バンドたりとも休まる暇なんて与えてくれないイベントだったと言える。
・sto cosi cosi
ボーカルの方の少し気の抜けそうな「行くぞー!!」って掛け声と共に先ずはストコジのライブから。
killieやTialaといったバンドが生み出すハードコアのスリリングさをこのバンドは持っているし、日本でここまでピュアなエモヴァイオレンスを鳴らしているバンドは他に中々いないけど、ライブでの瞬発力は抜群だ。
killieがライブバンドなのは、一瞬たりとも見逃してはいけないという緊張感の中で終わりなく音を放ちまくってくるからだと思っているけど、ストコジもそんなライブを展開しているし、ボーカルの方のナード感全開なパフォーマンスも含めて目が離せないライブをするバンドだ。
合間合間に「イェーイ!!」と「行くぞー!!」を連発し、妙に気が抜けそうな気分になりつつも、演奏面は全く隙は無し!!次々と繰り出される曲はショートでありながら必殺のキメの連続で、見事な絶頂感の連続に観ている側がアクメをキメるしか無くなる。
そして曲間以外全く気が抜けないまま灼熱のライブは終了。いきなりハートに火を付けまくってくれた。
・SeeK
ギターレスになってツインベースサウンドにより磨きがかかりまくっている大阪が誇る激重破滅的美暗楽団ことSeeK!!東京でライブをする機会が本当に少ないバンドなので、こうして東京で観れる事がまず嬉しい。
半年振り位にライブを観たけど、今後リリースされるだろう曲も含めてツインベースの重さはそのままに、二人のベーシストがよりメロディアスなフレーズを奏でる事が増えていたのが驚きだ。
ミドルテンポの中で前へとつんのめっていくドラムが曲の体感の推進力を上げながらも、ツインベースが最早ツインギター状態とも言える繊細で複雑な絡み方を続け、音のソリッドさだけではなく、SeeKの元々の持ち味である繊細で暗く退廃的な空気感もパワーアップしていたと思う。
何よりもボーカルのSuguru氏のボーカルは何度ライブで聴いても凄い。圧倒的声量でドス効きまくったシャウトで殺しにかかってくるけど、そんなヴァイオレンスさの中には高い歌唱力に裏付けされた感情の機微の表現力や歌心も感じるから、Suguru氏のボーカルは何度聴いても心臓に突き刺さる。
少し長めの曲を中心とした全4曲、蜷局を巻く黒蛇のヘビィネスは全然ブレずにパワーアップしていた。
・STUBBORN FATHER
同じく大阪が誇るハードコアヒーローSTUBBORNはSeeKとは違って、より直情的なライブを展開、前にも増して攻めしかないライブを繰り出す様になっていた。
今回はここ最近は定番化していたANODEの「隠された太陽」のカバーはプレイせずに、「裏側」、「未定」、「降伏フィルム」、「痣」、「創造の山」と考えられる限り最高のセットでのライブとなった事からバンド側の「ブチ殺してやる!!」っていう意気込みも全開!!
この日のSTUBBORNはCamel大橋氏のドラムがキレにキレまくっていたと思う。繰り出されるドラムの音が完全にヤクザみてえな暴力性しか無くて、いつも以上に前のめりに攻めるから、他の楽器隊も見事に攻めの音へと引っ張られて、より速く残虐になった音に加えて、鋭さが増し、シャープで身軽なのに、パンチ力はヘビィ級って感じのエモヴァイオレンスの理想形とも言える音しか無かった。
強度と速さが増幅し続ける音の中と蛍光灯のみの照明の中で叫び狂うshige氏のヒーロー感も決まりまくっていて、ヒーローというか最早神秘性すら感じる出で立ちに男の子なので震えちゃいました。
終盤の「痣」から「創造の山」の流れはやはり無敵!!やっぱりこう何度も自然に拳を上げてしまうライブをするSTUBBORN FATHERは紛れもなく「本物」のバンドだって話だ!!
・REDSHEER
大阪バンドの激アツなライブに触発されて東京が誇る3ピース暗黒混沌ハードコアREDSHEERもかましにかましまくっていた!!
プレイした曲は4曲と決して多くは無いけど、現在のREDSHERRが持つ激昂とその中の愛憎を吐き出すライブとなっていたと思う。
「Silence Will Burn」はやっぱり頭にプレイされちゃうと一気に体の血が駆け巡る衝動に襲われるし、「Blindness」は激の中の歌心が黒く輝く。パフォーマンスに仕掛けなんて無いし、ナイスミドル3人が爆音を放つ飾らないライブは剥き出しのままであるからこそ胸に来る物がある。
7月の二万でのレコ発以来にプレイされた新曲はドラムパターン等のアレンジも大きく変わってよりパワーアップして再び日の目を見たけど、不気味に蠢くベースとドラムのみの始まりから、高まった熱が爆発して刻みに刻みまくるギターで惨殺!!「どんな譜割りしてんねん!!」って複雑極まりないドラムを絶頂した顔でパワフルに叩くrao氏もギア入りまくり!!この一筋縄じゃいかなさこそがREDSHEERの魅力だと思う。
「殺るだけ殺って死んでやるよ!!」ってMCで語っていた小野里氏も、その言葉通りに更なる放出をボーカルとベースで体現、ラストの「Curse From Sad Spirit」でオーディエンスを単なる放置死体に変えてライブを終了。いやはやこのナイスミドルはどこまで初期衝動をドス黒く燃え上がらせるのだろうか…
・wombscape
トリは主催のwombscape。「新世界標本」リリースからガッツりツアーを回っていたけど、9月のREDSHEER企画以上に4人の音が固まり、まだ手探り感もあった現体制初期のライブとは見違える程になった。
この日もセットは「新世界標本」を再現するといった内容だけど、冒頭とラストのSEも含めて、wombscapeの世界へと引きずり込む強さと解像度の高さを感じるライブだった。
「真白な狂気」と「新世界標本」のカオティック色の強い2曲では楽器隊の音が這い回る蠢きを体幹させられたし、情報量の多いベースと殴りつけるドラムと低域ガンガンに出しまくっていくギターが本当に重苦しいし、Ryo氏のボーカルやパフォーマンスも狂気に身を任せまくる。
「正しい愛が正しい絶望に変わるまで」は今までのwombscapeには無かったタイプの曲ではあるけど、Ryo氏が歌い、楽器隊もwombscapeの持ち味である視覚的情景を鮮やかに描き出し、その美しさを最後の最後で崩壊させる絶望感が生々しさや肉々しさや血腥さといった言葉が似合うまでにダイナミックな表現へと昇華していた。
ラストのSEが流れて客電が点いても、ステージから目が離せない緊張感に襲われ、そのSEが終わってベースのwataru氏が一言「ありがとう。」と言ってようやく現実に帰って来れた。それほどまでに音とステージングで引き込むバンドへとツアーを経て進化していたのだ。
今回のwombscape企画はハードコアで固めながらも、全5バンドが強烈な音で小岩を染め上げていたし、決してみんなで盛り上がるタイプでは無く、寧ろ突き放すタイプのハードコアバンドばかりではあったが、突き放されるからこそよりそれに縋ってしまいたくなる様な音はまた魅力的であるし、僕はやっぱりそんなバンドに心が惹かれてしまう。
12/23にはアンチノックで実に2年半振りの開催となる「瞼ノ裏」で長いツアーのファイナルをwombscapeは迎える、その時は一体どんな世界と光景が見れるのかって想像するとやはり心の震えが止まらない。
■The Consciousness Of Internal Time And Space/WonderLand

グランジを起点にしながら何故こんなにも心を不安にさせる新次元へと到達してしまったか…
WonderLandはメンバーがまだ20代半ばと若手な3ピースバンドだ。二年前にリリースされた1stEP「Welcome To Woderland」では良くも悪くも正統派グランジといった音楽性だったが、僕が初めてヘブンズで観た一年前はその面影は完全に消滅し、ポストロックやドゥームやサイケといった要素を盛り込んだ尖りまくった狂気を放出していてド肝を抜かれた。
その当時の曲すら廃棄し生み出された今作は現在のWonderLandの異常さが凝縮された作品になっている。フロントマンのKohey氏が自らレコーディングを進め完全セルフプロデュースで生まれた今作は、全7パートではあるが26分で1曲という大作志向に仕上がっている。
とこうして書くと「MONOとかmogwai系のポストロックなんだろ?もう掃いて捨てる程いるよ。」って思うかもしれない。しかしそんな考えは完全に裏切られると思う。イントロの出だしのアルペジオこそ「それっぽさ」はあるけど、あくまでも間口を広げるための罠でしか無い。
美しいアルペジオが徐々に不協和音に変わり、轟音を一瞬だけバーストさせてから、ピアノとギターのクリーントーンの音色が、頭を混乱させる旋律を奏でていく。序盤から既にその兆候を感じさせていた不気味なコードはより明確に姿を表し、無機質に奏でられるピアノも余計に不安にさせる。タイトに叩きつけるドラムとベースが曲の輪郭を保ちながらも、メロディがその輪郭を侵食していく。
中盤ではトランペットの残響音がファンファーレの様に響くけど、それも余計に心をざわつかせるし、そんな真っ暗でも明るくもない、深夜3時の空気感からディストーションのギターが響いた時はやっと街灯を見つけた気分になる。
そしてそんな不協和を裏切るのが後半だ。マスロック調だけど、グランジ感のあるギターフレーズと、より力強くなったビートが袋小路から新しい入口を作り出す.。
完成されているのかされていないのか、ポジティブにもネガティブにも振り切れない燻った感情を描いた様な17分を経てのラスト9分は本当にあっという間だ。
ビートも整合性を手にし、不協和音を相変わらず奏でながらも爆発するディストーションギターと今作でも特に美麗のメロディを奏でるクリーントーンの対比、前半の17分が様々な楽器を導入し、混乱していく感情を描いているのなら、ラスト9分は3ピースのバンドサウンドで限界に挑む様な力強いリフとビートによる祝福の時間。ラストの轟音が終わった瞬間にやっと心が安らぐだろう。
極端に難解さに走ってないし、取っ付きやすさもかなりあるけど、今作を通して聴いて感じるのは「居心地の悪さ」と「居場所の無さ」だ。予備知識無しで今作だけ聴くとグランジ要素なんて無いと思う人が殆どだと思うし、轟音系ポストロックのテンプレートを破壊しようとする音だと感じるだろう。
でもそれは正解だけど違うし、彼らはあらゆる既存のテンプレートに対して唾を吐き、スタイルだけをコピペする事を全否定する道を選んだに過ぎない。ハイプでしかないグランジフォロワーには絶対に生まれないアイデアと音が詰まっているけど、でも今作を聴いて感じる「居心地の悪さ」はオリジナルグランジの先人たちが歌っていた事と同じだ。
今作には言葉は存在しないけど、その音で同調圧力の無意識の暴力と戦っている様にも見えた。「こんな不気味な音でWonderLandを名乗ってるなんて!!」と思う人もいるかもしれないけど、まだ見ぬWonderLandへとたどり着くまでのテーマソングでもある。
そしてその先のWonderLandが描く世界は本当に想像が出来ない。とんでもない若手が現れたって事だけが事実だ。
また今作はiTunes Storeにて配信販売の形でリリースされている。こちらのページにてチェックして欲しい。
■GRIND FEST 2015(2015年10月11日)@TRINITY SKATE PARK
案の定今年もラウパ二日目に被せての開催となったが、東京の最北端こと板橋区浮間舟渡のスケートパークでのお祭り騒ぎ!!
今年は昨年以上にグラインドフェスと銘打ちながら殆どグラインドのバンドが出ないという事態だったけど細かい事は良いんだよ!!音楽とスケボー文化のリンクだけではなく、フードにディストロにアパレルにと盛りだくさんの内容。
僕自身は近場に在住しているのもあったし、この日は他にも魅力的なライブが多かったけど、今年もバッチリと足を運ばせてもらいました。案の定TRINITY付近は見事に黒い人たちで一杯という昨年同様に大盛況だった今年のGRIND FEST、普段のライブにはない非日常の宴でした!!
・GUEVNNA
先ずは新たなるストーナーロックGUEVNNAから。いきなり渋いストーナーかと思わせてそうならないのがGUEVNNAである。
この日は4曲といつもより短めのセットではあったが、バンドの中でも特にアッパーなパーティチューンのみで攻めるというアゲアゲなセット。
煙たいだけじゃ無くて強靭な楽器隊のグルーブ、一発目の音だけで持っていくTemi氏のドラム、この日もキメキメだったRyo氏とディスコティックストーナーは日に日に完成度が高まっている。
今回もプレイした四つ打ち導入ディスコな新曲はGUEVNNA史上最もアッパーでありながら、しっかり重さもアピール。ムーディな要素を完全に取り払ったライブだからこそ、GUEVNNAの持つキャッチーさがモロに出たライブとなったし、そのグルーブに自然と体が動いた。
既存のドゥーム・ストーナーを裏切りながら、行き着く先は未知なるパーティであり、ヘビィでありながらも雄弁で親近感溢れつつ、ロックンロールなライブを堪能した。
・ Fastkill
暫くライブを観ない間に3ピースになっていた埼玉スラッシュメタルFastkill。3ピースになってからのライブは初めて観たけど、メンバーが減っても音は全くの衰え無し!!
高速で刻まれるギターリフと爆走ビートだけで攻める真のスラッシュメタル。セッティング中のトラブルでライブが始まるまでは少しグダグダな空気にはなってしまっていたけど、いざライブが始まったらそんな空気は完全にぶっ壊された。
オリジナルメンバーであるベーシストの安藤氏の死を乗り越え、ベースボーカル3ピースになったけど、そんな悲劇を乗り越えてパワーアップしたFastkillは速いぞ速いぞ!!前よりも更に速いぞ!!
スラッシュメタルでありながらグラインドフェスで一番の速さを記録するであろうライブアクトは休まる暇無し!!無敵のスラッシュメタルがそこにあった。
・Butcher ABC
Fastkillの激速スラッシュメタルの勢いそのままにお次は早くも登場のブッチャーだ!!
デスグラインドというカテゴライズなんて不要!肉より魚だなパーティメタルは血腥さは相変わらず存在しているライブではあったけど、ここで一気に会場のギアをフルスロットルにしてしまうのがブッチャーの凄いところだ。毎度お馴染みのアンセムの数々と関根氏の煽りを受けてモッシュピットはこの日一番の盛り上がりを記録。
音はガッツりデスメタルしまくっているのに、キャッチーでアッパーな空気を生み出せるのはブッチャーだからこそ。
ブッチャーはメタルであると同時にグラインドでありパンクであり、クロスオーヴァーする自由自在なサウンドスタイルは思想もスタンスも超えた楽しさに帰結していた。
3バンド目と少し早めの出番ではあったが、この日の一番の盛り上がりは間違いなくブッチャーだったし、バンドの持つポテンシャルはやはり計り知れない。血湧き肉躍るデスメタルだ!!
・Su19b
ブッチャーの盛り上がりを完全に破壊する地獄の時間だ!神奈川発奈落終着のブラッケンドパワーヴァイオレンスSu19bだ!!
いつもよりアンプのキャビの数も少ないし、ボーカルマイク以外はスピーカーを通さないアンプ生音という環境でのライブの筈なのに、明らかに音圧がおかしいし、音域も重い。
いつもより機材少なめの環境でのライブだったからこそ余計に音の輪郭がはっきりと見えたし、Su19bは音量的な意味で制限を食らった状態であっても、十分なドス黒さを発揮出来るバンドだと改めて再認識。
普通に照明がある明るい中で観るSu19bってのも不思議な気分だったが、どんな場所でも激速と激遅の乱打のパワーヴァイオレンスはブレないし、精度を増していく。
いつも通り演奏時間自体は決して長くないライブではあったけど、理不尽な音の暴力に漆黒の世界観を加えた独自のパワーヴァイオレンスをいつも通り展開しただけでありながら、それが強烈な致命傷を喰らわせる暴力装置として機能していた。
・DUB 4 REASON
グラインドフェスにダブのバンドが出ても良いじゃない!!岐阜が生み出した突然変異型ダブDUB 4 REASON!!
3ピースというシンプルな編成で、出音も余計なギミックをかまさずシンプルに音のグルーブの重さで勝負だ!!なダブサウンドはやけに人懐っこさもあり、ヘビィでありハードコア的、曲も意外と長くない4分台の丁度いい塩梅。MCではグラインドフェスや出演バンドに対するリスペクトを何度も口にし、その真摯さもかなり好印象。
レーザーにスモークという演出もあって、ヘビィなダブサウンドに自然と体が動き、多幸感に満ち溢れながらも、冷たい音の連続で脳はガンギマリ待ったなし!!
今回全く予備知識無しで観たし、その評判は色々な所で聞いていたけど、体と心が完全に持っていかれた!!個人的に今回のグラインドフェスのベストアクトだと思う。
・GO-ZEN
今回の数少ない(グラインドフェスなのに)グラインド枠、ゴアグラインド日本代表GO-ZENの出番だ。
恥ずかしながら音源は聴いてはいたけどライブを観るのは今回が初めてなんですが、ライブだと音源よりもずっとキャッチーに音を放出しているから不思議だ。
かといってGO-ZENの持つ下劣さが後退しているかというと違って、ゴアグラインドのまま同時にロック要素もしっかり盛り込んでいるのが大きい。
ツインボーカルの下水道ボイス、ノイジーに炸裂する音とブラスト、極めつけはダイゴ氏が「ネック折れるから見てて。」とギターを弾いたままランプへと移動し、そのまま華麗にスケボーを決めるという離れ業まで!!その瞬間は今回のハイライトとも言える光景だったし、ブチ上がらせてくれた!!
・zenocide
そして止めはzenocideだった。アッパーな空気をブチ壊す重低音、会場の照明も少し暗めになって雰囲気抜群の中で、近隣住民から苦情が来るんじゃないかって心配になるエグ過ぎるギターとベースがサウンドチェックの時点で放出されワクワクが止まらない。
zenocideは何度ライブを観ても、その暴君具合に惚れ惚れする。スラッジ・ドゥームからパワーヴァイオレンスまで、ショートかつストイックに次々と繰り出される曲はクリーンさなんて皆無だし、ドス黒いというよりもダーティという言葉がzenocideには似合うと思っている。
この日もライブ自体は20分もやらずにあっという間に終わってしまったけど、より磨きがかかったヘビィネスで攻める濁流に勿論ガンギマリになりました。
今年も多くの人が集結し、お祭り騒ぎだったGrind Fest。音楽は勿論それ以外のカルチャーともリンクし、手作り感溢れるアットホームな空気もあり、今年も存分に楽しませて頂いた。
Grind Festは大人の学園祭的なノリでおれからも毎年この時期に開催を続けて欲しいし、来年も開催されるなら絶対に足を運ばせて頂くつもりだ。
■Twolow 1st Album 『Glutamic Acid』 Release Event -One Man Live-(2015年10月9日)@dues新宿
今回はそのリリースイベントとなるワンマンショウ。「Glutamic Acid」購入者はドリンク代のみで入場可能な嬉しい無銭イベント。金曜の夜の少し遅い時間にスタートという華金に一杯引っ掛けてヘビィロックという楽しい遊び方が出来るのは個人的に嬉しい。
15分程押して開場となったが、ライブスタート前にはduesは大分人で一杯になっていたし、平日ながら大盛況のイベントとなっていた。それだけTwolowが大きな関心を集めているのも嬉しい。
ライブは21時15分頃、メンバー3人のサウンドチェックが完了し淡々と始まった。
TwolowはAs Meias、Kulara、Hellish Lifeといったバンドでキャリアを重ねて来たスーパードラマー塚本氏を中心に、Detrytusの亀井氏、3LAの水谷氏というメンツのスーパーバンドであるが、それぞれのキャリアを良い意味で裏切る音を鳴らすバンドだ。
モダンヘビィネスという括りで語られる事が多く、一見するとそれらの音楽に対するリヴァイバルなバンドだと思ってしまうけど、それは大きな間違いだ。
イントロのSEからまずはいきなり新曲からスタート。兎に角音が太い!!塚本氏はシャープなドラムで音とビートに切れ込みを再現無く入れ、亀井氏のベースは歪んでソリッドかつドンシャリな音で攻める。そして水谷氏の鋼鉄のリフを刻み倒すギタースタイル。感傷の余地や共感といった部分を徹底的に排除したリフとグルーブの漢気は一聴すると突き放す音ではあるのかもしれないけど、一見身を任せ難そうに感じるリフとグルーブはライブが進行すると体に自然と馴染み、その音の快楽が徐々に上がっていく。
ミドルテンポでのヘビィネスとダークネスの中で渦巻くヒリヒリとした緊迫感を打ち破る様にプレイされた「Lost It」という疾走曲はセットの中では清涼剤的な役割を果たしながらも、ドライヴィンな鋭利さで容赦無く突き刺していく。ドゥームの領域に片足踏み込んだ長尺曲「Article #9」は今回のライブの中でも特に不気味な空気を充満させプログレッシブな曲展開で観る人の脳細胞を壊死させていく。
水谷氏と塚本氏の簡単なMCを挟んで今日の為のサプライズとしてプレイされたTADのカヴァーはTwolowの音楽性にはモダンヘビィネス以前にグランジが確かなルーツとして存在している事を再認識させる名カヴァーであった。twolowが単なるヘビィネス回帰で終わらないのは、そこに確かなグランジの血が流れ、ポストハードコア・メタルという弦楽器隊2人のルーツも配合され、それを最もシンプルで冷徹な方法でアップデートしたからだと僕は思う。
徹底して余計な贅肉を削ぎ落とした3ピースの理想形とも言えるサウンドだけを展開。ストイックなテンションでありながらも、クールに音だけで全てを語る男3人が鳴らすヘビィロックの未来。全てを叩き潰す容赦の無い40分間だった。
しかしそんな音を放ちながらも男前3人はただストイックなだけじゃ無いステージを魅せていたのも忘れてはいけない。スティック捌きすら絵になる塚本氏、前屈みになりながら変態フィンガーピッキングでグルーブを生み出す亀井氏、高い身長を活かしたガニ股ギターリフ刻みからのレスポールを掲げてリフを引き倒す麺上げギタープレイと音だけじゃ無く、その姿すら絵にしかならないTwolowというバンドは結局は純粋な格好良さに帰結するし熱い!!
数多くのバンドが90年代のハードコアやヘビィロックに回帰すると思わせておいて、それらの進化系を鳴らし始めている昨今だけど、Twolowが提示するヘビィロックそそれであり、熟練の腕を発揮しながらも、分かりやすいエクストリームさには絶対に逃げない。
一見バンド名通りのエクストリームな二郎系だと思わせておきながら、実は鶏と豚で出汁を取ったシンプルでオールドスクールな硬派な中華そばみたいな味わいもあり、だけど手打ち極太麺の様なリフの味わいもあり。夢中になって音を貪った夜だった。ごっそさんです!!
■LosingMySilentDoors presents 【Nowhereland】 halo.2 「月の影の方へ」(2015年10月5日)@新宿Motion
スタート時刻にMotionに着いて、フロアに入ったら丁度一番手のNOAMSのライブが始まっていた。調べてみたらこの日のライブが初ライブだったみたいだけど、初ライブとは思えない堂々としたステージ。空間系エフェクターによる浮遊感溢れる甘く少し刹那的な歌物ポストロックサウンドに早々にノスタルジックな気持ちに。
二番手のハイイロジェントルダイナソー女性ベースボーカルと男性ギターボーカルなガレージポップなバンド。在りし時代のギターロックなメロディ感と郷愁の音色にまたしてもノスタルジックな気持ちに。だけど終盤にプレイしていた不協和音のダークなコードを使いまくった曲に思わずハッとさせられる。その振り幅がこのバンドの魅力かもしれないなんて思ったり。
大阪のバンドであるChip Chaplinはアコースティックギター主体の歌物な音楽を展開。こちらは観ていて少し優しい気持ちになれる音でフロアをしっとりとした空気に。
FOOLAは一瞬ISISかよっていうポストメタルなイントロから始まり、そこからまた意表を突く感じで歌物ロックへ。ギターの音作りとかビートの重低音とかヘビィなオルタナ的なアプローチを繰り出しながらも、それをポップに仕立て上げるセンスは中々の物だったと思う。
そして今日のお目当てのTHE CREATOR OF。5月にヘブンズで観た時以来だから本当に久々にライブを観れる事が嬉しい。
今回は「Resonance」からスタート。毎回アレンジが変わるTCOのライブは常に新鮮な驚きに満ちているけど、「Resonance」では中盤の轟音パートのドラムが大胆なスネアのロール主体のアレンジに変わっており、クリアなインスト曲により躍動感が加わる。
「Out For Three Days Straight」もミニマルさとダイナミックさの両立がより明確になり、バンド音楽としてだけじゃなく、ミニマルなクラブイベントとかに出ても全く違和感の無いアレンジへ。でも突き抜ける部分はしっかり突き出し、轟の中の調和と秩序を生み出す。
毎回ライブのここぞという所でプレイされる「You Are」は現在のTCOの気付きとも言える曲だし、インスト中心のセットの中にこの曲が組み込まれると音の空気がまた一変する。ポストロックでもありながら、ヘビィロックでもあり、グランジでもあるTCOだからこそだ。 ラストはリズムパッドを導入したアレンジも板に付き、こちらも今回大胆のアレンジが変わっていた「Settle」で締め。mogwaiのフォロワーでもTOOLのフォロワーでもISISのフォロワーでもない、それらのバンドが持つ空気感と先鋭性をグランジというルーツをブレさせずに鳴らすTCOは常にオリジナルであり続けている。
4ピースになってもうすぐ一年とかだけど、4人になってからの音も確実に固まり、よりソリッドでありながら、透明な音の膜を幾重にも張り巡らせたサウンドプロダクトもより完成されてきている。このバンドは進化のみを続けている。
トリは主催のLosingMySilentDoors。ギタボのBori氏は今回のイベントではVjも担当し他の出演バンドのライブに華を添えていたけど、最後は自らの音でキッチリイベントを締めくくった。浮遊感溢れるエヴァーグリーンな音は80年代後半のU2を彷彿とさせる色褪せない物。
だけど曲によってはソフトな感触を剥ぎ取ったダークで不穏な音も展開し、時には液体の様にじんわり浸透していくと思ったら、それがいきなり鋭利な刃物に変わる様な少し不思議で掴みどころの無い音を鳴らしていた。
ライブもトリという事で少し長めにやっていたけど、VJ含めMotionを非日常と日常の狭間に変えるライブは見応えがありました。
そんな感じで今回のTCOを観に行きましたってライブレポでした。普段はうるさい音楽ばかり聴いたり観に行ったりしているので、こうしたイベントの空気は常に新鮮さを感じたりもしつつ、そんな場所でも媚びずにブレずに自らの核だけを打ち出すTCOも存在感はやっぱり凄かったです。